牧野法
第一章 総則
この法律で「牧野」とは、主として家畜の放牧 又はその飼料 若しくは敷料の採取の目的に供される土地(耕作の目的に供される土地を除く。)をいう。
第二章 牧野管理規程
地方公共団体は、その管理に属する牧野であつて政令で定めるものにつき、当該牧野が立地 その他の諸条件に応じて最も効率的に利用されるように牧野管理規程を定めなければならない。
地方公共団体は、前項の規定により牧野管理規程を定めようとするときは、あらかじめ、牧野管理規程案を十日間公示しなければならない。
当該牧野の利用者、所有者 その他利害関係のある者で、当該牧野管理規程案に不服のあるものは、前項の公示期間満了後二十日以内に、当該地方公共団体に異議を申し出ることができる。
前項の規定による異議の申出があつたときは、当該地方公共団体は、同項の期間満了後二十日以内に、公聴会を開き、当該牧野の利用者、所有者 その他利害関係のある者の意見を聞かなければならない。
地方公共団体は、牧野管理規程を定めたときは、遅滞なく、次の各号の区分に従い、それぞれ、農林水産大臣 又は都道府県知事に届け出なければならない。
市町村(その組合 及び財産区を含む。)にあつては、都道府県知事
牧野管理規程の変更については、第二項から前項までの規定を準用する。
前項第三号の認容頭数は、家畜の食草量に応じ牛 又は馬に換算して定めることができる。
この場合の換算の方法は、農林水産省令で定める。
農林水産大臣 又は都道府県知事は、牧野の改良 及び保全に関し専門的知識を有する職員に、それぞれ、その届出を受理した牧野管理規程のある牧野に立ち入らせ、当該牧野が最も効率的に利用されているかどうかを検査させることができる。
前項の検査の結果、牧野管理規程に違反する事実があると認めるときは、農林水産大臣 又は都道府県知事は、当該牧野の管理者に対し、牧野管理規程を遵守し、又はその利用者をしてこれを遵守させるために必要な措置をとるべき旨を指示することができる。
第一項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第一項の立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第三条第五項の規定により牧野管理規程の届出のあつた牧野につき、地方公共団体と当該牧野の利用者との間に、当該牧野の使用 又は収益に関する契約がある場合において、その牧野管理規程を遵守するために必要があるときは、地方公共団体は、契約の条件にかかわらず、その必要の限度において、当該契約の変更に関し、当該契約の相手方に対して協議を求めることができる。
前項の協議をする場合において、地方公共団体は、当該牧野の利用者が二人以上あるときは、各利用者の利益を公平に考慮しなければならない。
第三章 保護牧野
都道府県知事は、前項の指示をする場合には、左に掲げる基準に準拠してしなければならない。
前条第一項の指示を受けた者は、必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、当該指示の変更を申請することができる。
都道府県知事は、前項の申請があつたとき、又は必要があると認めるときは、前条第一項の指示を変更することができる。
第九条第一項の指示のあつた牧野(以下「保護牧野」という。)につき、牧野としての用途が廃止されたときは、同条同項の指示は、その効力を失う。
第九条第一項の指示を受けた者は、前項の用途廃止の日から三十日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
都道府県知事は、第九条第一項の指示に係る措置の実施を確保するため必要があるときは、その職員に当該保護牧野に立ち入らせ、当該指示に係る措置の実施状況を検査させることができる。
第六条第三項 及び第四項の規定は、前項の立入検査について準用する。
第九条第一項の指示を受けた者は、当該指示に係る措置の実施を完了したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
都道府県知事は、前項の届出があつた場合において、当該指示に係る措置の実施が完了していると認めるときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
都道府県は、第九条第一項の指示を実施したため損失を受けた者に対し、その実施により通常生ずべき損失を補償する。
契約により所有権以外の権原に基き牧野の管理を行う者が、第九条第一項の指示を受け、当該指示に係る措置を実施するために必要な費用を支出したときは、その者は、契約の相手方に対し、契約期間 若しくは永小作権 その他の権利の存続期間の延長 又は小作料、賃借料 その他その利用の対価の減免につき協議を求めることができる。
第九条第一項の指示を受け、当該指示に係る措置を実施するために必要な費用を支出した者と当該牧野の利用者との間に、当該牧野の使用 又は収益に関する契約がある場合において、当該指示に係る措置を実施したため牧野の効用が増加したときは、その実施者は、契約の条件にかかわらず、小作料、賃貸料 その他その利用の対価につき、相当の増額を請求することができる。
前項の請求があつたときは、当該牧野の利用者は、その権利を放棄し、又は契約を解除することができる。
森林法(明治四十年法律第四十三号)第三十六条において準用する同法第十四条の規定により保安林に編入されている牧野については、この章の規定を適用しない。
第四章 雑則
都道府県知事は、この法律の目的を達するために必要があると認めるときは、牧野の所有者、管理者 又は利用者に対し報告徴集の目的を附記した文書をもつて、当該牧野 又はその施設に関し、必要な報告を求めることができる。
国は、第三条に規定する牧野管理規程に従い牧野の改良事業を行う者、第九条第一項の指示により保護牧野の改良事業を行う者 及び第十八条の指示に従い害虫の駆除の事業を行う者に対し、当該事業を行うために必要な限度において、資金の融通、牧野草の種子 及び牧野樹林の種苗の供給等に関し、必要な奨励措置を講ずる。
第三条から第七条まで 及び第十八条から前条までの規定は、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第二十四条(同法第百条において準用する場合を含む。)の規定により家畜の放牧 又はその飼料 若しくは敷料の採取の目的に供することを許可された河川の敷地 及び堤防に準用する。
この法律において政令に委任するものを除く外、この法律の実施のための手続 その他その執行について必要な事項は、農林水産省令で定める。
第五章 罰則
第九条第一項の規定による指示に違反した者は、三万円以下の罰金に処する。
左の各号の一に該当する者は、一万円以下の罰金に処する。
第十二条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第十九条(第二十二条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人 又は人に対して各本条の刑を科する。
第十一条第二項 又は第十三条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二千円以下の過料に処する。