水洗炭業に関する法律
第一章 総則
この法律において「水洗炭業」とは、鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)の適用を受ける事業以外の事業であつて石炭の掘採により生じた廃石(以下「ぼた」という。)を水洗することにより石炭を採取する事業 及び石炭を水洗する事業をいい、「水洗炭業者」とは、水洗炭業を営む者をいう。
第二章 登録
前項の登録は、二年間有効とする。
第一項の登録の有効期間満了の後引き続き水洗炭業を営もうとする者は、更新の登録を受けなければならない。
この場合において当該登録は、二年間有効とする。
前条の登録を受けようとする者(同条第三項の規定により更新の登録を受けようとする者を含む。以下「登録申請者」という。)は、経済産業省令で定めるところにより、その事業を行う場所を管轄する都道府県知事に、次に掲げる事項を記載した登録申請書を提出しなければならない。
法人である場合においては、その資本金額(出資総額を含む。)及び役員の氏名
前項の登録申請書には、水洗施設の位置を示す図面 及び経済産業省令で定める事項を記載した書類(以下「添付書類」という。)を添付しなければならない。
都道府県知事は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、第七条第一項の規定により登録を拒否する場合を除くほか、遅滞なく、前条第一項第一号から第三号までに掲げる事項 並びに登録年月日 及び登録番号を水洗炭業者登録簿に登録しなければならない。
都道府県知事は、前項の規定による登録をした場合においては、直ちにその旨を当該登録申請者に通知しなければならない。
前条第一項の規定による登録を受けない者は、水洗炭業を営むことができない。
前条第一項の規定による登録を受けた者は、当該登録を受けた事業を行う場所以外の場所で水洗炭業を営むことができない。
前条第一項の規定による登録を受けた者は、その名義を他人に水洗炭業のため利用させてはならない。
都道府県知事は、登録申請者が次の各号の一に該当するとき、又は登録申請者に係る水洗炭業の施業が河川、道路 その他の公共の用に供する施設を損傷し、若しくは農業、林業 若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反することとなると認めるときは、その登録を拒否しなければならない。
第十一条(第一号に該当する場合を除く。)の規定 又は第十四条の規定により登録を取り消され、登録の取消しの日から二年を経過しない者
この法律の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終り 又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者
法人でその役員のうちに前二号の一に該当する者のあるもの
都道府県知事は、前項の規定による登録の拒否をした場合においては、遅滞なく、理由を附してその旨を登録申請者に通知しなければならない。
水洗炭業者は、第四条第一項第一号 又は第三号に掲げる事項について変更があつたときは、経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨の変更届出書を都道府県知事に提出しなければならない。
水洗炭業者は、当該都道府県知事の管轄する区域内において、第四条第一項第二号に掲げる事項を変更しようとするときは、同条第一項第四号から第六号までに掲げる事項を記載した書類 及び同条第二項に規定する添付書類を添えて、経済産業省令で定めるところにより、その旨の変更届出書を都道府県知事に提出しなければならない。
第五条第一項 及び第七条の規定は、前二項の規定による変更の届出があつた場合に準用する。
水洗炭業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
法人が合併 又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したときは、その清算人(破産手続開始の決定による解散の場合にあつては、その破産管財人)
都道府県知事は、その登録を受けた水洗炭業者が次の各号の一に該当するときは、当該水洗炭業者の登録を取り消すことができる。
第七条第一項第二号 又は第三号の規定に該当するに至つた場合
不正の手段により第五条第一項の規定による登録を受けた場合
第六条第三項の規定に違反した場合
都道府県知事は、次の各号に掲げる場合においては、水洗炭業者登録簿につき、当該水洗炭業者の登録を抹消しなければならない。
第十条の規定による届出があつた場合
第三条第一項の規定による登録の有効期間満了の際、更新の登録の申請がなかつた場合
前条 又は第十四条の規定により水洗炭業者の登録を取り消した場合
第七条第二項の規定は、前項の規定により登録をまつ消した場合に準用する。
第三章 事業の規制
前各号に掲げるもののほか、水洗炭業による被害を防止し、又は除去するために必要な措置をとること。
都道府県知事は、前項の命令をする場合において、必要があると認めるときは、当該命令に係る措置がとられるまでの間、当該水洗炭業者に対し、その事業の全部 又は一部の停止を命ずることができる。
都道府県知事は、前二項の規定による命令をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
都道府県知事は、水洗炭業者が前条第一項の規定による命令に違反したとき、又は第二十一条の規定による保証金を供託しなかつたときは、六月以内の期間を定めて、その事業の全部 又は一部の停止を命じ、又は第五条第一項の登録を取り消すことができる。
都道府県知事は、前項の規定による命令をしようとするときは、行政手続法第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
前項の場合において当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
第一項の規定による検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第四章 賠償
水洗炭業者がその行う次の各号に掲げる作業により、他人に損害を与えたときは、当該水洗炭業者が、その損害を賠償する責に任ずる。
前項の場合において、損害が二以上の水洗炭業者の作業によつて生じたときは、各水洗炭業者は、連帯して損害を賠償する義務を負う。損害が二以上の水洗炭業者の作業のいずれによつて生じたかを知ることができないときも、同様とする。
前項に規定する連帯債務者相互の間においては、その各自の負担部分は、等しいものと推定する。
前項の損害の賠償は、金銭をもつてする。
ただし、賠償金額に比して著しく多額の費用を要しないで原状の回復をすることができるときは、被害者は、原状の回復を請求することができる。
賠償義務者の申立があつた場合において、裁判所が適当であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、金銭をもつてする賠償に代えて原状の回復を命ずることができる。
水洗炭業の施業に係る損害の賠償に関して紛争が生じた場合において、当事者の双方 又は一方から申請があつたときは、当該都道府県知事は、紛争の実情を詳細に調査し、事件が公正に解決されるようあつせんしなければならない。
第十六条第一項に規定する損害の発生 又は拡大に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任 及び範囲を定めるのについて、これをしん酌することができる。天災 その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。
第十六条第一項に規定する損害の賠償請求権は、次に掲げる場合には、時効によつて消滅する。
被害者が損害 及び賠償義務者を知つた時から三年間行使しないとき。
損害の発生の時から二十年間行使しないとき。
人の生命 又は身体を害した場合における損害賠償請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、
同号中
「三年間」とあるのは、
「五年間」と
する。
水洗炭業者は、その施業に係る損害の賠償を担保するため、事業を行う場所一箇所ごとに五十万円をこえない範囲内において都道府県知事が定める額の保証金を、第五条第二項の規定による登録の通知を受けた日から法務省令、経済産業省令で定める期間内に供託しなければならない。
前項の規定は、水洗炭業者が第四条第一項第二号に掲げる事業を行う場所を追加するため第九条第二項の規定による届出をした場合に準用する。
水洗炭業者は、第二十三条から第二十七条までの規定により権利の実行が行われたため第一項 又は前項の規定により供託された保証金が第一項(前項において準用する場合を含む。)の都道府県知事が定める額に不足することとなつたときは、当該不足額を法務省令、経済産業省令で定める期間内に供託しなければならない。
水洗炭業の施業に係る被害者は、当該損害賠償請求権に関し、前条の規定により供託された保証金につき、他の債権者に優先して弁済を受ける権利を有する。
前条に規定する権利を有する者は、水洗炭業の施業に係る損害を賠償する責に任ずる者(以下「賠償義務者」という。)が事業の廃止 若しくは休止 その他の理由により賠償の義務を履行することが著しく困難であると認められるとき、又はそのゆくえが知れないときは、都道府県知事に対し、法務省令、経済産業省令で定める手続に従い権利の実行の申立をすることができる。
都道府県知事は、前項の申立があつたときは、遅滞なく申立の理由の有無を審査しなければならない。
都道府県知事は、前項の規定による審査に当たつては、賠償義務者に対し、あらかじめ、期日 及び場所を指定して意見の聴取をしなければならない。
ただし、その者 又はその代理人が正当な事由がなくて意見の聴取に応じないときは、意見の聴取を行わないで当該審査をすることができる。
前項の意見の聴取に際しては、当該賠償義務者 又はその代理人に意見を述べ、及び証拠を提出する機会が与えられなければならない。
都道府県知事は、前条第二項の規定による審査の結果申立を理由があると認めるときは、当該保証金につき第二十二条に規定する権利を有する者は六十日を下らないその定める期間内に権利の申出をすべきこと 及びその期間内に申出をしないときは配当手続から除斥されるべきことを公示し、かつ、その旨を申立人 及び賠償義務者に通知しなければならない。
前項の規定による公示があつた後は、申立人がその申立を取り下げた場合においても、手続の進行は、妨げられない。
都道府県知事は、前条第一項の期間が経過した後権利の調査のため遅滞なく意見の聴取をしなければならない。
都道府県知事は、前項の意見の聴取をしようとするときは、申立人、前条第一項の期間内に権利の申出をした者 及び賠償義務者に対し、あらかじめ期日 及び場所を通知して、権利の存否 及びその権利によつて担保される損害賠償請求権の額について証拠を提示し、かつ、意見を述べる機会を与えなければならない。
前項の権利の調査の手続に関し必要な事項は、法務省令、経済産業省令で定める。
都道府県知事は、前条の調査の結果に基いてすみやかに配当表を作成し、これを申立人、第二十四条第一項の期間内に権利の申出をした者 及び賠償義務者に通知し、かつ、公示しなければならない。
配当は、前項の通知を発した日から五十日を経過した後、配当表に従い実施する。
前二項の配当手続に関し必要な事項は、法務省令、経済産業省令で定める。
賠償義務者のゆくえが知れないときは、前三条の規定における賠償義務者に対する通知は、することを要しない。
ただし、第二十五条第二項の場合においては、通知すべき事項を公示しなければならない。
第十六条から前条までの規定は、水洗炭業に従事する者の業務上の負傷、疾病 及び死亡に関しては適用しない。
第十二条第一項の規定による登録のまつ消があつた場合において、当該水洗炭業者であつた者は、都道府県知事の承認を受けて、第二十一条の規定により供託した保証金を取りもどすことができる。
水洗炭業者が、その事業を行う場所のうちの一部の場所を廃止した場合において、その廃止した場所に係る保証金についても、同様とする。
前項の保証金の取りもどしは、都道府県知事が当該保証金につき第二十二条の権利を有する者はその定める六月を下らない期間内に申し出るべき旨の公示をし、その期間内にその申出がなかつたときでなければ、これをすることができない。
ただし、当該登録のまつ消があつた時から三年を経過したときは、この限りでない。
前項の公示 その他保証金のとりもどしに関し必要な事項は、法務省令、経済産業省令で定める。
第五章 雑則
この法律の規定による都道府県知事に対する登録の申請(更新の登録の申請を含む。以下同じ。)、届出 及び報告は、当該事業を行う場所を管轄する市町村長を経由してしなければならない。
前項の場合において、当該市町村長は、当該登録の申請、届出 及び報告についての意見書を添えることができる。
都道府県知事は、第十三条第一項の規定による命令をしようとするとき、及び第二十三条第二項の規定による申立の理由を審査するときは、当該事業を行う場所を管轄する市町村長の意見を聞かなければならない。
都道府県知事は、第二十五条第一項の規定により権利の調査のため聴聞をしようとするときは、損害が生じている地を管轄する市町村長の意見を聞かなければならない。
都道府県に、水洗炭業審議会(以下「審議会」という。)を置くことができる。
前二項に規定するものを除くほか、審議会の組織 及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
第六章 罰則
次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役 若しくは十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第六条第一項の規定に違反して登録を受けないで水洗炭業を営んだ者
第六条第二項の規定に違反して登録を受けた事業を行う場所以外の場所で水洗炭業を営んだ者
虚偽 又は不正の事実に基いて第五条第一項の規定による登録を受けた者
第十三条第二項 又は第十四条第一項の事業停止命令に違反した者
次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
第四条第一項の規定による登録申請書 又は同条第二項の規定による添付書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
第六条第三項の規定に違反してその名義を他人に利用させた水洗炭業者
第九条第二項の規定による書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
次の各号の一に該当する者は、二万円以下の罰金に処する。
第九条第一項の規定する書類を提出せず、又はその書類に虚偽の記載をした者
第十五条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第十五条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対し虚偽の陳述をした者
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人、その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、第三十五条から前条までの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第十条の規定による届出を怠つた者は、一万円以下の過料に処する。