文化財保護法

# 昭和二十五年法律第二百十四号 #

第一節 重要文化財

分類 法律
カテゴリ   文化
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時24分


第一款 指定

1項

文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。

2項

文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

1項

前条の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該国宝 又は重要文化財の所有者に通知してする。

2項

前条の規定による指定は、前項の規定による官報の告示があつた日からその効力を生ずる。


但し、当該国宝 又は重要文化財の所有者に対しては、同項の規定による通知が当該所有者に到達した時からその効力を生ずる。

3項

前条の規定による指定をしたときは、文部科学大臣は、当該国宝 又は重要文化財の所有者に指定書を交付しなければならない。

4項

指定書に記載すべき事項 その他指定書に関し必要な事項は、文部科学省令で定める。

5項

第三項の規定により国宝の指定書の交付を受けたときは、所有者は、三十日以内に国宝に指定された重要文化財の指定書を文部科学大臣に返付しなければならない。

1項

国宝 又は重要文化財が国宝 又は重要文化財としての価値を失つた場合 その他特殊の事由があるときは、文部科学大臣は、国宝 又は重要文化財の指定を解除することができる。

2項

前項の規定による指定の解除は、その旨を官報で告示するとともに、当該国宝 又は重要文化財の所有者に通知してする。

3項

第一項の規定による指定の解除には、前条第二項の規定を準用する。

4項

第二項の通知を受けたときは、所有者は、三十日以内に指定書を文部科学大臣に返付しなければならない。

5項

第一項の規定により国宝の指定を解除した場合において当該有形文化財につき重要文化財の指定を解除しないときは、文部科学大臣は、直ちに重要文化財の指定書を所有者に交付しなければならない。

第二款 管理

1項

文化庁長官は、重要文化財の所有者に対し、重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。

1項

重要文化財の所有者は、この法律 並びにこれに基いて発する文部科学省令 及び文化庁長官の指示に従い、重要文化財を管理しなければならない。

2項

重要文化財の所有者は、当該重要文化財の適切な管理のため必要があるときは、第百九十二条の二第一項に規定する文化財保存活用支援団体 その他の適当な者を専ら自己に代わり当該重要文化財の管理の責めに任ずべき者(以下この節 及び第百八十七条第一項第一号において「管理責任者」という。)に選任することができる。

3項

前項の規定により管理責任者を選任したときは、重要文化財の所有者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、当該管理責任者と連署の上二十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。


管理責任者を解任した場合も同様とする。

4項

管理責任者には、前条 及び第一項の規定を準用する。

1項

重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、旧所有者に対し交付された指定書を添えて、二十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。

2項

重要文化財の所有者は、管理責任者を変更したときは、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、新管理責任者と連署の上二十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。


この場合には、前条第三項の規定は、適用しない

3項

重要文化財の所有者 又は管理責任者は、その氏名 若しくは名称 又は住所を変更したときは、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、二十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。


氏名 若しくは名称 又は住所の変更が重要文化財の所有者に係るときは、届出の際指定書を添えなければならない。

1項

重要文化財につき、所有者が判明しない場合 又は所有者 若しくは管理責任者による管理が著しく困難 若しくは不適当であると明らかに認められる場合には、文化庁長官は、適当な地方公共団体 その他の法人を指定して、当該重要文化財の保存のため必要な管理(当該重要文化財の保存のため必要な施設、設備 その他の物件で当該重要文化財の所有者の所有 又は管理に属するものの管理を含む。)を行わせることができる。

2項

前項の規定による指定をするには、文化庁長官は、あらかじめ、当該重要文化財の所有者(所有者が判明しない場合を除く) 及び権原に基く占有者 並びに指定しようとする地方公共団体 その他の法人の同意を得なければならない。

3項

第一項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、前項に規定する所有者、占有者 及び地方公共団体 その他の法人に通知してする。

4項

第一項の規定による指定には、第二十八条第二項の規定を準用する。

5項

重要文化財の所有者 又は占有者は、正当な理由がなくて、第一項の規定による指定を受けた地方公共団体 その他の法人(以下この節 及び第百八十七条第一項第一号において「管理団体」という。)が行う管理 又はその管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

6項

管理団体には、第三十条 及び第三十一条第一項の規定を準用する。

1項

前条第一項に規定する事由が消滅した場合 その他特殊の事由があるときは、文化庁長官は、管理団体の指定を解除することができる。

2項

前項の規定による解除には、前条第三項 及び第二十八条第二項の規定を準用する。

1項

管理団体が行う管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、管理団体の負担とする。

2項

前項の規定は、管理団体と所有者との協議により、管理団体が行う管理により所有者の受ける利益の限度において、管理に要する費用の一部を所有者の負担とすることを妨げるものではない。

1項

重要文化財の全部 又は一部が滅失し、若しくはき損し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたときは、所有者(管理責任者 又は管理団体がある場合は、その者)は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、その事実を知つた日から十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。

1項

重要文化財の所在の場所を変更しようとするときは、重要文化財の所有者(管理責任者 又は管理団体がある場合は、その者)は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、且つ、指定書を添えて、所在の場所を変更しようとする日の二十日前までに文化庁長官に届け出なければならない。


但し、文部科学省令の定める場合には、届出を要せず、若しくは届出の際指定書の添附を要せず、又は文部科学省令の定めるところにより所在の場所を変更した後届け出ることをもつて足りる。

第三款 保護

1項

重要文化財の修理は、所有者が行うものとする。


但し、管理団体がある場合は、管理団体が行うものとする。

1項

管理団体が修理を行う場合は、管理団体は、あらかじめ、その修理の方法 及び時期について当該重要文化財の所有者(所有者が判明しない場合を除く)及び権原に基く占有者の意見を聞かなければならない。

2項

管理団体が修理を行う場合には、第三十二条の二第五項 及び第三十二条の四の規定を準用する。

1項

重要文化財の管理 又は修理につき多額の経費を要し、重要文化財の所有者 又は管理団体がその負担に堪えない場合 その他特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、重要文化財の所有者 又は管理団体に対し補助金を交付することができる。

2項

前項の補助金を交付する場合には、文化庁長官は、その補助の条件として管理 又は修理に関し必要な事項を指示することができる。

3項

文化庁長官は、必要があると認めるときは、第一項の補助金を交付する重要文化財の管理 又は修理について指揮監督することができる。

1項

重要文化財を管理する者が不適任なため又は管理が適当でないため重要文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られる虞があると認めるときは、文化庁長官は、所有者、管理責任者 又は管理団体に対し、重要文化財の管理をする者の選任 又は変更、管理方法の改善、防火施設 その他の保存施設の設置 その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。

2項

前項の規定による命令 又は勧告に基いてする措置のために要する費用は、文部科学省令の定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

3項

前項の規定により国庫が費用の全部 又は一部を負担する場合には、前条第三項の規定を準用する。

1項

文化庁長官は、国宝がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者 又は管理団体に対し、その修理について必要な命令 又は勧告をすることができる。

2項

文化庁長官は、国宝以外の重要文化財がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者 又は管理団体に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。

3項

前二項の規定による命令 又は勧告に基いてする修理のために要する費用は、文部科学省令の定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

4項

前項の規定により国庫が費用の全部 又は一部を負担する場合には、第三十五条第三項の規定を準用する。

1項

文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合においては、国宝につき自ら修理を行い、又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置をすることができる。

一 号

所有者、管理責任者 又は管理団体が前二条の規定による命令に従わないとき。

二 号

国宝がき損している場合 又は滅失し、き損し、若しくは盗み取られる虞がある場合において、所有者、管理責任者 又は管理団体に修理 又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。

2項

前項の規定による修理 又は措置をしようとするときは、文化庁長官は、あらかじめ、所有者、管理責任者 又は管理団体に対し、当該国宝の名称、修理 又は措置の内容、着手の時期 その他必要と認める事項を記載した令書を交付するとともに、権原に基く占有者にこれらの事項を通知しなければならない。

1項

文化庁長官は、前条第一項の規定による修理 又は措置をするときは、文化庁の職員のうちから、当該修理 又は措置の施行 及び当該国宝の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。

2項

前項の規定により責に任ずべき者と定められた者は、当該修理 又は措置の施行に当るときは、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。

3項

前条第一項の規定による修理 又は措置の施行には、第三十二条の二第五項の規定を準用する。

1項

第三十八条第一項の規定による修理 又は措置のために要する費用は、国庫の負担とする。

2項

文化庁長官は、文部科学省令の定めるところにより、第三十八条第一項の規定による修理 又は措置のために要した費用の一部を所有者(管理団体がある場合は、その者)から徴収することができる。


但し同条第一項第二号の場合には、修理 又は措置を要するに至つた事由が所有者、管理責任者 若しくは管理団体の責に帰すべきとき、又は所有者 若しくは管理団体がその費用の一部を負担する能力があるときに限る

3項

前項の規定による徴収については、行政代執行法昭和二十三年法律第四十三号第五条 及び第六条の規定を準用する。

1項

第三十八条第一項の規定による修理 又は措置によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

2項

前項の補償の額は、文化庁長官が決定する。

3項

前項の規定による補償額に不服のある者は、訴えをもつてその増額を請求することができる。


ただし前項の補償の決定の通知を受けた日から六箇月を経過したときは、この限りでない。

4項

前項の訴えにおいては、国を被告とする。

1項

国が修理 又は滅失、き損 若しくは盗難の防止の措置(以下この条において、「修理等」という。)につき第三十五条第一項の規定により補助金を交付し、又は第三十六条第二項第三十七条第三項 若しくは第四十条第一項の規定により費用を負担した重要文化財のその当時における所有者 又はその相続人、受遺者 若しくは受贈者(第二次以下の相続人、受遺者 又は受贈者を含む。以下この条において同じ。)(以下この条において、「所有者等」という。)は、補助 又は費用負担に係る修理等が行われた後 当該重要文化財を有償で譲り渡した場合においては、当該補助金 又は負担金の額(第四十条第一項の規定による負担金については、同条第二項の規定により所有者から徴収した部分を控除した額をいう。以下この条において同じ。)の合計額から当該修理等が行われた後重要文化財の修理等のため自己の費した金額を控除して得た金額(以下この条において、「納付金額」という。)を、文部科学省令の定めるところにより国庫に納付しなければならない。

2項

前項に規定する「補助金 又は負担金の額」とは、補助金 又は負担金の額を、補助 又は費用負担に係る修理等を施した重要文化財 又はその部分につき文化庁長官が個別的に定める耐用年数で除して得た金額に、更に当該耐用年数から修理等を行つた時以後重要文化財の譲渡の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)を乗じて得た金額に相当する金額とする。

3項

補助 又は費用負担に係る修理等が行われた後、当該重要文化財が所有者等の責に帰することのできない事由により著しく その価値を減じた場合 又は当該重要文化財を国に譲り渡した場合には、文化庁長官は、納付金額の全部 又は一部の納付を免除することができる。

4項

文化庁長官の指定する期限までに納付金額を完納しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。


この場合における徴収金の先取特権の順位は、国税 及び地方税に次ぐものとする。

5項

納付金額を納付する者が相続人、受遺者 又は受贈者であるときは、第一号に定める相続税額 又は贈与税額と第二号に定める額との差額に相当する金額を第三号に定める年数で除して得た金額に第四号に定める年数を乗じて得た金額をその者が納付すべき納付金額から控除するものとする。

一 号

当該重要文化財の取得につきその者が納付した、又は納付すべき相続税額 又は贈与税額

二 号

前号の相続税額 又は贈与税額の計算の基礎となつた課税価格に算入された当該重要文化財 又はその部分につき当該相続、遺贈 又は贈与の時までに行つた修理等に係る第一項の補助金 又は負担金の額の合計額を当該課税価格から控除して得た金額を課税価格として計算した場合に当該重要文化財 又はその部分につき納付すべきこととなる相続税額 又は贈与税額に相当する額

三 号

第二項の規定により当該重要文化財 又はその部分につき文化庁長官が定めた耐用年数から当該重要文化財 又はその部分の修理等を行つた時以後当該重要文化財の相続、遺贈 又は贈与の時までの年数を控除した残余の年数(一年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。

四 号

第二項に規定する当該重要文化財 又はその部分についての残余の耐用年数

6項

前項第二号に掲げる第一項の補助金 又は負担金の額については、第二項の規定を準用する。


この場合において、

同項
譲渡の時」とあるのは、
「相続、遺贈 又は贈与の時」と

読み替えるものとする。

7項

第一項の規定により納付金額を納付する者の同項に規定する譲渡に係る所得税法昭和四十年法律第三十三号第三十三条第一項に規定する譲渡所得の金額の計算については、第一項の規定により納付する金額は、同条第三項に規定する資産の譲渡に要した費用とする。

1項

重要文化財に関し その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。


ただし、現状変更については維持の措置 又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。

2項

前項但書に規定する維持の措置の範囲は、文部科学省令で定める。

3項

文化庁長官は、第一項の許可を与える場合において、その許可の条件として同項の現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為に関し必要な指示をすることができる。

4項

第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、文化庁長官は、許可に係る現状変更 若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。

5項

第一項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第三項の許可の条件を付せられたことによつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

6項

前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。

1項

重要文化財を修理しようとするときは、所有者 又は管理団体は、修理に着手しようとする日の三十日前までに、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。


但し前条第一項の規定により許可を受けなければならない場合 その他文部科学省令の定める場合は、この限りでない。

2項

重要文化財の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る重要文化財の修理に関し技術的な指導と助言を与えることができる。

1項

重要文化財は、輸出してはならない


但し、文化庁長官が文化の国際的交流 その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。

1項

文化庁長官は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。

2項

前項の規定による処分によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

3項

前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。

1項

重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積つた額。以下同じ。) その他文部科学省令で定める事項を記載した書面をもつて、まず文化庁長官に国に対する売渡しの申出をしなければならない。

2項

前項の書面においては、当該相手方に対して譲り渡したい事情を記載することができる。

3項

文化庁長官は、前項の規定により記載された事情を相当と認めるときは、当該申出のあつた後三十日以内に当該重要文化財を買い取らない旨の通知をするものとする。

4項

第一項の規定による売渡しの申出のあつた後三十日以内に文化庁長官が当該重要文化財を国において買い取るべき旨の通知をしたときは、第一項の規定による申出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。

5項

第一項に規定する者は、前項の期間(その期間内に文化庁長官が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならない。

1項

国は、管理団体である地方公共団体 その他の法人が、その管理に係る重要文化財(建造物 その他の土地の定着物 及びこれと一体のものとして当該重要文化財に指定された土地に限る)で、その保存のため特に買い取る必要があると認められるものを買い取る場合には、その買取りに要する経費の一部を補助することができる。

2項

前項の場合には、第三十五条第二項 及び第三項 並びに第四十二条の規定を準用する。

1項

重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)は、文化庁長官の定める条件により、文化庁長官に重要文化財の管理(管理団体がある場合を除く)又は修理を委託することができる。

2項

文化庁長官は、重要文化財の保存上必要があると認めるときは、所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、条件を示して、文化庁長官にその管理(管理団体がある場合を除く)又は修理を委託するように勧告することができる。

3項

前二項の規定により文化庁長官が管理 又は修理の委託を受けた場合には、第三十九条第一項 及び第二項の規定を準用する。

4項

重要文化財の所有者、管理責任者 又は管理団体は、文部科学省令の定めるところにより、文化庁長官に重要文化財の管理 又は修理に関し技術的指導を求めることができる。

第四款 公開

1項

重要文化財の公開は、所有者が行うものとする。


但し、管理団体がある場合は、管理団体が行うものとする。

2項

前項の規定は、所有者 又は管理団体の出品に係る重要文化財を、所有者 及び管理団体以外の者が、この法律の規定により行う公開の用に供することを妨げるものではない。

3項

管理団体は、その管理する重要文化財を公開する場合には、当該重要文化財につき観覧料を徴収することができる。

1項

文化庁長官は、重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館(独立行政法人国立文化財機構が設置する博物館をいう。以下この条において同じ。)その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため重要文化財を出品することを勧告することができる。

2項

文化庁長官は、国庫が管理 又は修理につき、その費用の全部 若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、一年以内の期間を限つて、国立博物館 その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため当該重要文化財を出品することを命ずることができる。

3項

文化庁長官は、前項の場合において必要があると認めるときは、一年以内の期間を限つて、出品の期間を更新することができる。


但し、引き続き五年をこえてはならない。

4項

第二項の命令 又は前項の更新があつたときは、重要文化財の所有者 又は管理団体は、その重要文化財を出品しなければならない。

5項

前四項に規定する場合の外、文化庁長官は、重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)から国立博物館 その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため重要文化財を出品したい旨の申出があつた場合において適当と認めるときは、その出品を承認することができる。

1項

文化庁長官は、前条の規定により重要文化財が出品されたときは、第百八十五条に規定する場合を除いて、文化庁の職員のうちから、その重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。

1項

第四十八条の規定による出品のために要する費用は、文部科学省令の定める基準により、国庫の負担とする。

2項

政府は、第四十八条の規定により出品した所有者 又は管理団体に対し、文部科学省令の定める基準により、給与金を支給する。

1項

文化庁長官は、重要文化財の所有者 又は管理団体に対し、三箇月以内の期間を限つて、重要文化財の公開を勧告することができる。

2項

文化庁長官は、国庫が管理、修理 又は買取りにつき、その費用の全部 若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者 又は管理団体に対し、三箇月以内の期間を限つて、その公開を命ずることができる。

3項

前項の場合には、第四十八条第四項の規定を準用する。

4項

文化庁長官は、重要文化財の所有者 又は管理団体に対し、前三項の規定による公開 及び当該公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。

5項

重要文化財の所有者、管理責任者 又は管理団体が前項の指示に従わない場合には、文化庁長官は、公開の停止 又は中止を命ずることができる。

6項

第二項 及び第三項の規定による公開のために要する費用は、文部科学省令の定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

7項

前項に規定する場合のほか、重要文化財の所有者 又は管理団体がその所有 又は管理に係る重要文化財を公開するために要する費用は、文部科学省令で定めるところにより、その全部 又は一部を国庫の負担とすることができる。

1項

前条の規定による公開の場合を除き、重要文化財の所在の場所を変更してこれを公衆の観覧に供するため第三十四条の規定による届出があつた場合には、前条第四項 及び第五項の規定を準用する。

1項

第四十八条 又は第五十一条第一項第二項 若しくは第三項の規定により出品し、又は公開したことに起因して当該重要文化財が滅失し、又はき損したときは、国は、その重要文化財の所有者に対し、その通常生ずべき損失を補償する。


ただし、重要文化財が所有者、管理責任者 又は管理団体の責に帰すべき事由によつて滅失し、又はき損した場合は、この限りでない。

2項

前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。

1項

重要文化財の所有者 及び管理団体以外の者がその主催する展覧会 その他の催しにおいて重要文化財を公衆の観覧に供しようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。


ただし、文化庁長官以外の国の機関 若しくは地方公共団体があらかじめ文化庁長官の承認を受けた博物館 その他の施設(以下この項において「公開承認施設」という。)において展覧会 その他の催しを主催する場合 又は公開承認施設の設置者が当該公開承認施設においてこれらを主催する場合は、この限りでない。

2項

前項ただし書の場合においては、同項に規定する催しを主催した者(文化庁長官を除く)は、重要文化財を公衆の観覧に供した期間の最終日の翌日から起算して二十日以内に、文部科学省令で定める事項を記載した書面をもつて、文化庁長官に届け出るものとする。

3項

文化庁長官は、第一項の許可を与える場合において、その許可の条件として、許可に係る公開 及び当該公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。

4項

第一項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかつたときは、文化庁長官は、許可に係る公開の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。

第五款 重要文化財保存活用計画

1項

重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)は、文部科学省令で定めるところにより、重要文化財の保存 及び活用に関する計画(以下「重要文化財保存活用計画」という。)を作成し、文化庁長官の認定を申請することができる。

2項

重要文化財保存活用計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。

一 号
当該重要文化財の名称 及び所在の場所
二 号

当該重要文化財の保存 及び活用のために行う具体的な措置の内容

三 号
計画期間
四 号

その他文部科学省令で定める事項

3項

前項第二号に掲げる事項には、次に掲げる事項を記載することができる。

一 号

当該重要文化財の現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為に関する事項

二 号
当該重要文化財の修理に関する事項
三 号

当該重要文化財(建造物であるものを除く次項第六号において同じ。)の公開を目的とする寄託契約に関する事項

4項

文化庁長官は、第一項の規定による認定の申請があつた場合において、その重要文化財保存活用計画が次の各号いずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。

一 号

当該重要文化財保存活用計画の実施が当該重要文化財の保存 及び活用に寄与するものであると認められること。

二 号

円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。

三 号

第百八十三条の二第一項に規定する文化財保存活用大綱 又は第百八十三条の五第一項に規定する認定文化財保存活用地域計画が定められているときは、これらに照らし適切なものであること。

四 号

当該重要文化財保存活用計画に前項第一号に掲げる事項が記載されている場合には、その内容が重要文化財の現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為を適切に行うために必要なものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。

五 号

当該重要文化財保存活用計画に前項第二号に掲げる事項が記載されている場合には、その内容が重要文化財の修理を適切に行うために必要なものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。

六 号

当該重要文化財保存活用計画に前項第三号に掲げる事項が記載されている場合には、当該寄託契約の内容が重要文化財の公開を適切かつ確実に行うために必要なものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。

5項

文化庁長官は、前項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該認定を申請した者に通知しなければならない。

1項

前条第四項の認定を受けた重要文化財の所有者 又は管理団体は、当該認定を受けた重要文化財保存活用計画の変更(文部科学省令で定める軽微な変更を除く)をしようとするときは、文化庁長官の認定を受けなければならない。

2項

前条第四項 及び第五項の規定は、前項の認定について準用する。

1項

第五十三条の二第三項第一号に掲げる事項が記載された重要文化財保存活用計画が同条第四項の認定(前条第一項の変更の認定を含む。以下この款 及び第百五十三条第二項第六号において同じ。)を受けた場合において、当該重要文化財の現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為をその記載された事項の内容に即して行うに当たり、第四十三条第一項の許可を受けなければならないときは、同項の規定にかかわらず、当該現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為が終了した後遅滞なく、文部科学省令で定めるところにより、その旨を文化庁長官に届け出ることをもつて足りる。

1項

第五十三条の二第三項第二号に掲げる事項が記載された重要文化財保存活用計画が同条第四項の認定を受けた場合において、当該重要文化財の修理をその記載された事項の内容に即して行うに当たり、第四十三条の二第一項の規定による届出を行わなければならないときは、同項の規定にかかわらず、当該修理が終了した後遅滞なく、文部科学省令で定めるところにより、その旨を文化庁長官に届け出ることをもつて足りる。

1項

文化庁長官は、第五十三条の二第四項の認定を受けた重要文化財の所有者 又は管理団体に対し、当該認定を受けた重要文化財保存活用計画(変更があつたときは、その変更後のもの。次条第一項 及び第五十三条の八において「認定重要文化財保存活用計画」という。)の実施の状況について報告を求めることができる。

1項

文化庁長官は、認定重要文化財保存活用計画が第五十三条の二第四項各号いずれかに適合しなくなつたと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

2項

文化庁長官は、前項の規定により認定を取り消したときは、遅滞なく、その旨を当該認定を受けていた者に通知しなければならない。

1項

都道府県 及び市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律昭和三十一年法律第百六十二号第二十三条第一項の条例の定めるところによりその長が文化財の保護に関する事務を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(以下「特定地方公共団体」という。)にあつては、その長。第百八十三条の八第四項第百九十条第一項 及び第百九十一条第一項除き、以下同じ。)は、重要文化財の所有者 又は管理団体の求めに応じ、重要文化財保存活用計画の作成 及び認定重要文化財保存活用計画の円滑かつ確実な実施に関し必要な指導 又は助言をすることができる。

2項

文化庁長官は、重要文化財の所有者 又は管理団体の求めに応じ、重要文化財保存活用計画の作成 及び認定重要文化財保存活用計画の円滑かつ確実な実施に関し必要な指導 又は助言をするように努めなければならない。

第六款 調査

1項

文化庁長官は、必要があると認めるときは、重要文化財の所有者、管理責任者 又は管理団体に対し、重要文化財の現状 又は管理、修理 若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。

1項

文化庁長官は、次の各号いずれかに該当する場合において、前条の報告によつても なお重要文化財に関する状況を確認することができず、かつ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当たる者を定め、その所在する場所に立ち入つてその現状 又は管理、修理 若しくは環境保全の状況につき実地調査をさせることができる。

一 号

重要文化財に関し 現状変更 又は保存に影響を及ぼす行為につき許可の申請があつたとき。

二 号

重要文化財が毀損しているとき 又はその現状 若しくは所在の場所につき変更があつたとき。

三 号

重要文化財が滅失し、毀損し、又は盗み取られるおそれのあるとき。

四 号

特別の事情により改めて国宝 又は重要文化財としての価値を鑑査する必要があるとき。

2項

前項の規定により立ち入り、調査する場合においては、当該調査に当る者は、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。

3項

第一項の規定による調査によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。

4項

前項の場合には、第四十一条第二項から第四項までの規定を準用する。

第七款 雑則

1項

重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、当該重要文化財に関し この法律に基いてする文化庁長官の命令、勧告、指示 その他の処分による旧所有者の権利義務を承継する。

2項

前項の場合には、旧所有者は、当該重要文化財の引渡と同時にその指定書を新所有者に引き渡さなければならない。

3項

管理団体が指定され、又はその指定が解除された場合には、第一項の規定を準用する。


但し、管理団体が指定された場合には、もつぱら所有者に属すべき権利義務については、この限りでない。