がん対策基本法

平成十八年法律第九十八号
略称 : がん対策法 
分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 平成二十八年十二月十六日
@ 最終更新 : 平成二十八年法律第百七号による改正
最終編集日 : 2023年 01月15日 10時21分

T
  • 第一章 総則

  • 第二章 がん対策推進基本計画等

  • 第三章 基本的施策

    • 第一節 がんの予防及び早期発見の推進
    • 第二節 がん医療の均てん化の促進等
    • 第三節 研究の推進等
    • 第四節 がん患者の就労等
    • 第五節 がんに関する教育の推進
  • 第四章 がん対策推進協議会

第一章 総則

1項

この法律は、我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等 がんが国民の生命 及び健康にとって重大な問題となっている現状 並びにがん対策においてがん患者(がん患者であった者を含む。以下同じ。)がその状況に応じて必要な支援を総合的に受けられるようにすることが課題となっていることに鑑み、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等 及び事業主の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

1項

がん対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

一 号

がんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的 又は総合的な研究を推進するとともに、がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上 その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。

二 号

がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を受けることができるようにすること。

三 号

がん患者の置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるよう がん医療を提供する体制の整備がなされること。

四 号

がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援 その他の必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること。

五 号

それぞれのがんの特性に配慮したものとなるようにすること。

六 号

保健、福祉、雇用、教育 その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に実施されること。

七 号

国、地方公共団体、第五条に規定する医療保険者、医師、事業主、学校、がん対策に係る活動を行う民間の団体 その他の関係者の相互の密接な連携の下に実施されること。

八 号

がん患者の個人情報(個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日 その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。)の保護について適正な配慮がなされるようにすること。

1項

国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、がん対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、基本理念にのっとり、がん対策に関し、国との連携を図りつつ、 自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

1項

医療保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第七条第二項に規定する保険者 及び同法第四十八条に規定する後期高齢者医療広域連合をいう。)は、国 及び地方公共団体が講ずるがんの予防に関する啓発 及び知識の普及、 がん検診(その結果に基づく必要な対応を含む。)に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。

1項

国民は、喫煙、食生活、運動 その他の生活習慣が健康に及ぼす影響、 がんの原因となるおそれのある感染症等 がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払い、必要に応じ、がん検診を受けるよう努めるほか、がん患者に関する理解を深めるよう努めなければならない。

1項

医師 その他の医療関係者は、国 及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるとともに、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならない。

1項

事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努めるとともに、国 及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力するよう努めるものとする。

1項

政府は、がん対策を実施するため必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。

第二章 がん対策推進基本計画等

1項

政府は、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策の推進に関する基本的な計画(以下「がん対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

2項

がん対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標 及び その達成の時期を定めるものとする。

3項

厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4項

厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聴くものとする。

5項

政府は、がん対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用 その他 適切な方法により公表しなければならない。

6項

政府は、適時に、第二項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用 その他 適切な方法により公表しなければならない。

7項

政府は、がん医療に関する状況の変化を勘案し、及び がん対策の効果に関する評価を踏まえ、 少なくとも六年ごとに、がん対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

8項

第三項から 第五項までの規定は、がん対策推進基本計画の変更について準用する。

1項

厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、がん対策推進基本計画の策定のための資料の提出 又はがん対策推進基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。

1項

都道府県は、がん対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県におけるがん患者に対するがん医療の提供の状況等を踏まえ、当該都道府県におけるがん対策の推進に関する計画(以下「都道府県がん対策推進計画」という。)を策定しなければならない。

2項

都道府県がん対策推進計画は、医療法昭和二十三年法律第二百五号第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法平成十四年法律第百三号第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画、介護保険法平成九年法律第百二十三号)第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画 その他の法令の規定による計画であってがん対策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

3項

都道府県は、当該都道府県におけるがん医療に関する状況の変化を勘案し、及び当該都道府県におけるがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、都道府県がん対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならない。

第三章 基本的施策

第一節 がんの予防及び早期発見の推進

1項

国 及び地方公共団体は、喫煙、食生活、運動 その他の生活習慣 及び生活環境が健康に及ぼす影響、がんの原因となるおそれのある感染症 並びに性別、年齢等に係る特定のがん 及び その予防等に関する啓発 及び知識の普及 その他のがんの予防の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、がんの早期発見に資するよう、がん検診の方法等の検討、がん検診の事業評価の実施、がん検診に携わる医療従事者に対する研修の機会の確保 その他のがん検診の質の向上等を図るために必要な施策を講ずるとともに、がん検診の受診率の向上に資するよう、がん検診に関する普及啓発 その他の必要な施策を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、がん検診によってがんに罹患している疑いがあり、又は罹患していると判定された者が必要かつ適切な診療を受けることを促進するため、必要な環境の整備 その他の必要な施策を講ずるものとする。

3項

国 及び地方公共団体は、前二項に規定する施策を効果的に実施するため、 がん検診の実態の把握のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第二節 がん医療の均てん化の促進等

1項

国 及び地方公共団体は、手術、放射線療法、化学療法、緩和ケア(がん その他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的 若しくは精神的な苦痛 又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護 その他の行為をいう。第十七条において同じ。)のうち医療として提供されるものその他のがん医療に携わる専門的な知識 及び技能を有する医師 その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく そのがんの状態に応じた適切ながん医療を受けることができるよう、 専門的ながん医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、がん患者に対し適切ながん医療が提供されるよう、国立研究開発法人国立がん研究センター前項の医療機関 その他の医療機関等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること、居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保すること、医療従事者に対するがん患者の療養生活(これに係るその家族の生活を含む。以下この条において同じ。)の質の維持向上に関する研修の機会を確保すること その他のがん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、がん医療に関する情報の収集 及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、がん患者(その家族を含む。第二十条 及び第二十二条において同じ。)に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、がんに係る調査研究の促進のため、がん登録等の推進に関する法律平成二十五年法律第百十一号第二条第二項に規定するがん登録その他のがんの罹患、診療、転帰等の状況の把握、分析等のための取組を含む。以下 この項において同じ。)、当該がん登録により得られた情報の活用等を推進するものとする。

第三節 研究の推進等

1項

国 及び地方公共団体は、がんの本態解明、革新的ながんの予防、診断 及び治療に関する方法の開発 その他のがんの罹患率 及びがんによる死亡率の低下に資する事項 並びにがんの治療に伴う副作用、合併症 及び後遺症の予防 及び軽減に関する方法の開発 その他のがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2項

前項の施策を講ずるに当たっては、罹患している者の少ないがん 及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について必要な配慮がなされるものとする。

3項

国 及び地方公共団体は、がん医療を行う上で特に必要性が高い医薬品、医療機器 及び再生医療等製品の早期の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するよう その治験が迅速かつ確実に行われ、並びにがん医療に係る有効な治療方法の開発に係る臨床研究等が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

第四節 がん患者の就労等

1項

国 及び地方公共団体は、がん患者の雇用の継続 又は円滑な就職に資するよう、 事業主に対するがん患者の就労に関する啓発 及び知識の普及 その他の必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、小児がんの患者 その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、 必要な環境の整備 その他の必要な施策を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、民間の団体が行うがん患者の支援に関する活動、がん患者の団体が行う情報交換等の活動等を支援するため、 情報提供 その他の必要な施策を講ずるものとする。

第五節 がんに関する教育の推進

1項

国 及び地方公共団体は、国民が、がんに関する知識 及びがん患者に関する理解を深めることができるよう、 学校教育 及び社会教育におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

第四章 がん対策推進協議会

1項

厚生労働省に、がん対策推進基本計画に関し、第十条第四項同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、がん対策推進協議会以下「協議会」という。)を置く。

1項

協議会は、委員二十人以内で組織する。

2項

協議会の委員は、がん患者 及び その家族 又は遺族を代表する者、がん医療に従事する者 並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。

3項

協議会の委員は、非常勤とする。

4項

前三項に定めるもののほか、 協議会の組織 及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。