森林・林業基本法

昭和三十九年法律第百六十一号
分類 法律
カテゴリ   林業
@ 施行日 : 令和五年五月二十六日 ( 2023年 5月26日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第五十五号による改正
最終編集日 : 2024年 06月11日 17時52分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 森林・林業基本計画

  • 第三章 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

  • 第四章 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

  • 第五章 林産物の供給及び利用の確保に関する施策

  • 第六章 行政機関及び団体

  • 第七章 林政審議会

第一章 総則

1項

この法律は、森林 及び林業に関する施策について、基本理念 及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国 及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、森林 及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もつて国民生活の安定向上 及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。

1項

森林については、その有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能(以下「森林の有する多面的機能」という。)が持続的に発揮されることが国民生活 及び国民経済の安定に欠くことのできないものであることにかんがみ、将来にわたつて、その適正な整備 及び保全が図られなければならない。

2項
森林の適正な整備 及び保全を図るに当たつては、山村において林業生産活動が継続的に行われることが重要であることにかんがみ、定住の促進等による山村の振興が図られるよう配慮されなければならない。
1項
林業については、森林の有する多面的機能の発揮に重要な役割を果たしていることにかんがみ、林業の担い手が確保されるとともに、その生産性の向上が促進され、望ましい林業構造が確立されることにより、その持続的かつ健全な発展が図られなければならない。
2項
林業の持続的かつ健全な発展に当たつては、林産物の適切な供給 及び利用の確保が重要であることにかんがみ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即して林産物が供給されるとともに、森林 及び林業に関する国民の理解を深めつつ、林産物の利用の促進が図られなければならない。
1項

国は、前二条に定める森林 及び林業に関する施策についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのつとり、森林 及び林業に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

1項
国は、基本理念にのつとり、国有林野の管理 及び経営の事業について、国土の保全 その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、及び国有林野の活用によりその所在する地域における産業の振興 又は住民の福祉の向上に寄与することを旨として、その適切かつ効率的な運営を行うものとする。
1項
地方公共団体は、基本理念にのつとり、森林 及び林業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
1項
政府は、森林 及び林業に関する施策を実施するため必要な法制上 及び財政上の措置を講じなければならない。
2項
政府は、森林 及び林業に関する施策を講ずるに当たつては、必要な資金の融通の適正円滑化を図らなければならない。
1項

国 及び地方公共団体は、森林 及び林業に関する施策を講ずるに当たつては、林業従事者、森林 及び林業に関する団体 並びに木材産業 その他の林産物の流通 及び加工の事業(以下「木材産業等」という。)の事業者がする自主的な努力を支援することを旨とするものとする。

1項

森林の所有者 又は森林を使用収益する権原を有する者(以下「森林所有者等」という。)は、基本理念にのつとり、森林の有する多面的機能が確保されることを旨として、その森林の整備 及び保全が図られるように努めなければならない。

1項

政府は、毎年、国会に、森林 及び林業の動向 並びに政府が森林 及び林業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2項

政府は、毎年、前項の報告に係る森林 及び林業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

3項

政府は、前項の講じようとする施策を明らかにした文書を作成するには、林政審議会の意見を聴かなければならない。

第二章 森林・林業基本計画

1項

政府は、森林 及び林業に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、森林・林業基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2項
基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 号
森林 及び林業に関する施策についての基本的な方針
二 号
森林の有する多面的機能の発揮 並びに林産物の供給 及び利用に関する目標
三 号
森林 及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
四 号

前三号に掲げるもののほか、森林 及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3項

前項第二号に掲げる森林の有する多面的機能の発揮 並びに林産物の供給 及び利用に関する目標は、森林の整備 及び保全 並びに林業 及び木材産業等の事業活動 並びに林産物の消費に関する指針として、森林所有者等 その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。

4項
基本計画のうち森林に関する施策に係る部分については、環境の保全に関する国の基本的な計画との調和が保たれたものでなければならない。
5項

政府は、第一項の規定により基本計画を定めようとするときは、林政審議会の意見を聴かなければならない。

6項

政府は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

7項

政府は、森林 及び林業をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに森林 及び林業に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、基本計画を変更するものとする。

8項

第五項 及び第六項の規定は、基本計画の変更について準用する。

第三章 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

1項
国は、森林の適正な整備を推進するため、地域の特性に応じた造林、保育 及び伐採の計画的な推進、これらの森林の施業を効率的に行うための林道の整備、優良種苗の確保 その他必要な施策を講ずるものとする。
2項

前項に定めるもののほか、国は、森林所有者等による計画的かつ一体的な森林の施業の実施が特に重要であることにかんがみ、その実施に不可欠な森林の現況の調査 その他の地域における活動を確保するための支援を行うものとする。

1項

国は、森林の適正な保全を図るため、土地の形質の変更 その他の森林の保全に著しい支障を及ぼすおそれがある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制、災害による土砂の崩壊の防止 及びその復旧のための森林土木事業の推進、森林病害虫の駆除 及びそのまん延の防止 その他必要な施策を講ずるものとする。

1項
国は、森林、林業 並びに林産物の流通 及び加工に関する技術の研究開発 及び普及の効果的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、国、独立行政法人、都道府県 及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、地域の特性に応じた森林 及び林業に関する技術の普及事業の推進 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、森林の適正な整備 及び保全を図るためには、森林所有者等が山村地域に生活することが重要であることにかんがみ、地域特産物の生産 及び販売等を通じた産業の振興による就業機会の増大、生活環境の整備 その他の山村地域における定住の促進に必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、国民、事業者 又はこれらの者の組織する民間の団体が自発的に行う緑化活動 その他の森林の整備 及び保全に関する活動が促進されるように、情報の提供 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、国民の森林 及び林業に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、都市と山村との間の交流の促進、公衆の保健 又は教育のための森林の利用の促進 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、森林の有する多面的機能の持続的な発揮を国際的協調の下で促進することの重要性にかんがみ、森林の整備 及び保全に関する準則等の整備に向けた取組のための国際的な連携、開発途上地域に対する技術協力 及び資金協力 その他の国際協力の推進に努めるものとする。

第四章 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

1項
国は、効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらの林業経営が林業生産の相当部分を担う林業構造を確立するため、地域の特性に応じ、林業経営の規模の拡大、生産方式の合理化、経営管理の合理化、機械の導入 その他林業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、効率的かつ安定的な林業経営を担うべき人材の育成 及び確保を図るため、教育、研究 及び普及の事業の充実 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、林業労働に従事する者の福祉の向上、育成 及び確保を図るため、就業の促進、雇用の安定、労働条件の改善、社会保障の拡充、職業訓練の事業の充実 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、地域の林業における効率的な林業生産の確保に資するため、森林組合 その他の委託を受けて森林の施業 又は経営を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、災害によつて林業の再生産が阻害されることを防止するとともに、林業経営の安定を図るため、災害による損失の合理的な補てん その他必要な施策を講ずるものとする。

第五章 林産物の供給及び利用の確保に関する施策

1項
国は、木材産業等が林産物の供給において果たす役割の重要性にかんがみ、その健全な発展を図るため、事業基盤の強化、林業との連携の推進、流通 及び加工の合理化 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、林産物の適切な利用の促進に資するため、林産物の利用の意義に関する知識の普及 及び情報の提供、林産物の新たな需要の開拓、建物 及び工作物における木材の使用の促進 その他必要な施策を講ずるものとする。
1項
国は、林産物につき、森林の有する多面的機能の持続的な発揮に配慮しつつ適正な輸入を確保するための国際的な連携に努めるとともに、林産物の輸入によつてこれと競争関係にある林産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限 その他必要な施策を講ずるものとする。

第六章 行政機関及び団体

1項
国 及び地方公共団体は、森林 及び林業に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、行政組織の整備 並びに行政運営の効率化 及び透明性の向上に努めるものとする。
1項
国は、基本理念の実現に資することができるように、森林 及び林業に関する団体の効率的な再編整備につき必要な施策を講ずるものとする。

第七章 林政審議会

1項

農林水産省に、林政審議会(以下「審議会」という。)を置く。

1項
審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林水産大臣 又は関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。
2項

審議会は、前項に規定する事項に関し農林水産大臣 又は関係各大臣に意見を述べることができる。

3項

審議会は、前二項に規定するもののほか、森林病害虫等防除法(昭和二十五年法律第五十三号)、国有林野の管理経営に関する法律昭和二十六年法律第二百四十六号)、森林法昭和二十六年法律第二百四十九号)、保安林整備臨時措置法(昭和二十九年法律第八十四号)、宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和三十六年法律第百九十一号)、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法(昭和五十四年法律第五十一号)、森林の保健機能の増進に関する特別措置法(平成元年法律第七十一号)、林業労働力の確保の促進に関する法律(平成八年法律第四十五号)及び中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律(平成二十年法律第三十八号)の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

1項

審議会は、委員三十人以内で組織する。

2項

委員は、前条第一項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、農林水産大臣が任命する。

3項
委員は、非常勤とする。
4項

第二項に定めるもののほか、審議会の職員で政令で定めるものは、農林水産大臣が任命する。

1項
審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。
1項

この法律に定めるもののほか、審議会の組織、所掌事務 及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。