法の適用に関する通則法

平成十八年法律第七十八号
略称 : 法適用通則法 
分類 法律
カテゴリ   憲法
最終編集日 : 2023年 10月02日 14時07分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 法律に関する通則

  • 第三章 準拠法に関する通則

    • 第一節 人
    • 第二節 法律行為
    • 第三節 物権等
    • 第四節 債権
    • 第五節 親族
    • 第六節 相続
    • 第七節 補則

制定に関する表明

法例(明治三十一年法律第十号)の全部を改正する。

第一章 総則

1項

この法律は、法の適用に関する通則について定めるものとする。

第二章 法律に関する通則

1項

法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。


ただし、法律でこれと異なる施行期日を定めたときは、その定めによる。

1項

公の秩序 又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの 又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する。

第三章 準拠法に関する通則

第一節 人

1項

人の行為能力は、その本国法によって定める。

2項

法律行為をした者がその本国法によれば行為能力の制限を受けた者となるときであっても行為地法によれば行為能力者となるべきときは、当該法律行為の当時そのすべての当事者が法を同じくする地に在った場合に限り、当該法律行為をした者は、前項の規定にかかわらず行為能力者とみなす。

3項

前項の規定は、親族法 又は相続法の規定によるべき法律行為 及び行為地と法を異にする地に在る不動産に関する法律行為については、適用しない

1項

裁判所は、成年被後見人、被保佐人 又は被補助人となるべき者が日本に住所 若しくは居所を有するとき 又は日本の国籍を有するときは、日本法により、後見開始、保佐開始 又は補助開始の審判(以下「後見開始の審判等」と総称する。)をすることができる。

1項

裁判所は、不在者が生存していたと認められる最後の時点において、不在者日本に住所を有していたとき 又は日本の国籍を有していたときは、日本法により、失踪の宣告をすることができる。

2項

前項に規定する場合に該当しないときであっても、裁判所は、不在者財産が日本に在るときはその財産についてのみ、不在者に関する法律関係が日本法によるべきとき その他法律関係の性質、当事者の住所 又は国籍 その他の事情に照らして日本に関係があるときはその法律関係についてのみ、日本法により、失踪の宣告をすることができる。

第二節 法律行為

1項

法律行為の成立 及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。

1項

前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立 及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。

2項

前項の場合において、法律行為において特徴的な給付を当事者一方のみが行うものであるときは、その給付を行う当事者の常居所地法(その当事者が当該法律行為に関係する事業所を有する場合にあっては当該事業所の所在地の法、その当事者が当該法律行為に関係する二以上の事業所で法を異にする地に所在するものを有する場合にあってはその主たる事業所の所在地の法)を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

3項

第一項の場合において、不動産を目的物とする法律行為については、前項の規定にかかわらず、その不動産の所在地法を当該法律行為に最も密接な関係がある地の法と推定する。

1項

当事者は、法律行為の成立 及び効力について適用すべき法を変更することができる。


ただし第三者権利を害することとなるときは、その変更をその第三者対抗することができない

1項

法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法(当該法律行為の後に前条の規定による変更がされた場合にあっては、その変更前の法)による。

2項

前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。

3項

法を異にする地に在る者に対してされた意思表示については、前項の規定の適用に当たっては、その通知を発した地を行為地とみなす。

4項

法を異にする地に在る者の間で締結された契約の方式については、前二項の規定は、適用しない


この場合においては、第一項の規定にかかわらず、申込みの通知を発した地の法 又は承諾の通知を発した地の法のいずれかに適合する契約の方式は、有効とする。

5項

前三項の規定は、動産 又は不動産に関する物権 及びその他の登記をすべき権利を設定し 又は処分する法律行為の方式については、適用しない

1項

消費者個人(事業として 又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう。以下この条において同じ。)と事業者法人 その他の社団 又は財団 及び事業として 又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下この条において同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下この条において「消費者契約」という。)の成立 及び効力について第七条 又は第九条の規定による選択 又は変更により適用すべき法が消費者の常居所地法以外の法である場合であっても、消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、当該消費者契約の成立 及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

2項

消費者契約の成立 及び効力について第七条の規定による選択がないときは、第八条の規定にかかわらず、当該消費者契約の成立 及び効力は、消費者の常居所地法による。

3項

消費者契約の成立について第七条の規定により消費者の常居所地法以外の法が選択された場合であっても、当該消費者契約の方式について消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、前条第一項第二項 及び第四項の規定にかかわらず、当該消費者契約の方式に関しその強行規定の定める事項については、専らその強行規定を適用する。

4項

消費者契約の成立について第七条の規定により消費者の常居所地法が選択された場合において、当該消費者契約の方式について消費者が専らその常居所地法によるべき旨の意思を事業者に対し表示したときは、前条第二項 及び第四項の規定にかかわらず、当該消費者契約の方式は、専ら消費者の常居所地法による。

5項

消費者契約の成立について第七条の規定による選択がないときは、前条第一項第二項 及び第四項の規定にかかわらず、当該消費者契約の方式は、消費者の常居所地法による。

6項

前各項の規定は、次のいずれかに該当する場合には、適用しない

一 号

事業者の事業所で消費者契約に関係するものが消費者の常居所地と法を異にする地に所在した場合であって、消費者が当該事業所の所在地と法を同じくする地に赴いて当該消費者契約を締結したとき。


ただし消費者が、当該事業者から、当該事業所の所在地と法を同じくする地において消費者契約を締結することについての勧誘をその常居所地において受けていたときを除く

二 号

事業者の事業所で消費者契約に関係するものが消費者の常居所地と法を異にする地に所在した場合であって、消費者が当該事業所の所在地と法を同じくする地において当該消費者契約に基づく債務の全部の履行を受けたとき、又は受けることとされていたとき。


ただし消費者が、当該事業者から、当該事業所の所在地と法を同じくする地において債務の全部の履行を受けることについての勧誘をその常居所地において受けていたときを除く

三 号

消費者契約の締結の当時、事業者が、消費者の常居所を知らず、かつ、知らなかったことについて相当の理由があるとき。

四 号

消費者契約の締結の当時、事業者が、その相手方消費者でないと誤認し、かつ、誤認したことについて相当の理由があるとき。

1項

労働契約の成立 及び効力について第七条 又は第九条の規定による選択 又は変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立 及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。

2項

前項の規定の適用に当たっては、当該労働契約において労務を提供すべき地の法(その労務を提供すべき地を特定することができない場合にあっては、当該労働者を雇い入れた事業所の所在地の法。次項において同じ。)を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

3項

労働契約の成立 及び効力について第七条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立 及び効力については、第八条第二項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。

第三節 物権等

1項

動産 又は不動産に関する物権 及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。

2項

前項の規定にかかわらず同項に規定する権利の得喪は、その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。

第四節 債権

1項

事務管理 又は不当利得によって生ずる債権の成立 及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。

1項

前条の規定にかかわらず、事務管理 又は不当利得によって生ずる債権の成立 及び効力は、その原因となる事実が発生した当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に関連して事務管理が行われ 又は不当利得が生じたこと その他の事情に照らして、明らかに同条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。

1項

事務管理 又は不当利得の当事者は、その原因となる事実が発生した後において、事務管理 又は不当利得によって生ずる債権の成立 及び効力について適用すべき法を変更することができる。


ただし第三者の権利を害することとなるときは、その変更をその第三者対抗することができない

1項

不法行為によって生ずる債権の成立 及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。


ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。

1項

前条の規定にかかわらず、生産物(生産され 又は加工された物をいう。以下この条において同じ。)で引渡しがされたものの瑕疵により他人の生命、身体 又は財産を侵害する不法行為によって生ずる生産業者生産物を業として生産し、加工し、輸入し、輸出し、流通させ、又は販売した者をいう。以下この条において同じ。)又は生産物にその生産業者と認めることができる表示をした者以下この条において「生産業者等」と総称する。)に対する債権の成立 及び効力は、被害者が生産物の引渡しを受けた地の法による。


ただし、その地における生産物の引渡しが通常予見することのできないものであったときは、生産業者等の主たる事業所の所在地の法(生産業者等が事業所を有しない場合にあっては、その常居所地法)による。

1項

第十七条の規定にかかわらず他人の名誉 又は信用を毀損する不法行為によって生ずる債権の成立 及び効力は、被害者の常居所地法(被害者が法人 その他の社団 又は財団である場合にあっては、その主たる事業所の所在地の法)による。

1項

前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立 及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたこと その他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。

1項

不法行為の当事者は、不法行為の後において、不法行為によって生ずる債権の成立 及び効力について適用すべき法を変更することができる。


ただし第三者権利を害することとなるときは、その変更をその第三者対抗することができない

1項

不法行為について外国法によるべき場合において、当該外国法を適用すべき事実が日本法によれば不法とならないときは、当該外国法に基づく損害賠償 その他の処分の請求は、することができない

2項

不法行為について外国法によるべき場合において、当該外国法を適用すべき事実が当該外国法 及び日本法により不法となるときであっても、被害者は、日本法により認められる損害賠償 その他の処分でなければ請求することができない

1項

債権の譲渡の債務者 その他の第三者に対する効力は、譲渡に係る債権について適用すべき法による。

第五節 親族

1項

婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。

2項

婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。

3項

前項の規定にかかわらず当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。


ただし日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。

1項

婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないとき夫婦に最も密接な関係がある地の法による。

1項

前条の規定は、夫婦財産制について準用する。

2項

前項の規定にかかわらず夫婦が、その署名した書面で日付を記載したものにより、次に掲げる法のうちいずれの法によるべきかを定めたときは、夫婦財産制は、その法による。


この場合において、その定めは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

一 号

夫婦の一方が国籍を有する国の法

二 号
夫婦の一方の常居所地法
三 号

不動産に関する夫婦財産制については、その不動産の所在地法

3項

前二項の規定により外国法を適用すべき夫婦財産制は、日本においてされた法律行為 及び日本に在る財産については、善意の第三者対抗することができない


この場合において、その第三者との間の関係については、夫婦財産制は、日本法による。

4項

前項の規定にかかわらず第一項 又は第二項の規定により適用すべき外国法に基づいてされた夫婦財産契約は、日本においてこれを登記したときは、第三者に対抗することができる。

1項

第二十五条の規定は、離婚について準用する。


ただし夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは、離婚は、日本法による。

1項

夫婦の一方の本国法での出生の当時におけるものによりが嫡出となるべきときは、そのは、嫡出である子とする。

2項

出生前に死亡したときは、その死亡の当時におけるの本国法を前項の本国法とみなす。

1項

嫡出でない子の親子関係の成立は、との間の親子関係についてはの出生の当時におけるの本国法により、との間の親子関係についてはその当時におけるの本国法による。


この場合において、の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその 又は第三者の承諾 又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。

2項

の認知は、前項前段の規定により適用すべき法によるほか、認知の当時における認知する者 又はの本国法による。


この場合において、認知する者の本国法によるときは、同項後段の規定を準用する。

3項

出生前に死亡したときは、その死亡の当時におけるの本国法を第一項の本国法とみなす。


前項に規定する者が認知前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその者の本国法を同項その者の本国法とみなす。

1項

は、準正の要件である事実が完成した当時における 若しくは 又はの本国法により準正が成立するときは、嫡出子の身分を取得する。

2項

前項規定する者が準正の要件である事実の完成前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその者の本国法を同項その者の本国法とみなす。

1項

養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。


この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者 若しくは第三者の承諾 若しくは同意 又は公的機関の許可 その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。

2項

養子とその実方の血族との親族関係の終了 及び離縁は、前項前段の規定により適用すべき法による。

1項

親子間の法律関係は、の本国法が 又はの本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合にはの本国法により、その他の場合にはの常居所地法による。

1項

第二十四条から前条までに規定するもののほか、親族関係 及びこれによって生ずる権利義務は、当事者の本国法によって定める。

1項

第二十五条から前条までに規定する親族関係についての法律行為の方式は、当該法律行為の成立について適用すべき法による。

2項

前項の規定にかかわらず、行為地法に適合する方式は、有効とする。

1項

後見、保佐 又は補助(以下「後見等」と総称する。)は、被後見人、被保佐人 又は被補助人(次項において「被後見人等」と総称する。)の本国法による。

2項

前項の規定にかかわらず外国人が被後見人等である場合であって、次に掲げるときは、後見人、保佐人 又は補助人の選任の審判 その他の後見等に関する審判については、日本法による。

一 号

当該外国人の本国法によればその者について後見等が開始する原因がある場合であって、日本における後見等の事務を行う者がないとき。

二 号

日本において当該外国人について後見開始の審判等があったとき。

第六節 相続

1項

相続は、被相続人の本国法による。

1項

遺言の成立 及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2項

遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

第七節 補則

1項

当事者二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者常居所を有する国がないとき当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。


ただし、その国籍のうちのいずれか日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

2項

当事者の本国法によるべき場合において、当事者国籍を有しないときは、その常居所地法による。


ただし第二十五条第二十六条第一項 及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。

3項

当事者が地域により法を異にする国国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

1項

当事者の常居所地法によるべき場合において、その常居所が知れないときは、その居所地法による。


ただし第二十五条第二十六条第一項 及び第二十七条において準用する場合を含む。)の規定の適用については、この限りでない。

1項

当事者が人的に法を異にする国国籍を有する場合には、そのの規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある法)を当事者の本国法とする。

2項

前項の規定は、当事者の常居所地が人的に法を異にする場合における当事者の常居所地法で第二十五条第二十六条第一項 及び第二十七条において準用する場合を含む。)、第二十六条第二項第二号第三十二条 又は第三十八条第二項の規定により適用されるもの 及び夫婦に最も密接な関係がある地が人的に法を異にする場合における夫婦に最も密接な関係がある地の法について準用する。

1項

当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。


ただし第二十五条第二十六条第一項 及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者本国法によるべき場合は、この限りでない。

1項

外国法によるべき場合において、その規定の適用が公の秩序 又は善良の風俗に反するときは、これを適用しない

1項

この章の規定は、夫婦、親子 その他の親族関係から生ずる扶養の義務については、適用しない


ただし第三十九条本文の規定の適用については、この限りでない。

2項

この章の規定は、遺言の方式については、適用しない


ただし第三十八条第二項本文、第三十九条本文 及び第四十条の規定の適用については、この限りでない。