消防は、その施設 及び人員を活用して、国民の生命、身体 及び財産を火災から保護するとともに、水火災 又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことを任務とする。
第一章 総則
第二章 国の行政機関
国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、総務省の外局として消防庁を置く。
消防庁は、前項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
消防に関する市街地の等級化に関する事項(都道府県の所掌に係るものを除く。)
消防職員(消防吏員 その他の職員をいう。以下同じ。)及び消防団員の教養訓練の基準に関する事項
防災計画に基づく消防に関する計画(第二十九条において「消防計画」という。)の基準に関する事項
災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)、大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成十四年法律第九十二号)、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成十六年法律第二十七号)及び首都直下地震対策特別措置法(平成二十五年法律第八十八号)に基づく地方公共団体の事務に関する国と地方公共団体 及び地方公共団体相互間の連絡に関する事項
石油コンビナート等災害防止法(昭和五十年法律第八十四号)第二条第二号に規定する石油コンビナート等特別防災区域に係る災害の発生 及び拡大の防止 並びに災害の復旧に関する事項
国際緊急援助隊の派遣に関する法律(昭和六十二年法律第九十三号)に基づく国際緊急援助活動に関する事項
武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)に基づく住民の避難、安否情報、武力攻撃災害が発生した場合等の消防に関する指示等に関する事項 並びに同法に基づく地方公共団体の事務に関する国と地方公共団体 及び地方公共団体相互間の連絡調整に関する事項
前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき消防庁に属させられた事項
消防庁に、政令で定めるところにより、国 及び都道府県の消防の事務に従事する職員 又は市町村の消防職員 及び消防団員に対し、幹部として必要な教育訓練を行い、あわせて消防学校 又は消防職員 及び消防団員の訓練機関の行う教育訓練の内容 及び方法に関する技術的援助をつかさどる教育訓練機関を置くことができる。
第三章 地方公共団体の機関
消防職員の定員は、条例で定める。
ただし、臨時 又は非常勤の職については、この限りでない。
消防長は、市町村長が任命し、消防長以外の消防職員は、市町村長の承認を得て消防長が任命する。
市町村が前項の条例を定めるに当たつては、同項に規定する者の資格の基準として政令で定める基準を参酌するものとする。
消防職員に関する任用、給与、分限 及び懲戒、服務 その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の定めるところによる。
委員長は消防長に準ずる職のうち市町村の規則で定めるものにある消防職員のうちから消防長が指名する者をもつて充て、委員は消防職員(委員長として指名された消防職員 及び消防長を除く。)のうちから消防長が指名する。
前三項に規定するもののほか、消防職員委員会の組織 及び運営に関し必要な事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定める。
消防本部を置く市町村においては、消防団は、消防長 又は消防署長の所轄の下に行動するものとし、消防長 又は消防署長の命令があるときは、その区域外においても行動することができる。
消防団長は、消防団の推薦に基づき市町村長が任命し、消防団長以外の消防団員は、市町村長の承認を得て消防団長が任命する。
消防団員に関する任用、給与、分限 及び懲戒、服務 その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、常勤の消防団員については地方公務員法の定めるところにより、非常勤の消防団員については条例で定める。
消防団員で非常勤のものが公務により死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は公務による負傷 若しくは疾病により死亡し、若しくは障害の状態となつた場合においては、市町村は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、その消防団員 又はその者の遺族がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。
前項の場合においては、市町村は、当該消防団員で非常勤のもの 又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業を行うように努めなければならない。
消防団員で非常勤のものが退職した場合においては、市町村は、条例で定めるところにより、その者(死亡による退職の場合には、その者の遺族)に退職報償金を支給しなければならない。
特別区の存する区域においては、特別区が連合してその区域内における第六条に規定する責任を有する。
前条の特別区の消防は、都知事がこれを管理する。
前二条に規定するもののほか、特別区の存する区域における消防については、特別区の存する区域を一の市とみなして、市町村の消防に関する規定を準用する。
消防に関する市街地の等級化に関する事項(消防庁長官が指定する市に係るものを除く。)
前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づきその権限に属する事項
前条に規定するもののほか、都道府県は、その区域内の市町村の長の要請に応じ、航空機を用いて、当該市町村の消防を支援することができる。
都道府県知事 及び市町村長は、前項の規定に基づく市町村の消防の支援に関して協定することができる。
都道府県知事は、第一項の規定に基づく市町村の消防の支援のため、都道府県の規則で定めるところにより、航空消防隊を設けるものとする。
第四章 市町村の消防の広域化
市町村の消防の広域化(二以上の市町村が消防事務(消防団の事務を除く。以下この条において同じ。)を共同して処理することとすること 又は市町村が他の市町村に消防事務を委託することをいう。以下この章において同じ。)は、消防の体制の整備 及び確立を図ることを旨として、行われなければならない。
消防庁長官は、自主的な市町村の消防の広域化を推進するとともに市町村の消防の広域化が行われた後の消防(以下「広域化後の消防」という。)の円滑な運営を確保するための基本的な指針(次項 及び次条第一項において「基本指針」という。)を定めるものとする。
次条第二項第三号 及び第四号に掲げる事項に関する基準
都道府県は、基本指針に基づき、当該都道府県の区域内において自主的な市町村の消防の広域化を推進する必要があると認める場合には、その市町村を対象として、当該都道府県における自主的な市町村の消防の広域化の推進 及び広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する計画(以下この条において「推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
前号の現況 及び将来の見通しを勘案して、推進する必要があると認める自主的な市町村の消防の広域化の対象となる市町村(以下「広域化対象市町村」という。)の組合せ
前号の組合せに基づく自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置に関する事項
都道府県は、推進計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係市町村の意見を聴かなければならない。
都道府県知事は、広域化対象市町村の全部 又は一部から求めがあつたときは、市町村相互間における必要な調整を行うものとする。
広域化対象市町村は、市町村の消防の広域化を行おうとするときは、その協議により、広域化後の消防の円滑な運営を確保するための計画(以下 この条 及び次条第二項において「広域消防運営計画」という。)を作成するものとする。
広域化対象市町村が、広域消防運営計画を作成するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二の二第一項の規定により協議会を設ける場合にあつては、当該協議会には、同法第二百五十二条の三第二項の規定にかかわらず、規約の定めるところにより、関係市町村の議会の議員 又は学識経験を有する者を当該協議会の会長 又は委員として加えることができる。
国は、都道府県 及び市町村に対し、自主的な市町村の消防の広域化を推進するため、この法律に定めるもののほか、情報の提供 その他の必要な援助を行うものとする。
広域化対象市町村が第三十三条第二項第三号の組合せに基づき市町村の消防の広域化を行つた場合において、当該広域化対象市町村が広域消防運営計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情 及び当該広域化対象市町村の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
第五章 各機関相互間の関係等
都道府県知事は、必要に応じ、消防に関する事項について市町村に対して勧告し、指導し、又は助言を与えることができる。
この場合における勧告、指導 及び助言は、消防庁長官の行う勧告、指導 及び助言の趣旨に沿うものでなければならない。
消防 及び警察は、国民の生命、身体 及び財産の保護のために相互に協力をしなければならない。
消防庁、警察庁、都道府県警察、都道府県知事、市町村長 及び水防法に規定する水防管理者は、相互間において、地震、台風、水火災等の非常事態の場合における災害の防御の措置に関しあらかじめ協定することができる。
これらの災害に際して消防が警察を応援する場合は、運営管理は警察がこれを留保し、消防職員は、警察権を行使してはならない。
これらの災害に際して警察が消防を応援する場合は、災害区域内の消防に関係のある警察の指揮は、消防が行う。
都道府県知事は、地震、台風、水火災等の非常事態の場合において、緊急の必要があるときは、市町村長、市町村の消防長 又は水防法に規定する水防管理者に対して、前条第二項の規定による協定の実施 その他災害の防御の措置に関し、必要な指示をすることができる。
この場合における指示は、消防庁長官の行う勧告、指導 及び助言の趣旨に沿うものでなければならない。
消防庁長官は、地震、台風、水火災等の非常事態の場合において、これらの災害が発生した市町村(以下 この条から 第四十四条の三までにおいて「災害発生市町村」という。)の消防の応援 又は支援(以下「消防の応援等」という。)に関し、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事から要請があり、かつ、必要があると認めるときは、当該都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該災害発生市町村の消防の応援等のため必要な措置をとることを求めることができる。
消防庁長官は、前項に規定する場合において、当該災害の規模等に照らし緊急を要し、同項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、緊急に消防の応援等を必要とすると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該必要な措置をとることを求めることができる。
この場合において、消防庁長官は、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
都道府県知事は、前二項の規定による消防庁長官の求めに応じ当該必要な措置をとる場合において、必要があると認めるときは、その区域内の市町村の長に対し、消防機関(第九条に規定する機関をいう。以下同じ。)の職員の応援出動等の措置をとることを求めることができる。
消防庁長官は、第一項 又は第二項の場合において、人命の救助等のために特に緊急を要し、かつ、広域的に消防機関の職員の応援出動等の措置を的確かつ迅速にとる必要があると認められるときは、緊急に当該応援出動等の措置を必要とすると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村以外の市町村の長に対し、当該応援出動等の措置をとることを自ら求めることができる。
この場合において、消防庁長官は、第一項の場合にあつては当該応援出動等の措置をとることを求めた市町村の属する都道府県の知事に対し、第二項の場合にあつては当該都道府県の知事 及び当該災害発生市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
消防庁長官は、第一項、第二項 又は前項に規定する場合において、大規模地震対策特別措置法第三条第一項に規定する地震防災対策強化地域に係る著しい地震災害 その他の大規模な災害 又は毒性物質の発散 その他の政令で定める原因により生ずる特殊な災害に対処するために特別の必要があると認められるときは、当該特別の必要があると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事 又は当該都道府県内の市町村の長に対し、第四十五条第一項に規定する緊急消防援助隊(以下 この条から 第四十四条の三までにおいて「緊急消防援助隊」という。)の出動のため必要な措置をとることを指示することができる。
この場合において、消防庁長官は、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事 及び当該出動のため必要な措置をとることを指示した市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
都道府県知事は、前項の規定による消防庁長官の指示に基づき、その区域内の市町村の長に対し、緊急消防援助隊の出動の措置をとることを指示することができる。
前各項の規定は、大規模地震対策特別措置法第二条第十三号の警戒宣言が発せられた場合に準用する。
消防庁長官は、第一項、第二項 若しくは第四項 又は第五項の規定により、災害発生市町村のため、当該災害発生市町村以外の災害発生市町村において既に行動している緊急消防援助隊の出動のため必要な措置をとることを求め又は指示するときは、あらかじめ、当該緊急消防援助隊が行動している災害発生市町村(以下 この項 及び第四十四条の三第一項において「緊急消防援助隊行動市町村」という。)の長 及び当該緊急消防援助隊行動市町村の属する都道府県の知事の意見を聴くものとする。
ただし、当該災害の規模等に照らし緊急を要し、あらかじめ、意見を聴くいとまがないと認められるときは、この限りでない。
一の都道府県の区域内において災害発生市町村が二以上ある場合において、緊急消防援助隊が消防の応援等のため出動したときは、当該都道府県の知事は、消防応援活動調整本部(以下 この条 及び次条第二項において「調整本部」という。)を設置するものとする。
前号に掲げる事務を円滑に実施するための関係機関との連絡に関すること。
調整本部の長は、消防応援活動調整本部長(以下この条において「調整本部長」という。)とし、都道府県知事をもつて充てる。
当該都道府県の知事がその部内の職員のうちから任命する者
当該都道府県の区域内の災害発生市町村に出動した緊急消防援助隊の隊員のうちから都道府県知事が任命する者
調整本部に副本部長を置き、前項の本部員のうちから、都道府県知事が指名する。
都道府県知事は、前条第一項に規定する場合において、緊急消防援助隊行動市町村以外の災害発生市町村の消防の応援等に関し緊急の必要があると認めるときは、当該緊急消防援助隊行動市町村以外の災害発生市町村のため、緊急消防援助隊行動市町村において行動している緊急消防援助隊に対し、出動することを指示することができる。
都道府県知事は、前項の規定による指示をするときは、あらかじめ、調整本部の意見を聴くものとする。
ただし、当該災害の規模等に照らし緊急を要し、あらかじめ、調整本部の意見を聴くいとまがないと認められるときは、この限りでない。
都道府県知事は、第一項の規定による指示をした場合には、消防庁長官に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
前項の規定により通知を受けた消防庁長官は、当該緊急消防援助隊として活動する人員が都道府県に属する場合にあつては当該都道府県の知事に対し、当該緊急消防援助隊として活動する人員が市町村に属する場合にあつては当該市町村の属する都道府県の知事を通じて当該市町村の長に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
緊急消防援助隊とは、第四十四条第一項、第二項 若しくは第四項の規定による求めに応じ、又は同条第五項の規定による指示に基づき、消防の応援等を行うことを任務として、都道府県 又は市町村に属する消防に関する人員 及び施設により構成される部隊をいう。
総務大臣は、緊急消防援助隊の出動に関する措置を的確かつ迅速に行うため、緊急消防援助隊の編成 及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画を策定し、公表するものとする。
これを変更したときも、同様とする。
総務大臣は、前項の計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ財務大臣と協議するものとする。
消防庁長官は、第二項の計画に照らして必要があると認めるときは、都道府県知事 又は市町村長に対し、前項の登録について協力を求めることができる。
消防機関の職員がその属する市町村以外の市町村の消防の応援のため出動した場合においては、当該職員は、応援を受けた市町村の長の指揮の下に行動するものとする。
前項の規定は、緊急消防援助隊の隊員の属する市町村の長が、第四十四条第一項、第二項 若しくは第四項の規定による求めに応じ、又は同条第五項の規定による指示に基づき、当該隊員の属する緊急消防援助隊に対し当該隊員の属する緊急消防援助隊が行動している市町村以外の市町村の消防の応援のため出動を命ずることを妨げるものではない。
第四十四条第五項に基づく指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動(当該緊急消防援助隊が第四十四条の三第一項の規定による指示を受けて出動した場合の活動を含む。)により増加し、又は新たに必要となる消防に要する費用のうち当該緊急消防援助隊の隊員の特殊勤務手当 及び時間外勤務手当 その他の政令で定める経費は、政令で定めるところにより、国が負担する。
緊急消防援助隊に係る第四十五条第二項の計画に基づいて整備される施設であつて政令で定めるものに要する経費は、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、国が補助するものとする。
前項に定めるもののほか、市町村の消防に要する費用に対する補助金に関しては、法律でこれを定める。
総務大臣 又は その委任を受けた者は、緊急消防援助隊の活動に必要があるときは、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第十九条において準用する同法第二十二条 及び財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第九条第一項の規定にかかわらず、その所掌事務に支障を生じない限度において、その所管に属する消防用の国有財産(国有財産法第二条第一項に規定する国有財産をいう。)又は国有の物品を、当該緊急消防援助隊として活動する人員の属する都道府県 又は市町村に対し、無償で使用させることができる。
都道府県は、財政上の事情 その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に 又は共同して、消防職員 及び消防団員の教育訓練を行うために消防学校を設置しなければならない。
地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)は、単独に 又は都道府県と共同して、消防職員 及び消防団員の教育訓練を行うために消防学校を設置することができる。
前項の規定により消防学校を設置する指定都市以外の市 及び町村は、消防職員 及び消防団員の訓練を行うために訓練機関を設置することができる。