この法律は、滞納処分と強制執行、仮差押えの執行 又は担保権の実行としての競売(以下単に「競売」という。)との手続の調整を図るため、これらの手続に関する規定の特例を定めるものとする。
滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律
第一章 総則
この法律において「滞納処分」とは、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分 及びその例による滞納処分をいう。
この法律において「徴収職員等」とは、徴収職員、徴税吏員 その他滞納処分を執行する権限を有する者をいう。
この法律において「動産」とは民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百二十二条第一項に規定する動産をいい、「不動産」とは同法第四十三条第一項に規定する不動産(同条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。)をいい、「船舶」とは同法第百十二条に規定する船舶をいい、「航空機」とは航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第五条に規定する新規登録がされた飛行機 及び回転翼航空機をいい、「自動車」とは道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第十三条第一項に規定する登録自動車(自動車抵当法(昭和二十六年法律第百八十七号)第二条ただし書に規定する大型特殊自動車を除く。)をいい、「建設機械」とは建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)第三条第一項の登記がされた建設機械をいい、「小型船舶」とは小型船舶の登録等に関する法律(平成十三年法律第百二号)第九条第一項に規定する登録小型船舶をいい、「債権」とは民事執行法第百四十三条に規定する債権をいい、「その他の財産権」とは動産、不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、小型船舶 及び債権以外の財産権をいう。
第二章 滞納処分による差押えがされている財産に対する強制執行等
第一節 動産に対する強制執行等
執行官は、前項の規定による差押をしたときは、その旨を債務者に通知しなければならない。
滞納処分による差押え後に強制執行による差押えをした動産については、入札、競り売り その他強制執行による売却のための手続は、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、することができない。
ただし、強制執行続行の決定があつたときは、この限りでない。
前条の動産について滞納処分による差押えを解除すべきときは、徴収職員等は、その動産を執行官に引き渡さなければならない。
ただし、滞納処分による差押えの際債権者 及び債務者以外の第三者が占有していた動産で、その者が執行官に引き渡すことを拒んだものについては、この限りでない。
前項ただし書の動産について滞納処分による差押えが解除されたときは、強制執行による差押えは、その効力を失う。
ただし、その動産について滞納処分による参加差押えがされているときは、この限りでない。
前条の動産について滞納処分による差押えを解除すべき場合において、その動産について強制執行による差押え前に滞納処分による参加差押えがされているときは、その参加差押えに係る滞納処分による差押えの効力の発生は、この法律の適用については、強制執行による差押えの時以前にさかのぼらないものとする。
ただし、第一項ただし書の動産については、この限りでない。
第一項ただし書の動産について強制執行による差押え後に滞納処分による参加差押えがされているときは、強制執行による差押えは、この法律の適用については、その参加差押えに係る滞納処分による差押え後にされたものとみなす。
第四条の動産の滞納処分による売却代金 又は有価証券の取立金について滞納者に交付すべき残余が生じたときは、徴収職員等は、これを執行官に交付しなければならない。
前項の規定により執行官が交付を受けた金銭 及びその交付を受けた時は、配当 又は弁済金の交付(以下「配当等」という。)に関しては、それぞれ動産の強制執行による売得金 及び売得金の交付を受けた時とみなす。
第一項の売却代金 又は取立金の残余が生じなかつたときは、徴収職員等は、その旨を執行官に通知しなければならない。
第四条の動産に対する強制執行による差押えの取消しは、執行官が差押えを取り消す旨の書面を徴収職員等に交付することによつてする。
差押債権者 又は民事執行法第百二十五条第三項前段の規定により配当要求の効力が生じた申立てに係る債権者は、次の場合には、第四条の動産について、執行裁判所に強制執行続行の決定を申請することができる。
国税徴収法第百五十九条第一項、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第三十八条第三項 又は地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十六条の四第一項(同条第十二項において準用する場合を含む。)の規定による差押(その例による差押を含む。)がされているとき。
前二号の場合を除き、相当期間内に公売 その他滞納処分による売却がされないとき。
裁判所は、前条の申請があつた場合において、相当と認めるときは、強制執行を続行する旨の決定をしなければならない。
強制執行続行の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第五条第一項の規定は、強制執行続行の決定があつた場合に準用する。
強制執行続行の決定があつたときは、徴収職員等は、滞納処分による差押えに係る国税 及びその滞納処分費 並びに地方税 その他の徴収金(以下「差押え国税等」という。)を徴収するには、執行官にその交付を求めなければならない。
国税徴収法第十二条 又は地方税法第十四条の六の規定は、前項の規定による交付の要求があつた場合についても適用があるものとする。
第三条、第五条第一項 及び第二項、第六条第一項 及び第三項 並びに第七条の規定は、滞納処分による差押えがされている動産に対する仮差押えの執行に関して準用する。
ただし、第五条第一項本文の規定は、その動産で仮差押えの執行がされているものについて滞納処分による参加差押えがされているときは、この限りでない。
第五条第四項の規定は、前項の動産で仮差押えの執行後に滞納処分による参加差押えがされているものに関して準用する。
第一項において準用する第六条第一項の規定により執行官が交付を受けた金銭は、仮差押えの執行がされている動産を他の債権のための強制執行により売却した場合における売得金とみなす。
第三条、第四条、第五条第一項本文 及び第三項本文 並びに第六条から第十条までの規定は、滞納処分による差押えがされている動産を目的とする競売について準用する。
第二節 不動産又は船舶等に対する強制執行等
滞納処分による差押えがされている不動産に対し強制競売の開始決定があつたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。
滞納処分による差押え後に強制競売の開始決定をした不動産については、民事執行法第四十九条の規定による手続 その他売却のための手続は、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、することができない。
ただし、強制執行続行の決定があつたときは、この限りでない。
第五条第三項本文の規定は、前項の不動産に関して準用する。
徴収職員等は、前条第一項の不動産について滞納処分による差押を解除したときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
第十三条第一項の不動産について、強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。
登記官は、第十三条第一項の不動産について公売処分による権利移転の登記をしたときは、強制競売に係る差押えの登記をまつ消しなければならない。
第六条、第八条、第九条 並びに第十条第一項、第三項 及び第四項の規定は、第十三条第一項の不動産に関して準用する。
この場合において、
第六条 及び第十条第三項中
「執行官」とあるのは
「裁判所」と、
第六条第二項中
「売得金の交付を受けた時」とあるのは
「配当要求の終期」と
読み替えるものとする。
第十二条 及び第十五条の規定は、滞納処分による差押えがされている不動産に対する仮差押えの執行に関して準用する。
滞納処分による差押後に仮差押の執行をした不動産の滞納処分による売却代金について滞納者に交付すべき残余を生じたときは、徴収職員等は、これをその不動産に対する強制執行について管轄権を有する裁判所に交付しなければならない。
前項の規定により裁判所が交付を受けた金銭は、仮差押の執行がされている不動産を他の債権のための強制競売により売却した場合における売却代金とみなす。
第十二条から前条までの規定は、滞納処分による差押がされている船舶で登記されるものに対する強制執行 又は仮差押の執行に関して準用する。
第十二条から第十七条までの規定は、滞納処分による差押えがされている不動産 又は船舶を目的とする競売に関して準用する。
前項の場合における滞納処分と強制執行、仮差押えの執行 又は競売との手続の調整について必要な事項は、この節の定めるところに準じて、政令で定める。
ただし、強制執行、仮差押えの執行 及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。
第三節 債権又はその他の財産権に対する強制執行等
滞納処分による差押えがされている債権に対し強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所 又は差押処分をした裁判所書記官がその滞納処分を知つたときは、差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官 又は差押処分をした裁判所書記官は、差押命令 又は差押処分が発せられた旨を徴収職員等に通知しなければならない。
ただし、第二十条の六第三項の規定による通知があつたときは、この限りでない。
債権の一部について滞納処分による差押えがされている場合において、その残余の部分を超えて強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられたときは、強制執行による差押えの効力は、その債権の全部に及ぶ。
債権の全部について滞納処分による差押えがされている場合において、その債権の一部について強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられたときの強制執行による差押えの効力も、同様とする。
滞納処分による差押えがされている債権に対し強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられたときは、強制執行による差押えをした債権者は、差押えに係る債権のうち滞納処分による差押えがされている部分については、滞納処分による差押えが解除された後でなければ、取立て 又は民事執行法第百六十三条第一項の規定による請求をすることができない。
第三債務者は、滞納処分による差押えがされている金銭の支払を目的とする債権(以下「金銭債権」という。)について強制執行による差押命令 又は差押処分の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を徴収職員等に届け出なければならない。
徴収職員等は、前項の規定による事情の届出を受けたときは、その旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。
前条第一項の規定による供託がされた場合においては、差押命令を発した執行裁判所 又は差押処分をした裁判所書記官は、供託された金銭のうち、滞納処分による差押えがされた金銭債権の額に相当する部分については次条第一項において準用する第六条第一項の規定により払渡金の残余が交付され、又は滞納処分による差押えが解除されたときに、その余の部分については供託されたときに配当等を実施しなければならない。
前項の場合において、民事執行法第百六十五条(同法第百六十七条の十四第一項において同法第百六十五条(第三号 及び第四号を除く。)の規定を準用する場合を含む。以下 この項において同じ。)の規定の適用については、
同条第一号中
「第百五十六条第一項から第三項まで」とあるのは、
「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(昭和三十二年法律第九十四号)第二十条の六第一項」と
する。
次条第一項において準用する第六条第一項の規定による取立金 又は売却代金の残余の交付 及びその交付を受けた時は、配当等に関しては、それぞれ債権の強制執行による売却命令による売却 及び売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時とみなす。
第六条第一項 及び第三項、第八条、第九条、第十条第一項、第十四条 並びに第十五条の規定は滞納処分による差押え後に強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられた債権(以下この条において「差押え競合債権」という。)について、第五条第一項本文(第十条第二項において準用する場合を含む。)の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするものについて、第十三条第一項の規定は差押え競合債権で条件付 若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ること その他の事由によりその取立てが困難であるもの(以下この条において「差押え競合の条件付等債権」という。)について、第十条第三項 及び第四項の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするもの及び差押え競合の条件付等債権で動産の引渡しを目的としないものについて、第十六条の規定は差押え競合債権で民事執行法第百五十条に規定するものについて準用する。
この場合において、
第六条第一項中
「売却代金 又は有価証券の取立金」とあるのは
「第三債務者からの取立金 若しくは第二十条の六第一項の規定により供託された金銭の払渡金 又は売却代金」と、
第六条第一項 及び第三項 並びに第十条第三項中
「執行官」とあるのは
「執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)」と、
第六条第三項中
「売却代金 又は取立金」とあるのは
「取立金 若しくは払渡金 又は売却代金」と、
第十四条中
「滞納処分による差押を」とあるのは
「、第二十条の三第二項本文の規定による通知 又は第二十条の六第二項の規定による事情の届出があつた場合において、滞納処分による差押えを」と、
「裁判所」とあるのは
「裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)」と、
第十五条中
「強制競売の申立てが」とあるのは
「第二十条の三第二項本文 又は第二十条の六第三項の規定による通知があつた場合において、強制執行による差押命令 又は差押処分の申立てが」と、
「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは
「差押命令 若しくは差押処分を取り消す決定 又は差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、
「裁判所書記官」とあるのは
「差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官 又は差押処分をした裁判所書記官」と
読み替えるものとする。
前項において準用する第九条第一項の規定による強制執行続行の決定があつたときは、滞納処分による差押えについては、第三十六条の三第二項本文の規定による通知があつたものとみなす。
第十五条、第十八条第二項、第二十条の三、第二十条の四 及び第二十条の六の規定は、滞納処分による差押えがされている債権に対する仮差押えの執行について準用する。
この場合において、
第十五条中
「強制競売の申立てが」とあるのは
「第二十条の九第一項において準用する第二十条の三第二項本文 又は第二十条の六第三項の規定による通知があつた場合において、仮差押えの執行の申立てが」と、
「強制競売の手続」とあるのは
「仮差押えの執行」と、
第十八条第二項中
「売却代金」とあるのは
「第三債務者からの取立金 若しくは第二十条の九第一項において準用する第二十条の六第一項の規定により供託された金銭の払渡金 又は売却代金」と
読み替えるものとする。
第二十条の七第三項の規定は、前項において準用する第十八条第二項の規定により取立金 若しくは払渡金 又は売却代金の残余が交付された場合について準用する。
第二十条の三から第二十条の八までの規定は、滞納処分による差押えがされている債権を目的とする担保権の実行 又は行使について準用する。
滞納処分による差押えがされているその他の財産権に対する強制執行、仮差押えの執行 又は担保権の実行については、特別の定めがあるもののほか、滞納処分による差押えがされている債権に対する強制執行、仮差押えの執行 又は担保権の実行の例による。
第五条第三項本文(第十一条の二において準用する場合を含む。)の規定は電話加入権について、第十六条(第二十条において準用する場合を含む。)の規定は その他の財産権で権利の移転について登記 又は登録を要するものについて準用する。
第三章 強制執行等がされている財産に対する滞納処分
第一節 動産に対する滞納処分
徴収職員等は、前項の規定による差押をしたときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。
強制執行による差押え後に滞納処分による差押えをした動産については、公売 その他滞納処分による売却のための手続は、強制執行による差押えが取り消された後でなければ、することができない。
ただし、滞納処分続行承認の決定があつたときは、この限りでない。
前条の動産について強制執行による差押えを取り消すべきときは、執行官は、その動産を徴収職員等に引き渡さなければならない。
第二十二条の動産に対する滞納処分による差押えの解除は、徴収職員等が差押えを解除する旨の書面を執行官に交付することによつてする。
第二十二条の動産について強制執行が中止 又は停止されたときは、徴収職員等は、執行裁判所に滞納処分続行承認の決定を請求することができる。
裁判所は、前条の請求があつた場合において、相当と認めるときは、滞納処分の続行を承認する旨の決定をしなければならない。
滞納処分続行承認の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二十三条の規定は、滞納処分続行承認の決定があつた場合に準用する。
第五条第一項本文、第六条第一項 及び第三項、第七条 並びに第十一条第三項の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした動産に関して準用する。
第二十一条から第二十七条までの規定は、競売による差押えがされている動産に対する滞納処分について準用する。
第二節 不動産又は船舶等に対する滞納処分
徴収職員等は、強制競売の開始決定があつた不動産に対し滞納処分による差押えをしたときは、その旨を執行裁判所に通知しなければならない。
強制競売の開始決定後に滞納処分による差押えをした不動産については、公売 その他滞納処分による売却のための手続は、強制競売の申立てが取り下げられた後 又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じた後でなければ、することができない。
ただし、滞納処分続行承認の決定があつたときは、この限りでない。
前条の不動産について、強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。
登記官は、第三十条の不動産について強制競売による権利移転の登記をしたときは、滞納処分に関する差押 及び参加差押の登記をまつ消しなければならない。
第二十五条、第二十六条第一項 及び第三項 並びに第二十七条第一項の規定は、第三十条の不動産に関して準用する。
民事執行法第八十七条第三項、第九十一条第一項第六号 及び第九十二条の規定は、強制執行による差押えの登記後滞納処分による差押えの登記前に登記された同法第八十七条第一項第四号に規定する権利の存する不動産について前項において準用する第二十六条第一項の規定による滞納処分続行承認の決定があつた場合の滞納処分に関して準用する。
この場合において、
同法第九十一条第一項中
「裁判所書記官」とあり、
及び同法第九十二条中
「執行裁判所」とあるのは、
「徴収職員等」と
読み替えるものとする。
第十八条第二項 及び第三項 並びに第三十一条の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした不動産に関して準用する。
民事執行法第八十七条第二項、第九十一条第一項第六号 及び第九十二条の規定は、仮差押えの登記後滞納処分による差押えの登記前に登記された同法第八十七条第一項第四号に規定する権利の存する不動産に対する滞納処分に関して準用する。
この場合において、
同法第九十一条第一項中
「裁判所書記官」とあり、
及び同法第九十二条中
「執行裁判所」とあるのは、
「徴収職員等」と
読み替えるものとする。
第二十九条から前条までの規定は、強制執行 又は仮差押の執行がされている船舶で登記されるものに対する滞納処分に関して準用する。
第二十九条から第三十三条までの規定は、競売の開始決定があつた不動産 又は船舶に対する滞納処分に関して準用する。
第二十条の二第二項の規定は、前項の場合 及び仮差押えの執行がされている航空機、自動車、建設機械 又は小型船舶に対して滞納処分による差押えがされた場合における滞納処分と強制執行、仮差押えの執行 又は競売との手続の調整について準用する。
第三節 債権又はその他の財産権に対する滞納処分
徴収職員等は、強制執行による差押えがされている債権に対して滞納処分による差押えをした場合において、その強制執行を知つたときは、滞納処分による差押えをした旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。
ただし、第三十六条の六第三項の規定による通知があつたときは、この限りでない。
強制執行による転付命令 又は譲渡命令(以下「転付命令等」という。)が第三債務者に送達される時までに転付命令等に係る債権について滞納処分による差押えがされたときは、転付命令等は、その効力を生じない。
第三債務者は、強制執行による差押えをした債権者が提起した次条に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、その差押えがされている金銭債権について滞納処分による差押えがされたときは、その債権の全額(強制執行による差押えの前に他の滞納処分による差押えがされているときは、その滞納処分による差押えがされた部分を差し引いた残額)に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に届け出なければならない。
前項の規定による事情の届出があつたときは、執行裁判所の裁判所書記官 又は差押処分をした裁判所書記官は、その旨を徴収職員等に通知しなければならない。
第一項の規定により供託された金銭については、徴収職員等は、強制執行による差押命令 若しくは差押処分の申立てが取り下げられた後 又は差押命令 若しくは差押処分を取り消す決定 若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分が効力を生じた後でなければ、払渡しを受けることができない。
民事執行法第百五十七条(同法第百六十七条の十四第一項において準用する場合を含む。以下 この条、第三十六条の九 及び第三十六条の十第一項において同じ。)の規定は、強制執行による差押えがされている金銭債権について滞納処分による差押えがされた場合において、強制執行 又は滞納処分による差押えをした債権者が差押えをした債権に係る給付を求める訴えを提起したときについて準用する。
この場合において、
同法第百五十七条第一項中
「訴状」とあるのは
「強制執行による差押えをした債権者の訴状 又はその者の共同訴訟人としての参加の申出の書面」と、
同条第四項中
「前条第二項 又は第三項」とあるのは
「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第三十六条の六第一項」と
読み替えるものとする。
強制執行による差押えがされている動産の引渡しを目的とする債権に対し滞納処分による差押えがされたときは、徴収職員等は、強制執行による差押命令の申立てが取り下げられた後 又は差押命令を取り消す決定が効力を生じた後でなければ、その債権の取立てをすることができない。
第三十六条の六第一項の規定 又は第三十六条の七において準用する民事執行法第百五十七条第五項の規定による供託 及び滞納処分による差押えをした債権者が提起した第三十六条の七に規定する訴えにおいて強制執行による差押えをした債権者が提出した共同訴訟人としての参加の申出の書面は、配当等に関しては、それぞれ同法第百五十六条第二項(同法第百六十七条の十四第一項において準用する場合を含む。)の規定による供託 及び同法第百五十七条第一項に規定する訴えの訴状とみなす。
第三十六条の六第一項の規定 又は第三十六条の七において準用する民事執行法第百五十七条第五項の規定により供託された金銭について執行裁判所が配当等を実施し、又は裁判所書記官が弁済金の交付を実施する場合においては、配当期日 若しくは弁済金の交付の日までにされた第三十六条の三第二項本文の規定による通知 又は第三十六条の六第二項の規定による事情の届出に係る差押え国税等については、滞納処分による差押えの時に交付要求があつたものとみなす。
徴収職員等は、前項の差押え国税等について滞納処分による差押えを解除したときは、その旨を執行裁判所(差押処分がされている場合にあつては、当該差押処分をした裁判所書記官)に通知しなければならない。
第二十五条、第二十六条第一項 及び第三項、第二十七条第一項 並びに第三十一条の規定は強制執行による差押えの後に滞納処分による差押えがされた債権(以下この条において「差押え競合債権」という。)について、第二十三条(第二十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定は差押え競合債権で動産の引渡しを目的とするものについて、第三十条の規定は差押え競合債権で条件付 若しくは期限付であるもの又は反対給付に係ること その他の事由によりその取立てが困難であるものについて、第三十二条の規定は差押え競合債権で民事執行法第百五十条に規定するものについて準用する。
この場合において、
第三十一条中
「強制競売の申立てが」とあるのは
「第三十六条の三第二項本文の規定による通知 又は第三十六条の六第二項の規定による事情の届出があつた場合において、強制執行による差押命令 若しくは差押処分の申立てが」と、
「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは
「差押命令 若しくは差押処分を取り消す決定 若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、
「裁判所書記官」とあるのは
「差押命令を発した執行裁判所の裁判所書記官 又は差押処分をした裁判所書記官」と、
第三十条中
「強制競売の申立てが」とあるのは
「強制執行による差押命令 若しくは差押処分の申立てが」と、
「強制競売の手続を取り消す決定」とあるのは
「差押命令 若しくは差押処分を取り消す決定 若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と
読み替えるものとする。
前項において準用する第二十六条第一項の規定による滞納処分続行承認の決定があつたときは、強制執行による差押命令 又は差押処分については、第二十条の三第二項本文の規定による通知があつたものとみなす。
第十八条第二項、第二十条の六、第三十一条 及び第三十六条の四の規定は、仮差押えの執行後に滞納処分による差押えをした債権について準用する。
この場合において、
第十八条第二項中
「売却代金」とあるのは
「第三債務者からの取立金 若しくは第三十六条の十二第一項において準用する第二十条の六第一項の規定により供託された金銭の払渡金 又は売却代金」と、
第三十一条中
「強制競売の申立てが」とあるのは
「滞納処分による差押えの通知があつた場合において、仮差押えの執行の申立てが」と、
「強制競売の手続」とあるのは
「仮差押えの執行」と
読み替えるものとする。
第二十条の七第三項の規定は、前項において準用する第十八条第二項の規定により取立金 若しくは払渡金 又は売却代金の残余が交付された場合について準用する。
第三十六条の三から第三十六条の十一までの規定は、担保権の実行 又は行使による差押えがされている債権に対する滞納処分について準用する。
強制執行 若しくは担保権の実行による差押え 又は仮差押えの執行がされているその他の財産権に対する滞納処分については、特別の定めがあるもののほか、強制執行 若しくは担保権の実行による差押え 又は仮差押えの執行がされている債権に対する滞納処分の例による。
第三十二条(第三十六条において準用する場合を含む。)の規定は、その他の財産権で権利の移転について登記 又は登録を要するものについて準用する。
第四章 雑則
この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
ただし、強制執行、仮差押の執行 及び競売に関する事項は、最高裁判所が定める。