家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件 その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
家事事件手続法
第三編 家事調停に関する手続
第一章 総則
第一節 通則
家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所 又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。
民事訴訟法第十一条第二項 及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。
第百九十一条第二項 及び第百九十二条の規定は、遺産の分割の調停事件(別表第二の十二の項の事項についての調停事件をいう。)及び寄与分を定める処分の調停事件(同表の十四の項の事項についての調停事件をいう。)について準用する。
この場合において、
第百九十一条第二項中
「前項」とあるのは、
「第二百四十五条第一項」と
読み替えるものとする。
家庭裁判所は、第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件以外の事件について調停の申立てを受けた場合には、職権で、これを管轄権を有する地方裁判所 又は簡易裁判所に移送する。
家庭裁判所は、第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について調停の申立てを受けた場合において、事件を処理するために必要があると認めるときは、職権で、事件の全部 又は一部を管轄権を有する地方裁判所 又は簡易裁判所に移送することができる。
家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、前二項の規定にかかわらず、その事件を管轄権を有する地方裁判所 又は簡易裁判所以外の地方裁判所 又は簡易裁判所(事物管轄権を有するものに限る。)に移送することができる。
第九条第三項から第五項までの規定は、前三項の規定による移送の裁判について準用する。
家庭裁判所は、調停委員会で調停を行う。
ただし、家庭裁判所が相当と認めるときは、裁判官のみで行うことができる。
家庭裁判所は、当事者の申立てがあるときは、前項ただし書の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
調停委員会は、裁判官一人 及び家事調停委員二人以上で組織する。
調停委員会を組織する家事調停委員は、家庭裁判所が各事件について指定する。
調停委員会の決議は、過半数の意見による。
可否同数の場合には、裁判官の決するところによる。
調停委員会の評議は、秘密とする。
家事調停委員は、非常勤とし、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
家事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当 及び宿泊料を支給する。
家事調停官は、弁護士で五年以上その職にあったもののうちから、最高裁判所が任命する。
家事調停官は、この法律の定めるところにより、家事調停事件の処理に必要な職務を行う。
家事調停官は、任期を二年とし、再任されることができる。
家事調停官は、非常勤とする。
家事調停官は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して解任されることがない。
弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七条各号のいずれかに該当するに至ったとき。
心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき。
職務上の義務違反 その他家事調停官たるに適しない非行があると認められたとき。
この法律に定めるもののほか、家事調停官の任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
家事調停官は、家庭裁判所の指定を受けて、家事調停事件を取り扱う。
家事調停官は、その取り扱う家事調停事件の処理について、この法律において家庭裁判所、裁判官 又は裁判長が行うものとして定める家事調停事件の処理に関する権限を行うことができる。
家事調停官は、独立してその職権を行う。
家事調停官は、その権限を行うについて、裁判所書記官、家庭裁判所調査官 及び医師である裁判所技官に対し、その職務に関し必要な命令をすることができる。
この場合において、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十条第五項の規定は、家事調停官の命令を受けた裁判所書記官について準用する。
家事調停官には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当 及び宿泊料を支給する。
次の各号に掲げる調停事件(第一号 及び第二号にあっては、財産上の給付を求めるものを除く。)において、当該各号に定める者は、第十七条第一項において準用する民事訴訟法第三十一条の規定にかかわらず、法定代理人によらずに、自ら手続行為をすることができる。
その者が被保佐人 又は被補助人(手続行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。)であって、保佐人 若しくは保佐監督人 又は補助人 若しくは補助監督人の同意がない場合も、同様とする。
夫婦間の協力扶助に関する処分の調停事件(別表第二の一の項の事項についての調停事件をいう。)
夫 及び妻
子の監護に関する処分の調停事件(別表第二の三の項の事項についての調停事件をいう。)
子
養子の離縁後に親権者となるべき者の指定の調停事件(別表第二の七の項の事項についての調停事件をいう。)
養子、その父母 及び養親
親権者の指定 又は変更の調停事件(別表第二の八の項の事項についての調停事件をいう。)
子 及びその父母
人事訴訟法第二条に規定する人事に関する訴え(第二百七十七条第一項において単に「人事に関する訴え」という。)を提起することができる事項についての調停事件
同法第十三条第一項の規定が適用されることにより訴訟行為をすることができることとなる者
親権を行う者 又は後見人は、第十八条の規定にかかわらず、前項第一号、第三号 及び第四号に掲げる調停事件(同項第一号の調停事件にあっては、財産上の給付を求めるものを除く。)においては、当該各号に定める者に代理して第二百六十八条第一項の合意、第二百七十条第一項に規定する調停条項案の受諾 及び第二百八十六条第八項の共同の申出をすることができない。
離婚についての調停事件における夫 及び妻の後見人 並びに離縁についての調停事件における養親の後見人、養子(十五歳以上のものに限る。以下 この項において同じ。)に対し親権を行う者 及び養子の後見人についても、同様とする。
裁判所書記官は、家事調停の手続の期日について、調書を作成しなければならない。
ただし、裁判長においてその必要がないと認めるときは、この限りでない。
当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、家事調停事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は家事調停事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
前項の規定は、家事調停事件の記録中の録音テープ 又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。
この場合において、当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、家庭裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。
家庭裁判所は、当事者 又は利害関係を疎明した第三者から前二項の規定による許可の申立てがあった場合(第六項に規定する場合を除く。)において、相当と認めるときは、これを許可することができる。
次に掲げる書面については、当事者は、第一項の規定にかかわらず、家庭裁判所の許可を得ずに、裁判所書記官に対し、その交付を請求することができる。
審判書 その他の裁判書の正本、謄本 又は抄本
調停において成立した合意を記載し、又は調停をしないものとして、若しくは調停が成立しないものとして事件が終了した旨を記載した調書の正本、謄本 又は抄本
家事調停事件に関する事項の証明書
家事調停事件の記録の閲覧、謄写 及び複製の請求は、家事調停事件の記録の保存 又は裁判所 若しくは調停委員会の執務に支障があるときは、することができない。
第二百七十七条第一項に規定する事項についての調停事件において、当事者から第一項 又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合については、第四十七条第三項、第四項 及び第八項から第十項までの規定を準用する。
第二節 家事調停の申立て等
家事調停の申立ては、申立書(次項 及び次条において「家事調停の申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。
家事調停の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
家事調停の申立てを不適法として却下する審判に対しては、即時抗告をすることができる。
第四十九条第三項から第六項まで 及び第五十条(第一項ただし書を除く。)の規定は、家事調停の申立てについて準用する。
この場合において、
第四十九条第四項中
「第二項」とあるのは、
「第二百五十五条第二項」と
読み替えるものとする。
家事調停の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき 又は家事調停の手続の期日を経ないで第二百七十一条の規定により家事調停事件を終了させるときを除き、家事調停の申立書の写しを相手方に送付しなければならない。
ただし、家事調停の手続の円滑な進行を妨げるおそれがあると認められるときは、家事調停の申立てがあったことを通知することをもって、家事調停の申立書の写しの送付に代えることができる。
第四十九条第四項から第六項までの規定は前項の規定による家事調停の申立書の写しの送付 又はこれに代わる通知をすることができない場合について、
第六十七条第三項 及び第四項の規定は前項の規定による家事調停の申立書の写しの送付 又はこれに代わる通知の費用の予納について準用する。
第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。
ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。
ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。
第三節 家事調停の手続
第四十一条から第四十三条までの規定は家事調停の手続における参加 及び排除について、第四十四条の規定は家事調停の手続における受継について、第五十一条から第五十五条までの規定は家事調停の手続の期日について、第五十六条から第六十二条まで 及び第六十四条の規定は家事調停の手続における事実の調査 及び証拠調べについて、第六十五条の規定は家事調停の手続における子の意思の把握等について、第七十三条、第七十四条、第七十六条(第一項ただし書を除く。)、第七十七条 及び第七十九条の規定は家事調停に関する審判について、第八十一条の規定は家事調停に関する審判以外の裁判について準用する。
前項において準用する第六十一条第一項の規定により家事調停の手続における事実の調査の嘱託を受けた裁判所は、相当と認めるときは、裁判所書記官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることができる。
ただし、嘱託を受けた家庭裁判所が家庭裁判所調査官に当該嘱託に係る事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
調停委員会が行う家事調停の手続は、調停委員会を組織する裁判官が指揮する。
調停委員会が家事調停を行う場合には、次に掲げる事項に関する裁判所の権限は、調停委員会が行う。
第二十二条の規定による手続代理人の許可等
第二十七条において準用する民事訴訟法第六十条第一項 及び第二項の規定による補佐人の許可等
第三十三条ただし書の規定による傍聴の許可
第三十五条の規定による手続の併合等
第二百五十五条第四項において準用する第五十条第三項 及び第四項の規定による申立ての変更
第二百五十八条第一項において準用する第四十一条第一項 及び第二項 並びに第四十二条第一項から第三項まで 及び第五項の規定による参加、第四十三条第一項の規定による排除、第四十四条第一項 及び第三項の規定による受継、第五十一条第一項の規定による事件の関係人の呼出し、第五十四条第一項の規定による音声の送受信による通話の方法による手続 —並びに第五十六条第一項、第五十九条第一項 及び第二項(これらの規定を第六十条第二項において準用する場合を含む。)、第六十一条第一項、第六十二条 並びに第六十四条第五項の規定 並びに同条第一項において準用する民事訴訟法の規定による事実の調査 及び証拠調べ(過料 及び勾引に関する事項を除く。)
調停委員会が家事調停を行う場合には、第二十三条第一項 及び第二項の規定による手続代理人の選任等、第三十四条第一項の規定による期日の指定 並びに第二百五十三条ただし書の規定による調書の作成に関する裁判長の権限は、当該調停委員会を組織する裁判官が行う。
調停委員会を組織する裁判官は、当該調停委員会の決議により、事実の調査 及び証拠調べをすることができる。
前項の場合には、裁判官は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせ、又は医師である裁判所技官に事件の関係人の心身の状況について診断をさせることができる。
第五十八条第三項 及び第四項の規定は、前項の規定による事実の調査 及び心身の状況についての診断について準用する。
第一項の場合には、裁判官は、相当と認めるときは、裁判所書記官に事実の調査をさせることができる。
ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
調停委員会を組織する裁判官は、当該調停委員会の決議により、家庭裁判所調査官に第五十九条第三項の規定による措置をとらせることができる。
調停委員会は、相当と認めるときは、当該調停委員会を組織する家事調停委員に事実の調査をさせることができる。
ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
調停委員会は、他の家庭裁判所 又は簡易裁判所に事件の関係人から紛争の解決に関する意見を聴取することを嘱託することができる。
前項の規定により意見の聴取の嘱託を受けた家庭裁判所は、相当と認めるときは、家事調停委員に当該嘱託に係る意見を聴取させることができる。
調停委員会は、必要があると認めるときは、当該調停委員会を組織していない家事調停委員の専門的な知識経験に基づく意見を聴取することができる。
前項の規定により意見を聴取する家事調停委員は、家庭裁判所が指定する。
前項の規定による指定を受けた家事調停委員は、調停委員会に出席して意見を述べるものとする。
調停委員会は、事件の実情を考慮して、裁判所外の適当な場所で調停を行うことができる。
調停委員会は、家事調停事件が係属している間、調停のために必要であると認める処分を命ずることができる。
急迫の事情があるときは、調停委員会を組織する裁判官が前項の処分(以下「調停前の処分」という。)を命ずることができる。
調停前の処分は、執行力を有しない。
調停前の処分として必要な事項を命じられた当事者 又は利害関係参加人が正当な理由なくこれに従わないときは、家庭裁判所は、十万円以下の過料に処する。
裁判官のみで家事調停の手続を行う場合においては、家庭裁判所は、相当と認めるときは、裁判所書記官に事実の調査をさせることができる。
ただし、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることを相当と認めるときは、この限りでない。
第二百六十三条から前条までの規定は、裁判官のみで家事調停の手続を行う場合について準用する。
第四節 調停の成立
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。
家事調停事件の一部について当事者間に合意が成立したときは、その一部について調停を成立させることができる。
手続の併合を命じた数個の家事調停事件中 その一について合意が成立したときも、同様とする。
離婚 又は離縁についての調停事件においては、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項に規定する方法によっては、調停を成立させることができない。
第一項 及び第二項の規定は、第二百七十七条第一項に規定する事項についての調停事件については、適用しない。
調停調書に計算違い、誤記 その他これらに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。
更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の申立てを不適法として却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
当事者が遠隔の地に居住していること その他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ調停委員会(裁判官のみで家事調停の手続を行う場合にあっては、その裁判官。次条 及び第二百七十二条第一項において同じ。)から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が家事調停の手続の期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意が成立したものとみなす。
前項の規定は、離婚 又は離縁についての調停事件については、適用しない。
第五節 調停の成立によらない事件の終了
調停委員会は、事件が性質上 調停を行うのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、家事調停事件を終了させることができる。
調停委員会は、当事者間に合意(第二百七十七条第一項第一号の合意を含む。)が成立する見込みがない場合 又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、家事調停事件を終了させることができる。
ただし、家庭裁判所が第二百八十四条第一項の規定による調停に代わる審判をしたときは、この限りでない。
前項の規定により家事調停事件が終了したときは、家庭裁判所は、当事者に対し、その旨を通知しなければならない。
当事者が前項の規定による通知を受けた日から二週間以内に家事調停の申立てがあった事件について訴えを提起したときは、家事調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
第一項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。
家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
前項の規定にかかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
第八十二条第三項 及び第四項 並びに民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。
この場合において、
第八十二条第三項中
「前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項」とあるのは
「第二百七十三条第二項」と、
同法第二百六十一条第三項ただし書中
「口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは
「家事調停の手続の期日」と
読み替えるものとする。
第六節 付調停等
第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟 又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告 又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告 又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。
裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。
ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。
家庭裁判所 及び高等裁判所は、第一項の規定により事件を調停に付する場合には、前項の規定にかかわらず、その家事調停事件を自ら処理することができる。
前項の規定により家庭裁判所 又は高等裁判所が調停委員会で調停を行うときは、調停委員会は、当該裁判所がその裁判官の中から指定する裁判官一人 及び家事調停委員二人以上で組織する。
第三項の規定により高等裁判所が自ら調停を行う場合についてのこの編の規定の適用については、
第二百四十四条、第二百四十七条、第二百四十八条第二項、第二百五十四条第一項から第四項まで、第二百六十四条第二項、第二百六十六条第四項、第二百六十九条第一項 並びに第二百七十二条第一項ただし書 及び第二項 並びに次章 及び第三章の規定中
「家庭裁判所」とあるのは
「高等裁判所」と、
第二百四十四条、第二百五十八条第一項、第二百七十六条、第二百七十七条第一項第一号、第二百七十九条第三項 及び第二百八十四条第一項中
「審判」とあるのは
「審判に代わる裁判」と、
第二百六十七条第一項中
「家庭裁判所は」とあるのは
「高等裁判所は」と
次章の規定中
「合意に相当する審判」とあるのは
「合意に相当する審判に代わる裁判」と、
第二百七十二条第一項ただし書 及び第三章の規定(第二百八十六条第七項の規定を除く。)中
「調停に代わる審判」とあるのは
「調停に代わる審判に代わる裁判」と、
第二百八十一条 及び第二百八十七条中
「却下する審判」とあるのは
「却下する審判に代わる裁判」と
する。
家事調停の申立てがあった事件について訴訟が係属しているとき、又は訴訟が係属している裁判所が第二百五十七条第二項 若しくは前条第一項の規定により事件を調停に付したときは、訴訟が係属している裁判所は、家事調停事件が終了するまで訴訟手続を中止することができる。
家事調停の申立てがあった事件について家事審判事件が係属しているとき、又は家事審判事件が係属している裁判所が前条第一項の規定により事件を調停に付したときは、家事審判事件が係属している裁判所は、家事調停事件が終了するまで、家事審判の手続を中止することができる。
訴訟が係属している裁判所が第二百五十七条第二項 又は第二百七十四条第一項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し、又は次条第一項 若しくは第二百八十四条第一項の規定による審判が確定したときは、当該訴訟について訴えの取下げがあったものとみなす。
家事審判事件が係属している裁判所が第二百七十四条第一項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し、又は第二百八十四条第一項の審判が確定したときは、当該家事審判事件は、終了する。
第二章 合意に相当する審判
人事に関する訴え(離婚 及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。
ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。
当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。
当事者の双方が申立てに係る無効 若しくは取消しの原因 又は身分関係の形成 若しくは存否の原因について争わないこと。
前項第一号の合意は、第二百五十八条第一項において準用する第五十四条第一項 及び第二百七十条第一項に規定する方法によっては、成立させることができない。
第一項の家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、合意に相当する審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
第二百七十二条第一項から第三項までの規定は、家庭裁判所が第一項第一号の規定による合意を正当と認めない場合について準用する。
家事調停の申立ての取下げは、合意に相当する審判がされた後は、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
当事者 及び利害関係人は、合意に相当する審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができる。
ただし、当事者にあっては、第二百七十七条第一項各号に掲げる要件に該当しないことを理由とする場合に限る。
前項の規定による異議の申立ては、二週間の不変期間内にしなければならない。
前項の期間は、異議の申立てをすることができる者が、審判の告知を受ける者である場合にあってはその者が審判の告知を受けた日から、審判の告知を受ける者でない場合にあっては当事者が審判の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から、それぞれ進行する。
第一項の規定による異議の申立てをする権利は、放棄することができる。
家庭裁判所は、当事者がした前条第一項の規定による異議の申立てが不適法であるとき、又は異議の申立てに理由がないと認めるときは、これを却下しなければならない。
利害関係人がした同項の規定による異議の申立てが不適法であるときも、同様とする。
異議の申立人は、前項の規定により異議の申立てを却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。
家庭裁判所は、当事者から適法な異議の申立てがあった場合において、異議の申立てを理由があると認めるときは、合意に相当する審判を取り消さなければならない。
利害関係人から適法な異議の申立てがあったときは、合意に相当する審判は、その効力を失う。
この場合においては、家庭裁判所は、当事者に対し、その旨を通知しなければならない。
当事者が前項の規定による通知を受けた日から二週間以内に家事調停の申立てがあった事件について訴えを提起したときは、家事調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
第二百七十九条第一項の規定による異議の申立てがないとき、又は異議の申立てを却下する審判が確定したときは、合意に相当する審判は、確定判決と同一の効力を有する。
婚姻の取消しについての家事調停の手続において、婚姻の取消しについての合意に相当する審判をするときは、この合意に相当する審判において、当事者間の合意に基づき、子の親権者を指定しなければならない。
前項の合意に相当する審判は、子の親権者の指定につき当事者間で合意が成立しないとき、又は成立した合意が相当でないと認めるときは、することができない。
父が嫡出否認についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者 その他父の三親等内の血族が父の死亡の日から一年以内に嫡出否認の訴えを提起したときは、父がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
家庭裁判所は、民法第七百七十二条第三項の規定により父が定められる子の嫡出否認についての合意に相当する審判が確定したときは、同法第七百七十四条第四項に規定する前夫(事件の記録上 その氏名 及び住所 又は居所が判明しているものに限る。)に対し、当該合意に相当する審判の内容を通知するものとする。
認知をした者が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者 その他認知をした者の三親等内の血族が認知をした者の死亡の日から一年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、認知をした者がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
子が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、子の直系卑属 又はその法定代理人が子の死亡の日から一年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、子がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
第三章 調停に代わる審判
家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。
ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。
家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所はその調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し 又は金銭の支払 その他の財産上の給付 その他の給付を命ずることができる。
家事調停の申立ての取下げは、第二百七十三条第一項の規定にかかわらず、調停に代わる審判がされた後は、することができない。
調停に代わる審判の告知は、公示送達の方法によっては、することができない。
調停に代わる審判を告知することができないときは、家庭裁判所は、これを取り消さなければならない。
当事者は、調停に代わる審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができる。
第二百七十九条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による異議の申立てについて準用する。
家庭裁判所は、第一項の規定による異議の申立てが不適法であるときは、これを却下しなければならない。
異議の申立人は、前項の規定により異議の申立てを却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。
適法な異議の申立てがあったときは、調停に代わる審判は、その効力を失う。
この場合においては、家庭裁判所は、当事者に対し、その旨を通知しなければならない。
当事者が前項の規定による通知を受けた日から二週間以内に家事調停の申立てがあった事件について訴えを提起したときは、家事調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
第五項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停に代わる審判が効力を失った場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。
当事者が、申立てに係る家事調停(離婚 又は離縁についての家事調停を除く。)の手続において、調停に代わる審判に服する旨の共同の申出をしたときは、第一項の規定は、適用しない。
前項の共同の申出は、書面でしなければならない。
当事者は、調停に代わる審判の告知前に限り、第八項の共同の申出を撤回することができる。
この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
前条第一項の規定による異議の申立てがないとき、又は異議の申立てを却下する審判が確定したときは、別表第二に掲げる事項についての調停に代わる審判は確定した第三十九条の規定による審判と同一の効力を、その余の調停に代わる審判は確定判決と同一の効力を有する。
第四章 不服申立て等
家事調停の手続においてされた裁判に対する不服申立て及び再審については、特別の定めのある場合を除き、それぞれ前編第一章第二節 及び第三節の規定を準用する。