母子保健法

昭和四十年法律第百四十一号
分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十六号による改正
最終編集日 : 2024年 04月22日 07時45分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 母子保健の向上に関する措置

  • 第三章 母子健康包括支援センター

  • 第四章 雑則

第一章 総則

1項
この法律は、母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性 並びに乳児 及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療 その他の措置を講じ、もつて国民保健の向上に寄与することを目的とする。
1項
母性は、すべての児童がすこやかに生まれ、かつ、育てられる基盤であることにかんがみ、尊重され、かつ、保護されなければならない。
1項
乳児 及び幼児は、心身ともに健全な人として成長してゆくために、その健康が保持され、かつ、増進されなければならない。
1項
母性は、みずからすすんで、妊娠、出産 又は育児についての正しい理解を深め、その健康の保持 及び増進に努めなければならない。
2項
乳児 又は幼児の保護者は、みずからすすんで、育児についての正しい理解を深め、乳児 又は幼児の健康の保持 及び増進に努めなければならない。
1項
国 及び地方公共団体は、母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進に努めなければならない。
2項

国 及び地方公共団体は、母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進に関する施策を講ずるに当たつては、当該施策が乳児 及び幼児に対する虐待の予防 及び早期発見に資するものであることに留意するとともに、その施策を通じて、前三条に規定する母子保健の理念が具現されるように配慮しなければならない。

1項

この法律において「妊産婦」とは、妊娠中 又は出産後一年以内の女子をいう。

2項

この法律において「乳児」とは、一歳に満たない者をいう。

3項

この法律において「幼児」とは、満一歳から小学校就学の始期に達するまでの者をいう。

4項

この法律において「保護者」とは、親権を行う者、未成年後見人 その他の者で、乳児 又は幼児を現に監護する者をいう。

5項

この法律において「新生児」とは、出生後二十八日を経過しない乳児をいう。

6項

この法律において「未熟児」とは、身体の発育が未熟のまま出生した乳児であつて、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものをいう。

1項

児童福祉法昭和二十二年法律第百六十四号第八条第二項に規定する都道府県児童福祉審議会(同条第一項ただし書に規定する都道府県にあつては、地方社会福祉審議会。以下この条において同じ。)及び同条第四項に規定する市町村児童福祉審議会は、母子保健に関する事項につき、調査審議するほか、同条第二項に規定する都道府県児童福祉審議会は都道府県知事の、同条第四項に規定する市町村児童福祉審議会は市町村長の諮問にそれぞれ答え、又は関係行政機関に意見を具申することができる。

1項

都道府県は、この法律の規定により市町村が行う母子保健に関する事業の実施に関し、市町村相互間の連絡調整を行い、及び市町村の求めに応じ、その設置する保健所による技術的事項についての指導、助言 その他当該市町村に対する必要な技術的援助を行うものとする。

1項
市町村は、この法律に基づく母子保健に関する事業の一部について、病院 若しくは診療所 又は医師、助産師 その他適当と認められる者に対し、その実施を委託することができる。
1項

都道府県 及び市町村は、この法律に基づく母子保健に関する事業の実施に当たつては、学校保健安全法昭和三十三年法律第五十六号)、児童福祉法 その他の法令に基づく母性 及び児童の保健 及び福祉に関する事業との連携 及び調和の確保に努めなければならない。

第二章 母子保健の向上に関する措置

1項

都道府県 及び市町村は、母性 又は乳児 若しくは幼児の健康の保持 及び増進のため、妊娠、出産 又は育児に関し、個別的 又は集団的に、必要な指導 及び助言を行い、並びに地域住民の活動を支援すること等により、母子保健に関する知識の普及に努めなければならない。

1項
市町村は、母性 又は乳児 若しくは幼児の健康の保持 及び増進のため、母子保健に関する相談に応じなければならない。
2項
市町村は、母性 並びに乳児 及び幼児の心身の状態に応じ、健康の保持 及び増進に関する支援を必要とする者について、母性 並びに乳児 及び幼児に対する支援に関する計画の作成 その他の内閣府令で定める支援を行うものとする。
1項

市町村は、妊産婦 若しくは その配偶者 又は乳児 若しくは幼児の保護者に対して、妊娠、出産 又は育児に関し、必要な保健指導を行い、又は医師、歯科医師、助産師 若しくは保健師について保健指導を受けることを勧奨しなければならない。

1項

市町村長は、前条の場合において、当該乳児が新生児であつて、育児上必要があると認めるときは、医師、保健師、助産師 又はその他の職員をして当該新生児の保護者を訪問させ、必要な指導を行わせるものとする。


ただし、当該新生児につき、第十九条の規定による指導が行われるときは、この限りでない。

2項

前項の規定による新生児に対する訪問指導は、当該新生児が新生児でなくなつた後においても、継続することができる。

1項
市町村は、次に掲げる者に対し、内閣府令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一 号

満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児

二 号

満三歳を超え満四歳に達しない幼児

2項

前項の内閣府令は、健康増進法平成十四年法律第百三号第九条第一項に規定する健康診査等指針(第十六条第四項において単に「健康診査等指針」という。)と調和が保たれたものでなければならない。

1項

前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦 又は乳児 若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。

2項

内閣府令は、前項の規定による妊婦に対する健康診査についての望ましい基準を定めるものとする。

1項
市町村は、妊産婦 又は乳児 若しくは幼児に対して、栄養の摂取につき必要な援助をするように努めるものとする。
1項

妊娠した者は、内閣府令で定める事項につき、速やかに、市町村長に妊娠の届出をするようにしなければならない。

1項

市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない。

2項

妊産婦は、医師、歯科医師、助産師 又は保健師について、健康診査 又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。


乳児 又は幼児の健康診査 又は保健指導を受けた当該乳児 又は幼児の保護者についても、同様とする。

3項

母子健康手帳の様式は、内閣府令で定める。

4項

前項の内閣府令は、健康診査等指針と調和が保たれたものでなければならない。

1項

第十三条第一項の規定による健康診査を行つた市町村の長は、その結果に基づき、当該妊産婦の健康状態に応じ、保健指導を要する者については、医師、助産師、保健師 又はその他の職員をして、その妊産婦を訪問させて必要な指導を行わせ、妊娠 又は出産に支障を及ぼすおそれがある疾病にかかつている疑いのある者については、医師 又は歯科医師の診療を受けることを勧奨するものとする。

2項

市町村は、妊産婦が前項の勧奨に基づいて妊娠 又は出産に支障を及ぼすおそれがある疾病につき医師 又は歯科医師の診療を受けるために必要な援助を与えるように努めなければならない。

1項

市町村は、出産後一年を経過しない女子 及び乳児の心身の状態に応じた保健指導、療養に伴う世話 又は育児に関する指導、相談 その他の援助(以下 この項において「産後ケア」という。)を必要とする出産後一年を経過しない女子 及び乳児につき、次の各号いずれかに掲げる事業(以下この条において「産後ケア事業」という。)を行うよう努めなければならない。

一 号

病院、診療所、助産所 その他内閣府令で定める施設であつて、産後ケアを行うもの(次号において「産後ケアセンター」という。)に産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子 及び乳児を短期間入所させ、産後ケアを行う事業

二 号

産後ケアセンター その他の内閣府令で定める施設に産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子 及び乳児を通わせ、産後ケアを行う事業

三 号

産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない女子 及び乳児の居宅を訪問し、産後ケアを行う事業

2項
市町村は、産後ケア事業を行うに当たつては、産後ケア事業の人員、設備 及び運営に関する基準として厚生労働省令で定める基準に従つて行わなければならない。
3項

市町村は、産後ケア事業の実施に当たつては、妊娠中から出産後に至る支援を切れ目なく行う観点から、児童福祉法第十条の二第一項のこども家庭センター(次章において単に「こども家庭センター」という。)その他の関係機関との必要な連絡調整 並びにこの法律に基づく母子保健に関する他の事業 並びに児童福祉法 その他の法令に基づく母性 及び乳児の保健 及び福祉に関する事業との連携を図ることにより、妊産婦 及び乳児に対する支援の一体的な実施 その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

1項

体重が二千五百グラム未満の乳児が出生したときは、その保護者は、速やかに、その旨をその乳児の現在地の市町村に届け出なければならない。

1項
市町村長は、その区域内に現在地を有する未熟児について、養育上必要があると認めるときは、医師、保健師、助産師 又は その他の職員をして、その未熟児の保護者を訪問させ、必要な指導を行わせるものとする。
2項

第十一条第二項の規定は、前項の規定による訪問指導に準用する。

1項

市町村は、妊産婦 若しくは乳児 若しくは幼児であつて、かつて当該市町村以外の市町村(以下 この項において「他の市町村」という。)に居住していた者 又は当該妊産婦の配偶者 若しくは当該乳児 若しくは幼児の保護者に対し、第九条の二第一項の相談、同条第二項の支援、第十条の保健指導、第十一条第十七条第一項 若しくは前条の訪問指導、第十二条第一項 若しくは第十三条第一項の健康診査 又は第二十二条第一項第二号から第五号までに掲げる事業を行うために必要があると認めるときは、当該他の市町村に対し、内閣府令で定めるところにより、当該妊産婦 又は乳児 若しくは幼児に対する第十二条第一項 又は第十三条第一項の健康診査に関する情報の提供を求めることができる。

2項

市町村は、前項の規定による情報の提供の求めについては、電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより行うよう努めなければならない。

1項

市町村は、養育のため病院 又は診療所に入院することを必要とする未熟児に対し、その養育に必要な医療(以下「養育医療」という。)の給付を行い、又はこれに代えて養育医療に要する費用を支給することができる。

2項

前項の規定による費用の支給は、養育医療の給付が困難であると認められる場合に限り、行なうことができる。

3項
養育医療の給付の範囲は、次のとおりとする。
一 号
診察
二 号
薬剤 又は治療材料の支給
三 号

医学的処置、手術 及びその他の治療

四 号

病院 又は診療所への入院 及びその療養に伴う世話 その他の看護

五 号
移送
4項

養育医療の給付は、都道府県知事が次項の規定により指定する病院 若しくは診療所 又は薬局(以下「指定養育医療機関」という。)に委託して行うものとする。

5項

都道府県知事は、病院 若しくは診療所 又は薬局の開設者の同意を得て、第一項の規定による養育医療を担当させる機関を指定する。

6項

第一項の規定により支給する費用の額は、次項の規定により準用する児童福祉法第十九条の十二の規定により指定養育医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額のうち、本人 及びその扶養義務者(民法明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者をいう。第二十一条の四第一項において同じ。)が負担することができないと認められる額とする。

7項

児童福祉法第十九条の十二第十九条の二十 及び第二十一条の三の規定は養育医療の給付について、同法第二十条第七項 及び第八項 並びに第二十一条の規定は指定養育医療機関について、それぞれ準用する。


この場合において、

同法第十九条の十二
診療方針」とあるのは
「診療方針 及び診療報酬」と、

同条第二項
厚生労働大臣」とあるのは
「内閣総理大臣」と、

同法第十九条の二十第二項除く)中
小児慢性特定疾病医療費の」とあるのは
「診療報酬の」と、

同条第一項
第十九条の三第十項」とあるのは
母子保健法第二十条第七項において読み替えて準用する第十九条の十二」と、

同条第四項
都道府県」とあるのは
「市町村」と、

厚生労働省令」とあるのは
「内閣府令」と、

同法第二十一条の三第二項
都道府県の」とあるのは
「市町村の」と

読み替えるものとする。

1項
国 及び地方公共団体は、妊産婦 並びに乳児 及び幼児の心身の特性に応じた高度の医療が適切に提供されるよう、必要な医療施設の整備に努めなければならない。
1項
国は、乳児 及び幼児の障害の予防のための研究 その他母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進のため必要な調査研究の推進に努めなければならない。
1項

市町村が行う第十二条第一項の規定による健康診査に要する費用 及び第二十条の規定による措置に要する費用は、当該市町村の支弁とする。

1項

都道府県は、政令の定めるところにより、前条の規定により市町村が支弁する費用のうち、第二十条の規定による措置に要する費用については、その四分の一を負担するものとする。

1項

国は、政令の定めるところにより、第二十一条の規定により市町村が支弁する費用のうち、第二十条の規定による措置に要する費用については、その二分の一を負担するものとする。

1項

第二十条の規定による養育医療の給付に要する費用を支弁した市町村長は、当該措置を受けた者 又はその扶養義務者から、その負担能力に応じて、当該措置に要する費用の全部 又は一部を徴収することができる。

2項

前項の規定による費用の徴収は、徴収されるべき者の居住地 又は財産所在地の市町村に嘱託することができる。

3項

第一項の規定により徴収される費用を、指定の期限内に納付しない者があるときは、地方税の滞納処分の例により処分することができる。


この場合における徴収金の先取特権の順位は、国税 及び地方税に次ぐものとする。

第三章 こども家庭センターの母子保健事業

1項

こども家庭センターは、児童福祉法第十条の二第二項各号に掲げる業務のほか、母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進に関する包括的な支援を行うことを目的として、第一号から第四号までに掲げる事業 又はこれらの事業に併せて第五号に掲げる事業を行うものとする。

一 号
母性 並びに乳児 及び幼児の健康の保持 及び増進に関する支援に必要な実情の把握を行うこと。
二 号
母子保健に関する各種の相談に応ずること。
三 号
母性 並びに乳児 及び幼児に対する保健指導を行うこと。
四 号

母性 及び児童の保健医療に関する機関との連絡調整 並びに第九条の二第二項の支援を行うこと。

五 号

健康診査、助産 その他の母子保健に関する事業を行うこと(前各号に掲げる事業を除く)。

2項

市町村は、こども家庭センターにおいて、第九条の指導 及び助言、第九条の二第一項の相談 並びに第十条の保健指導を行うに当たつては、児童福祉法第二十一条の十一第一項の情報の収集 及び提供、相談 並びに助言 並びに同条第二項のあつせん、調整 及び要請と一体的に行うように努めなければならない。

第四章 雑則

1項

第二十条の規定により支給を受けた金品を標準として、租税 その他の公課を課することができない。

1項

第二十条の規定により金品の支給を受けることとなつた者の当該支給を受ける権利は、差し押えることができない

1項

この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法昭和二十二年法律第六十七号第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)及び同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「中核市」という。)においては、政令の定めるところにより、指定都市 又は中核市(以下「指定都市等」という。)が処理するものとする。


この場合においては、この法律中都道府県に関する規定は、指定都市等に関する規定として、指定都市等に適用があるものとする。

1項

第二十条第七項において準用する児童福祉法第二十一条の三第一項の規定により都道府県知事の権限に属するものとされている事務は、未熟児の利益を保護する緊急の必要があると内閣総理大臣が認める場合にあつては、内閣総理大臣 又は都道府県知事が行うものとする。


この場合においては、第二十条第七項において準用する同法の規定中都道府県知事に関する規定(当該事務に係るものに限る)は、内閣総理大臣に関する規定として内閣総理大臣に適用があるものとする。

2項

前項の場合において、内閣総理大臣 又は都道府県知事が当該事務を行うときは、相互に密接な連携の下に行うものとする。

1項

内閣総理大臣は、この法律に規定する内閣総理大臣の権限(政令で定めるものを除く)をこども家庭庁長官に委任する。

2項

こども家庭庁長官は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限の一部を地方厚生局長 又は地方厚生支局長に委任することができる。