この法律は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し、及び犯罪による収益がこの種の犯罪を助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えることに鑑み、並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため、組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化し、犯罪による収益の隠匿 及び収受 並びにこれを用いた法人等の事業経営の支配を目的とする行為を処罰するとともに、犯罪による収益に係る没収 及び追徴の特例等について定めることを目的とする。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第一章 総則
この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的 又は意思を実現する行為の全部 又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
財産上の不正な利益を得る目的で犯した次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産 又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
死刑 又は無期 若しくは長期四年以上の懲役 若しくは禁錮の刑が定められている罪(ロに掲げる罪 及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)第二条第二項各号に掲げる罪を除く。)
別表第一(第三号を除く。)又は別表第二に掲げる罪
次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ 又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十(覚醒剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十三条(資金等の提供)の罪
銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三(資金等の提供)の罪
サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条(資金等の提供)の罪
次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
第七条の二(証人等買収)の罪
不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項の違反行為に係る同法第二十一条第二項第七号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪
公衆等脅迫目的の犯罪行為等のための資金等の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)第三条第一項 若しくは第二項前段、第四条第一項 若しくは第五条第一項(資金等の提供)の罪 又はこれらの罪の未遂罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供され、又は提供しようとした財産
第六条の二第一項 又は第二項(テロリズム集団 その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)の罪の犯罪行為である計画(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)をした者が、計画をした犯罪の実行のための資金として使用する目的で取得した財産
この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産 その他犯罪収益の保有 又は処分に基づき得た財産をいう。
この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産 又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
この法律において「薬物犯罪収益」とは、麻薬特例法第二条第三項に規定する薬物犯罪収益をいう。
この法律において「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、麻薬特例法第二条第四項に規定する薬物犯罪収益に由来する財産をいう。
この法律において「薬物犯罪収益等」とは、麻薬特例法第二条第五項に規定する薬物犯罪収益等をいう。
第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等
次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果 又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
刑法(明治四十年法律第四十五号)第九十六条(封印等破棄)の罪
五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金 又はこれらの併科
刑法第九十六条の二(強制執行妨害目的財産損壊等)の罪
五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金 又はこれらの併科
刑法第九十六条の三(強制執行行為妨害等)の罪
五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金 又はこれらの併科
刑法第九十六条の四(強制執行関係売却妨害)の罪
五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金 又はこれらの併科
刑法第百八十六条第一項(常習賭博)の罪
五年以下の懲役
刑法第百八十六条第二項(賭博場開張等図利)の罪
三月以上七年以下の懲役
刑法第百九十九条(殺人)の罪
死刑 又は無期 若しくは六年以上の懲役
刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪
三月以上十年以下の懲役
刑法第二百二十三条第一項 又は第二項(強要)の罪
五年以下の懲役
刑法第二百二十五条の二(身の代金目的略取等)の罪
無期 又は五年以上の懲役
刑法第二百三十三条(信用毀損 及び業務妨害)の罪
五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金
刑法第二百三十四条(威力業務妨害)の罪
五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金
刑法第二百四十六条(詐欺)の罪
一年以上の有期懲役
刑法第二百四十九条(恐喝)の罪
一年以上の有期懲役
刑法第二百六十条前段(建造物等損壊)の罪
七年以下の懲役
団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域 又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪 その他の不正な行為により当該団体 又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。以下この項 及び第六条の二第二項において同じ。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で、前項各号(第五号、第六号 及び第十三号を除く。)に掲げる罪を犯した者も、同項と同様とする。
前条第一項第七号、第九号、第十号(刑法第二百二十五条の二第一項に係る部分に限る。)、第十三号 及び第十四号に掲げる罪に係る前条の罪の未遂は、罰する。
第三条第一項第十号に掲げる罪に係る同条の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
次の各号に掲げる罪で、これに当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものを犯す目的で、その予備をした者は、当該各号に定める刑に処する。
ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
刑法第百九十九条(殺人)の罪
五年以下の懲役
刑法第二百二十五条(営利目的等略取及び誘拐)の罪(営利の目的によるものに限る。)
二年以下の懲役
第三条第二項に規定する目的で、前項各号に掲げる罪の予備をした者も、同項と同様とする。
次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団 その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金 又は物品の手配、関係場所の下見 その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。
ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
別表第四に掲げる罪のうち、死刑 又は無期 若しくは長期十年を超える懲役 若しくは禁錮の刑が定められているもの
五年以下の懲役 又は禁錮
別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役 又は禁錮の刑が定められているもの
二年以下の懲役 又は禁錮
前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団 その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団 その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金 又は物品の手配、関係場所の下見 その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
別表第四に掲げる罪のうち告訴がなければ公訴を提起することができないものに係る前二項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第一項 及び第二項の罪に係る事件についての刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百九十八条第一項の規定による取調べ その他の捜査を行うに当たっては、その適正の確保に十分に配慮しなければならない。
禁錮以上の刑が定められている罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合において、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める刑に処する。
その罪を犯した者を蔵匿し、又は隠避させた者
五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金
その罪に係る他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造 若しくは変造の証拠を使用した者
五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金
その罪に係る自己 若しくは他人の刑事事件の捜査 若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者 又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者
五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金
その罪に係る被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員 若しくは補充裁判員 若しくはこれらの職にあった者 又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけること その他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者
三年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金
その罪に係る被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員 若しくは補充裁判員の選任のために選定された裁判員候補者 若しくは当該裁判員 若しくは補充裁判員の職務を行うべき選任予定裁判員 又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけること その他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者
三年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金
禁錮以上の刑が定められている罪が第三条第二項に規定する目的で犯された場合において、前項各号のいずれかに該当する者も、同項と同様とする。
次に掲げる罪に係る自己 又は他人の刑事事件に関し、証言をしないこと、若しくは虚偽の証言をすること、又は証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造すること、若しくは偽造 若しくは変造の証拠を使用することの報酬として、金銭 その他の利益を供与し、又はその申込み 若しくは約束をした者は、二年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
死刑 又は無期 若しくは長期四年以上の懲役 若しくは禁錮の刑が定められている罪(次号に掲げる罪を除く。)
別表第一に掲げる罪
前項各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合、又は同項各号に掲げる罪が第三条第二項に規定する目的で犯された場合において、前項の罪を犯した者は、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
団体の構成員が罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、又は第三条第二項に規定する目的で行われたものに限る。)を犯した場合、又は当該罪を犯す目的でその予備罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、及び同項に規定する目的で行われたものを除く。)を犯した場合において、当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供し、若しくは供しようとした物が、当該団体に属し、かつ、当該構成員が管理するものであるときは、刑法第十九条第二項本文の規定にかかわらず、その物が当該団体 及び犯人以外の者に属しない場合に限り、これを没収することができる。
ただし、当該団体において、当該物が当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供され、若しくは供されようとすることの防止に必要な措置を講じていたときは、この限りでない。
第二条第二項第一号 若しくは第三号の犯罪収益 若しくは薬物犯罪収益(麻薬特例法第二条第二項各号に掲げる罪の犯罪行為により得た財産 又は当該犯罪行為の報酬として得た財産に限る。第十三条第一項第三号 及び同条第四項において同じ。)、これらの保有 若しくは処分に基づき得た財産 又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産(以下「不法収益等」という。)を用いることにより、法人等(法人 又は法人でない社団 若しくは財団をいう。以下この条において同じ。)の株主等(株主 若しくは社員 又は発起人 その他の法人等の設立者をいう。以下同じ。)の地位を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等 又はその子法人の事業経営を支配する目的で、その株主等の権限 又は当該権限に基づく影響力を行使し、又は当該第三者に行使させて、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときは、十年以下の懲役 若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
当該法人等 又はその子法人の役員等(取締役、執行役、理事、管理人 その他いかなる名称を有するものであるかを問わず、法人等の経営を行う役職にある者をいう。以下この条において同じ。)を選任し、若しくは選任させ、解任し、若しくは解任させ、又は辞任させること。
当該法人等 又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等 又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得 又は行使に関し、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときも、前項と同様とする。
不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等 又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得 又は行使に関し、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。
当該法人等 又はその子法人の役員等を選任させ、若しくは解任させ、又は辞任させること。
当該法人等 又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等 又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得 又は行使に関し、当該株主等にその権限 又は当該権限に基づく影響力を行使させて、前項各号のいずれかに該当する行為をしたときも、第一項と同様とする。
不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等 又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得 又は行使に関し、当該株主等にその権限 又は当該権限に基づく影響力を行使させて、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。
この条において「子法人」とは、一の法人等が株主等の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。以下この項において同じ。)の総数の百分の五十を超える数の議決権を保有する法人をいい、一の法人等 及びその子法人 又は一の法人等の子法人が株主等の議決権の総数の百分の五十を超える数の議決権を保有する法人は、当該法人等の子法人とみなす。
犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律第三条第一項 若しくは第二項前段、第四条第一項 又は第五条第一項の罪の未遂罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。以下この項において同じ。)により提供しようとした財産を除く。以下この項 及び次条において同じ。)の取得 若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、十年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
犯罪収益(同法第三条第一項 若しくは第二項前段、第四条第一項 又は第五条第一項の罪の未遂罪の犯罪行為により提供しようとした財産を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
前項の罪の未遂は、罰する。
第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
情を知って、犯罪収益等を収受した者は、七年以下の懲役 若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者 又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。
第三条第一項第九号、第十一号、第十二号 及び第十五号に掲げる罪に係る同条の罪、第六条第一項第一号に掲げる罪に係る同条の罪 並びに第六条の二第一項 及び第二項の罪は刑法第四条の二の例に、第九条第一項から第三項まで 及び前二条の罪は同法第三条の例に従う。
犯罪収益(第六号に掲げる財産に該当するものを除く。)
犯罪収益に由来する財産(第六号に掲げる財産に該当する犯罪収益の保有 又は処分に基づき得たものを除く。)
第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式 又は持分であって、不法収益等(薬物犯罪収益、その保有 若しくは処分に基づき得た財産 又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産であるもの(第四項において「薬物不法収益等」という。)を除く。以下この項において同じ。)を用いることにより取得されたもの
第九条第二項 又は第三項の罪に係る債権であって、不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該不法収益等)
第十条 又は第十一条の罪に係る犯罪収益等
不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為 又は第十条 若しくは第十一条の犯罪行為により生じ、若しくはこれらの犯罪行為により得た財産 又はこれらの犯罪行為の報酬として得た財産
第三号から前号までの財産の果実として得た財産、これらの各号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産 その他これらの各号の財産の保有 又は処分に基づき得た財産
前項各号に掲げる財産が犯罪被害財産(次に掲げる罪の犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産 又は当該財産の保有 若しくは処分に基づき得た財産をいう。以下同じ。)であるときは、これを没収することができない。
同項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合において、当該部分についても、同様とする。
刑法第二百二十五条の二第二項の罪に係る第三条(組織的な拐取者身の代金取得等)の罪
刑法第二百二十五条の二第二項(拐取者身の代金取得等)又は第二百二十七条第四項後段(収受者身の代金取得等)の罪
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)第五条第一項後段(高金利の受領)、第二項後段(業として行う高金利の受領) 若しくは第三項後段(業として行う著しい高金利の受領)、第五条の二第一項後段(高保証料の受領) 若しくは第五条の三第一項後段(保証料がある場合の高金利の受領)、第二項後段(保証があり、かつ、変動利率による利息の定めがある場合の高金利の受領) 若しくは第三項後段(根保証がある場合の高金利の受領)の罪、同法第五条第一項後段 若しくは第二項後段、第五条の二第一項後段若しくは第五条の三第一項後段、第二項後段若しくは第三項後段の違反行為に係る同法第八条第一項(高金利の受領等の脱法行為)の罪、同法第五条第三項後段の違反行為に係る同法第八条第二項(業として行う著しい高金利の受領の脱法行為)の罪又は同法第一条 若しくは第二条第一項の違反行為に係る同法第八条第三項(元本を保証して行う出資金の受入れ等)の罪
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二十九条(不正の手段による補助金等の受交付等)の罪
航空機工業振興法(昭和三十三年法律第百五十号) 第二十九条(不正の手段による交付金等の受交付等)の罪
人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)第一条から第四条まで(人質による強要等、加重人質強要、人質殺害)の罪
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号) 第五百四十九条(詐欺更生)の罪
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号) 第二百五十五条(詐欺再生)の罪
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号) 第二百六十六条(詐欺更生)の罪
破産法(平成十六年法律第七十五号)第二百六十五条(詐欺破産)の罪
海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律(平成二十一年法律第五十五号)第二条第四号に係る海賊行為に係る同法第三条第一項(人質強要に係る海賊行為)又は第四条(人質強要に係る海賊行為致死傷)の罪
前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに 該当するときは、犯罪被害財産(第一項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合における当該部分を含む。以下この項において同じ。)を没収することができる。
前項各号に掲げる罪の犯罪行為が、団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により行われたもの、又は第三条第二項に規定する目的で行われたものであるとき、その他犯罪の性質に照らし、前項各号に掲げる罪の犯罪行為により受けた被害の回復に関し、犯人に対する損害賠償請求権 その他の請求権の行使が困難であると認められるとき。
当該犯罪被害財産について、その取得 若しくは処分 若しくは発生の原因につき事実を仮装し、又は当該犯罪被害財産を隠匿する行為が行われたとき。
当該犯罪被害財産について、情を知って、これを収受する行為が行われたとき。
次に掲げる財産は、これを没収する。
ただし、第九条第一項から第三項までの罪が薬物犯罪収益 又はその保有 若しくは処分に基づき得た財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産に係る場合において、これらの罪につき次に掲げる財産の全部を没収することが相当でないと認められるときは、その一部を没収することができる。
第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式 又は持分であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの
第九条第二項 又は第三項の罪に係る債権であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた薬物不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該薬物不法収益等)
薬物不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為により得た財産 又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
前三号の財産の果実として得た財産、前三号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産 その他前三号の財産の保有 又は処分に基づき得た財産
前項の規定により没収すべき財産について、当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無 その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、これを没収しないことができる。
前条第一項各号 又は第四項各号に掲げる財産(以下「不法財産」という。)が不法財産以外の財産と混和した場合において、当該不法財産を没収すべきときは、当該混和により生じた財産(次条第一項において「混和財産」という。)のうち当該不法財産(当該混和に係る部分に限る。)の額 又は数量に相当する部分を没収することができる。
第十三条の規定による没収は、不法財産 又は混和財産が犯人以外の者に帰属しない場合に限る。
ただし、犯人以外の者が、犯罪の後情を知って当該不法財産 又は混和財産を取得した場合(法令上の義務の履行として提供されたものを収受した場合 又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が不法財産 若しくは混和財産によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した場合を除く。)は、当該不法財産 又は混和財産が犯人以外の者に帰属する場合であっても、これを没収することができる。
地上権、抵当権 その他の権利がその上に存在する財産を第十三条の規定により没収する場合において、犯人以外の者が犯罪の前に当該権利を取得したとき、又は犯人以外の者が犯罪の後情を知らないで当該権利を取得したときは、これを存続させるものとする。
第十三条第一項各号に掲げる財産を没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無 その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から追徴することができる。
ただし、当該財産が犯罪被害財産であるときは、この限りでない。
前項ただし書の規定にかかわらず、第十三条第三項各号のいずれかに該当するときは、その犯罪被害財産の価額を犯人から追徴することができる。
第十三条第四項の規定により没収すべき財産を没収することができないとき、又は同条第五項の規定によりこれを没収しないときは、その価額を犯人から追徴する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して第九条第一項から第三項まで、第十条 又は第十一条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第三章 没収に関する手続等の特例
不法財産である債権等(不動産 及び動産以外の財産をいう。第十九条第一項 及び第二十一条において同じ。)が被告人以外の者(以下この条において「第三者」という。)に帰属する場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。
第十三条の規定により、地上権、抵当権 その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収しようとする場合において、当該第三者が被告事件の手続への参加を許されていないときも、前項と同様とする。
地上権、抵当権 その他の第三者の権利がその上に存在する財産を没収する場合において、第十五条第二項の規定により当該権利を存続させるときは、裁判所は、没収の言渡しと同時に、その旨を宣告しなければならない。
第十五条第二項の規定により存続させるべき権利について前項の宣告がない没収の裁判が確定したときは、当該権利を有する者で自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかったものは、当該権利について、これを存続させるべき場合に該当する旨の裁判を請求することができる。
前項の裁判があったときは、刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)に定める処分された没収物に係る補償の例により、補償を行う。
第一項 及び第二項に規定する財産の没収に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和三十八年法律第百三十八号)の規定を準用する。
裁判所は、第十三条第三項の規定により犯罪被害財産を没収し、又は第十六条第二項の規定により犯罪被害財産の価額を追徴するときは、その言渡しと同時に、没収すべき財産が犯罪被害財産である旨 又は追徴すべき価額が犯罪被害財産の価額である旨を示さなければならない。
第十三条第三項の規定により没収した犯罪被害財産 及び第十六条第二項の規定により追徴した犯罪被害財産の価額に相当する金銭は、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律(平成十八年法律第八十七号)に定めるところによる被害回復給付金の支給に充てるものとする。
没収された債権等は、検察官がこれを処分しなければならない。
債権の没収の裁判が確定したときは、検察官は、当該債権の債務者に対し没収の裁判の裁判書の抄本を送付してその旨を通知するものとする。
権利の移転について登記 又は登録(以下「登記等」という。)を要する財産を没収する裁判に基づき権利の移転の登記等を関係機関に嘱託する場合において、没収により効力を失った処分の制限に係る登記等 若しくは没収により消滅した権利の取得に係る登記等があり、又は当該没収に関して次章第一節の規定による没収保全命令 若しくは附帯保全命令に係る登記等があるときは、併せてその抹消を嘱託するものとする。
債権等の没収の執行に対する刑事補償法による補償の内容については、同法第四条第六項の規定を準用する。
第四章 保全手続
第一節 没収保全
裁判所は、第二条第二項第一号イ 若しくはロ 若しくは同項第二号ニに掲げる罪 又は第十条第三項の罪に係る被告事件に関し、この法律 その他の法令の規定により没収することができる財産(以下「没収対象財産」という。)に当たると思料するに足りる相当な理由があり、かつ、これを没収するため必要があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、没収保全命令を発して、当該没収対象財産につき、この節の定めるところにより、その処分を禁止することができる。
裁判所は、地上権、抵当権 その他の権利がその上に存在する財産について没収保全命令を発した場合 又は発しようとする場合において、当該権利が没収により消滅すると思料するに足りる相当な理由がある場合であって当該財産を没収するため必要があると認めるとき、又は当該権利が仮装のものであると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、附帯保全命令を別に発して、当該権利の処分を禁止することができる。
没収保全命令 又は附帯保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、没収の根拠となるべき法令の条項、処分を禁止すべき財産 又は権利の表示、これらの財産 又は権利を有する者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)の氏名、発付の年月日 その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長 又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
裁判長は、急速を要する場合には、第一項 若しくは第二項に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
没収保全(没収保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)に関する処分は、第一回公判期日までは、裁判官が行う。
この場合において、裁判官は、その処分に関し、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。
没収保全がされた不動産 又は動産については、刑事訴訟法の規定により押収することを妨げない。
裁判官は、前条第一項 又は第二項に規定する理由 及び必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官 又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会 又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項において同じ。)の請求により、同条第一項 又は第二項に規定する処分をすることができる。
司法警察員は、その請求により没収保全命令 又は附帯保全命令が発せられたときは、速やかに、関係書類を検察官に送付しなければならない。
第一項の規定による没収保全は、没収保全命令が発せられた日から三十日以内に当該保全がされた事件につき公訴が提起されないときは、その効力を失う。
ただし、共犯に対して公訴が提起された場合において、その共犯に関し、当該財産につき前条第一項に規定する理由があるときは、この限りでない。
裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、三十日ごとに、前項の期間を更新することができる。
この場合において、更新の裁判は、検察官に告知された時にその効力を生ずる。
第一項 又は前項の規定による請求は、請求する者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所の裁判官にしなければならない。
第一項 又は第四項の規定による請求を受けた裁判官は、没収保全に関し、裁判所 又は裁判長と 同一の権限を有する。
検察官は、第一項の規定による没収保全が、公訴の提起があったためその効力を失うことがなくなるに至ったときは、その旨を没収保全命令を受けた者(被告人を除く。)に通知しなければならない。
この場合において、その者の所在が分からないため、又はその他の理由によって、通知をすることができないときは、通知に代えて、その旨を検察庁の掲示場に七日間掲示して公告しなければならない。
没収保全に関する裁判で執行を要するものは、検察官の指揮によって、これを執行する。
没収保全命令の執行は、当該命令により処分を禁止すべき財産を有する者にその謄本が送達される前であっても、することができる。
没収保全がされた財産(以下「没収保全財産」という。)について当該保全がされた後にされた処分は、没収に関しては、その効力を生じない。
ただし、第三十七条第一項の規定により没収の裁判をすることができない場合における同項に規定する手続(第四十条第三項の規定により第三十七条第一項の規定を準用する手続を含む。)及び没収保全財産に対して実行することができる担保権の実行としての競売の手続による処分については、この限りでない。
裁判所は、没収保全財産を有する者の請求により、適当と認めるときは、決定をもって、当該没収保全財産に代わるものとして、その財産の価額に相当する金銭(以下「代替金」という。)の額を定め、その納付を許すことができる。
裁判所は、前項の請求について決定をするには、検察官の意見を聴かなければならない。
第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
代替金の納付があったときは、没収保全は、代替金についてされたものとみなす。
不動産(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第四十三条第一項に規定する不動産 及び同条第二項の規定により不動産とみなされるものをいう。以下この条(第七項本文を除く。)、次条、第二十九条第一項 及び第三十五条第一項において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
前項の没収保全命令の謄本 及び第二十三条第四項の規定による更新の裁判の裁判書の謄本(以下「更新の裁判の謄本」という。)は、不動産の所有者(民事執行法第四十三条第二項の規定により不動産とみなされる権利についてはその権利者とし、当該不動産 又は権利に係る名義人が異なる場合は名義人を含む。)に送達しなければならない。
不動産の没収保全命令の執行は、没収保全の登記をする方法により行う。
前項の登記は、検察事務官が嘱託する。
この場合において、嘱託は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて、これを行う。
不動産の没収保全の効力は、没収保全の登記がされた時に生ずる。
不動産の没収保全の効力が生じたときは、検察官は、当該不動産の所在する場所に公示書を掲示する方法 その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。
不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記の後に没収保全の登記がされた場合において、その仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするときは、没収保全の登記に係る処分の制限は、仮処分の登記に係る権利の取得 又は消滅と抵触しないものとみなす。
ただし、その権利の取得を当該債権者に対抗することができない者を不動産を有する者として当該没収保全の登記がされたときは、この限りでない。
民事執行法第四十六条第二項 及び第四十八条第二項の規定は、不動産の没収保全について準用する。
この場合において、
同法第四十六条第二項中
「債務者」とあるのは
「没収保全財産を有する者」と、
同法第四十八条第二項中
「前項」とあるのは
「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第二十七条第四項」と、
「執行裁判所」とあるのは
「登記の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と
読み替えるものとする。
登記される船舶、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)の規定により登録を受けた飛行機 若しくは回転翼航空機(第三十五条第一項において単に「航空機」という。)、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定により登録を受けた自動車(同項において単に「自動車」という。)、建設機械抵当法(昭和二十九年法律第九十七号)の規定により登記を受けた建設機械(同項において単に「建設機械」という。)又は小型船舶の登録等に関する法律(平成十三年法律第百二号)の規定により登録を受けた小型船舶(同項において単に「小型船舶」という。)の没収保全については、不動産の没収保全の例による。
動産(不動産 及び前条に規定する物以外の物をいう。以下この条において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
前項の没収保全命令の謄本 及び更新の裁判の謄本は、動産の所有者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)に送達しなければならない。
動産の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が所有者に送達された時に生ずる。
刑事訴訟法の規定による押収がされていない動産 又は同法第百二十一条第一項の規定により、看守者を置き、若しくは所有者 その他の者に保管させている動産について、没収保全の効力が生じたときは、検察官は、公示書をはり付ける方法 その他相当の方法により、その旨を公示する措置を執らなければならない。
債権の没収保全は、債権者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。以下この条において同じ。)に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、及び債務者に対し債権者への弁済を禁止する旨の没収保全命令を発して行う。
前項の没収保全命令の謄本 及び更新の裁判の謄本は、債権者 及び債務者に送達しなければならない。
債権の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が債務者に送達された時に生ずる。
民事執行法第百五十条、第百五十六条第一項 及び第四項 並びに第百六十四条第五項の規定は、債権の没収保全について準用する。
この場合において、
同法第百五十条 及び第百五十六条第一項中
「差押え」とあり、
及び同法第百五十条中
「差押命令」とあるのは
「没収保全」と、
同条中
「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは
「検察事務官は、検察官が没収保全命令の執行を指揮する書面に基づいて」と、
同法第百五十六条第一項 及び第四項中
「第三債務者」とあるのは
「債務者」と、
同項中
「執行裁判所」とあるのは
「没収保全命令を発した裁判所」と、
同法第百六十四条第五項中
「差し押さえられた債権」とあるのは
「没収保全がされた債権」と、
「支払 又は供託」とあるのは
「供託」と、
「裁判所書記官は、申立てにより」とあるのは
「検察事務官は、検察官が登記等の抹消の嘱託を指揮する書面に基づいて」と、
「債権執行の申立てが取り下げられたとき、又は差押命令の取消決定が確定したときも」とあるのは
「没収保全が効力を失つたとき、又は代替金が納付されたときも」と
読み替えるものとする。
第二十七条から前条までに規定する財産以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)の没収保全については、この条に特別の定めがあるもののほか、債権の没収保全の例による。
その他の財産権で債務者 又はこれに準ずる者がないもの(次項に規定するものを除く。)の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が権利者に送達された時に生ずる。
第二十七条第三項から第五項まで 及び第七項 並びに民事執行法第四十八条第二項の規定は、その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて準用する。
この場合において、
同項中
「前項」とあるのは
「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三十一条第三項において準用する同法第二十七条第四項」と、
「執行裁判所」とあるのは
「登記等の嘱託をした検察事務官の所属する検察庁の検察官」と
読み替えるものとする。
没収保全の理由 若しくは必要がなくなったとき、又は没収保全の期間が不当に長くなったときは、裁判所は、検察官 若しくは没収保全財産を有する者(その者が被告人であるときは、その弁護人を含む。)の請求により、又は職権で、決定をもって、没収保全命令を取り消さなければならない。
裁判所は、検察官の請求による場合を除き、前項の決定をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
没収保全命令は、無罪、免訴 若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号 及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において没収の言渡しがなかったときは、その効力を失う。
刑事訴訟法第三百三十八条第四号 又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における没収保全の効力については、第二十三条第三項 及び第四項の規定を準用する。
この場合において、
同条第三項中
「没収保全命令が発せられた日」とあるのは、
「公訴棄却の裁判が確定した日」と
読み替えるものとする。
没収保全が効力を失ったとき、又は代替金が納付されたときは、検察官は、速やかに、検察事務官に当該没収保全の登記等の抹消の嘱託をさせ、及び公示書の除去 その他の必要な措置を執らなければならない。
この場合において、没収保全の登記等の抹消の嘱託は、検察官がその嘱託を指揮する書面に基づいて、これを行う。
没収保全がされた後に、当該保全に係る不動産、船舶(民事執行法第百十二条に規定する船舶をいう。)、航空機、自動車、建設機械 若しくは小型船舶に対し強制競売の開始決定がされたとき 又は当該保全に係る動産(同法第百二十二条第一項に規定する動産をいう。第四十二条第二項において同じ。)に対し強制執行による差押えがされたときは、強制執行による売却のための手続は、没収保全が効力を失った後 又は代替金が納付された後でなければ、することができない。
没収保全がされている債権(民事執行法第百四十三条に規定する債権をいう。以下同じ。)に対し強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられたときは、当該差押えをした債権者は、差押えに係る債権のうち没収保全がされた部分については、没収保全が効力を失った後 又は代替金が納付された後でなければ、取立て 又は同法第百六十三条第一項の規定による請求をすることができない。
第一項の規定は、没収保全がされた後に強制執行による差押命令 又は差押処分が発せられた債権で、条件付 若しくは期限付であるもの 又は反対給付に係ること その他の事由によりその取立てが困難であるものについて準用する。
没収保全がされているその他の財産権(民事執行法第百六十七条第一項に規定するその他の財産権をいう。)に対する強制執行については、没収保全がされている債権に対する強制執行の例による。
金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)の債務者(以下「第三債務者」という。)は、没収保全がされた後に当該保全に係る債権について強制執行による差押命令 又は差押処分の送達を受けたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
第三債務者は、前項の規定による供託をしたときは、その事情を没収保全命令を発した裁判所に届け出なければならない。
第一項の規定による供託がされた場合においては、差押命令を発した執行裁判所 又は差押処分をした裁判所書記官は、供託された金銭のうち、没収保全がされた金銭債権の額に相当する部分については没収保全が効力を失ったとき 又は代替金が納付されたときに、
その余の部分については供託されたときに、配当 又は弁済金の交付を実施しなければならない。
第一項 及び第二項の規定は、強制執行による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。
この場合において、
同項中
「没収保全命令を発した裁判所」とあるのは、
「執行裁判所(差押処分がされている場合にあっては、当該差押処分をした裁判所書記官)」と
読み替えるものとする。
第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定による供託がされた場合における民事執行法第百六十五条(同法第百六十七条の十四第一項において同法第百六十五条(第三号 及び第四号を除く。)の規定を準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定の適用については、
同条第一号中
「第百五十六条第一項から第三項まで」とあるのは、
「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第三十六条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)」と
する。
没収保全がされる前に強制競売の開始決定 又は強制執行による差押えがされている財産については、没収の裁判をすることができない。
ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収対象財産であることの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。
没収対象財産の上に存在する地上権 その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて、当該処分の禁止がされる前に強制競売の開始決定 又は強制執行による差押えがされていた場合において、当該財産を没収するときは、その権利を存続させるものとし、没収の言渡しと同時に、その旨の宣告をしなければならない。
ただし、差押債権者の債権が仮装のものであるとき、差押債権者が没収により当該権利が消滅することの情を知りながら強制執行の申立てをしたものであるとき、又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。
強制競売の開始決定 又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令が発せられた場合における当該財産については、差押債権者(被告人である差押債権者を除く。)が被告事件の手続への参加を許されていないときは、没収の裁判をすることができない。
前項に規定する場合における財産の没収についても、同様とする。
第十八条第四項 及び第五項の規定は第二項の規定により存続させるべき権利について同項の宣告がない没収の裁判が確定した場合について、同条第六項の規定は前項の没収に関する手続について準用する。
裁判所は、強制競売の開始決定 又は強制執行による差押えがされている財産について没収保全命令を発した場合 又は発しようとする場合において、前条第一項ただし書に規定する事由があると思料するに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、決定をもって、強制執行の停止を命ずることができる。
検察官が前項の決定の裁判書の謄本を執行裁判所(差押処分がされている場合にあっては、当該差押処分をした裁判所書記官。以下この項において同じ。)に提出したときは、執行裁判所は、強制執行を停止しなければならない。
この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第三十九条第一項第七号の文書の提出があったものとみなす。
裁判所は、没収保全が効力を失ったとき、代替金が納付されたとき、第一項の理由がなくなったとき、又は強制執行の停止の期間が不当に長くなったときは、検察官 若しくは差押債権者の請求により、又は職権で、決定をもって、同項の決定を取り消さなければならない。
第三十二条第二項の規定は、この場合に準用する。
没収保全財産の上に存在する担保権で、当該保全がされた後に生じたもの 又は附帯保全命令による処分の禁止がされたものの実行(差押えを除く。)は、没収保全 若しくは附帯保全命令による処分の禁止が効力を失った後 又は代替金が納付された後でなければ、することができない。
担保権の実行としての競売の手続が開始された後に当該担保権について附帯保全命令が発せられた場合において、検察官が当該命令の謄本を提出したときは、執行裁判所は、その手続を停止しなければならない。
この場合における民事執行法の規定の適用については、同法第百八十三条第一項第七号(同法第百八十九条、第百九十二条 又は第百九十三条第二項において準用する場合を含む。)の文書の提出があったものとみなす。
第三十五条の規定は、没収保全がされている財産に対し滞納処分(国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)による滞納処分 及びその例による滞納処分をいう。以下同じ。)による差押えがされた場合 又は没収保全がされている財産を有する者について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定 若しくは承認援助手続における外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)第二十八条第一項の規定による禁止の命令(第三項において「破産手続開始決定等」という。)がされた場合 若しくは没収保全がされている財産を有する会社 その他の法人について更生手続開始の決定 若しくは特別清算開始の命令(同項において「更生手続開始決定等」という。)がされた場合におけるこれらの手続の制限について準用する。
第三十六条の規定は没収保全がされている金銭債権に対し滞納処分による差押えがされた場合 又は滞納処分による差押えがされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について、
同条第一項、第二項 及び第四項の規定は没収保全がされている金銭債権に対し仮差押えの執行がされた場合 又は仮差押えの執行がされている金銭債権について没収保全がされた場合における第三債務者の供託について準用する。
第三十七条の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し仮差押えの執行がされていた場合 又は没収対象財産の上に存在する地上権 その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に仮差押えの執行がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第一項本文の規定は没収保全がされる前に当該保全に係る財産に対し滞納処分による差押えがされていた場合 又は没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する者について破産手続開始決定等がされていた場合 若しくは没収保全がされる前に当該保全に係る財産を有する会社 その他の法人について更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について、同条第二項本文の規定は没収対象財産の上に存在する地上権 その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものについて当該処分の禁止がされる前に滞納処分による差押えがされていた場合 又は没収対象財産の上に存在する地上権 その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する者について当該処分の禁止がされる前に破産手続開始決定等がされていた場合 若しくは没収対象財産の上に存在する地上権 その他の権利であって附帯保全命令による処分の禁止がされたものを有する会社 その他の法人について当該処分の禁止がされる前に更生手続開始決定等がされていた場合におけるこれらの財産の没収の制限について準用する。
第三十八条の規定は、仮差押えの執行がされている財産について没収保全命令を発した場合 又は発しようとする場合における強制執行の停止について準用する。
附帯保全命令は、当該命令に係る没収保全が効力を有する間、その効力を有する。
ただし、代替金が納付されたときは、この限りでない。
附帯保全命令による処分の禁止については、特別の定めがあるもののほか、没収保全に関する規定を準用する。
第二節 追徴保全
裁判所は、第二条第二項第一号イ 若しくはロ 若しくは同項第二号ニに掲げる罪 又は第十条第三項の罪に係る被告事件に関し、この法律 その他の法令の規定により不法財産の価額を追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、追徴の裁判の執行をすることができなくなるおそれがあり、又はその執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、追徴保全命令を発して、被告人に対し、その財産の処分を禁止することができる。
追徴保全命令は、追徴の裁判の執行のため保全することを相当と認める金額(第四項において「追徴保全額」という。)を定め、特定の財産について発しなければならない。
ただし、動産については、目的物を特定しないで発することができる。
追徴保全命令においては、処分を禁止すべき財産について、追徴保全命令の執行の停止を得るため、又は追徴保全命令の執行としてされた処分の取消しを得るために被告人が納付すべき金銭(以下「追徴保全解放金」という。)の額を定めなければならない。
追徴保全命令には、被告人の氏名、罪名、公訴事実の要旨、追徴の根拠となるべき法令の条項、追徴保全額、処分を禁止すべき財産の表示、追徴保全解放金の額、発付の年月日 その他最高裁判所規則で定める事項を記載し、裁判長 又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
第二十二条第四項 及び の規定は、追徴保全(追徴保全命令による処分の禁止をいう。以下同じ。)について準用する。
裁判官は、第十六条第三項の規定により追徴すべき場合に当たると思料するに足りる相当な理由がある場合において、前条第一項に規定する必要があると認めるときは、公訴が提起される前であっても、検察官の請求により、同項に規定する処分をすることができる。
第二十三条第三項本文 及び第四項から第六項までの規定は、前項の規定による追徴保全について準用する。
追徴保全命令は、検察官の命令によってこれを執行する。
この命令は、民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による仮差押命令と同一の効力を有する。
追徴保全命令の執行は、追徴保全命令の謄本が被告人 又は被疑者に送達される前であっても、これをすることができる。
追徴保全命令の執行は、この法律に特別の定めがあるもののほか、民事保全法 その他仮差押えの執行の手続に関する法令の規定に従ってする。
この場合において、これらの法令の規定において仮差押命令を発した裁判所が保全執行裁判所として管轄することとされる仮差押えの執行については、第一項の規定による命令を発した検察官の所属する検察庁の対応する裁判所が管轄する。
追徴保全命令に基づく 仮差押えの執行がされた金銭債権の債務者が、当該債権の額に相当する額の金銭を供託したときは、債権者の供託金の還付請求権につき、当該仮差押えの執行がされたものとみなす。
前項の規定は、追徴保全解放金の額を超える部分に係る供託金については、これを適用しない。
追徴保全解放金が納付された後に、追徴の裁判が確定したとき、又は仮納付の裁判の言渡しがあったときは、納付された金額の限度において追徴 又は仮納付の裁判の執 行があったものとみなす。
追徴の言渡しがあった場合において、納付された追徴保全解放金が追徴の金額を超えるときは、その超過額は、被告人に還付しなければならない。
裁判所は、追徴保全の理由 若しくは必要がなくなったとき、又は追徴保全の期間が不当に長くなったときは、検察官、被告人 若しくはその弁護人の請求により、又は職権で、決定をもって、追徴保全命令を取り消さなければならない。
第三十二条第二項の規定は、この場合に準用する。
追徴保全命令は、無罪、免訴 若しくは公訴棄却(刑事訴訟法第三百三十八条第四号 及び第三百三十九条第一項第一号の規定による場合を除く。)の裁判の告知があったとき、又は有罪の裁判の告知があった場合において追徴の言渡しがなかったときは、その効力を失う。
刑事訴訟法第三百三十八条第四号 又は第三百三十九条第一項第一号の規定による公訴棄却の裁判があった場合における追徴保全命令の効力については、第三十三条第二項の規定を準用する。
追徴保全命令が効力を失ったとき、又は追徴保全解放金が納付されたときは、検察官は、速やかに、第四十四条第一項の規定によりした命令を取り消し、かつ、追徴保全命令に基づく仮差押えの執行の停止 又は既にした仮差押えの執行の取消しのため、必要な措置を執らなければならない。
第三節 雑則
没収保全 又は追徴保全(追徴保全命令に基づく仮差押えの執行を除く。以下この節において同じ。)に関する書類の送達については、最高裁判所規則に特別の定めがある場合を除き、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。
この場合において、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百十条第三項に規定する公示送達以外の公示送達については、その経過により送達の効力が生ずる期間は、同法第百十二条第一項本文 及び第二項の規定にかかわらず、七日間とする。
上訴の提起期間内の事件でまだ上訴の提起がないもの 又は上訴中の事件で訴訟記録が上訴裁判所に到達していないものについて、没収保全 又は追徴保全に関する処分をすべき場合には、原裁判所がこれをしなければならない。
没収保全 又は追徴保全に関して裁判所のした決定に対しては、抗告をすることができる。
ただし、没収 又は追徴すべき場合に該当すると思料するに足りる相当な理由がないこと(第二十二条第二項の規定による決定に関しては同項に規定する理由がないことを、第三十八条第一項(第四十一条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に関しては第三十八条第一項に規定する理由がないことを含む。)を理由としてすることはできない。
没収保全 又は追徴保全に関して裁判官のした裁判に不服がある者は、その裁判官の所属する裁判所(簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては、当該簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。
前項ただし書の規定は、この場合に準用する。
前項の規定による不服申立てに関する手続については、刑事訴訟法第四百二十九条第一項に規定する裁判官の裁判の取消し 又は変更の請求に係る手続の例による。
没収保全 及び追徴保全に関する手続については、この法律に特別の定めがあるもののほか、刑事訴訟法の規定を準用する。
第六章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続等
外国の刑事事件(麻薬特例法第十六条第二項に規定する薬物犯罪等に当たる行為に係るものを除く。)に関して、当該外国から、没収 若しくは追徴の確定裁判の執行 又は没収 若しくは追徴のための財産の保全の共助の要請があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該要請に係る共助をすることができる。
共助犯罪(共助の要請において犯されたとされている犯罪をいう。以下この項において同じ。)に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、当該行為が第二条第二項第一号イ 若しくはロ 若しくは同項第二号ニに掲げる罪 又は第十条第三項の罪に当たるものでないとき。
共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によればこれについて刑罰を科すことができないと認められるとき。
共助犯罪に係る事件が日本国の裁判所に係属するとき、又はその事件について日本国の裁判所において確定判決を経たとき。
没収の確定裁判の執行の共助 又は没収のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、要請に係る財産が日本国の法令によれば共助犯罪について没収の裁判をし、又は没収保全をすることができる財産に当たるものでないとき。
追徴の確定裁判の執行の共助 又は追徴のための保全の共助については、共助犯罪に係る行為が日本国内において行われたとした場合において、日本国の法令によれば共助犯罪について追徴の裁判をし、又は追徴保全をすることができる場合に当たるものでないとき。
没収の確定裁判の執行の共助については要請に係る財産を有し 又はその財産の上に地上権、抵当権 その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者が、追徴の確定裁判の執行の共助については当該裁判を受けた者が、自己の責めに帰することのできない理由により、当該裁判に係る手続において自己の権利を主張することができなかったと認められるとき。
没収 又は追徴のための保全の共助については、要請国の裁判所 若しくは裁判官のした没収 若しくは追徴のための保全の裁判に基づく要請である場合 又は没収 若しくは追徴の裁判の確定後の要請である場合を除き、共助犯罪に係る行為が行われたと疑うに足りる相当な理由がないとき、又は当該行為が日本国内で行われたとした場合において第二十二条第一項 若しくは第四十二条第一項に規定する理由がないと認められるとき。
麻薬特例法第十六条第二項に規定する薬物犯罪等に当たる行為に係る外国の刑事事件に関して、当該外国から、条約に基づかないで、前項の共助の要請があったときは、麻薬特例法第二十一条各号のいずれかに該当する場合を除き、その要請に係る共助をすることができる。
地上権、抵当権 その他の権利がその上に存在する財産に係る没収の確定裁判の執行の共助をするに際し、日本国の法令により当該財産を没収するとすれば当該権利を存続させるべき場合に当たるときは、これを存続させるものとする。
不法財産 又は麻薬特例法第十一条第一項各号 若しくは第三項各号に掲げる財産(以下この条において「不法財産等」という。)に代えて、その価額が不法財産等の価額に相当する財産であって当該裁判を受けた者が有するものを没収する確定裁判の執行に係る共助の要請にあっては、当該確定裁判は、この法律による共助の実施については、その者から当該財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。
前項の規定は、不法財産等に代えてその価額が不法財産等の価額に相当する財産を没収するための保全に係る共助の要請について準用する。
共助の要請の受理は、外務大臣が行う。
ただし、条約に基づき法務大臣が共助の要請の受理を行うこととされているとき、又は緊急 その他特別の事情がある場合において外務大臣が同意したときは、法務大臣が行うものとする。
前項ただし書の規定により法務大臣が共助の要請の受理を行う場合においては、法務大臣は、外務大臣に対し、共助に関する事務の実施に関し、必要な協力を求めることができる。
共助の要請が没収 又は追徴の確定裁判の執行に係るものであるときは、検察官は、裁判所に対し、共助をすることができる場合に該当するかどうかについて審査の請求をしなければならない。
裁判所は、審査の結果、審査の請求が不適法であるときは、これを却下する決定をし、共助の要請に係る確定裁判の全部 若しくは一部について共助をすることができる場合に該当するとき、又はその全部について共助をすることができない場合に該当するときは、それぞれその旨の決定をしなければならない。
裁判所は、没収の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定をする場合において、第五十九条第三項の規定により存続させなければならない権利があるときは、当該権利を存続させる旨の決定を同時にしなければならない。
裁判所は、追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をするときは、追徴すべき日本円の金額を同時に示さなければならない。
第一項の規定による審査においては、共助の要請に係る確定裁判の当否を審査することができない。
第一項の規定による審査に関しては、次に掲げる者(以下「利害関係人」という。)が当該審査請求事件の手続への参加を許されていないときは、共助をすることができる場合に該当する旨の決定をすることができない。
没収の確定裁判の執行の共助については、要請に係る財産を有し、若しくはその財産の上に地上権、抵当権 その他の権利を有すると思料するに足りる相当な理由のある者 又はこれらの財産 若しくは権利について没収保全がされる前に強制競売の開始決定、強制執行による差押え 若しくは仮差押えの執行がされている場合における差押債権者 若しくは仮差押債権者
追徴の確定裁判の執行の共助については、当該裁判を受けた者
裁判所は、審査の請求について決定をするときは、検察官 及び審査請求事件の手続への参加を許された者(以下「参加人」という。)の意見を聴かなければならない。
裁判所は、参加人が口頭で意見を述べたい旨を申し出たとき、又は裁判所において証人 若しくは鑑定人を尋問するときは、公開の法廷において審問期日を開き、参加人に当該期日に出頭する機会を与えなければならない。
この場合において、参加人が出頭することができないときは、審問期日に代理人を出頭させ、又は書面により意見を述べる機会を与えたことをもって、参加人に出頭する機会を与えたものとみなす。
検察官は、前項の審問期日の手続に立ち会うことができる。
検察官 及び参加人は、審査の請求に係る決定に対し、抗告をすることができる。
抗告裁判所の決定に対しては、刑事訴訟法第四百五条各号に定める事由があるときは、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
前二項の抗告の提起期間は、十四日とする。
没収 又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定したときは、当該没収 又は追徴の確定裁判は、共助の実施に関しては、日本国の裁判所が言い渡した没収 又は追徴の確定裁判とみなす。
没収 又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請をした外国(第三項において「執行共助の要請国」という。)から、当該共助の実施に係る財産 又はその価額に相当する金銭(以下この条において「執行財産等」という。)の譲与の要請があったときは、その全部 又は一部を譲与することができる。
法務大臣は、執行財産等の全部 又は一部を譲与することが相当であると認めるときは、没収 又は追徴の確定裁判の執行の共助に必要な措置を命じた地方検察庁の検事正に対し、当該執行財産等の譲与のための保管を命ずるものとする。
法務大臣は、執行財産等について、次の各号のいずれかに 該当する場合には、前項に規定する検事正に対し、当該執行財産等の全部 又は一部を仮に保管することを命ずることができる。
執行共助の要請国から執行財産等の譲与の要請があった場合において、これに応ずるか否かの判断をするために必要があると認めるとき。
執行共助の要請国から執行財産等の譲与の要請がされると思料する場合において、必要があると認めるとき。
没収 又は追徴の確定裁判の執行の共助の要請につき共助をすることができる場合に該当する旨の決定が確定した場合において、当該要請に係る確定裁判が取り消されたとき その他その効力がなくなったときは、裁判所は、検察官 又は利害関係人の請求により、決定をもって、共助をすることができる場合に該当する旨の決定を取り消さなければならない。
前項の取消しの決定が確定したときは、刑事補償法に定める没収 又は追徴の執行による補償の例により、補償を行う。
第六十三条の規定は、第一項の請求に係る決定について準用する。
共助の要請が没収のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、没収保全命令を発して要請に係る財産につき その処分を禁止することを請求しなければならない。
この場合において、検察官は、必要と認めるときは、附帯保全命令を発して当該財産の上に存在する地上権、抵当権 その他の権利の処分を禁止することを請求することができる。
第六十二条第一項の審査の請求があった後は、没収保全に関する処分は、審査の請求を受けた裁判所が行う。
共助の要請が追徴のための保全に係るものであるときは、検察官は、裁判官に、追徴保全命令を発して、追徴の裁判を受けるべき者に対しその財産の処分を禁止することを請求しなければならない。
前条第二項の規定は、追徴保全に関する処分について準用する。
没収 又は追徴のための保全の共助の要請が公訴の提起されていない事件に関してされた場合において、没収保全命令 又は追徴保全命令が発せられた日から四十五日以内に要請国から当該事件につき公訴が提起された旨の通知がないときは、当該没収保全 又は追徴保全命令は、その効力を失う。
要請国から、前項の期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときは、裁判官は、検察官の請求により、三十日間を限り、保全の期間を更新することができる。
更新された期間内に公訴を提起できないことについてやむを得ない事由がある旨理由を付して通知があったときも、同様とする。
共助の要請を撤回する旨の通知があったときは、検察官は、速やかに、審査、没収保全 若しくは追徴保全の請求を取り消し、又は没収保全命令 若しくは追徴保全命令の取消しを請求しなければならない。
前項の請求があったときは、裁判所 又は裁判官は、速やかに、没収保全命令 又は追徴保全命令を取り消さなければならない。
裁判所 又は裁判官は、この章の規定による審査をし、又は没収保全 若しくは追徴保全に関する処分をするため必要があるときは、事実の取調べをすることができる。
この場合においては、証人を尋問し、検証を行い、又は鑑定、通訳 若しくは翻訳を命ずることができる。
検察官は、この章の規定による没収保全 若しくは追徴保全の請求 又は没収保全命令 若しくは追徴保全命令の執行に関して必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
関係人の出頭を求めてこれを取り調べること。
書類 その他の物の所有者、所持者 又は保管者にその物の提出を求めること。
公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めること。
電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者 又は自己の業務のために不特定 若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時 その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間(延長する場合には、通じて六十日を超えない期間)を定めて、これを消去しないよう、書面で求めること。
裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証をすること。
検察官は、検察事務官に前項の処分をさせることができる。
この章の規定による審査、没収保全 若しくは追徴保全 又は令状の発付の請求は、請求する検察官の所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所 又はその裁判官にしなければならない。
この章に特別の定めがあるもののほか、裁判所 若しくは裁判官のする審査、処分 若しくは令状の発付、検察官 若しくは検察事務官のする処分 又は裁判所の審査への利害関係人の参加については第三章 及び第四章、刑事訴訟法(第一編第二章 及び第五章から第十三章まで、第二編第一章、第三編第一章 及び第四章 並びに第七編に限る。)、刑事訴訟費用に関する法令 並びに刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法の規定を、共助の要請を受理した場合における措置については国際捜査共助等に関する法律(昭和五十五年法律第六十九号)第四条、第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)及び第三項 並びに第七条第一項 並びに逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)第八条第二項 並びに第十一条第一項 及び第二項の規定を、それぞれその性質に反しない限り、準用する。
第六十四条の二第一項に規定する譲与の要請の受理 及び当該要請を受理した場合における措置については、国際捜査共助等に関する法律第三条、第四条、第十四条第一項前段、第五項 及び第六項 並びに第十六条第一項の規定を準用する。
この場合において、
同法第三条の見出し中
「証拠の送付」とあるのは
「執行財産等の引渡し」と、
同条第一項中
「証拠の送付」とあるのは
「執行財産等(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第六十四条の二第一項に規定する執行財産等をいう。以下同じ。)の引渡し」と、
同条第二項中
「証拠の送付」とあるのは
「執行財産等の引渡し」と、
同法第四条中
「共助要請書」とあるのは
「譲与要請書」と、
同法第十四条第一項前段中
「証拠の収集を終えた」とあるのは
「執行財産等を保管するに至つた」と、
「収集した証拠」とあるのは
「当該執行財産等」と、
「送付しなければ」とあるのは
「引き渡さなければ」と、
同条第五項中
「第一項、第三項 又は前項の規定による送付」とあるのは
「第一項の規定による引渡し」と、
「証拠」とあるのは
「執行財産等」と、
「返還」とあるのは
「処分」と
読み替えるものとする。
逃亡犯罪人引渡法第一条第三項に規定する引渡犯罪に係る行為が日本国内において行われたとしたならば第六条の二第一項第二号に掲げる罪に係る同項 若しくは同条第二項の罪 又は第十条第三項の罪に当たるものである場合における同法第二条の規定の適用については、
同条第三号 及び第四号中
「三年」とあるのは、
「二年」と
する。
第七章 雑則
この法律に定めるもののほか、没収保全と滞納処分との手続の調整について必要な事項で、滞納処分に関するものは、政令で定める。
この法律に定めるもののほか、第十八条の規定による第三者の参加 及び裁判に関する手続、第四章に規定する没収保全 及び追徴保全に関する手続 並びに前章に規定する国際共助手続について必要な事項(前項に規定する事項を除く。)は、最高裁判所規則で定める。
この法律の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。