労働災害防止団体法
第一章 総則
この法律において「労働災害」とは、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二条第一号に規定する労働災害をいう。
この法律において「指定業種」とは、厚生労働大臣が、労働災害の発生率 その他の事情を考慮し、労働政策審議会の意見をきいて指定する業種をいう。
第二章 労働災害防止団体
第一節 通則
この法律による労働災害の防止を目的として組織された団体(以下「労働災害防止団体」という。)は、次に掲げるものとする。
中央労働災害防止協会(以下「中央協会」という。)
労働災害防止協会(以下「協会」という。)
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第七十八条(代表者の行為についての損害賠償責任)の規定は、労働災害防止団体に準用する。
労働災害防止団体は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
第二節 中央労働災害防止協会
中央協会は、前項の業務のほか、国からの委託を受けて、次の業務を行うことができる。
第一項第三号の業務は、指定業種に属する事業以外の事業の事業主 及びその事業主の団体に対して行なうものとする。
中央協会は、第一項の業務を行なうにあたつては、労働安全衛生法に基づいて策定された労働災害防止計画に即応するように努めなければならない。
中央協会は、前条第一項の業務のうち労働災害の防止に関する技術的な事項に係るものを行なわせるため、安全管理士 及び衛生管理士を置かなければならない。
前項の安全管理士 及び衛生管理士は、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから選任しなければならない。
前二号に掲げるもののほか、労働災害の防止のための活動を行なう団体で定款で定めるもの
中央協会は、前条第二号 及び第三号の法人 その他の団体が中央協会に加入しようとするときは、正当な理由がないのにその加入を拒み、又はその加入について不当な条件をつけてはならない。
中央協会は、全国を通じて一個設立することができるものとする。
発起人は、定款を作成し、これを会議の日時 及び場所とともにその会議開催日の一月前までに公告して、創立総会を開かなければならない。
創立総会の議事は、会員の資格を有する法人 その他の団体でその会日までに発起人に対して会員となる旨を申し出たものの二分の一以上が出席して、その出席者の議決権の三分の二以上で決する。
第三十一条 及び第三十一条の二の規定は、創立総会の議決に準用する。
中央協会は、成立の日から二週間以内に、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
中央協会の定款には、次の事項を記載しなければならない。
中央協会に、役員として、会長一人、理事五人以上 及び監事二人以上を置く。
役員は、定款で定めるところにより、総会において選任し、又は解任する。
ただし、設立当時の役員は、創立総会において選任する。
会長の任期は、三年以内において定款で定める期間とし、理事 及び監事の任期は、二年以内において定款で定める期間とする。
ただし、設立当時の会長の任期は、一年六月以内において創立総会で定める期間とし、設立当時の理事 及び監事の任期は、一年以内において創立総会で定める期間とする。
中央協会と会長との利益が相反する事項については、会長は、代表権を有しない。
この場合には、定款で定めるところにより、監事が中央協会を代表する。
会長は、通常総会の開催日の一週間前までに、事業報告書、貸借対照表、収支決算書 及び財産目録を監事に提出し、かつ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。
会長は、監事の意見書を添えて前項に規定する書類を通常総会に提出し、その承認を求めなければならない。
前項の監事の意見書については、これに記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。)の添付をもつて、当該監事の意見書の添付に代えることができる。
この場合において、会長は、当該監事の意見書を添付したものとみなす。
前三項に定めるもののほか、参与に関し必要な事項は、定款で定める。
会長は、定款で定めるところにより、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
総会員の五分の一以上から総会の目的である事項を示して請求があつたときは、理事は、臨時総会を招集しなければならない。
ただし、総会員の五分の一の割合については、定款でこれと異なる割合を定めることができる。
総会の招集の通知は、総会の日より少なくとも五日前に、その総会の目的である事項を示し、定款で定めた方法に従つてしなければならない。
総会においては、前条の規定によりあらかじめ通知をした事項についてのみ、議決をすることができる。
ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。
総会の議事は、総会員の二分の一以上が出席して、その出席者の議決権の過半数で決する。
ただし、前条第一項第一号、第三号 及び第四号の事項に係る議事は、総会員の二分の一以上が出席して、その出席者の議決権の三分の二以上の多数で決する。
前二項の規定は、定款に別段の定めがある場合には、適用しない。
中央協会は、前項第一号の規定により解散したときは、解散の日から二週間以内に、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。
中央協会がその債務につきその財産をもつて完済することができなくなつた場合には、裁判所は、理事 若しくは債権者の申立てにより 又は職権で、破産手続開始の決定をする。
前項に規定する場合には、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
清算人は、第三十二条第一項第一号の規定による解散の場合には総会において選任し、同項第三号の規定による解散の場合には厚生労働大臣が選任する。
前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人 若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。
清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。
この場合において、その期間は、二月を下ることができない。
前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。
ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
第一項の公告は、官報に掲載してする。
前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、中央協会の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。
清算中に中央協会の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになつたときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。
前項に規定する場合において、清算中の中央協会が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。
総会が前項の議決をしないとき 又はすることができないときは、清算人は、厚生労働大臣の認可を受けて、財産処分の方法を定めなければならない。
裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。
厚生労働大臣は、前項に規定する裁判所に対し、意見を述べることができる。
清算人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
裁判所は、第三十三条の二の規定により清算人を選任した場合には、中央協会が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。
この場合においては、裁判所は、当該清算人 及び監事の陳述を聴かなければならない。
前二条の規定は、前項の規定により裁判所が検査役を選任した場合について準用する。
この場合において、
前条中
「清算人 及び監事」とあるのは、
「中央協会 及び検査役」と
読み替えるものとする。
第三節 労働災害防止協会
協会は、前項の業務のほか、当該指定業種に係る労働災害の防止に関し、次の業務を行なうことができる。
協会は、前二項の業務のほか、厚生労働大臣の要請があつたときは、当該指定業種に属する事業の事業主 及び その事業主の団体で会員でないものに対して第一項第二号の業務を行なうことができる。
第十一条第四項 及び第十二条の規定は、協会に準用する。
この場合において、
第十一条第四項中
「第一項」とあり、
第十二条第一項中
「前条第一項」とあるのは、
「第三十六条第一項から第三項まで」と
読み替えるものとする。
前号の事項の実施を確保するための措置に関する事項
労働災害防止規程は、厚生労働大臣の認可を受けなければその効力を生じない。
その変更についても、同様とする。
厚生労働大臣は、前項の認可の申請に係る労働災害防止規程が次の各号のいずれにも適合すると認めるときでなければ、同項の認可をしてはならない。
厚生労働大臣は、労働災害防止規程が前項各号のいずれかに適合しなくなつたと認めるときは、当該協会に対してその労働災害防止規程を変更すべきことを命じ、又は第一項の認可を取り消さなければならない。
厚生労働大臣は、第一項の認可に関する処分 又は前項の規定による変更の命令 若しくは認可の取消しをしようとするときは、労働政策審議会の意見を聞かなければならない。
協会は、労働災害防止規程を設定しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、関係労働者を代表する者 及び労働災害の防止に関し学識経験がある者の意見を聞かなければならない。
これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
前二項の規定は、労働災害防止規程が会員の事業について適用される労働協約と抵触するときは、その限度においては、適用しない。
第十四条第二項 及び第十五条の規定は、協会に準用する。
協会は、事業主である会員が当該指定業種に属する事業に常時使用する労働者の総数が、当該指定業種に属するすべての事業に常時使用される労働者の総数に厚生労働省令で定める率を乗じて得た数をこえることとなるときでなければ、設立することができない。
協会を設立するには、その会員になろうとする二十人以上のものが発起人となることを要する。
第十八条から第二十条までの規定は、協会の設立に準用する。
協会の定款には、次の事項を記載しなければならない。
第二十一条第二項の規定は、協会の定款の変更に準用する。
協会に、役員として、会長一人、理事五人以上 及び監事二人以上を置く。
第二十二条第二項から第四項まで 及び第二十三条から第二十六条まで 並びに第二十七条第二項から第四項までの規定は、協会の役員 及び参与に準用する。
会長は、定款で定めるところにより、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。
第二十八条の二、第二十八条の三、第二十九条第二項 及び第三十条から第三十一条の二までの規定は、協会の総会に準用する。
この場合において、
第三十条ただし書中
「前条第一項第一号、第三号 及び第四号」とあるのは、
「第四十八条第三項第一号 及び第三号から第五号まで」と
読み替えるものとする。
会員の総数が三百人をこえる協会は、定款で定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができる。
総代の定数は、その選挙の時における会員の総数の十分の二(会員の総数が千人をこえる協会にあつては、二百人)を下つてはならない。
総代の任期は、三年以内において定款で定める期間とする。
総会に関する規定は、総代会に準用する。
ただし、総代会においては、解散の議決をすることができない。
総代会においては、総代の選挙(補欠の総代の選挙を除く。)をすることができない。
第三十二条から第三十五条までの規定は、協会の解散 及び清算に準用する。
第四節 監督
労働災害防止団体は、毎事業年度、通常総会の終了の日から一月以内に、事業報告書、貸借対照表、収支決算書 及び財産目録を厚生労働大臣に提出しなければならない。
労働災害防止団体は、前項の規定により同項に規定する書類を厚生労働大臣に提出するときは、当該書類に関する監事の意見書を添付しなければならない。
厚生労働大臣は、この法律の適正かつ円滑な実施を確保するため必要があると認めるときは、労働災害防止団体に対して、その業務に関し必要な報告を命じ、又はその職員に、労働災害防止団体の事務所に立ち入り、帳簿、書類 その他の必要な物件を検査させることができる。
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
厚生労働大臣は、労働災害防止団体の運営がこの法律 若しくはこの法律に基づく命令 若しくは定款に違反し、又は著しく不当であると認めるときは、その労働災害防止団体に対してこれを是正すべきことを勧告し、及び その勧告によつてもなお改善されない場合に次の各号のいずれかに掲げる処分をすることができる。
厚生労働大臣は、協会が第四十三条第二項に規定する要件を欠くに至つたと認めるときは、その設立の認可を取り消すことができる。
第五節 補則
労働災害防止団体の役員 若しくは職員 又はこれらの職にあつた者でその職務に関して前項の秘密を知り得たものも、同項と同様とする。
第三章 雑則
鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第四条に規定する鉱業に係る業種の指定に関しては、
第二条第二項中
「厚生労働大臣」とあるのは
「厚生労働大臣 及び経済産業大臣」と、
「労働政策審議会」とあるのは
「労働政策審議会 及び中央鉱山保安協議会」と
する。
鉱業法第四条に規定する鉱業に係る協会に関しては、
第二章(労働災害防止規程に係る部分 及び第五十二条を除く。)中
「厚生労働大臣」とあるのは
「厚生労働大臣 及び経済産業大臣」と、
「厚生労働省令」とあるのは
「厚生労働省令、経済産業省令」と、
第五十二条中
「厚生労働大臣」とあるのは
「厚生労働大臣 又は経済産業大臣」と
する。
この法律は、国 及び地方公共団体が行う事業については、適用しない。
第二章(労働災害防止規程に係る部分に限る。)の規定は、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第二条第二項 及び第四項の規定による鉱山における保安(衛生に関する通気 及び災害時の救護を含む。)に関しては、適用しない。
この法律は、船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員に関しては、適用しない。
第四章 罰則
第五十六条の規定に違反した者は、六月以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
第五十二条第一項の規定により報告を命ぜられて、報告せず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした労働災害防止団体の発起人、役員 又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。
この法律に基づいて労働災害防止団体が行うことができる業務以外の業務を行つたとき。
第十条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
第十四条第二項(第四十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
第三十二条の二第二項 又は第三十三条の七第一項(これらの規定を第五十条において準用する場合を含む。)の規定による破産手続開始の申立てをしなかつたとき。
第三十三条の五第一項 又は第三十三条の七第一項(これらの規定を第五十条において準用する場合を含む。)の規定による公告をせず、又は不正の公告をしたとき。
第三十四条(第五十条において準用する場合を含む。)の認可を受けないで財産処分をしたとき。
第五十一条第一項に規定する書類を同項に規定する期間内に提出しなかつたとき。
第九条第三項の規定に違反したもの(法人 その他の団体であるときは、その代表者)は、十万円以下の過料に処する。