借地借家法
第一章 総則
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
借地権
建物の所有を目的とする地上権 又は土地の賃借権をいう。
借地権者
借地権を有する者をいう。
借地権設定者
借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
転借地権
建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。
転借地権者
転借地権を有する者をいう。
第二章 借地
第一節 借地権の存続期間等
借地権の存続期間は、三十年とする。
ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。
ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。
前条の異議は、借地権設定者 及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過 及び土地の利用状況 並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として 又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者 又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日 又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。
ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。
ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条 及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。
転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。
前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求 又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄 若しくは消滅の請求 又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する。
第一項に規定する地上権の放棄 又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第二項に規定する地上権の消滅の請求 又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。
転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第二項の規定を適用する。
この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
第二節 借地権の効力
前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日 及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。
ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
地代 又は土地の借賃(以下この条 及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税 その他の公課の増減により、土地の価格の上昇 若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
借地権設定者は、弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。
前項の先取特権は、地上権 又は土地の賃貸借の登記をすることによって、その効力を保存する。
第一項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有する。
ただし、共益費用、不動産保存 及び不動産工事の先取特権 並びに地上権 又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権 及び抵当権には後れる。
前三項の規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。
前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部 又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。
第十条、第十三条 及び第十四条の規定に反する特約で借地権者 又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
第三節 借地条件の変更等
建物の種類、構造、規模 又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化 その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。
裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過 その他一切の事情を考慮しなければならない。
転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。
裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで 又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求 又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者 及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情 その他一切の事情を考慮しなければならない。
前条第五項 及び第六項の規定は、第一項の裁判をする場合に準用する。
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡 又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡 若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡 又は転貸を必要とする事情 その他一切の事情を考慮しなければならない。
第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡 及び賃借権の譲渡 又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価 及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。
この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
第三項の裁判があった後は、第一項 又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項 又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。
ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。
第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売 又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。
前条第二項から第六項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。
第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。
民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十九条の規定は、同条に規定する期間内に第一項の申立てをした場合に準用する。
前各項の規定は、転借地権者から競売 又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。
ただし、借地権設定者が第二項において準用する前条第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。
第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者 又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
第四節 定期借地権等
存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条 及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求 及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項 及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。
専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条 及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新 及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条 及び第十八条の規定は、適用しない。
前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者 又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につき その借地権者 又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。
この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
第一項の特約がある場合において、借地権者 又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。
第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条 及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置 その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。
第三章 借家
第一節 建物賃貸借契約の更新等
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知 又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、その期間は、定めがないものとする。
前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
前条第二項 及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知 又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人 及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況 及び建物の現況 並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として 又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
第二節 建物賃貸借の効力
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
建物の借賃が、土地 若しくは建物に対する租税 その他の負担の増減により、土地 若しくは建物の価格の上昇 若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具 その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了 又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。
建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了 又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了 又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。
借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。
居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻 又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦 又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。
ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権 又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。
第三十一条、第三十四条 及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人 又は転借人に不利なものは、無効とする。
第三節 定期建物賃貸借等
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。
この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。
建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。
ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対し その旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護 その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
法令 又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。
前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。
第一項の特約がその内容 及び前項に規定する事由を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は、同項の書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。
第四章 借地条件の変更等の裁判手続
第十七条第一項、第二項 若しくは第五項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第十九条第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)若しくは第三項(同条第七項 及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第二十条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)に規定する事件は、借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
ただし、当事者の合意があるときは、その所在地を管轄する簡易裁判所が管轄することを妨げない。
前条の事件については、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第二十七条、第四十条、第四十二条の二 及び第六十三条第一項後段の規定は、適用しない。
この法律に定めるもののほか、前条の事件に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
裁判所は、当事者の申立てにより、当事者となる資格を有する者を第四十一条の事件の手続に参加させることができる。
前項の申立ては、その趣旨 及び理由を記載した書面でしなければならない。
第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。
ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。
前項ただし書の許可は、いつでも取り消すことができる。
手続代理人は、委任を受けた事件について、非訟事件手続法第二十三条第一項に定める事項のほか、第十九条第三項(同条第七項 及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。次項において同じ。)の申立てに関する手続行為(次項に規定するものを除く。)をすることができる。
手続代理人は、非訟事件手続法第二十三条第二項各号に掲げる事項のほか、第十九条第三項の申立てについては、特別の委任を受けなければならない。
当事者 及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、第四十一条の事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は同条の事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十一条第四項 及び第五項の規定は、前項の記録について準用する。
鑑定委員会は、三人以上の委員で組織する。
鑑定委員は、次に掲げる者の中から、事件ごとに、裁判所が指定する。
ただし、特に必要があるときは、それ以外の者の中から指定することを妨げない。
裁判所は、借地権の目的である土地に関する権利関係について訴訟 その他の事件が係属するときは、その事件が終了するまで、第四十一条の事件の手続を中止することができる。
裁判所は、前条の場合を除き、第四十一条の事件の申立書を相手方に送達しなければならない。
非訟事件手続法第四十三条第四項から第六項までの規定は、申立書の送達をすることができない場合(申立書の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。
裁判所は、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、申立てを却下することができる。
裁判所は、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者 及び利害関係参加人に通知しなければならない。
裁判所は、審理を終結するときは、審問期日においてその旨を宣言しなければならない。
第十七条第一項から第三項まで 若しくは第五項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第十九条第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)若しくは第三項(同条第七項 及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第二十条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による裁判があったときは、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
前項の裁判は、確定しなければその効力を生じない。
前条第一項の裁判には、理由を付さなければならない。
第五十五条第一項の裁判は、当事者 又は最終の審問期日の後裁判の確定前の承継人に対し、その効力を有する。
第十七条第三項 若しくは第五項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第十九条第三項(同条第七項 及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第二十条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)の規定による裁判で給付を命ずるものは、強制執行に関しては、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第十九条第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)の規定による裁判は、その効力を生じた後六月以内に借地権者が建物の譲渡をしないときは、その効力を失う。
ただし、この期間は、その裁判において伸長し、又は短縮することができる。
第四十九条、第五十条 及び第五十二条の規定は、第五十五条第一項の裁判に対する即時抗告があった場合について準用する。
第四十一条の事件の手続における申立て その他の申述については、民事訴訟法第一編第八章の規定を準用する。
この場合において、
同法第百三十三条第一項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は利害関係参加人(非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第二十一条第五項に規定する利害関係参加人をいう。第百三十三条の四第一項、第二項 及び第七項において同じ。)」と、
同法第百三十三条の二第二項中
「訴訟記録等(訴訟記録 又は第百三十二条の四第一項の処分の申立てに係る事件の記録をいう。第百三十三条の四第一項 及び第二項において同じ。)」とあるのは
「借地借家法第四十一条の事件の記録」と、
同法第百三十三条の四第一項中
「者は、訴訟記録等」とあるのは
「当事者 若しくは利害関係参加人 又は利害関係を疎明した第三者は、借地借家法第四十一条の事件の記録」と、
同条第二項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は利害関係参加人」と、
「訴訟記録等」とあるのは
「借地借家法第四十一条の事件の記録」と、
同条第七項中
「当事者」とあるのは
「当事者 若しくは利害関係参加人」と
読み替えるものとする。