更生保護事業法

# 平成七年法律第八十六号 #

第二章 更生保護法人

分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和四年五月二十五日 ( 2022年 5月25日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第五十二号による改正
最終編集日 : 2023年 02月28日 09時35分


第一節 通則

1項

更生保護法人以外の者は、その名称中に、更生保護法人という文字を用いてはならない。

1項

更生保護法人は、更生保護事業を営むために必要な資産を備えなければならない。

1項

更生保護法人は、更生保護事業を確実、効果的かつ適正に行うため、 自主的に、被保護者に対する処遇等 その事業内容を向上させるとともに、経営の基盤の強化と透明性の確保を図らなければならない。

1項

更生保護法人は、その営む更生保護事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又は その収益を更生保護事業 若しくは公益事業(犯罪をした者 及び非行のある少年の改善更生 又は犯罪の予防に資するものとして法務省令で定めるものに限る第四十二条第二号において同じ。)に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。

2項

公益事業 又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該更生保護法人の営む更生保護事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。

1項

更生保護法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

1項

更生保護法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2項

前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない

1項

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律平成十八年法律第四十八号第七十八条の規定は、更生保護法人について準用する。

第二節 設立

1項

更生保護法人を設立しようとする者は、 法務省令で定めるところにより、申請書 及び定款を法務大臣に提出して、設立の認可を受けなければならない。

1項

更生保護法人の定款には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 号
目的
二 号
名称
三 号
更生保護事業の種類
四 号
事務所の所在地
五 号
役員に関する事項
六 号
会議に関する事項
七 号
資産に関する事項
八 号
会計に関する事項
九 号
評議員会を置く場合には、これに関する事項
十 号
公益事業を行う場合には、その種類
十一 号
収益事業を行う場合には、その種類
十二 号
解散に関する事項
十三 号
定款の変更に関する事項
十四 号
公告の方法
2項

設立当初の役員は、定款で定めなければならない。

3項

第一項第十二号に掲げる事項中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、 その者は、第四十五条の認可を受けて継続保護事業を営む者 又は第四十七条の二の届出をして一時保護事業 若しくは連絡助成事業を営む更生保護法人のうちから選定されるようにしなければならない。

1項

法務大臣は、第十条の認可の申請が次の各号に適合すると認めるときは、認可しなければならない。

一 号

設立の手続 並びに申請書 及び定款の内容が法令の規定に適合するものであること。

二 号
申請書 及び定款に虚偽の記載がないこと。
三 号

当該申請に係る更生保護法人の資産が第五条の要件に該当するものであること。

四 号
業務の運営が適正に行われることが確実であると認められること。
1項

更生保護法人を設立しようとする者が、第十一条第一項第二号から 第十四号までの各号に掲げる事項を定めないで死亡した場合には、 法務大臣は、利害関係人の請求により又は職権で、これらの事項を定めなければならない。

1項

更生保護法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

1項

更生保護法人は、設立の時に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。

1項

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百五十八条 及び第百六十四条の規定は、更生保護法人の設立について準用する。

第三節 管理

1項

更生保護法人には、役員として、理事五人以上 及び監事二人以上を置かなければならない。

2項

理事のうち一人は、定款で定めるところにより、理事長とする。

1項

理事長は、更生保護法人を代表し、その業務を総理する。

2項

理事は、定款で定めるところにより、理事長を補佐して更生保護法人の業務を掌理し、 理事長に事故があるときは その職務を代理し、理事長が欠員のときは その職務を行う。

1項

更生保護法人の業務は、定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決する。

1項

理事長は、定款によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

1項

理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、 法務大臣は、利害関係人の請求により又は職権で、仮理事を選任しなければならない。

1項
監事は、次に掲げる職務を行う。
一 号

理事の業務執行の状況を監査すること。

二 号

更生保護法人の財産の状況を監査すること。

三 号

前二号の規定による監査の結果、更生保護法人の業務 又は財産に関し不正の行為 又は法令 若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見した場合には、 これを法務大臣(評議員会が置かれている場合は評議員会)に報告すること。

四 号

前号の報告をするために必要がある場合には、理事長に対して評議員会の招集を請求すること。

五 号

理事の業務執行の状況 又は更生保護法人の財産の状況について、理事長に意見を述べること。

1項

監事は、理事、評議員 又は更生保護法人の職員を兼ねてはならない

1項

次の各号いずれかに該当する者は、更生保護法人の役員になることができない

一 号
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 号

この法律の規定に違反して刑に処せられ、その執行を終わった日 又は その執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

三 号

前号に該当する者を除き、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日 又は その執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

四 号

第四十三条の規定により解散を命じられた更生保護法人の解散当時の役員で、 解散を命じられたときから五年を経過しない者

五 号

心身の故障のため職務を適正に行うことができない者として法務省令で定めるもの

1項

役員のうちには、それぞれの役員について、 当該役員、その配偶者 及び三親等内の親族が役員の総数の三分の一を超えて含まれることになってはならない。

1項

理事 又は監事のうち、その定数の三分の一を超える者が欠けたときは、遅滞なくこれを補充しなければならない。

1項

役員の任期は、三年以内において定款で定める。

1項

更生保護法人と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。


この場合には、監事が更生保護法人を代表する。

1項

更生保護法人に、評議員会を置くことができる。

2項

評議員会は、理事の定数を超える数の評議員をもって組織する。

3項
評議員会は、理事長が招集する。
4項

評議員会は、更生保護法人の業務 若しくは財産の状況 又は役員の業務執行の状況について、 役員に対し意見を述べ、若しくは その諮問に答え、又は役員に対し報告を求めることができる。

5項

定款の変更、重要な資産の処分、合併、解散、その他更生保護法人の業務に関する重要な事項は、定款をもって、評議員会の議決を要するものとすることができる。

1項

定款の変更(法務省令で定める事項に係るものを除く)は、法務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2項

第十二条の規定は、前項の認可について準用する。

3項

更生保護法人は、第一項の法務省令で定める事項に係る定款の変更をしたときは、 遅滞なく その旨を法務大臣に届け出なければならない。

1項

更生保護法人の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

1項

更生保護法人は、毎会計年度終了後二月以内に、法務省令で定めるところにより、事業成績書、財産目録、貸借対照表 及び収支計算書(収益事業については損益計算書)を作成し、これをその主たる事務所に備え置かなければならない。

2項

理事長は、前項の書類を監事に提出しなければならない。

3項

更生保護法人は、第一項の書類について、請求があったときは、これを閲覧に供しなければならない。

第四節 解散及び合併

1項

更生保護法人は、次に掲げる事由によって解散する。

一 号

理事の三分の二以上の同意 及び定款で更に評議員会の議決を要するものと定めている場合には、その議決

二 号
定款で定めた解散事由の発生
三 号
目的とする事業の成功の不能
四 号
合併
五 号
破産手続開始の決定
六 号

第四十三条の規定による解散の命令

2項

前項第一号に掲げる事由による解散は法務大臣の認可を、同項第三号に掲げる事由による解散は法務大臣の認定を受けなければ、その効力を生じない。

3項

清算人は、更生保護法人が第一項第二号 又は第五号に掲げる事由によって解散した場合には、 遅滞なく その旨を法務大臣に届け出なければならない。

1項

更生保護法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、 裁判所は、理事長 若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。

2項

前項に規定する場合には、理事長は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

1項

解散した更生保護法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなす。

1項

更生保護法人が解散したときは、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事長がその清算人となる。


ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。

1項

前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、 裁判所は、利害関係人 若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。

1項

重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人 若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。

1項

清算中に就職した清算人は、その氏名 及び住所を法務大臣に届け出なければならない。

1項
清算人の職務は、次のとおりとする。
一 号
現務の結了
二 号
債権の取立て 及び債務の弁済
三 号
残余財産の引渡し
2項

清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。

1項

清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。


この場合において、その期間は、二月を下ることができない

2項

前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。


ただし、清算人は、判明している債権者を除斥することができない

3項

清算人は、判明している債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

4項

第一項の公告は、官報に掲載してする。

1項

前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、 更生保護法人の債務が完済された後 まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。

1項

清算中に更生保護法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、 清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。

2項

清算人は、清算中の更生保護法人が破産手続開始の決定を受けた場合において、 破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。

3項

前項に規定する場合において、清算中の更生保護法人が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、 破産管財人は、これを取り戻すことができる。

4項

第一項の規定による公告は、官報に掲載してする。

1項

解散した更生保護法人の残余財産は、合併 及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、 法務大臣に対する清算結了の届出の時において、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。

2項

定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定がないとき、又は定款に定める残余財産の帰属すべき者が存在しないときは、 清算人は、法務大臣の認可を得て、その財産を第四十五条の認可を受けて継続保護事業を営む者 又は第四十七条の二の届出をして一時保護事業 若しくは連絡助成事業を営む更生保護法人に譲渡することができる。

3項

前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

1項

更生保護法人の解散 及び清算は、裁判所の監督に属する。

2項

裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。

3項

更生保護法人の解散 及び清算を監督する裁判所は、 更生保護法人の業務を監督する官庁に対し、意見を求め、又は調査を嘱託することができる。

4項

前項に規定する官庁は、同項に規定する裁判所に対し、意見を述べることができる。

1項

清算が結了したときは、清算人は、その旨を法務大臣に届け出なければならない。

1項

更生保護法人の解散 及び清算の監督 並びに清算人に関する事件は、 その主たる事務所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

1項

清算人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない

1項

裁判所は、第三十一条の五の規定により清算人を選任した場合には、更生保護法人が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。


この場合においては、裁判所は、当該清算人 及び監事の陳述を聴かなければならない。

1項

裁判所は、更生保護法人の解散 及び清算の監督に必要な調査をさせるため、検査役を選任することができる。

2項

第三十二条の五 及び第三十二条の六の規定は、前項の規定により裁判所が検査役を選任した場合について準用する。


この場合において、

同条
清算人 及び監事」とあるのは、
更生保護法人 及び検査役」と

読み替えるものとする。

1項

更生保護法人は、他の更生保護法人と合併することができる。

1項

更生保護法人が合併するには、 理事の三分の二以上の同意 及び定款で更に評議員会の議決を要するものと定めている場合には、その議決がなければならない。

2項

合併は、法務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

3項

第十二条の規定は、前項の認可について準用する。

1項

更生保護法人は、前条第二項の認可があったときは、その認可の通知のあった日から二週間以内に、 法務省令で定めるところにより、財産目録 及び貸借対照表を作成し、これをその主たる事務所に備え置かなければならない。

2項

更生保護法人は、前項の期間内に、その債権者に対し、合併に異議があれば一定の期間内に述べるべきことを公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければならない。


この場合において、その期間は、二月を下回ってはならない。

1項

債権者が前条第二項の期間内に異議を述べなかったときは、合併を承認したものとみなす。

2項

債権者が異議を述べたときは、更生保護法人は、これに弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は その債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社 若しくは信託業務を営む金融機関に相当の財産を信託しなければならない。


ただし、合併をしても その債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

1項

合併により更生保護法人を設立する場合においては、 定款の作成 その他更生保護法人の設立に関する事務は、それぞれの更生保護法人において選任した者が共同して行わなければならない。

1項

合併後存続する更生保護法人 又は合併によって設立した更生保護法人は、 合併によって消滅した更生保護法人の権利義務(当該更生保護法人がその営む事業に関し行政庁の認可 その他の処分に基づいて有する権利義務を含む。)を承継する。

1項

更生保護法人の合併は、 合併後存続する更生保護法人 又は合併によって設立する更生保護法人の主たる事務所の所在地において登記することによって、その効力を生ずる。

第五節 監督

1項

法務大臣は、更生保護法人が、法令、法令に基づいてする行政庁の処分 若しくは定款に違反し、又は その運営が著しく適正を欠くと認めるときは、 当該更生保護法人に対し、期限を定めて必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

2項

更生保護法人が前項の命令に従わないときは、 法務大臣は、当該更生保護法人に対し、期間を定めて業務の全部 若しくは一部の停止を命じ、又は役員の解職を勧告することができる。

3項

法務大臣は、前項の規定により役員の解職を勧告しようとする場合には、当該更生保護法人に、法務大臣の指定した職員に対して弁明する機会を与えなければならない。


この場合においては、当該更生保護法人に対し、あらかじめ、書面をもって、弁明をすべき日時、場所 及び その勧告の原因となる事実を通知しなければならない。

4項

前項の通知を受けた更生保護法人は、 代理人を出頭させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。

5項

第三項の規定による弁明を聴取した者は、 聴取書 及び当該勧告をする必要があるかどうかについての意見を付した報告書を作成し、これを法務大臣に提出しなければならない。

1項

法務大臣は、第六条第一項の規定により公益事業 又は収益事業を行う更生保護法人につき、次の各号いずれかに該当する事由があると認めるときは、 当該更生保護法人に対し、一年以内の期間を定めて その事業の停止を命ずることができる。

一 号

当該更生保護法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。

二 号

当該更生保護法人が当該収益事業から生じた収益を当該更生保護法人の営む更生保護事業 又は公益事業以外の目的に使用すること。

三 号

当該公益事業 又は収益事業の継続が当該更生保護法人の営む更生保護事業に支障があること。

1項

法務大臣は、更生保護法人が、法令、法令に基づいてする行政庁の処分 若しくは定款に違反した場合であって他の方法により監督の目的を達成することができないとき、 又は正当な事由がないのに一年以上にわたって その目的とする事業を行わないときは、解散を命ずることができる。

1項

法務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、更生保護法人に対し、その業務 若しくは財産の状況に関し報告をさせ、 又は その職員に、更生保護法人の事務所 その他の施設に立ち入り、その業務 若しくは財産の状況 若しくは帳簿、書類 その他の物件を検査させることができる。

2項

前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。