商法

# 明治三十二年法律第四十八号 #

第二編 商行為

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和二年四月一日 ( 2020年 4月1日 )
@ 最終更新 : 平成二十九年法律第四十五号による改正
最終編集日 : 2024年 04月26日 21時15分


第一章 総則

1項

次に掲げる行為は、商行為とする。

一 号

利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産 若しくは有価証券の有償取得 又はその取得したものの譲渡を目的とする行為

二 号

他人から取得する動産 又は有価証券の供給契約 及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為

三 号

取引所においてする取引

四 号

手形 その他の商業証券に関する行為

1項

次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。


ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

一 号

賃貸する意思をもってする動産 若しくは不動産の有償取得 若しくは賃借 又はその取得し 若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為

二 号

他人のためにする製造 又は加工に関する行為

三 号

電気 又はガスの供給に関する行為

四 号
運送に関する行為
五 号

作業 又は労務の請負

六 号

出版、印刷 又は撮影に関する行為

七 号

客の来集を目的とする場屋における取引

八 号

両替 その他の銀行取引

九 号

保険

十 号

寄託の引受け

十一 号

仲立ち又は取次ぎに関する行為

十二 号

商行為の代理の引受け

十三 号

信託の引受け

1項

商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。

2項

商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。

1項

商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。


ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

1項

商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

1項

商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。

1項

商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

2項

民法第五百二十四条の規定は、前項の場合について準用する。

1項

商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。

2項

商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

1項

商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。


ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。

1項

数人の者がその一人 又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。

2項

保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者 及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する。

1項

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

1項

商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。

2項

商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。

1項

民法第三百四十九条の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない

1項

商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質 又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。

1項

金銭 その他の物 又は有価証券の給付を目的とする有価証券の所持人がその有価証券を喪失した場合において、非訟事件手続法平成二十三年法律第五十一号第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその有価証券の趣旨に従い履行をさせることができる。

1項

商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物 又は有価証券を留置することができる。


ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

第二章 売買

1項

商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。


この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。

2項

損傷 その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

3項

前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。


ただし、その代価の全部 又は一部を代金に充当することを妨げない。

1項

商人間の売買において、売買の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。

1項

商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。

2項

前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質 又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない


売買の目的物が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。

3項

前項の規定は、売主がその瑕疵 又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない

1項

前条第一項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。


ただし、その物について滅失 又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならない。

2項

前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

3項

第一項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を発しなければならない。

4項

前三項の規定は、売主 及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない

1項

前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主から買主に引き渡した物品 及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における当該超過した部分の数量の物品について準用する。

第三章 交互計算

1項

交互計算は、商人間 又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合において、一定の期間内の取引から生ずる債権 及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払をすることを約することによって、その効力を生ずる。

1項

手形 その他の商業証券から生じた債権 及び債務を交互計算に組み入れた場合において、その商業証券の債務者が弁済をしないときは、当事者は、その債務に関する項目を交互計算から除外することができる。

1項

当事者が相殺をすべき期間を定めなかったときは、その期間は、六箇月とする。

1項

当事者は、債権 及び債務の各項目を記載した計算書の承認をしたときは、当該各項目について異議を述べることができない


ただし、当該計算書の記載に錯誤 又は脱漏があったときは、この限りでない。

1項

相殺によって生じた残額については、債権者は、計算の閉鎖の日以後の法定利息を請求することができる。

2項

前項の規定は、当該相殺に係る債権 及び債務の各項目を交互計算に組み入れた日からこれに利息を付することを妨げない。

1項

各当事者は、いつでも交互計算の解除をすることができる。


この場合において、交互計算の解除をしたときは、直ちに、計算を閉鎖して、残額の支払を請求することができる。

第四章 匿名組合

1項

匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。

1項

匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。

2項

匿名組合員は、金銭 その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。

3項

匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない

4項

匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利 及び義務を有しない。

1項

匿名組合員は、自己の氏 若しくは氏名を営業者の商号中に用いること 又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。

1項

出資が損失によって減少したときは、その損失をてん補した後でなければ、匿名組合員は、利益の配当を請求することができない

1項

匿名組合員は、営業年度の終了時において、営業者の営業時間内に、次に掲げる請求をし、又は営業者の業務 及び財産の状況を検査することができる。

一 号

営業者の貸借対照表が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧 又は謄写の請求

二 号

営業者の貸借対照表が電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもので法務省令で定めるものをいう。)をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を省令で定める方法により表示したものの閲覧 又は謄写の請求

2項

匿名組合員は、重要な事由があるときは、いつでも、裁判所の許可を得て、営業者の業務 及び財産の状況を検査することができる。

3項

前項の許可に係る事件は、営業者の営業所の所在地(営業所がない場合にあっては、営業者の住所地)を管轄する地方裁判所が管轄する。

1項

匿名組合契約で匿名組合の存続期間を定めなかったとき、又はある当事者の終身の間匿名組合が存続すべきことを定めたときは、各当事者は、営業年度の終了時において、契約の解除をすることができる。


ただし六箇月前に その予告をしなければならない。

2項

匿名組合の存続期間を定めたか否かにかかわらず、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、いつでも匿名組合契約の解除をすることができる。

1項

前条の場合のほか、匿名組合契約は、次に掲げる事由によって終了する。

一 号

匿名組合の目的である事業の成功 又はその成功の不能

二 号

営業者の死亡 又は営業者が後見開始の審判を受けたこと。

三 号

営業者 又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと。

1項

匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。


ただし、出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りる。

第五章 仲立営業

1項

この章において「仲立人」とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする者をいう。

1項

仲立人は、その媒介により成立させた行為について、当事者のために支払 その他の給付を受けることができない


ただし、当事者の別段の意思表示 又は別段の慣習があるときは、この限りでない。

1項

仲立人がその媒介に係る行為について見本を受け取ったときは、その行為が完了するまで、これを保管しなければならない。

1項

当事者間において媒介に係る行為が成立したときは、仲立人は、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面(以下この章において「結約書」という。)を作成し、かつ、署名し、又は記名押印した後、これを各当事者に交付しなければならない。

一 号
各当事者の氏名 又は名称
二 号

当該行為の年月日 及びその要領

2項

前項の場合においては、当事者が直ちに履行をすべきときを除き、仲立人は、各当事者に結約書に署名させ、又は記名押印させた後、これをその相手方に交付しなければならない。

3項

前二項の場合において、当事者の一方が結約書を受領せず、又はこれに署名 若しくは記名押印をしないときは、仲立人は、遅滞なく、相手方に対してその旨の通知を発しなければならない。

1項

仲立人は、その帳簿に前条第一項各号に掲げる事項を記載しなければならない。

2項

当事者は、いつでも、仲立人がその媒介により当該当事者のために成立させた行為について、前項の帳簿の謄本の交付を請求することができる。

1項

当事者がその氏名 又は名称を相手方に示してはならない旨を仲立人に命じたときは、仲立人は、結約書 及び前条第二項の謄本にその氏名 又は名称を記載することができない

1項

仲立人は、当事者の一方の氏名 又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行をする責任を負う。

1項

仲立人は、第五百四十六条の手続を終了した後でなければ、報酬を請求することができない

2項

仲立人の報酬は、当事者双方が等しい割合で負担する。

第六章 問屋営業

1項

この章において「問屋」とは、自己の名をもって他人のために物品の販売 又は買入れをすることを業とする者をいう。

1項

問屋は、他人のためにした販売 又は買入れにより、相手方に対して、自ら権利を取得し、義務を負う。

2項

問屋と委託者との間の関係については、この章に定めるもののほか、委任 及び代理に関する規定を準用する。

1項

問屋は、委託者のためにした販売 又は買入れにつき相手方がその債務を履行しないときに、自らその履行をする責任を負う。


ただし、当事者の別段の意思表示 又は別段の慣習があるときは、この限りでない。

1項

問屋が委託者の指定した金額より低い価格で販売をし、又は高い価格で買入れをした場合において、自らその差額を負担するときは、その販売 又は買入れは、委託者に対してその効力を生ずる。

1項

問屋は、取引所の相場がある物品の販売 又は買入れの委託を受けたときは、自ら買主 又は売主となることができる。


この場合において、売買の代価は、問屋が買主 又は売主となったことの通知を発した時における取引所の相場によって定める。

2項

前項の場合においても、問屋は、委託者に対して報酬を請求することができる。

1項

問屋が買入れの委託を受けた場合において、委託者が買い入れた物品の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、第五百二十四条の規定を準用する。

1項

第二十七条 及び第三十一条の規定は、問屋について準用する。

1項

この章の規定は、自己の名をもって他人のために販売 又は買入れ以外の行為をすることを業とする者について準用する。

第七章 運送取扱営業

1項

この章において「運送取扱人」とは、自己の名をもって物品運送の取次ぎをすることを業とする者をいう。

2項

運送取扱人については、この章に別段の定めがある場合を除き第五百五十一条に規定する問屋に関する規定を準用する。

1項

運送取扱人は、運送品の受取から荷受人への引渡しまでの間にその運送品が滅失し 若しくは損傷し、若しくはその滅失 若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


ただし、運送取扱人がその運送品の受取、保管 及び引渡し、運送人の選択 その他の運送の取次ぎについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

1項

運送取扱人は、運送品を運送人に引き渡したときは、直ちにその報酬を請求することができる。

2項

運送取扱契約で運送賃の額を定めたときは、運送取扱人は、特約がなければ、別に報酬を請求することができない

1項

運送取扱人は、運送品に関して受け取るべき報酬、付随の費用 及び運送賃 その他の立替金についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる。

1項

運送取扱人は、自ら運送をすることができる。


この場合において、運送取扱人は、運送人と同一の権利義務を有する。

2項

運送取扱人が委託者の請求によって船荷証券 又は複合運送証券を作成したときは、自ら運送をするものとみなす。

1項

第五百七十二条第五百七十七条第五百七十九条第三項除く)、第五百八十一条第五百八十五条第五百八十六条第五百八十七条第五百七十七条 及び第五百八十五条の規定の準用に係る部分に限る)及び第五百八十八条の規定は、運送取扱営業について準用する。


この場合において、

第五百七十九条第二項中
前の運送人」とあるのは
「前の運送取扱人 又は運送人」と、

第五百八十五条第一項中
運送品の引渡し」とあるのは
「荷受人に対する運送品の引渡し」と

読み替えるものとする。

第八章 運送営業

第一節 総則

1項

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 号

運送人

陸上運送、海上運送 又は航空運送の引受けをすることを業とする者をいう。

二 号

陸上運送

陸上における物品 又は旅客の運送をいう。

三 号

海上運送

第六百八十四条に規定する船舶(第七百四十七条に規定する非航海船を含む。)による物品 又は旅客の運送をいう。

四 号

航空運送

航空法昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第一項に規定する航空機による物品 又は旅客の運送をいう。

第二節 物品運送

1項

物品運送契約は、運送人が荷送人からある物品を受け取りこれを運送して荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

1項

荷送人は、運送人の請求により、次に掲げる事項を記載した書面(次項において「送り状」という。)を交付しなければならない。

一 号
運送品の種類
二 号

運送品の容積 若しくは重量 又は包 若しくは個品の数 及び運送品の記号

三 号

荷造りの種類

四 号

荷送人 及び荷受人の氏名 又は名称

五 号

発送地 及び到達地

2項

前項の荷送人は、送り状の交付に代えて、法務省令で定めるところにより、運送人の承諾を得て、送り状に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。


この場合において、当該荷送人は、送り状を交付したものとみなす。

1項

荷送人は、運送品が引火性、爆発性 その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨 及び当該運送品の品名、性質 その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知しなければならない。

1項

運送賃は、到達地における運送品の引渡しと同時に、支払わなければならない。

2項

運送品がその性質 又は瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、荷送人は、運送賃の支払を拒むことができない

1項

運送人は、運送品に関して受け取るべき運送賃、付随の費用 及び立替金(以下この節において「運送賃等」という。)についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる。

1項

運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失し 若しくは損傷し、若しくはその滅失 若しくは損傷の原因が生じ、又は運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管 及び引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

1項

運送品の滅失 又は損傷の場合における損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地 及び時における運送品の市場価格(取引所の相場がある物品については、その相場)によって定める。


ただし、市場価格がないときは、その地 及び時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める。

2項

運送品の滅失 又は損傷のために支払うことを要しなくなった運送賃 その他の費用は、前項の損害賠償の額から控除する。

3項

前二項の規定は、運送人の故意 又は重大な過失によって運送品の滅失 又は損傷が生じたときは、適用しない

1項

貨幣、有価証券 その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類 及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷 又は延着について損害賠償の責任を負わない。

2項

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない

一 号

物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。

二 号

運送人の故意 又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷 又は延着が生じたとき。

1項

陸上運送、海上運送 又は航空運送のうち二以上の運送をの契約で引き受けた場合における運送品の滅失等(運送品の滅失、損傷 又は延着をいう。以下この節において同じ。)についての運送人の損害賠償の責任は、それぞれの運送においてその運送品の滅失等の原因が生じた場合に当該運送ごとに適用されることとなる我が国の法令 又は我が国が締結した条約の規定に従う。

2項

前項の規定は、陸上運送であってその区間ごとに異なる二以上の法令が適用されるものを一の契約で引き受けた場合について準用する。

1項

数人の運送人が相次いで陸上運送をするときは、後の運送人は、前の運送人に代わってその権利を行使する義務を負う。

2項

前項の場合において、後の運送人が前の運送人に弁済をしたときは、後の運送人は、前の運送人の権利を取得する。

3項

ある運送人が引き受けた陸上運送についてその荷送人のために他の運送人が相次いで当該陸上運送の一部を引き受けたときは、各運送人は、運送品の滅失等につき連帯して損害賠償の責任を負う。

4項

前三項の規定は、海上運送 及び航空運送について準用する。

1項

荷送人は、運送人に対し、運送の中止、荷受人の変更 その他の処分を請求することができる。


この場合において、運送人は、既にした運送の割合に応じた運送賃、付随の費用、立替金 及びその処分によって生じた費用の弁済を請求することができる。

1項

荷受人は、運送品が到達地に到着し、又は運送品の全部が滅失したときは、物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する。

2項

前項の場合において、荷受人が運送品の引渡し又はその損害賠償の請求をしたときは、荷送人は、その権利を行使することができない

3項

荷受人は、運送品を受け取ったときは、運送人に対し、運送賃等を支払う義務を負う。

1項

運送人は、荷受人を確知することができないときは、運送品を供託することができる。

2項

前項に規定する場合において、運送人が荷送人に対し相当の期間を定めて運送品の処分につき指図をすべき旨を催告したにもかかわらず、荷送人がその指図をしないときは、運送人は、その運送品を競売に付することができる。

3項

損傷 その他の事由による価格の低落のおそれがある運送品は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

4項

前二項の規定により運送品を競売に付したときは、運送人は、その代価を供託しなければならない。


ただし、その代価の全部 又は一部を運送賃等に充当することを妨げない。

5項

運送人は、第一項から第三項までの規定により運送品を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、荷送人に対してその旨の通知を発しなければならない。

1項

前条の規定は、荷受人が運送品の受取を拒み、又はこれを受け取ることができない場合について準用する。


この場合において、

同条第二項中
運送人が」とあるのは
「運送人が、荷受人に対し相当の期間を定めて運送品の受取を催告し、
かつ、その期間の経過後に」と、

同条第五項中
荷送人」とあるのは
「荷送人 及び荷受人」と

読み替えるものとする。

1項

運送品の損傷 又は一部滅失についての運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは、消滅する。


ただし、運送品に直ちに発見することができない損傷 又は一部滅失があった場合において、荷受人が引渡しの日から二週間以内に運送人に対してその旨の通知を発したときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、運送品の引渡しの当時、運送人がその運送品に損傷 又は一部滅失があることを知っていたときは、適用しない

3項

運送人が更に第三者に対して運送を委託した場合において、荷受人が第一項ただし書の期間内に運送人に対して同項ただし書の通知を発したときは、運送人に対する第三者の責任に係る同項ただし書の期間は、運送人が当該通知を受けた日から二週間を経過する日まで延長されたものとみなす。

1項

運送品の滅失等についての運送人の責任は、運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合にあっては、その引渡しがされるべき日)から一年以内に裁判上の請求がされないときは、消滅する。

2項

前項の期間は、運送品の滅失等による損害が発生した後に限り、合意により、延長することができる。

3項

運送人が更に第三者に対して運送を委託した場合において、運送人が第一項の期間内に損害を賠償し又は裁判上の請求をされたときは、運送人に対する第三者の責任に係る同項の期間は、運送人が損害を賠償し又は裁判上の請求をされた日から三箇月を経過する日まで延長されたものとみなす。

1項

運送人の荷送人 又は荷受人に対する債権は、これを行使することができる時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

1項

第五百七十六条第五百七十七条第五百八十四条 及び第五百八十五条の規定は、運送品の滅失等についての運送人の荷送人 又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任について準用する。


ただし、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引き受けた運送人の荷受人に対する責任については、この限りでない。

1項

前条の規定により運送品の滅失等についての運送人の損害賠償の責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、又は軽減される限度において、その運送品の滅失等についての運送人の被用者の荷送人 又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。

2項

前項の規定は、運送人の被用者の故意 又は重大な過失によって運送品の滅失等が生じたときは、適用しない

第三節 旅客運送

1項

旅客運送契約は、運送人が旅客を運送することを約し、相手方がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

1項

運送人は、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責任を負う。


ただし、運送人が運送に関し注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

1項

旅客の生命 又は身体の侵害による運送人の損害賠償の責任(運送の遅延を主たる原因とするものを除く)を免除し、又は軽減する特約は、無効とする。

2項

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない

一 号

大規模な火災、震災 その他の災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において運送を行うとき。

二 号

運送に伴い通常生ずる振動 その他の事情により生命 又は身体に重大な危険が及ぶおそれがある者の運送を行うとき。

1項

運送人は、旅客から引渡しを受けた手荷物については、運送賃を請求しないときであっても、物品運送契約における運送人と同一の責任を負う。

2項

運送人の被用者は、前項に規定する手荷物について、物品運送契約における運送人の被用者と同一の責任を負う。

3項

第一項に規定する手荷物が到達地に到着した日から一週間以内に旅客がその引渡しを請求しないときは、運送人は、その手荷物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。


この場合において、運送人がその手荷物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、旅客に対してその旨の通知を発しなければならない。

4項

損傷 その他の事由による価格の低落のおそれがある手荷物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。

5項

前二項の規定により手荷物を競売に付したときは、運送人は、その代価を供託しなければならない。


ただし、その代価の全部 又は一部を運送賃に充当することを妨げない。

6項

旅客の住所 又は居所が知れないときは、第三項の催告 及び通知は、することを要しない。

1項

運送人は、旅客から引渡しを受けていない手荷物(身の回り品を含む。)の滅失 又は損傷については、故意 又は過失がある場合を除き、損害賠償の責任を負わない。

2項

第五百七十六条第一項 及び第三項第五百八十四条第一項第五百八十五条第一項 及び第二項第五百八十七条第五百七十六条第一項 及び第三項第五百八十四条第一項 並びに第五百八十五条第一項 及び第二項の規定の準用に係る部分に限る)並びに第五百八十八条の規定は、運送人が前項に規定する手荷物の滅失 又は損傷に係る損害賠償の責任を負う場合について準用する。


この場合において、

第五百七十六条第一項中
その引渡しがされるべき」とあるのは
「その運送が終了すべき」と、

第五百八十四条第一項中
荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取った」とあるのは
「旅客が運送の終了の時までに異議をとどめなかった」と、

荷受人が引渡しの日」とあるのは
「旅客が運送の終了の日」と、

第五百八十五条第一項中
運送品の引渡しがされた日(運送品の全部滅失の場合にあっては、その引渡しがされるべき日)」とあるのは
「運送の終了の日」と

読み替えるものとする。

1項

第五百八十六条の規定は、旅客運送について準用する。

第九章 寄託

第一節 総則

1項

商人がその営業の範囲内において寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければならない。

1項

旅館、飲食店、浴場 その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(以下この節において「場屋営業者」という。)は、客から寄託を受けた物品の滅失 又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない

2項

客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。

3項

客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前二項責任を免れることができない

1項

貨幣、有価証券 その他の高価品については、客がその種類 及び価額を通知してこれを場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失 又は損傷によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

1項

前二条の場屋営業者の責任に係る債権は、場屋営業者が寄託を受けた物品を返還し、又は客が場屋の中に携帯した物品を持ち去った時(物品の全部滅失の場合にあっては、客が場屋を去った時)から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

2項

前項の規定は、場屋営業者が同項に規定する物品の滅失 又は損傷につき悪意であった場合には、適用しない

第二節 倉庫営業

1項

この節において「倉庫営業者」とは、他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者をいう。

1項

倉庫営業者は、寄託者の請求により、寄託物の倉荷証券を交付しなければならない。

1項

倉荷証券には、次に掲げる事項 及びその番号を記載し、倉庫営業者がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

一 号

寄託物の種類、品質 及び数量 並びにその荷造りの種類、個数 及び記号

二 号
寄託者の氏名 又は名称
三 号
保管場所
四 号
保管料
五 号

保管期間を定めたときは、その期間

六 号

寄託物を保険に付したときは、保険金額、保険期間 及び保険者の氏名 又は名称

七 号
作成地 及び作成の年月日
1項

倉庫営業者は、倉荷証券を寄託者に交付したときは、その帳簿に次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 号

前条第一号第二号 及び第四号から第六号までに掲げる事項

二 号

倉荷証券の番号 及び作成の年月日

1項

倉荷証券の所持人は、倉営業者に対し、寄託物の分割 及びその各部分に対する倉荷証券の交付を請求することができる。


この場合において所持人は、その所持する倉荷証券を倉庫営業者に返還しなければならない。

2項

前項の規定による寄託物の分割 及び倉荷証券の交付に関する費用は、所持人が負担する。

1項

倉庫営業者は、倉荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の所持人に対抗することができない

1項

倉荷証券が作成されたときは、寄託物に関する処分は、倉荷証券によってしなければならない。

1項

倉荷証券は、記名式であるときであっても、裏書によって、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。


ただし、倉荷証券に裏書を禁止する旨を記載したときは、この限りでない。

1項

倉荷証券により寄託物を受け取ることができる者に倉荷証券を引き渡したときは、その引渡しは、寄託物について行使する権利の取得に関しては、寄託物の引渡しと同一の効力を有する。

1項

倉荷証券の所持人は、その倉荷証券を喪失したときは、相当の担保を供して、その再交付を請求することができる。


この場合において、倉庫営業者は、その旨を帳簿に記載しなければならない。

1項

寄託者 又は倉荷証券の所持人は、倉庫営業者の営業時間内は、いつでも、寄託物の点検 若しくはその見本の提供を求め、又はその保存に必要な処分をすることができる。

1項

倉庫営業者は、寄託物の保管に関し注意を怠らなかったことを証明しなければ、その滅失 又は損傷につき損害賠償の責任を免れることができない

1項

倉庫営業者は、寄託物の出庫の時以後でなければ、保管料 及び立替金 その他寄託物に関する費用(第六百十六条第一項において「保管料等」という。)の支払を請求することができない


ただし、寄託物の一部を出庫するときは、出庫の割合に応じて、その支払を請求することができる。

1項

当事者が寄託物の保管期間を定めなかったときは、倉庫営業者は、寄託物の入庫の日から六箇月を経過した後でなければ、その返還をすることができない


ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

1項

倉荷証券が作成されたときは、これと引換えでなければ、寄託物の返還を請求することができない

1項

倉荷証券を質権の目的とした場合において、質権者の承諾があるときは、寄託者は、当該質権の被担保債権の弁済期前であっても、寄託物の一部の返還を請求することができる。


この場合において、倉庫営業者は、返還した寄託物の種類、品質 及び数量を倉荷証券に記載し、かつ、その旨を帳簿に記載しなければならない。

1項

第五百二十四条第一項 及び第二項の規定は、寄託者 又は倉荷証券の所持人が寄託物の受領を拒み、又はこれを受領することができない場合について準用する。

1項

寄託物の損傷 又は一部滅失についての倉庫営業者の責任は、寄託者 又は倉荷証券の所持人が異議をとどめないで寄託物を受け取り、かつ、保管料等を支払ったときは、消滅する。


ただし、寄託物に直ちに発見することができない損傷 又は一部滅失があった場合において、寄託者 又は倉荷証券の所持人が引渡しの日から二週間以内に倉庫営業者に対してその旨の通知を発したときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、倉庫営業者が寄託物の損傷 又は一部滅失につき悪意であった場合には、適用しない

1項

寄託物の滅失 又は損傷についての倉庫営業者の責任に係る債権は、寄託物の出庫の日から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。

2項

前項の期間は、寄託物の全部滅失の場合においては、倉庫営業者が倉荷証券の所持人(倉荷証券を作成していないとき又は倉荷証券の所持人が知れないときは、寄託者)に対してその旨の通知を発した日から起算する。

3項

前二項の規定は、倉庫営業者が寄託物の滅失 又は損傷につき悪意であった場合には、適用しない