合名会社、合資会社 又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
会社法
第三編 持分会社
第一章 設立
前項の定款は、電磁的記録をもって作成することができる。
この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名 又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
社員が無限責任社員 又は有限責任社員のいずれであるかの別
社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。) 及び その価額 又は評価の標準
設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
前条に規定するもののほか、持分会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項及び その他の事項でこの法律の規定に違反しないものを記載し、又は記録することができる。
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、合同会社の社員になろうとする者全員の同意があるときは、登記、登録 その他権利の設定 又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、合同会社の成立後にすることを妨げない。
持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
第二章 社員
第一節 社員の責任等
社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。)
有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
社員が持分会社の債務を弁済する責任を負う場合には、社員は、持分会社が主張することができる抗弁をもって当該持分会社の債権者に対抗することができる。
前項に規定する場合において、持分会社がその債権者に対して相殺権、取消権 又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって持分会社がその債務を免れるべき限度において、社員は、当該債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
社員が金銭を出資の目的とした場合において、その出資をすることを怠ったときは、当該社員は、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
社員が債権を出資の目的とした場合において、当該債権の債務者が弁済期に弁済をしなかったときは、当該社員は、その弁済をする責任を負う。
この場合においては、当該社員は、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
有限責任社員が無限責任社員となった場合には、当該無限責任社員となった者は、その者が無限責任社員となる前に生じた持分会社の債務についても、無限責任社員としてこれを弁済する責任を負う。
有限責任社員(合同会社の社員を除く。)が出資の価額を減少した場合であっても、当該有限責任社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
無限責任社員が有限責任社員となった場合であっても、当該有限責任社員となった者は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については、無限責任社員として当該債務を弁済する責任を負う。
前二項の責任は、前二項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
持分会社の無限責任社員となることを許された未成年者は、社員の資格に基づく行為に関しては、行為能力者とみなす。
第二節 持分の譲渡等
社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部 又は一部を他人に譲渡することができない。
前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部 又は一部を他人に譲渡することができる。
第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。
前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
持分会社は、その持分の全部 又は一部を譲り受けることができない。
持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に、消滅する。
第三節 誤認行為の責任
合資会社の有限責任社員が自己を無限責任社員であると 誤認させる行為をしたときは、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負う。
合資会社 又は合同会社の有限責任社員がその責任の限度を誤認させる行為(前項の行為を除く。)をしたときは、当該有限責任社員は、その誤認に基づいて合資会社 又は合同会社と取引をした者に対し、その誤認させた責任の範囲内で当該合資会社 又は合同会社の債務を弁済する責任を負う。
合名会社 又は合資会社の社員でない者が自己を無限責任社員であると 誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて合名会社 又は合資会社と取引をした者に対し、無限責任社員と同一の責任を負う。
合資会社 又は合同会社の社員でない者が自己を有限責任社員であると 誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて合資会社 又は合同会社と取引をした者に対し、その誤認させた責任の範囲内で当該合資会社 又は合同会社の債務を弁済する責任を負う。
第三章 管理
第一節 総則
社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
前項の規定にかかわらず、持分会社の常務は、各社員が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の社員が異議を述べた場合は、この限りでない。
業務を執行する社員を定款で定めた場合において、業務を執行する社員が二人以上あるときは、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、業務を執行する社員の過半数をもって決定する。
この場合における前条第三項の規定の適用については、
同項中
「社員」とあるのは、
「業務を執行する社員」と
する。
前項の規定にかかわらず、同項に規定する場合には、支配人の選任 及び解任は、社員の過半数をもって決定する。ただし、定款で別段の定めをすることを妨げない。
業務を執行する社員を定款で定めた場合において、その業務を執行する社員の全員が退社したときは、当該定款の定めは、その効力を失う。
業務を執行する社員を定款で定めた場合には、その業務を執行する社員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
前項の業務を執行する社員は、正当な事由がある場合に限り、他の社員の一致によって解任することができる。
前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
業務を執行する社員を定款で定めた場合には、各社員は、持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務 及び財産の状況を調査することができる。
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時 又は重要な事由があるときに同項の規定による調査をすることを制限する旨を定めることができない。
第二節 業務を執行する社員
業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務を負う。
業務を執行する社員は、法令 及び定款を遵守し、持分会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
業務を執行する社員は、持分会社 又は他の社員の請求があるときは、いつでも その職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は、遅滞なくその経過 及び結果を報告しなければならない。
民法第六百四十六条から第六百五十条までの規定は、業務を執行する社員と持分会社との関係について準用する。
この場合において、
同法第六百四十六条第一項、第六百四十八条第二項、第六百四十八条の二、第六百四十九条 及び第六百五十条中
「委任事務」とあるのは
「その職務」と、
同法第六百四十八条第三項第一号中「委任事務」とあり、及び同項第二号中
「委任」とあるのは
「前項の職務」と
読み替えるものとする。
前二項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
業務を執行する社員は、当該社員以外の社員の全員の承認を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
自己 又は第三者のために持分会社の事業の部類に属する取引をすること。
持分会社の事業と 同種の事業を目的とする会社の取締役、執行役 又は業務を執行する社員となること。
業務を執行する社員が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって当該業務を執行する社員 又は第三者が得た利益の額は、持分会社に生じた損害の額と推定する。
業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。
ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
業務を執行する社員が自己 又は第三者のために持分会社と取引をしようとするとき。
持分会社が業務を執行する社員の債務を保証すること その他社員でない者との間において持分会社と当該社員との利益が相反する取引をしようとするとき。
民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項各号の取引については、適用しない。
業務を執行する社員は、その任務を怠ったときは、持分会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
業務を執行する有限責任社員がその職務を行うについて悪意 又は重大な過失があったときは、当該有限責任社員は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人は、当該業務を執行する社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名 及び住所を他の社員に通知しなければならない。
第五百九十三条から前条までの規定は、前項の規定により選任された社員の職務を行うべき者について準用する。
業務を執行する社員は、持分会社を代表する。
ただし、他に持分会社を代表する社員 その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。
持分会社は、定款 又は定款の定めに基づく 社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。
持分会社を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上 又は裁判外の行為をする権限を有する。
前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
持分会社は、持分会社を代表する社員 その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
第五百九十九条第四項の規定にかかわらず、持分会社が社員に対し、又は社員が持分会社に対して訴えを提起する場合において、当該訴えについて持分会社を代表する者(当該社員を除く。)が存しないときは、当該社員以外の社員の過半数をもって、当該訴えについて持分会社を代表する者を定めることができる。
第五百九十九条第一項の規定にかかわらず、社員が持分会社に対して社員の責任を追及する訴えの提起を請求した場合において、持分会社が当該請求の日から六十日以内に当該訴えを提起しないときは、当該請求をした社員は、当該訴えについて持分会社を代表することができる。
ただし、当該訴えが当該社員 若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該持分会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
第三節 業務を執行する社員の職務を代行する者
民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された業務を執行する社員 又は持分会社を代表する社員の職務を代行する者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、持分会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
前項の規定に違反して行った業務を執行する社員 又は持分会社を代表する社員の職務を代行する者の行為は、無効とする。
ただし、持分会社は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
第四章 社員の加入及び退社
第一節 社員の加入
持分会社は、新たに社員を加入させることができる。
持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。
前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み 又は給付の全部 又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み 又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。
持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負う。
第二節 社員の退社
持分会社の存続期間を定款で定めなかった場合 又はある社員の終身の間持分会社が存続することを定款で定めた場合には、各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができる。
この場合においては、各社員は、六箇月前までに持分会社に退社の予告をしなければならない。
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
前二項の規定にかかわらず、各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができる。
社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項 及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
持分会社は、その社員が前項第五号から第七号までに掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定めることができる。
持分会社は、その社員が死亡した場合 又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人 その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。
第六百四条第二項の規定にかかわらず、前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の一般承継人(社員以外のものに限る。)は、同項の持分を承継した時に、当該持分を有する社員となる。
第一項の定款の定めがある場合には、持分会社は、同項の一般承継人が持分を承継した時に、当該一般承継人に係る定款の変更をしたものとみなす。
第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものであって、出資に係る払込み 又は給付の全部 又は一部を履行していないものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、連帯して当該出資に係る払込み又は給付の履行をする責任を負う。
第一項の一般承継人(相続により持分を承継したものに限る。)が二人以上ある場合には、各一般承継人は、承継した持分についての権利を行使する者一人を定めなければ、当該持分についての権利を行使することができない。
ただし、持分会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。
社員の持分を差し押さえた債権者は、事業年度の終了時において当該社員を退社させることができる。
この場合においては、当該債権者は、六箇月前までに持分会社 及び当該社員にその予告をしなければならない。
前項後段の予告は、同項の社員が、同項の債権者に対し、弁済し、又は相当の担保を提供したときは、その効力を失う。
第一項後段の予告をした同項の債権者は、裁判所に対し、持分の払戻しの請求権の保全に関し必要な処分をすることを申し立てることができる。
第六百六条、第六百七条第一項、前条第一項 又は第六百四十二条第二項の規定により社員が退社した場合(第八百四十五条の規定により社員が退社したものとみなされる場合を含む。)には、持分会社は、当該社員が退社した時に、当該社員に係る定款の定めを廃止する定款の変更をしたものとみなす。
退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。
ただし、第六百八条第一項 及び第二項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。
退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。
退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
退社の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
社員が除名により退社した場合における第二項 及び前項の規定の適用については、
これらの規定中
「退社の時」とあるのは、
「除名の訴えを提起した時」と
する。
前項に規定する場合には、持分会社は、除名の訴えを提起した日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
社員の持分の差押えは、持分の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
前項の責任は、同項の登記後二年以内に 請求 又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。
持分会社がその商号中に退社した社員の氏 若しくは氏名 又は名称を用いているときは、当該退社した社員は、当該持分会社に対し、その氏 若しくは氏名 又は名称の使用をやめることを請求することができる。
第五章 計算等
第一節 会計の原則
持分会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
第二節 会計帳簿
持分会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
持分会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿 及び その事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、会計帳簿の全部 又は一部の提出を命ずることができる。
第三節 計算書類
持分会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
持分会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表 その他持分会社の財産の状況を示すために必要かつ適切なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)を作成しなければならない。
計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。
持分会社は、計算書類を作成した時から十年間、これを保存しなければならない。
持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
計算書類が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧 又は謄写の請求
計算書類が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧 又は謄写の請求
前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。
ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類の全部 又は一部の提出を命ずることができる。
第四節 資本金の額の減少
持分会社は、損失のてん補のために、その資本金の額を減少することができる。
前項の規定により減少する資本金の額は、損失の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えることができない。
第五節 利益の配当
社員は、持分会社に対し、利益の配当を請求することができる。
持分会社は、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができる。
社員の持分の差押えは、利益の配当を請求する権利に対しても、その効力を有する。
損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。
利益 又は損失の一方についてのみ 分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益 及び損失の分配に共通であるものと推定する。
持分会社が利益の配当により有限責任社員に対して交付した金銭等の帳簿価額(以下 この項において「配当額」という。)が当該利益の配当をする日における利益額(持分会社の利益の額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下 この章において同じ。)を超える場合には、当該利益の配当を受けた有限責任社員は、当該持分会社に対し、連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負う。
前項に規定する場合における同項の利益の配当を受けた有限責任社員についての第五百八十条第二項の規定の適用については、
同項中
「を限度として」とあるのは、
「及び第六百二十三条第一項の配当額が同項の利益額を超過する額(同項の義務を履行した額を除く。)の合計額を限度として」と
する。
第六節 出資の払戻し
社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み 又は給付をした金銭等の払戻し(以下 この編において「出資の払戻し」という。)を請求することができる。
この場合において、当該金銭等が金銭以外の財産であるときは、当該財産の価額に相当する金銭の払戻しを請求することを妨げない。
持分会社は、出資の払戻しを請求する方法 その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる。
社員の持分の差押えは、出資の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
第七節 合同会社の計算等に関する特則
⤏ 第一款 計算書類の閲覧に関する特則
合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から五年以内のものに限る。)について第六百十八条第一項各号に掲げる請求をすることができる。
⤏ 第二款 資本金の額の減少に関する特則
合同会社は、第六百二十条第一項の場合のほか、出資の払戻し又は持分の払戻しのために、その資本金の額を減少することができる。
前項の規定により出資の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十二条第二項に規定する出資払戻額から出資の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
第一項の規定により持分の払戻しのために減少する資本金の額は、第六百三十五条第一項に規定する持分払戻額から持分の払戻しをする日における剰余金額を控除して得た額を超えてはならない。
前二項に規定する「剰余金額」とは、第一号に掲げる額から第二号から第四号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(第四款 及び第五款において同じ。)。
前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。
前項に規定する場合には、合同会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。
債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、合同会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号 又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金の額の減少について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、合同会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
ただし、当該資本金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
資本金の額の減少は、前各項の手続が終了した日に、その効力を生ずる。
⤏ 第三款 利益の配当に関する特則
合同会社は、利益の配当により社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下 この款において「配当額」という。)が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当をすることができない。
この場合においては、合同会社は、第六百二十一条第一項の規定による請求を拒むことができる。
合同会社が前条の規定に違反して利益の配当をした場合には、当該利益の配当に関する業務を執行した社員は、当該合同会社に対し、当該利益の配当を受けた社員と連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負う。
ただし、当該業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
前項の義務は、免除することができない。
ただし、利益の配当をした日における利益額を限度として当該義務を免除することについて総社員の同意がある場合は、この限りでない。
前条第一項に規定する場合において、利益の配当を受けた社員は、配当額が利益の配当をした日における利益額を超えることにつき善意であるときは、当該配当額について、当該利益の配当に関する業務を執行した社員からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
前条第一項に規定する場合には、合同会社の債権者は、利益の配当を受けた社員に対し、配当額(当該配当額が当該債権者の合同会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
第六百二十三条第二項の規定は、合同会社の社員については、適用しない。
合同会社が利益の配当をした場合において、当該利益の配当をした日の属する事業年度の末日に欠損額(合同会社の欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額をいう。以下 この項において同じ。)が生じたときは、当該利益の配当に関する業務を執行した社員は、当該合同会社に対し、当該利益の配当を受けた社員と連帯して、その欠損額(当該欠損額が配当額を超えるときは、当該配当額)を支払う義務を負う。
ただし、当該業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
前項の義務は、総社員の同意がなければ、免除することができない。
⤏ 第四款 出資の払戻しに関する特則
第六百二十四条第一項の規定にかかわらず、合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、同項前段の規定による請求をすることができない。
合同会社が出資の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下 この款において「出資払戻額」という。)が、第六百二十四条第一項前段の規定による請求をした日における剰余金額(第六百二十六条第一項の資本金の額の減少をした場合にあっては、その減少をした後の剰余金額。以下 この款において同じ。)又は前項の出資の価額を減少した額のいずれか少ない額を超える場合には、当該出資の払戻しをすることができない。
この場合においては、合同会社は、第六百二十四条第一項前段の規定による請求を拒むことができる。
合同会社が前条の規定に違反して出資の払戻しをした場合には、当該出資の払戻しに関する業務を執行した社員は、当該合同会社に対し、当該出資の払戻しを受けた社員と連帯して、当該出資払戻額に相当する金銭を支払う義務を負う。ただし、当該業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
前項の義務は、免除することができない。ただし、出資の払戻しをした日における剰余金額を限度として当該義務を免除することについて総社員の同意がある場合は、この限りでない。
前条第一項に規定する場合において、出資の払戻しを受けた社員は、出資払戻額が出資の払戻しをした日における剰余金額を超えることにつき善意であるときは、当該出資払戻額について、当該出資の払戻しに関する業務を執行した社員からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
前条第一項に規定する場合には、合同会社の債権者は、出資の払戻しを受けた社員に対し、出資払戻額(当該出資払戻額が当該債権者の合同会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
⤏ 第五款 退社に伴う持分の払戻しに関する特則
合同会社が持分の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下 この款において「持分払戻額」という。)が当該持分の払戻しをする日における剰余金額を超える場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、持分の払戻しについて異議を述べることができる。
前項に規定する場合には、合同会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第二号の期間は、一箇月(持分払戻額が当該合同会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額を超える場合にあっては、二箇月)を下ることができない。
前項の規定にかかわらず、合同会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号 又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
ただし、持分払戻額が当該合同会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額を超える場合は、この限りでない。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該持分の払戻しについて承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、合同会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
ただし、持分払戻額が当該合同会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合において、当該持分の払戻しをしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
合同会社が前条の規定に違反して持分の払戻しをした場合には、当該持分の払戻しに関する業務を執行した社員は、当該合同会社に対し、当該持分の払戻しを受けた社員と連帯して、当該持分払戻額に相当する金銭を支払う義務を負う。
ただし、持分の払戻しに関する業務を執行した社員がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
前項の義務は、免除することができない。
ただし、持分の払戻しをした時における剰余金額を限度として当該義務を免除することについて総社員の同意がある場合は、この限りでない。
第六章 定款の変更
持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
合名会社は、次の各号に掲げる定款の変更をすることにより、当該各号に定める種類の持分会社となる。
有限責任社員を加入させる定款の変更
合資会社
その社員の一部を有限責任社員とする定款の変更
合資会社
その社員の全部を有限責任社員とする定款の変更
合同会社
合資会社は、次の各号に掲げる定款の変更をすることにより、当該各号に定める種類の持分会社となる。
その社員の全部を無限責任社員とする定款の変更
合名会社
その社員の全部を有限責任社員とする定款の変更
合同会社
合同会社は、次の各号に掲げる定款の変更をすることにより、当該各号に定める種類の持分会社となる。
その社員の全部を無限責任社員とする定款の変更
合名会社
無限責任社員を加入させる定款の変更
合資会社
その社員の一部を無限責任社員とする定款の変更
合資会社
合資会社の有限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなす。
合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなす。
第六百三十八条第一項第三号 又は第二項第二号に掲げる定款の変更をする場合において、当該定款の変更をする持分会社の社員が当該定款の変更後の合同会社に対する出資に係る払込み又は給付の全部 又は一部を履行していないときは、当該定款の変更は、当該払込み 及び給付が完了した日に、その効力を生ずる。
前条第二項の規定により合同会社となる定款の変更をしたものとみなされた場合において、社員がその出資に係る払込み 又は給付の全部 又は一部を履行していないときは、当該定款の変更をしたものとみなされた日から一箇月以内に、当該払込み 又は給付を完了しなければならない。
ただし、当該期間内に、合名会社 又は合資会社となる定款の変更をした場合は、この限りでない。
第七章 解散
合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
第八百二十四条第一項 又は第八百三十三条第二項の規定による解散を命ずる裁判
持分会社は、前条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合には、次章の規定による清算が結了するまで、社員の全部 又は一部の同意によって、持分会社を継続することができる。
前項の場合には、持分会社を継続することについて同意しなかった社員は、持分会社が継続することとなった日に、退社する。
持分会社が解散した場合には、当該持分会社は、次に掲げる行為をすることができない。
合併(合併により当該持分会社が存続する場合に限る。)
吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部 又は一部の承継
第八章 清算
第一節 清算の開始
持分会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
解散した場合(第六百四十一条第五号に掲げる事由によって解散した場合 及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
設立の取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
前条の規定により清算をする持分会社(以下「清算持分会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
第二節 清算人
清算持分会社には、一人 又は二人以上の清算人を置かなければならない。
次に掲げる者は、清算持分会社の清算人となる。
業務を執行する社員(次号 又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
社員(業務を執行する社員を定款で定めた場合にあっては、その社員)の過半数の同意によって定める者
前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
前二項の規定にかかわらず、第六百四十一条第四号 又は第七号に掲げる事由によって解散した清算持分会社については、裁判所は、利害関係人 若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で、清算人を選任する。
第一項 及び第二項の規定にかかわらず、第六百四十四条第二号 又は第三号に掲げる場合に該当することとなった清算持分会社については、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。
清算人(前条第二項から第四項までの規定により裁判所が選任したものを除く。)は、いつでも、解任することができる。
前項の規定による解任は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
重要な事由があるときは、裁判所は、社員 その他利害関係人の申立てにより、清算人を解任することができる。
清算人は、清算持分会社の業務を執行する。
清算人が二人以上ある場合には、清算持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、清算人の過半数をもって決定する。
前項の規定にかかわらず、社員が二人以上ある場合には、清算持分会社の事業の全部 又は一部の譲渡は、社員の過半数をもって決定する。
清算持分会社と清算人との関係は、委任に関する規定に従う。
第五百九十三条第二項、第五百九十四条 及び 第五百九十五条の規定は、清算人について準用する。
この場合において、
第五百九十四条第一項 及び 第五百九十五条第一項中
「当該社員以外の社員」とあるのは、
「社員(当該清算人が社員である場合にあっては、当該清算人以外の社員)」と
読み替えるものとする。
清算人は、その任務を怠ったときは、清算持分会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
清算人がその職務を行うについて悪意 又は重大な過失があったときは、当該清算人は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
法人が清算人である場合には、当該法人は、当該清算人の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名 及び住所を社員に通知しなければならない。
前三条の規定は、前項の規定により選任された清算人の職務を行うべき者について準用する。
清算人は、清算持分会社を代表する。
ただし、他に清算持分会社を代表する清算人 その他清算持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
前項本文の清算人が二人以上ある場合には、清算人は、各自、清算持分会社を代表する。
清算持分会社は、定款 又は定款の定めに基づく清算人(第六百四十七条第二項から第四項までの規定により裁判所が選任したものを除く。以下 この項において同じ。)の互選によって、清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。
第六百四十七条第一項第一号の規定により業務を執行する社員が清算人となる場合において、持分会社を代表する社員を定めていたときは、当該持分会社を代表する社員が清算持分会社を代表する清算人となる。
裁判所は、第六百四十七条第二項から第四項までの規定により清算人を選任する場合には、その清算人の中から清算持分会社を代表する清算人を定めることができる。
第五百九十九条第四項 及び第五項の規定は清算持分会社を代表する清算人について、第六百三条の規定は民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算人 又は清算持分会社を代表する清算人の職務を代行する者について、それぞれ準用する。
清算持分会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
清算人は、清算持分会社が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
前項に規定する場合において、清算持分会社が既に債権者に支払い、又は社員に分配したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
裁判所は、第六百四十七条第二項から第四項までの規定により清算人を選任した場合には、清算持分会社が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができる。
第三節 財産目録等
清算人は、その就任後遅滞なく、清算持分会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、第六百四十四条各号に掲げる場合に該当することとなった日における財産目録 及び貸借対照表(以下 この節において「財産目録等」という。)を作成し、各社員にその内容を通知しなければならない。
清算持分会社は、財産目録等を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該財産目録等を保存しなければならない。
清算持分会社は、社員の請求により、毎月清算の状況を報告しなければならない。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、財産目録等の全部 又は一部の提出を命ずることができる。
第四節 債務の弁済等
清算持分会社(合同会社に限る。以下 この項 及び次条において同じ。)は、第六百四十四条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算持分会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
清算持分会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。
この場合において、清算持分会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
前項の規定にかかわらず、清算持分会社は、前条第一項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算持分会社の財産につき存する担保権によって担保される債権 その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。
この場合において、当該許可の申立ては、清算人が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
清算持分会社は、条件付債権、存続期間が不確定な債権 その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済することができる。
この場合においては、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならない。
前項の場合には、清算持分会社は、同項の鑑定人の評価に従い同項の債権に係る債務を弁済しなければならない。
第一項の鑑定人の選任の手続に関する費用は、清算持分会社の負担とする。
当該鑑定人による鑑定のための呼出し 及び質問に関する費用についても、同様とする。
清算持分会社に現存する財産がその債務を完済するのに足りない場合において、その出資の全部 又は一部を履行していない社員があるときは、当該出資に係る定款の定めにかかわらず、当該清算持分会社は、当該社員に出資させることができる。
清算持分会社は、当該清算持分会社の債務を弁済した後でなければ、その財産を社員に分配することができない。
ただし、その存否 又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
清算持分会社(合同会社に限る。以下 この条において同じ。)の債権者(知れている債権者を除く。)であって第六百六十条第一項の期間内にその債権の申出をしなかったものは、清算から除斥される。
前項の規定により清算から除斥された債権者は、分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
清算持分会社の残余財産を社員の一部に分配した場合には、当該社員の受けた分配と同一の割合の分配を当該社員以外の社員に対してするために必要な財産は、前項の残余財産から控除する。
第五節 残余財産の分配
残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。
第六節 清算事務の終了等
清算持分会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、清算に係る計算をして、社員の承認を受けなければならない。
社員が一箇月以内に前項の計算について異議を述べなかったときは、社員は、当該計算の承認をしたものとみなす。
ただし、清算人の職務の執行に不正の行為があったときは、この限りでない。
第七節 任意清算
持分会社(合名会社 及び合資会社に限る。以下 この節において同じ。)は、定款 又は総社員の同意によって、当該持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合における当該持分会社の財産の処分の方法を定めることができる。
第二節から前節までの規定は、前項の財産の処分の方法を定めた持分会社については、適用しない。
前条第一項の財産の処分の方法を定めた持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合には、清算持分会社(合名会社 及び合資会社に限る。以下 この節において同じ。)は、解散の日から二週間以内に、法務省令で定めるところにより、解散の日における財産目録 及び貸借対照表を作成しなければならない。
前条第一項の財産の処分の方法を定めていない持分会社が第六百四十一条第一号から第三号までに掲げる事由によって解散した場合において、解散後に同項の財産の処分の方法を定めたときは、清算持分会社は、当該財産の処分の方法を定めた日から二週間以内に、法務省令で定めるところにより、解散の日における財産目録 及び貸借対照表を作成しなければならない。
持分会社が第六百六十八条第一項の財産の処分の方法を定めた場合には、その解散後の清算持分会社の債権者は、当該清算持分会社に対し、当該財産の処分の方法について異議を述べることができる。
前項に規定する場合には、清算持分会社は、解散の日(前条第二項に規定する場合にあっては、当該財産の処分の方法を定めた日)から二週間以内に、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
ただし、第二号の期間は、一箇月を下ることができない。
第六百六十八条第一項の財産の処分の方法に従い清算をする旨
債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、清算持分会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号 又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該財産の処分の方法について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第二号の期間内に異議を述べたときは、清算持分会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。
持分会社が第六百六十八条第一項の財産の処分の方法を定めた場合において、社員の持分を差し押さえた債権者があるときは、その解散後の清算持分会社がその財産の処分をするには、その債権者の同意を得なければならない。
前項の清算持分会社が同項の規定に違反してその財産の処分をしたときは、社員の持分を差し押さえた債権者は、当該清算持分会社に対し、その持分に相当する金額の支払を請求することができる。
第八節 帳簿資料の保存
清算人(第六百六十八条第一項の財産の処分の方法を定めた場合にあっては、清算持分会社を代表する社員)は、清算持分会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算持分会社の帳簿 並びにその事業 及び清算に関する重要な資料(以下 この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
前項の規定にかかわらず、定款で又は社員の過半数をもって帳簿資料を保存する者を定めた場合には、その者は、清算持分会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、帳簿資料を保存しなければならない。
裁判所は、利害関係人の申立てにより、第一項の清算人 又は前項の規定により帳簿資料を保存する者に代わって帳簿資料を保存する者を選任することができる。
この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
前項の規定により選任された者は、清算持分会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から十年間、帳簿資料を保存しなければならない。
第三項の規定による選任の手続に関する費用は、清算持分会社の負担とする。
第九節 社員の責任の消滅時効
第五百八十条に規定する社員の責任は、清算持分会社の本店の所在地における解散の登記をした後五年以内に請求 又は請求の予告をしない清算持分会社の債権者に対しては、その登記後五年を経過した時に消滅する。
前項の期間の経過後であっても、社員に分配していない残余財産があるときは、清算持分会社の債権者は、清算持分会社に対して弁済を請求することができる。
第十節 適用除外等
次に掲げる規定は、清算持分会社については、適用しない。
第四章第一節
第六百六条、第六百七条第一項(第三号 及び第四号を除く。)及び第六百九条
第五章第三節(第六百十七条第四項、第六百十八条 及び第六百十九条を除く。)から第六節まで 及び第七節第二款
第六百三十八条第一項第三号 及び第二項第二号
清算持分会社の社員が死亡した場合 又は合併により消滅した場合には、第六百八条第一項の定款の定めがないときであっても、当該社員の相続人 その他の一般承継人は、当該社員の持分を承継する。
この場合においては、同条第四項 及び第五項の規定を準用する。