責任制限事件は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。
船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
第三章 責任制限手続
第一節 通則
第六条第一項に規定する責任の制限の場合において船舶が船籍を有するとき、又は同条第二項に規定する責任の制限の場合において救助船舶が船籍を有するとき。
船籍の所在地を管轄する地方裁判所
第六条第一項に規定する責任の制限の場合において船舶が船籍を有しないとき、又は同条第二項に規定する責任の制限の場合において救助船舶が船籍を有しないとき。
申立人の普通裁判籍の所在地、事故発生地、事故後に当該船舶が最初に到達した地 又は制限債権(物の損害に関する債権のみについての責任制限手続にあつては人の損害に関する債権を除く。以下この章において同じ。)に基づき申立人の財産に対して差押え 若しくは仮差押えの執行がされた地を管轄する地方裁判所
第六条第三項に規定する責任の制限のとき。
申立人の普通裁判籍の所在地、事故発生地 又は制限債権に基づき申立人の財産に対して差押え 若しくは仮差押えの執行がされた地を管轄する地方裁判所
裁判所は、著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、責任制限事件を 他の管轄裁判所、制限債権者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所 又は同一の事故から生じた他の責任制限事件 若しくは船舶油濁等損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号)の規定による責任制限事件の係属する裁判所に移送することができる。
特別の定めがある場合を除いて、責任制限手続に関しては、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定を準用する。
責任制限手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
裁判所は、職権で、責任制限事件に関して必要な調査をすることができる。
責任制限手続に関する裁判に対しては、この法律に特別の規定がある場合に限り、その裁判につき利害関係を有する者は、即時抗告をすることができる。
その期間は、裁判の公告があつた場合においては、その公告があつた日から起算して一月とする。
この法律の規定によつてする公告は、官報 及び裁判所の指定する新聞紙に掲載してする。
公告は、最終の掲載があつた日の翌日に、その効力を生ずる。
この法律の規定によつて公告 及び送達をしなければならない場合には、送達は、書類を通常の取扱いによる郵便に付し、又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者 若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務を利用して送付する方法によりすることができる。
この場合においては、公告は、一切の関係人に対する送達の効力を有する。
この法律に定めるもののほか、責任制限手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第二節 責任制限手続開始の申立て
船舶所有者等 若しくは救助者 又は被用者等は、その責任を制限するため、責任制限手続開始の申立てをすることができる。
船舶共有者は、各自責任制限手続開始の申立てをすることができる。
責任制限手続開始の申立てをするときは、制限債権に係る事故を特定するために必要な事実 及び制限債権(事故発生後の利息 又は不履行による損害賠償 若しくは違約金の請求権を除く。第二十五条第二号において同じ。)の額が第七条第一項 又は第三項に規定する責任の限度額(以下「責任限度額」という。)を超えることを疎明し、かつ、知れている制限債権者の氏名 又は名称 及び住所を届け出なければならない。
裁判所は、責任制限手続開始の申立てを相当と認めるときは、その申立てをした者(以下「申立人」という。)に対して、一月を超えない一定の期間内に、裁判所の定める責任限度額に相当する金銭 及び これに対する事故発生の日から供託の日(次条第一項の規定により供託委託契約を締結する場合にあつては、同項の規定による届出の日。次項において同じ。)まで事故発生の日における法定利率により算定した金銭を裁判所の指定する供託所に供託し、かつ、その旨を届け出るべきことを命じなければならない。
前項の責任限度額に相当する金銭は、供託の日において公表されている最終の一単位の額により算定するものとする。
第一項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
申立人が、裁判所の許可を得て供託委託契約を締結し、前条第一項の規定による決定において定められた期間内にその旨を裁判所に届け出た場合においては、当該契約に係る一定の額の金銭は、その期間内に供託することを要しない。
供託委託契約は、責任制限手続開始の決定があつた場合において、受託者が申立人のために一定の額の金銭及び これに対する責任制限手続開始の決定の日から供託の日まで供託金に付される利息の利率と同一の率により算定した金銭を前条第一項の供託所に供託をすることを約する契約とする。
供託委託契約は、第一項の規定による届出があつた後は、裁判所の許可を得なければ、変更 又は解除をすることができない。
銀行 その他の政令で定める者でなければ、供託委託契約の受託者(以下単に「受託者」という。)となることができない。
前条第一項の規定による届出がされた場合においては、受託者は、裁判所の定める日(次条第一項において「指定日」という。)までに供託委託契約に従つて供託し、かつ、その旨を裁判所に届け出なければならない。
前項の規定により受託者がした供託は、申立人が供託者としてした供託とみなす。
前条第一項の規定による供託をしなかつた場合においては、受託者は、供託に代えて、指定日において供託すべき金銭及び これに対する指定日の翌日から支払の日まで指定日の翌日における法定利率により算定した金銭を管理人に支払う義務を負う。
受託者が前項の義務を履行しなかつた場合においては、裁判所は、管理人の申立てにより、その受託者に対して、同項の規定により支払うべき額の金銭を管理人に支払うべきことを命じなければならない。
前項の規定による決定は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
第二項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
管理人は、第一項の規定により受託者から金銭の支払を受けたときは、直ちに、これを第十九条第一項の供託所に供託し、かつ、その旨を裁判所に報告しなければならない。
前項の規定により管理人がした供託は、申立人が供託者としてした供託とみなす。
責任制限手続開始の申立てがあつた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、申立人 又は受益債務者の申立てにより、責任制限手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、制限債権に基づく申立人 又は受益債務者の財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分 又は担保権の実行の手続の中止を命ずることができる。
裁判所は、前項の規定による中止の決定を変更し、又は取り消すことができる。
申立人が破産者であるときは、裁判所は、責任制限手続開始の申立てを却下しなければならない。
次の場合においては、裁判所は、責任制限手続開始の申立てを棄却しなければならない。
制限債権の額が責任限度額を超えないことが明らかなとき。
申立人が第十九条第一項の規定による決定に従わないとき。
第三節 責任制限手続開始の決定
責任制限手続は、その開始の決定の時から、効力を生ずる。
裁判所は、責任制限手続開始の決定と同時に、管理人を選任し、かつ、次の事項を定めなければならない。
制限債権の届出期間。
ただし、その期間は、決定の日から一月以上 四月以下でなければならない。
制限債権の調査期日。
ただし、その期日と届出期間の末日との間には、一週間以上 二月以下の期間がなければならない。
裁判所は、責任制限手続開始の決定をしたときは、直ちに、次の事項を公告しなければならない。
責任制限手続開始決定の年月日時 及び主文
第十九条第一項の規定による決定に基づき供託された金銭又は第二十条第一項の供託委託契約に係る一定の金銭の総額
申立人 及び知れている受益債務者の氏名 又は名称 並びにこれらの者と事故に係る船舶、救助船舶 又は救助者との関係
制限債権の届出期間 及び調査期日
申立人 又は受益債務者に対する制限債権をその届出期間内に届け出るべき旨の催告
管理人、申立人 並びに知れている制限債権者 及び受益債務者には、前項各号に掲げる事項を記載した書面を送達しなければならない。
前二項の規定は、第一項第二号から第五号までに掲げる事項に変更を生じた場合について準用する。
ただし、制限債権の調査期日の変更については、公告することを要しない。
責任制限手続開始の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
第二十三条の規定は、責任制限手続開始の申立てを却下し、又は棄却する決定に対して即時抗告があつた場合について準用する。
責任制限手続開始の決定に対し前条第一項の即時抗告があつた場合において、第十九条第一項の規定による決定において定められた責任限度額 又は事故発生の日を不当と認めるときは、裁判所は、申立人に対して、二週間を超えない一定の期間内に、増加すべき責任限度額に相当する金銭 及びこれに対する事故発生の日から供託の日(次項において準用する第二十条第一項の規定により供託委託契約を締結する場合にあつては、同項の規定による届出の日)まで事故発生の日における法定利率により算定した金銭 又は増加すべき第十九条第一項に規定する法定利率により算定した金銭を供託し、かつ、その旨を責任制限裁判所に届け出るべきことを命じなければならない。
第十九条第二項 及び第二十条から第二十二条までの規定は、前項の場合について準用する。
この場合において、
第十九条第二項中
「供託の日」とあるのは、
「第三十条第一項の供託の日」と
読み替えるものとする。
責任制限手続開始の決定を取り消す決定が確定したときは、裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。
管理人、申立人 並びに知れている制限債権者 及び受益債務者には、前項の規定による公告に係る事項を記載した書面を送達しなければならない。
申立人は、前条第一項の決定が確定した日から起算して一月を経過した後でなければ、次条に規定する基金として供託された金銭を取り戻し、又はその取戻請求権を処分することができない。
責任制限手続が開始されたときは、制限債権者は、この法律で定めるところにより、第十九条第一項 又は第三十条第一項の規定による決定に基づき供託された金銭、第二十一条第一項 又は第二十二条第五項(第三十条第二項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により供託される金銭 及び第九十四条第一項の規定により供託される金銭 並びに供託されたこれらの金銭に付される利息(以下「基金」という。)から支払を受けることができる。
この場合においては、制限債権者は、基金以外の申立人の財産 又は受益債務者の財産に対してその権利を行使することができない。
責任制限手続が開始されたときは、制限債権者は、制限債権をもつて申立人 又は受益債務者の債権と相殺することができない。
申立人 又は受益債務者は、第三十三条後段の事由を主張して制限債権に基づく強制執行の不許を求めるには、強制執行に対する異議の訴えを提起しなければならない。
請求異議の訴えに関する民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の規定は、前項の訴えについて準用する。
申立人 又は受益債務者は、第三十三条後段の事由を主張して制限債権に基づく担保権の実行の不許を求めるには、担保権の実行に対する異議の訴えを提起しなければならない。
前項の訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所 又はこの裁判所がないときは、担保権の目的である財産の所在地を管轄する裁判所の管轄に専属する。
民事執行法第三十六条 及び第三十七条の規定は、第一項の訴えについて準用する。
第四節 責任制限手続の拡張
物の損害に関する債権のみについて責任制限手続が開始された場合においては、申立人 又は受益債務者は、人の損害に関する債権について責任を制限するため、責任制限手続拡張の申立てをすることができる。
ただし、制限債権の調査期日が開始された後は、この限りでない。
第十八条から第二十五条までの規定は、前項の申立てについて準用する。
責任制限手続を拡張する決定においては、責任制限手続が人の損害に関する債権についても 効力を及ぼす旨を定めるものとする。
前節(第二十七条中管理人の選任に関する部分を除く。)の規定は、前項の決定について準用する。
前条第一項の決定があつたときは、第八十二条から第八十四条まで、第九十条から第九十二条まで 及び第九十四条の規定の適用については、責任制限手続拡張の申立てをした受益債務者は、申立人とみなす。
第五節 管理人
管理人は、制限債権の調査期日における意見の陳述、配当 その他この法律で定める職務を行う権限を有する。
前項の職務を行うため、管理人は、申立人 又は受益債務者に対して、必要な事項の報告 又は帳簿 その他の書類の提出を求めることができる。
管理人は、善良な管理者の注意をもつてその職務を行わなければならない。
管理人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で管理人代理を選任することができる。
前項の規定による管理人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならない。
管理人は、責任制限手続のため必要な費用の前払 及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、又は職権で、管理人を解任することができる。
この場合においては、その管理人を審尋しなければならない。
管理人の任務が終了した場合においては、管理人 又はその相続人は、遅滞なく、裁判所に計算の報告をしなければならない。
第六節 責任制限手続への参加
制限債権者は、その有する制限債権(利息 又は不履行による損害賠償 若しくは違約金の請求権については、制限債権の調査期日の開始の日までに生じたものに限る。以下この章において同じ。)をもつて責任制限手続に参加することができる。
制限債権を弁済した申立人 又は受益債務者は、弁済の限度においてその制限債権を有するものとみなし、これをもつて責任制限手続に参加することができる。
制限債権につき、将来、制限債権者に代位し、又は申立人 若しくは受益債務者に対して求償権を有することとなる者は、その制限債権を有するものとみなし、これをもつて責任制限手続に参加することができる。
ただし、制限債権者が責任制限手続に参加した場合における当該参加に係る制限債権については、この限りでない。
申立人 又は受益債務者は、制限債権に基づき外国において強制執行をされるおそれがあるときは、その強制執行により支払をすべき制限債権の額についてその制限債権を有するものとみなし、これをもつて責任制限手続に参加することができる。
前項ただし書の規定は、この場合について準用する。
前各項の規定により責任制限手続に参加しようとする者は、制限債権の内容 その他の最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。
第四項の規定により責任制限手続に参加しようとする者が前項の規定による届出をするときは、外国において強制執行をされるおそれがあることを疎明しなければならない。
制限債権につき申立人 及び受益債務者以外に全部の履行をする義務を負う者がある場合において、その者のためにも責任制限手続が開始され、又は拡張されたときは、制限債権者は、責任制限手続開始の時又は責任制限手続拡張の時に有する制限債権の全額につき、各責任制限手続においてその権利を行うことができる。
前項の規定は、制限債権につき申立人 及び受益債務者以外に全部の履行をする義務を負う者がある場合において、その者のために船舶油濁等損害賠償保障法の規定により責任制限手続が開始され、又は拡張されたときにおける同法第二条第十三号に規定する船舶油濁等損害に基づく 債権(制限債権に該当するものに限る。)について準用する。
債権の目的が、金銭でないとき、又は金銭であつてその額が不確定であるとき、若しくは外国の通貨をもつて定められたものであるときは、その債権の額は、責任制限手続開始の時 又は責任制限手続拡張の時における評価額による。
第四十七条第五項の規定による届出は、第二十七条(第三十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定により裁判所が定めた届出期間内にしなければならない。
第四十七条第一項から第四項までの規定により責任制限手続に参加することのできる者が、その責めに帰することのできない事由によつて届出期間内に届出をすることができなかつたときは、その者は、前項の規定にかかわらず、届出期間が経過した後においても、届出をすることができる。
ただし、制限債権の調査期日が終了した後は、この限りでない。
責任制限手続に参加した者は、その届け出た事項に変更が生じたとき、又は届け出た事項を変更しようとするときは、その旨を裁判所に届け出なければならない。
前条の規定は、他の制限債権者の利益を害すべき変更の届出をする場合について準用する。
第四十七条第三項 又は第四項の規定により責任制限手続に参加した者は、制限債権者に代位し、申立人 若しくは受益債務者に対して求償権を取得し、又は制限債権につき支払をしたときは、その旨を裁判所に届け出なければならない。
この場合においては、届出の原因となつた事実を証明しなければならない。
責任制限手続に参加した者の届出に係る債権を取得した者は、その参加した者の地位を承継することができる。
前項の規定により承継しようとする者は、取得した債権 その他の最高裁判所規則で定める事項を裁判所に届け出なければならない。
この場合においては、当該債権を取得したことを証明しなければならない。
前二項の規定は、第四十七条第一項の規定により責任制限手続に参加した者の届出に係る債権を弁済した申立人 又は受益債務者について準用する。
裁判所は、この節の規定によつてする届出が第四十七条第五項 若しくは第六項、第五十条(第五十一条第二項において準用する場合を含む。)、第五十一条第三項 又は前条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反するときは、その届出を却下しなければならない。
前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
責任制限手続への参加がある場合には、責任制限手続への参加が終了する(責任制限手続終結の決定によらないで責任制限手続への参加が終了した場合にあつては、その終了の時から六月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
申立人 及び受益債務者は、第十八条(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定により届け出た制限債権者以外の制限債権者で、まだ責任制限手続に参加していないものの氏名 又は名称 及び住所を知つたときは、直ちに、これを裁判所に届け出なければならない。
ただし、制限債権の調査期日が終了した後に知つたときは、この限りでない。
第二十八条第二項 及び第三項(第三十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、前項の規定による届出に係る制限債権者について準用する。
第四十七条第一項の規定により責任制限手続に参加した者の著しい損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、当該参加した者の届出に係る債権が確定する前においても、管理人の申立てにより、又は職権で、管理人に対して、制限債権に対する配当の一部として基金から相当の金額を支払うことを命ずることができる。
管理人は、前項に規定する制限債権者から同項の申立てをすべきことを求められたときは、直ちに、その旨を裁判所に報告し、なお、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その理由を裁判所に報告しなければならない。
第七節 制限債権の調査及び確定
制限債権の調査期日においては、届出のあつた債権について、制限債権であるかどうか、並びに制限債権であるときは、その内容 及び人の損害に関する債権と 物の損害に関する債権との別を調査する。
申立人、受益債務者 及び責任制限手続に参加した者 並びにこれらの代理人は、制限債権の調査期日に出頭して、届出のあつた債権について異議を述べることができる。
制限債権の調査は、管理人の出頭がなければすることができない。
制限債権の調査期日において管理人 及び第五十八条に掲げる者の異議がなかつたときは、制限債権であること 及び その内容 並びに人の損害に関する債権と 物の損害に関する債権との別は、確定する。
裁判所は、異議のあつた債権について、査定の裁判をしなければならない。
査定の裁判においては、当該債権が、制限債権でないときはその旨を、制限債権であるときはその内容 及び人の損害に関する債権と 物の損害に関する債権との別を定める。
査定の裁判は、当該債権を届け出た者 及び その債権について異議を述べた者に送達する。
裁判所は、査定の裁判をするに当たり、管理人に対して、必要な事項について調査を命じ、又は意見を求めることができる。
査定の裁判に不服がある者(管理人を除く。)は、決定の送達を受けた日から一月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができる。
前項の訴えは、これを提起する者が、異議のあつた債権を届け出た者であるときは異議を述べた者を、異議を述べた者であるときは異議のあつた債権を届け出た者を、それぞれ被告としなければならない。
第一項の訴えは、責任制限裁判所の管轄に専属し、口頭弁論は、第一項の期間を経過した後でなければ、開始することができない。
同一の債権に関し数個の訴えが同時に係属するときは、弁論 及び裁判は、併合してしなければならない。
この場合においては、民事訴訟法第四十条第一項から第三項までの規定を準用する。
第一項の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、査定の裁判を認可し、又は変更する。
第四十七条第五項の規定により制限債権の届出がされた場合において、当該債権に関する債権者 及び申立人 又は受益債務者間の訴訟(以下「手続外訴訟」という。)が係属するときは、裁判所は、原告の申立てにより、その訴訟手続の中止を命ずることができる。
裁判所は、原告の申立てにより、前項の規定による中止の決定を取り消すことができる。
査定の裁判に対する異議の訴えが係属するときは、その訴えに係る債権を有する者 及び申立人 又は受益債務者間の当該債権に関する訴えは、責任制限裁判所に提起することができる。
査定の裁判に対する異議の訴えが係属する場合において、その訴えに係る債権に関する手続外訴訟が他の第一審裁判所に係属するときは、責任制限裁判所は、申立てにより、その移送を求めることができる。
前項の規定による決定があつたときは、移送を求められた裁判所は、手続外訴訟を責任制限裁判所に移送しなければならない。
前項の規定による移送は、訴訟手続が中断 又は中止中でもすることができる。
責任制限裁判所に査定の裁判に対する異議の訴えと手続外訴訟とが係属するときは、弁論 及び裁判は、併合してしなければならない。
第八節 配当
基金は、第九十二条第五項(第九十四条第二項において準用する場合を含む。) 又は第九十三条第一項 若しくは第三項の規定により支弁されるものを除き、配当に充てる。
管理人は、制限債権の調査期日が終了した後、遅滞なく、配当を行わなければならない。
制限債権の調査期日において異議があつたときは、管理人は、査定の裁判に対する異議の訴えの出訴期間を経過した後でなければ、配当を行うことができない。
ただし、裁判所の許可を得たときは、この限りでない。
管理人は、配当を行おうとするときは、配当表を作り、裁判所の認可を得なければならない。
配当表には、配当に加えるべき制限債権者の氏名、配当に加えるべき制限債権の額、配当することのできる金銭の額、配当率 その他の最高裁判所規則で定める事項を人の損害に関する債権と物の損害に関する債権との別に従つて記載しなければならない。
裁判所は、配当表を認可したときは、その旨を公告しなければならない。
配当表の記載に不服がある者は、前条の規定による公告の日から二週間の不変期間内に、裁判所に対して、異議を申し立てることができる。
裁判所は、異議が相当であると認めるときは、管理人に対して、配当表の更正を命じなければならない。
異議についての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
責任制限手続に参加した者は、配当表に対する異議申立期間の経過前に、管理人に対して、届出に係る自己の債権につき手続外訴訟が係属していること 又は当該債権に基づく強制執行 若しくは担保権の実行がされていることを証明して、配当の保留の申出をすることができる。
管理人は、次に掲げる債権については、配当を保留しなければならない。
前条の規定により配当の保留の申出がされた債権
第四十七条第三項 又は第四項の規定により責任制限手続に参加した者の届出に係る債権で、第五十一条第三項の規定による届出がないもの
責任制限手続においてまだ確定していない債権で、前二号に掲げるもの以外のもの
第九十二条第一項 若しくは第九十三条第二項 又は同条第一項の規定により立て替えられ、又は支弁されることとなる費用等 及び弁護士 又は弁護士法人の報酬で、その額が明らかでないものがあるときは、裁判所は、管理人に対して、基金につき相当額の保留をすることを命じなければならない。
裁判所は、前項の規定による決定を変更し、又は取り消すことができる。
責任制限手続に参加した者がその配当額につき供託に関する法令の規定により基金から支払を受けることができることとなつたときは、申立人 及び受益債務者は、責任制限手続外においては、当該参加した者に対する配当に係る債権について、その責任を免れる。
届出に係る債権が手続外訴訟において制限債権でないことに確定したときは、当該債権は、責任制限手続から除斥される。
第七十四条各号に掲げる債権について、次に掲げる事由が生じたときは、管理人は、遅滞なく、配当を実施しなければならない。
第七十四条第一号に掲げる債権にあつては、その内容が確定し、かつ、保留の申出をした者が配当を行うべきことを求めたとき。
第七十四条第二号に掲げる債権にあつては、その内容が確定し、かつ、第五十一条第三項の規定による届出があつたとき。
第七十四条第三号に掲げる債権にあつては、その内容が確定したとき。
基金に新たに配当に充てることができる部分が生じたときは、管理人は、更に配当を行わなければならない。
管理人は、裁判所の許可を得て、一時 前項の配当を行わないことができる。
配当が終了したときは、裁判所は、責任制限手続終結の決定をし、かつ、その旨を公告しなければならない。
申立人 又は受益債務者が第十八条(第三十七条第二項において準用する場合を含む。) 又は第五十五条第一項に規定する届出義務に違反した場合において、責任制限手続終結の決定があつたときは、これらの者は、その義務に違反したことにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。
第九節 責任制限手続の廃止
次の場合においては、裁判所は、申立てにより、又は職権で、責任制限手続廃止の決定をしなければならない。
ただし、第三号の場合において制限債権者を著しく害するおそれがあるときは、この限りでない。
第二十二条第二項(第三十条第二項 及び第三十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に基づき受託者から金銭の支払を受けることができないことを管理人が証明したとき。
申立人が第三十条第一項(第三十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に従わないとき。
申立人が第九十一条後段の規定による決定に従わないとき。
申立人は、知れている受益債務者 及び責任制限手続に参加した者の全員の同意を得て、責任制限手続廃止の申立てをすることができる。
前項の申立てがあつたときは、裁判所は、責任制限手続廃止の決定をしなければならない。
申立人が破産手続開始の決定を受けた場合において、責任制限手続を続行することが破産債権者を著しく害するおそれがあるときは、裁判所は、破産管財人の申立てにより、責任制限手続廃止の決定をしなければならない。
ただし、配当表の認可の公告があつたとき、又は破産法(平成十六年法律第七十五号)第百九十五条第一項に規定する最後配当、同法第二百四条第一項に規定する簡易配当、同法第二百八条第一項に規定する同意配当 若しくは同法第二百九条第一項に規定する中間配当の許可があつたときは、この限りでない。
裁判所は、責任制限手続廃止の決定をしたときは、直ちに、その主文 及び理由の要旨を公告しなければならない。
第三十一条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
責任制限手続廃止の申立てを却下し、又は棄却する決定 及び責任制限手続廃止の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
責任制限手続廃止の決定を取り消す決定が確定したときは、裁判所は、直ちに、その旨を公告しなければならない。
第三十一条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
責任制限手続廃止の決定は、確定しなければその効力を生じない。
第三十二条の規定は、責任制限手続廃止の決定が確定した場合について準用する。
第十節 費用
第九十三条第一項 又は第二項に規定するものを除き、責任制限手続のため必要な費用 及び管理人の報酬(以下 この節において「費用等」という。)は、申立人の負担とする。
申立人は、責任制限手続開始の申立てをするときは、費用等として裁判所が定める金額を予納しなければならない。
予納した費用等が不足する場合において、裁判所がその不足する費用等の予納を命じたときも、同様とする。
第八十二条第三号に該当する場合において、同条ただし書に規定する事由があるときは、費用等は、基金から立て替える。
前項の規定により立て替えた費用等については、管理人が、申立人から取り立てるものとする。
前項の場合においては、裁判所は、管理人の申立てにより、申立人に対して、第一項の規定により立て替えた費用等の額と 同額の金銭を管理人に支払うべきことを命じなければならない。
第二十二条第三項 及び第四項の規定は、前項の規定による決定について準用する。
第二項の規定により取り立てるべき費用等の取立てが不能であるときは、当該費用等は、基金から支弁する。
管理人が査定の裁判に対する異議の訴えを追行するために必要な費用等 及び弁護士 又は弁護士法人の報酬は、次項に規定する費用を除き、基金から支弁する。
管理人が査定の裁判に対する異議の訴えを追行するために必要な費用のうち訴訟費用となるものは、基金から立て替える。
査定の裁判に対する異議の訴えについての判決において管理人の負担とされた訴訟費用は、基金から支弁する。
裁判所は、管理人の申立てにより、第一項の費用等 及び報酬の額を定める。
前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第九十二条第一項 又は前条第二項の規定により立て替えた費用等 又は訴訟費用を管理人が取り立てたときは、これを申立人のために基金として供託しなければならない。
第二十二条第六項の規定は前項の規定により管理人がした供託について、第九十二条第五項の規定は管理人が取り立てるべき前項の訴訟費用の取立てが不能である場合について準用する。