民法

# 明治二十九年法律第八十九号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第百二号による改正
最終編集日 : 2024年 04月11日 15時12分


第一節 債権の目的

1項

債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

1項

債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約 その他の債権の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

1項

債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質 又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。

2項

前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後 その物を債権の目的物とする。

1項

債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。


ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。

2項

債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。

3項

前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。

1項

外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。

1項

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2項

法定利率は、年三パーセントとする。

3項

前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4項

各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

5項

前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

1項

利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

1項

債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。

1項

前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。

2項

前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない

1項

債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。

1項

第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者 又は債務者に対する意思表示によってする。

2項

前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。

1項

債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。

1項

選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。


ただし、第三者の権利を害することはできない。

第二節 債権の効力

第一款 債務不履行の責任等

1項

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2項

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時 又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3項

債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

1項

債務の履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない

2項

契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

1項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。

2項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。

1項

債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

2項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

1項

債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制 その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。


ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

1項

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき 又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。


ただし、その債務の不履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2項

前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 号

債務の履行が不能であるとき。

二 号

債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 号

債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

1項

債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2項

特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

1項

損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

1項

将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

2項

将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

1項

債務の不履行 又はこれによる損害の発生 若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任 及びその額を定める。

1項

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。


ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

2項

前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

3項

第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない

1項

当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2項

賠償額の予定は、履行の請求 又は解除権の行使を妨げない。

3項

違約金は、賠償額の予定と推定する。

1項

前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。

1項

債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物 又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物 又は権利について当然に債権者に代位する。

1項

債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利 又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転 又はその利益の償還を請求することができる。

第二款 債権者代位権

1項

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。


ただし、債務者の一身に専属する権利 及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

2項

債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない


ただし、保存行為は、この限りでない。

3項

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない

1項

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

1項

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払 又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払 又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。


この場合において、相手方が債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

1項

債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。

1項

債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立て その他の処分をすることを妨げられない。


この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

1項

債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

1項

登記 又は登録をしなければ権利の得喪 及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続 又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。


この場合においては、前三条の規定を準用する。

第三款 詐害行為取消権

第一目 詐害行為取消権の要件

1項

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。


ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。

3項

債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。

4項

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

1項

債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、不動産の金銭への換価 その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与 その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。

二 号

債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭 その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

三 号

受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

1項

債務者がした既存の債務についての担保の供与 又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 号

その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

2項

前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。

二 号

その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

1項

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

1項

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その転得者が受益者から転得した者である場合

その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

二 号

その転得者が他の転得者から転得した者である場合

その転得者 及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

第二目 詐害行為取消権の行使の方法等

1項

債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。


受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

2項

債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。


転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

1項

詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。

一 号

受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え

受益者

二 号

転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え

その詐害行為取消請求の相手方である転得者

2項

債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

1項

債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。

2項

債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

1項

債権者は、第四百二十四条の六第一項前段 又は第二項前段の規定により受益者 又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払 又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払 又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。


この場合において、受益者 又は転得者は、債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払 又は引渡しをすることを要しない。

2項

債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により受益者 又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第三目 詐害行為取消権の行使の効果

1項

詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者 及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

1項

債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。


債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

1項

債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

1項

債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。


ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付 又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。

一 号

第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合

その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権 又はその価額の償還請求権

二 号

前条に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く

その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

第四目 詐害行為取消権の期間の制限

1項

詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない


行為の時から十年を経過したときも、同様とする。

第三節 多数当事者の債権及び債務

第一款 総則

1項

数人の債権者 又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者 又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

第二款 不可分債権及び不可分債務

1項

次款連帯債権)の規定(第四百三十三条 及び第四百三十五条の規定を除く)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。

1項

不可分債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。


この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない

1項

第四款連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。

1項

不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。

第三款 連帯債権

1項

債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部 又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない

1項

債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為 又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。


ただし、他の連帯債権者の一人 及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該 他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

第四款 連帯債務

1項

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部 又は一部の履行を請求することができる。

1項

連帯債務者の一人について法律行為の無効 又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

1項

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

2項

前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十八条第四百三十九条第一項 及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。


ただし、債権者 及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

1項

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

2項

前項の規定による求償は、弁済 その他免責があった日以後の法定利息 及び避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。

1項

他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。


この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済 その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

1項

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。

2項

前項に規定する場合において、求償者 及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、等しい割合で分割して負担する。

3項

前二項の規定にかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない

1項

連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。

第五款 保証債務

第一目 総則

1項

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2項

保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項

保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

1項

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

2項

保証人は、その保証債務についてのみ、違約金 又は損害賠償の額を約定することができる。

1項

保証人の負担が債務の目的 又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

2項

主たる債務の目的 又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。

1項

行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合 又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。

1項

債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。

一 号
行為能力者であること。
二 号
弁済をする資力を有すること。
2項

保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。

3項

前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない

1項

債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

1項

債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。


ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

1項

債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

1項

保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

1項

第四百五十二条 又は第四百五十三条の規定により保証人の請求 又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告 又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告 又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

1項

数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

1項

主たる債務者に対する履行の請求 その他の事由による時効の完成猶予 及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2項

保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。

3項

主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権 又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

第四百三十八条第四百三十九条第一項第四百四十条 及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無 並びにこれらの残額 及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

1項

主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。

2項

前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求することができない

3項

前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。

2項

第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。


この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息 及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。

3項

第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない

1項

保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。

一 号

主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。

二 号

債務が弁済期にあるとき。


ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない

三 号

保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。

1項

前条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。

2項

前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。

1項

第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。

2項

主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。


この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

3項

第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。

1項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。


この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。

3項

保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。

1項

連帯債務者 又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。

1項

第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

2項

第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

第二目 貸金等根保証契約

1項

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのもの 及びその保証債務について約定された違約金 又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2項

個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3項

第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

1項

個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し 又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。

2項

個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。

3項

個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。


ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。

4項

第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人貸金等根保証契約における元本確定期日の定め 及びその変更(その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。

1項

次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。


ただし第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 号

債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 号

保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 号

主たる債務者 又は保証人が死亡したとき。

2項

前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。


ただし第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る

一 号

債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 号

主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

1項

保証人が法人である根保証契約において、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。

2項

保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め 若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項 若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。


主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

3項

前二項の規定は、求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には、適用しない

第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則

1項

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

2項

前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。

一 号

保証人になろうとする者が、次の 又はに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該 又はに定める事項を公証人に口授すること。

保証契約(ロに掲げるものを除く

主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

根保証契約

主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日 又は第四百六十五条の四第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由 その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

二 号

公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。

三 号

保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。


ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

四 号

公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

3項

前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない

1項

前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が口がきけない者である場合には、公証人の前で、同条第二項第一号イ 又はに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該 又はに定める事項を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない。


この場合における同項第二号の規定の適用については、

同号
口述」とあるのは、
通訳人の通訳による申述 又は自書」と

する。

2項

前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第二項第二号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。

3項

公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

1項

第四百六十五条の六第一項 及び第二項 並びに前条の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。


主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

2項

前項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない

1項

前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない

一 号

主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役 又はこれらに準ずる者

二 号

主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者

主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者

主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社 及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

株式会社以外の法人が主たる債務者である場合における 又はに掲げる者に準ずる者

三 号

主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者 又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

1項

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 号

財産 及び収支の状況

二 号

主たる債務以外に負担している債務の有無 並びにその額 及び履行状況

三 号

主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨 及びその内容

2項

主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み 又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず 又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り 又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3項

前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない

第四節 債権の譲渡

1項

債権は、譲り渡すことができる。


ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2項

当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

3項

前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人 その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済 その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。

4項

前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない

1項

債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。

2項

前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人 及び譲受人に供託の通知をしなければならない。

3項

第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。

1項

前条第一項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者 その他の第三者に対抗することができるものに限る)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。


この場合においては、同条第二項 及び第三項の規定を準用する。

1項

第四百六十六条第三項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない

2項

前項の規定にかかわらず、譲受人 その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済 その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。

1項

預金口座 又は貯金口座に係る預金 又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人 その他の第三者に対抗することができる。

2項

前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない

1項

債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。

2項

債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。

3項

前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人 その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第四百六十六条第三項譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。

1項

債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者 その他の第三者に対抗することができない。

2項

前項の通知 又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない

1項

債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

2項

第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については、

同項
対抗要件具備時」とあるのは、
第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、

第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については、

同項
対抗要件具備時」とあるのは、
第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」と

する。

1項

債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。

2項

債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。


ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

一 号
対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
二 号

前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

3項

第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、

これらの規定中
対抗要件具備時」とあるのは、
第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、

第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、

これらの規定中
対抗要件具備時」とあるのは、
第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」と

する。

第五節 債務の引受け

第一款 併存的債務引受

1項

併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。

2項

併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。

3項

併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。


この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

4項

前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

1項

引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2項

債務者が債権者に対して取消権 又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

第二款 免責的債務引受

1項

免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。

2項

免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。


この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。

3項

免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

1項

引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。

2項

債務者が債権者に対して取消権 又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。

1項

債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。


ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

2項

前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ 又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。

3項

前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。

4項

前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。

5項

前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

第六節 債権の消滅

第一款 弁済

第一目 総則

1項

債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

1項

債務の弁済は、第三者もすることができる。

2項

弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない


ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。

3項

前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない


ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。

4項

前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない

1項

弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない

1項

前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。


この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。

1項

債権者の預金 又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金 又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。

1項

受領権者(債権者 及び法令の規定 又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

1項

前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。

1項

差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。

2項

前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。

1項

弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

1項

債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約 その他の債権の発生原因 及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。

1項

弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

2項

法令 又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。

1項

弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。


ただし、債権者が住所の移転 その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

1項

弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。

2項

弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。


ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。

1項

債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。

1項

債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第一項に規定する場合を除く)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。

2項

弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。


ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。

3項

前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。

4項

弁済をする者 及び弁済を受領する者がいずれも第一項 又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。

一 号

債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。

二 号

全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。

三 号

債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。

四 号

前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。

1項

債務者が一個 又は数個の債務について元本のほか利息 及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息 及び元本に充当しなければならない。

2項

前条の規定は、前項の場合において、費用、利息 又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。

1項

前二条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する。

1項

一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前三条の規定を準用する。

1項

債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

1項

弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。


ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

第二目 弁済の目的物の供託

1項

弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。


この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。

一 号

弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。

二 号

債権者が弁済を受領することができないとき。

2項

弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。


ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

1項

前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。

2項

供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定 及び供託物の保管者の選任をしなければならない。

3項

前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。

1項

債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。


この場合においては、供託をしなかったものとみなす。

2項

前項の規定は、供託によって質権 又は抵当権が消滅した場合には、適用しない

1項

弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。

一 号

その物が供託に適しないとき。

二 号

その物について滅失、損傷 その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。

三 号

その物の保存について過分の費用を要するとき。

四 号

前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。

1項

弁済の目的物 又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。

2項

債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない

第三目 弁済による代位

1項

債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する

1項

第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く)について準用する。

1項

前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力 及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。

2項

前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該 他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。

3項

第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。

一 号

第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人 及び物上保証人に対して債権者に代位しない。

二 号

第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。

三 号

前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。

四 号

保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。


ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。

五 号

第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号 及び第二号の規定を適用し、


物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号第三号 及び前号の規定を適用する。

1項

債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。

2項

前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。

3項

前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金 その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。

4項

第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。


この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額 及びその利息を償還しなければならない。

1項

代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書 及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。

2項

債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。

1項

弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意 又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失 又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。


その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者 及びその特定承継人についても、同様とする。

2項

前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない

第二款 相殺

1項

二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。


ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2項

前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。

1項

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。


この場合において、その意思表示には、条件 又は期限を付することができない。

2項

前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

1項

相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。


この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。

1項

時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。

1項

次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない


ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。

一 号

悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務

二 号

人の生命 又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く

1項

債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない

1項

差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。

2項

前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。


ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。

1項

債権者が債務者に対して有する一個 又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個 又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。

2項

前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。

一 号

債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く)は、第四百八十八条第四項第二号から第四号までの規定を準用する。

二 号

債権者が負担する一個 又は数個の債務について元本のほか利息 及び費用を支払うべきときは、第四百八十九条の規定を準用する。


この場合において、

同条第二項
前条」とあるのは、
前条第四項第二号から第四号まで」と

読み替えるものとする。

3項

第一項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。

1項

債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。


債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。

第三款 更改

1項

当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。

一 号

従前の給付の内容について重要な変更をするもの

二 号

従前の債務者が第三者と交替するもの

三 号

従前の債権者が第三者と交替するもの

1項

債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。


この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。

2項

債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。

1項

債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者 及び債務者の契約によってすることができる。

2項

債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない

1項

債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権 又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。


ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。

2項

前項の質権 又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。

第四款 免除

1項

債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。

第五款 混同

1項

債権 及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。


ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

第七節 有価証券

第一款 指図証券

1項

指図証券の譲渡は、その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、その効力を生じない。

1項

指図証券の譲渡については、その指図証券の性質に応じ、手形法(昭和七年法律第二十号)中 裏書の方式に関する規定を準用する。

1項

指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。

1項

何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。


ただし、その所持人が悪意 又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。

1項

指図証券の債務者は、その証券に記載した事項 及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない

1項

第五百二十条の二から前条までの規定は、指図証券を目的とする質権の設定について準用する。

1項

指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。

1項

指図証券の債務者は、その債務の履行について期限の定めがあるときであっても、その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う。

1項

指図証券の債務者は、その証券の所持人 並びにその署名 及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。


ただし、債務者に悪意 又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。

1項

指図証券は、非訟事件手続法平成二十三年法律第五十一号第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。

1項

金銭 その他の物 又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において、非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる。

第二款 記名式所持人払証券

1項

記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう。以下同じ。)の譲渡は、その証券を交付しなければ、その効力を生じない。

1項

記名式所持人払証券の所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。

1項

何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。


ただし、その所持人が悪意 又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。

1項

記名式所持人払証券の債務者は、その証券に記載した事項 及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない

1項

第五百二十条の十三から前条までの規定は、記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用する。

1項

第五百二十条の八から第五百二十条の十二までの規定は、記名式所持人払証券について準用する。

第三款 その他の記名証券

1項

債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券 及び記名式所持人払証券以外のものは、債権の譲渡 又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い、かつ、その効力をもってのみ、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。

2項

第五百二十条の十一 及び第五百二十条の十二の規定は、前項の証券について準用する。

第四款 無記名証券

1項

第二款記名式所持人払証券)の規定は、無記名証券について準用する。