日本国への連れ去り 又は日本国における留置により子についての監護の権利を侵害された者は、子を監護している者に対し、この法律の定めるところにより、常居所地国に子を返還することを命ずるよう家庭裁判所に申し立てることができる。
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
第三章 子の返還に関する事件の手続等
第一節 返還事由等
裁判所は、子の返還の申立てが次の各号に掲げる事由のいずれにも該当すると認めるときは、子の返還を命じなければならない。
子が十六歳に達していないこと。
常居所地国の法令によれば、当該連れ去り 又は留置が申立人の有する子についての監護の権利を侵害するものであること。
裁判所は、前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるときは、子の返還を命じてはならない。
ただし、第一号から第三号まで 又は第五号に掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して常居所地国に子を返還することが子の利益に資すると認めるときは、子の返還を命ずることができる。
子の返還の申立てが当該連れ去りの時 又は当該留置の開始の時から一年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。
申立人が当該連れ去りの時 又は当該留置の開始の時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く。)。
裁判所は、前項第四号に掲げる事由の有無を判断するに当たっては、次に掲げる事情 その他の一切の事情を考慮するものとする。
常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力 その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次号において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無
裁判所は、日本国において子の監護に関する裁判があったこと 又は外国においてされた子の監護に関する裁判が日本国で効力を有する可能性があることのみを理由として、子の返還の申立てを却下する裁判をしてはならない。
ただし、これらの子の監護に関する裁判の理由を子の返還の申立てについての裁判において考慮することを妨げない。
第二節 子の返還に関する事件の手続の通則
子の返還に関する事件(第三十二条第一項に規定する子の返還申立事件、第百二十一条の規定による調査 及び勧告の事件 並びに第百二十三条第二項に規定する出国禁止命令事件をいう。以下同じ。)の手続については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
裁判所は、子の返還に関する事件の手続が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に子の返還に関する事件の手続を追行しなければならない。
この法律に定めるもののほか、子の返還に関する事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
第三節 子の返還申立事件の手続
⤏ 第一款 総則
⤏ 第一目 管轄
子の返還申立事件(第二十六条の規定による子の返還の申立てに係る事件をいう。以下同じ。)は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める家庭裁判所の管轄に属する。
子の住所地(日本国内に子の住所がないとき、又は住所が知れないときは、その居所地。次号において同じ。)が東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所 又は札幌高等裁判所の管轄区域内にある場合 東京家庭裁判所
一の申立てにより数人の子についての子の返還を求める場合には、前条の規定により一人の子についての子の返還の申立てについて管轄権を有する家庭裁判所にその申立てをすることができる。
管轄裁判所が法律上 若しくは事実上裁判権を行うことができないとき、又は裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、最高裁判所は、申立てにより、管轄裁判所を定める。
当事者は、第一審に限り、合意により第三十二条第一項各号に定める家庭裁判所の一を管轄裁判所と定めることができる。
前項の合意は、子の返還の申立てに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
裁判所は、子の返還申立事件がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより 又は職権で、これを管轄権を有する家庭裁判所に移送する。
家庭裁判所は、前項に規定する場合において、子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部 又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所(第三十二条第一項各号に定める家庭裁判所に限る。)に移送することができる。
第三十二条第一項各号に定める家庭裁判所は、第一項に規定する場合において、子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部 又は一部を自ら処理することができる。
家庭裁判所は、子の返還申立事件がその管轄に属する場合においても、当該子の返還申立事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、当該子の返還申立事件の全部 又は一部を他の家庭裁判所(第三十二条第一項各号に定める家庭裁判所に限る。)に移送することができる。
第一項、第二項 及び前項の規定による移送の裁判 並びに第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の規定による移送の裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二十二条の規定は、子の返還申立事件の移送の裁判について準用する。
⤏ 第二目 裁判所職員の除斥及び忌避
裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。
ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
裁判官が当事者 又は子の四親等内の血族、三親等内の姻族 若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、除斥の裁判をする。
当事者は、裁判官の面前において事件について陳述をしたときは、その裁判官を忌避することができない。
ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
合議体の構成員である裁判官 及び家庭裁判所の一人の裁判官の除斥 又は忌避については、その裁判官の所属する裁判所が裁判をする。
前項の裁判は、合議体でする。
除斥 又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで子の返還申立事件の手続を停止しなければならない。
ただし、急速を要する行為については、この限りでない。
次に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判をするときは、第三項の規定は、適用しない。
前条第二項の規定に違反するとき。
前項の裁判は、第一項 及び第二項の規定にかかわらず、忌避された受命裁判官等(受命裁判官、受託裁判官 又は子の返還申立事件を取り扱う家庭裁判所の一人の裁判官をいう。次条第三項ただし書において同じ。)がすることができる。
第五項の裁判をした場合には、第四項本文の規定にかかわらず、子の返還申立事件の手続は、停止しない。
除斥 又は忌避を理由があるとする裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
裁判所書記官の除斥 及び忌避については、第三十八条、第三十九条 並びに前条第三項、第五項、第八項 及び第九項の規定を準用する。
裁判所書記官について除斥 又は忌避の申立てがあったときは、その裁判所書記官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった子の返還申立事件に関与することができない。
ただし、前項において準用する前条第五項各号に掲げる事由があるとして忌避の申立てを却下する裁判があったときは、この限りでない。
裁判所書記官の除斥 又は忌避についての裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。
ただし、前項ただし書の裁判は、受命裁判官等(受命裁判官 又は受託裁判官にあっては、当該裁判官の手続に立ち会う裁判所書記官が忌避の申立てを受けたときに限る。)がすることができる。
家庭裁判所調査官の除斥については、第三十八条 並びに第四十条第二項、第八項 及び第九項の規定(忌避に関する部分を除く。)を準用する。
家庭裁判所調査官について除斥の申立てがあったときは、その家庭裁判所調査官は、その申立てについての裁判が確定するまでその申立てがあった子の返還申立事件に関与することができない。
⤏ 第三目 当事者能力及び手続行為能力
当事者能力、子の返還申立事件の手続における手続上の行為(以下「手続行為」という。)をすることができる能力(以下この項において「手続行為能力」という。)、手続行為能力を欠く者の法定代理、手続行為をするのに必要な授権 及び法定代理権の消滅については、民事訴訟法第二十八条、第二十九条、第三十三条、第三十四条第一項 及び第二項 並びに第三十六条第一項の規定を準用する。
未成年者 及び成年被後見人は、法定代理人の同意を要することなく、又は法定代理人によらずに、自ら手続行為をすることができる。
被保佐人 又は被補助人について、保佐人 若しくは保佐監督人 又は補助人 若しくは補助監督人の同意がない場合も、同様とする。
後見人が他の者がした子の返還の申立て 又は抗告について手続行為をするには、後見監督人の同意を要しない。
終局決定に対する即時抗告、第百八条第一項の抗告 又は第百十一条第二項の申立ての取下げ
第百四十四条の同意
第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
⤏ 第四目 参加
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の申立てにより 又は職権で、他の当事者となる資格を有する者を、当事者として子の返還申立事件の手続に参加させることができる。
第一項の規定による参加の申出 及び前項の申立ては、参加の趣旨 及び理由を記載した書面でしなければならない。
第一項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の規定による参加の申出は、書面でしなければならない。
裁判所は、子の返還申立事件の手続に参加しようとする子の年齢 及び発達の程度 その他一切の事情を考慮して当該子が当該手続に参加することが当該子の利益を害すると認めるときは、第一項の規定による参加の申出を却下しなければならない。
第一項の規定による参加の申出を却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項 又は第二項の規定により子の返還申立事件の手続に参加した子(以下単に「手続に参加した子」という。)は、当事者がすることができる手続行為(子の返還の申立ての取下げ 及び変更 並びに裁判に対する不服申立て及び裁判所書記官の処分に対する異議の取下げを除く。)をすることができる。
ただし、裁判に対する不服申立て 及び裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては、手続に参加した子が不服申立て 又は異議の申立てに関するこの法律の他の規定によりすることができる場合に限る。
前項の規定による排除の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
⤏ 第五目 手続代理人及び補佐人
法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。
ただし、家庭裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。
前項ただし書の許可は、いつでも取り消すことができる。
未成年者、成年被後見人、被保佐人 及び被補助人(以下この条において「未成年者等」という。)が手続行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を手続代理人に選任することができる。
未成年者等が前項の申立てをしない場合においても、裁判長は、弁護士を手続代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を手続代理人に選任することができる。
前二項の規定により裁判長が手続代理人に選任した弁護士に対し未成年者等が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とする。
終局決定に対する即時抗告、第百八条第一項の抗告 若しくは第百十一条第二項の申立て 又はこれらの取下げ
第百二十二条第三項に規定する出国禁止命令の申立て 又はその取下げ
第百四十四条の同意
手続代理人の代理権は、制限することができない。
ただし、弁護士でない手続代理人については、この限りでない。
前三項の規定は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人の権限を妨げない。
民事訴訟法第三十四条(第三項を除く。)、第三十六条第一項 及び第五十六条から第五十八条まで(同条第三項を除く。)の規定は、手続代理人 及びその代理権について準用する。
子の返還申立事件の手続における補佐人については、民事訴訟法第六十条の規定を準用する。
⤏ 第六目 手続費用
子の返還申立事件の手続の費用(以下「手続費用」という。)は、各自の負担とする。
裁判所は、事情により、前項の規定によれば当事者 及び手続に参加した子がそれぞれ負担すべき手続費用の全部 又は一部を、その負担すべき者以外の当事者に負担させることができる。
裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における手続費用(裁判所が第百四十四条の規定により事件を家事調停に付した場合にあっては、家事調停に関する手続の費用を含む。)の全部について、その負担の裁判をしなければならない。
ただし、事情により、事件の一部 又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。
上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合には、手続の総費用(裁判所が第百四十四条の規定により事件を家事調停に付した場合にあっては、家事調停に関する手続の費用を含む。)について、その負担の裁判をしなければならない。
事件の差戻し 又は移送を受けた裁判所がその事件を完結する裁判をする場合も、同様とする。
裁判所が第百四十四条の規定により事件を家事調停に付した場合において、調停が成立し、子の返還申立事件の手続費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は、各自が負担する。
民事訴訟法第六十八条から第七十四条までの規定(裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについての決定に対する即時抗告に関する部分を除く。)は、手続費用の負担について準用する。
この場合において、
同法第七十三条第一項中
「補助参加の申出の取下げ 又は補助参加についての異議」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第四十七条第一項 又は第四十八条第一項の規定による参加の申出」と、
同条第二項中
「第六十一条から第六十六条まで 及び」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第五十八条第一項において準用する」と
読み替えるものとする。
前項において準用する民事訴訟法第六十九条第三項の規定による即時抗告 並びに同法第七十一条第四項(前項において準用する同法第七十二条後段において準用する場合を含む。)、第七十三条第二項 及び第七十四条第二項の異議の申立てについての裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。
子の返還申立事件の手続の準備 及び追行に必要な費用を支払う資力がない者 又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は、申立てにより、手続上の救助の裁判をすることができる。
ただし、救助を求める者が不当な目的で子の返還の申立てその他の手続行為をしていることが明らかなときは、この限りでない。
民事訴訟法第八十二条第二項 及び第八十三条から第八十六条まで(同法第八十三条第一項第三号を除く。)の規定は、手続上の救助について準用する。
この場合において、
同法第八十四条中
「第八十二条第一項本文」とあるのは、
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第五十九条第一項本文」と
読み替えるものとする。
⤏ 第七目 子の返還申立事件の審理等
子の返還申立事件の手続は、公開しない。
ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
裁判所書記官は、子の返還申立事件の手続の期日について、調書を作成しなければならない。
ただし、証拠調べの期日以外の期日については、裁判長においてその必要がないと認めるときは、その経過の要領を記録上明らかにすることをもって、これに代えることができる。
当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、子の返還申立事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付(第四項第一号 及び第六十九条第二項において「閲覧等」という。)又は子の返還申立事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
前項の規定は、子の返還申立事件の記録中の録音テープ 又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。
この場合において、当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所の許可を得て、裁判所書記官に対し、これらの物の複製を請求することができる。
裁判所は、当事者から前二項の規定による許可の申立てがあったときは、当該申立てに係る許可をしなければならない。
裁判所は、子の返還申立事件の記録中、第五条第四項(第二号に係る部分に限る。)の規定により外務大臣から提供を受けた相手方 又は子の住所 又は居所が記載され、又は記録された部分(第一号 及び第百四十九条第一項において「住所等表示部分」という。)については、前項の規定にかかわらず、同項の申立てに係る許可をしないものとする。
ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
裁判所は、子の返還申立事件において返還を求められている子の利益を害するおそれ、当事者 若しくは第三者の私生活 若しくは業務の平穏を害するおそれ 又は当事者 若しくは第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、若しくはその者の名誉を著しく害するおそれがあると認められるときは、第三項 及び前項ただし書の規定にかかわらず、第三項の申立てに係る許可をしないことができる。
事件の性質、審理の状況、記録の内容等に照らして当該当事者に同項の申立てに係る許可をすることを不適当とする特別の事情があると認められるときも、同様とする。
裁判所は、利害関係を疎明した第三者から第一項 又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合において、相当と認めるときは、当該申立てに係る許可をすることができる。
裁判書の正本、謄本 若しくは抄本 又は子の返還申立事件に関する事項の証明書については、当事者は、第一項の規定にかかわらず、裁判所の許可を得ないで、裁判所書記官に対し、その交付を請求することができる。
子の返還申立事件の記録の閲覧、謄写 及び複製の請求は、子の返還申立事件の記録の保存 又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
第三項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の規定による即時抗告が子の返還申立事件の手続を不当に遅滞させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。
前項の規定による裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
民事訴訟法第九十四条から第九十七条までの規定は、子の返還申立事件の手続の期日 及び期間について準用する。
裁判所は、前項の規定による裁判を取り消すことができる。
裁判所は、当事者を異にする子の返還申立事件についての手続の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
当事者が子の返還申立事件の手続を続行することができない場合(当事者の死亡による場合を除く。)には、法令により手続を続行する資格のある者は、その手続を受け継がなければならない。
法令により手続を続行する資格のある者が前項の規定による受継の申立てをした場合において、その申立てを却下する裁判がされたときは、当該裁判に対し、即時抗告をすることができる。
第一項の場合には、裁判所は、他の当事者の申立てにより 又は職権で、法令により手続を続行する資格のある者に子の返還申立事件の手続を受け継がせることができる。
前項の規定による受継の申立ては、子の返還申立事件の申立人が死亡した日から一月以内にしなければならない。
子の返還申立事件の相手方の死亡によってその手続を続行することができない場合には、裁判所は、申立てにより 又は職権で、相手方が死亡した日から三月以内に限り、相手方の死亡後に子を監護している者に、その手続を受け継がせることができる。
送達 及び子の返還申立事件の手続の中止については、民事訴訟法第一編第五章第四節 及び第百三十条から第百三十二条まで(同条第一項を除く。)の規定を準用する。
この場合において、
同法第百十三条中
「その訴訟の目的である請求 又は防御の方法」とあるのは、
「裁判を求める事項」と
読み替えるものとする。
前項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
⤏ 第八目 電子情報処理組織による申立て等
子の返還申立事件の手続における申立てその他の申述(次項 及び次条において「申立て等」という。)については、民事訴訟法第百三十二条の十第一項から第五項までの規定(支払督促に関する部分を除く。)を準用する。
前項において準用する民事訴訟法第百三十二条の十第一項本文の規定によりされた申立て等に係る第六十二条第一項の規定による子の返還申立事件の記録の閲覧等は、同法第百三十二条の十第五項の書面をもってするものとする。当該申立て等に係る書類の送達 又は送付も、同様とする。
⤏ 第九目 当事者に対する住所、氏名等の秘匿
子の返還申立事件の手続における申立て等については、民事訴訟法第百三十三条、第百三十三条の二第一項 並びに第百三十三条の四第一項から第三項まで、第四項(第一号に係る部分に限る。)及び第五項から第七項までの規定を準用する。
この場合において、
同条第一項中
「者は、訴訟記録等」とあるのは
「当事者 又は手続に参加した子(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第四十八条第六項に規定する手続に参加した子をいう。次項 及び第七項において同じ。)は、子の返還申立事件の記録」と、
同条第二項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は手続に参加した子」と、
「訴訟記録等」とあるのは
「子の返還申立事件の記録」と、
同条第七項中
「当事者」とあるのは
「当事者 若しくは手続に参加した子」と
読み替えるものとする。
⤏ 第二款 第一審裁判所における子の返還申立事件の手続
⤏ 第一目 子の返還の申立て
子の返還の申立ては、申立書(以下「子の返還申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。
子の返還申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
この場合において、第二号に掲げる申立ての趣旨は、返還を求める子 及び子を返還すべき条約締約国を特定して記載しなければならない。
申立人は、一の申立てにより数人の子についての子の返還を求めることができる。
子の返還申立書が第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い子の返還の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨を変更することができる。
ただし、第八十九条の規定により審理を終結した後は、この限りでない。
申立ての趣旨の変更は、子の返還申立事件の手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
家庭裁判所は、申立ての趣旨の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。
子の返還の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、子の返還申立書の写しを相手方に送付しなければならない。
前項の規定による子の返還申立書の写しの送付は、公示送達の方法によっては、することができない。
第七十条第四項から第六項までの規定は、第一項の規定による子の返還申立書の写しの送付をすることができない場合について準用する。
裁判長は、第一項の規定による子の返還申立書の写しの送付の費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
⤏ 第二目 子の返還申立事件の手続の期日
家庭裁判所は、受命裁判官に子の返還申立事件の手続の期日における手続を行わせることができる。
ただし、事実の調査 及び証拠調べについては、第八十二条第三項の規定 又は第八十六条第一項において準用する民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定により受命裁判官が事実の調査 又は証拠調べをすることができる場合に限る。
前項の場合においては、家庭裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているとき その他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、子の返還申立事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
子の返還申立事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。
子の返還申立事件の手続の期日における通訳人の立会い等については民事訴訟法第百五十四条の規定を、子の返還申立事件の手続関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、手続に参加した子、代理人 及び補佐人に対する措置については同法第百五十五条の規定を、それぞれ準用する。
⤏ 第三目 事実の調査及び証拠調べ
家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより 又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
申立人 及び相手方は、それぞれ第二十七条に規定する事由(第二十八条第一項第二号に規定する場合に関する事由を含む。)についての資料 及び同項に規定する事由についての資料を提出するほか、事実の調査 及び証拠調べに協力するものとする。
疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない。
家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項の規定により立ち会わせた家庭裁判所調査官に意見を述べさせることができる。
第七十九条第二項から第四項までの規定は前項の診断について、前条の規定は裁判所技官の期日への立会い 及び意見の陳述について、それぞれ準用する。
前項の規定による嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の家庭裁判所において事実の調査をすることを相当と認めるときは、更に事実の調査の嘱託をすることができる。
前三項の規定により受託裁判官 又は受命裁判官が事実の調査をする場合には、家庭裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
家庭裁判所は、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者 及び手続に参加した子に通知しなければならない。
家庭裁判所は、子の返還の申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。
家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。
ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
子の返還申立事件の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定(同法第百七十九条、第百八十二条、第百八十七条から第百八十九条まで 及び第二百七条第二項の規定を除く。)を準用する。
この場合において、
同法第百八十五条第一項中
「地方裁判所 若しくは簡易裁判所」とあるのは
「他の家庭裁判所」と、
同条第二項中
「地方裁判所 又は簡易裁判所」とあるのは
「家庭裁判所」と
読み替えるものとする。
前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。
家庭裁判所は、申立人が不法な連れ去り 又は不法な留置があったことを証する文書を常居所地国において得ることができるときは、申立人に対し、当該文書を提出することを求めることができる。
⤏ 第四目 子の返還申立事件の手続における子の意思の把握等
家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査 その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、終局決定をするに当たり、子の年齢 及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。
⤏ 第五目 審理の終結等
家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない。
ただし、当事者双方が立ち会うことができる子の返還申立事件の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。
家庭裁判所は、前条の規定により審理を終結したときは、裁判をする日を定めなければならない。
⤏ 第六目 裁判
家庭裁判所は、子の返還申立事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局決定をすることができる。
手続の併合を命じた数個の子の返還申立事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。
終局決定は、当事者 及び子に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
ただし、子(手続に参加した子を除く。)に対しては、子の年齢 及び発達の程度 その他一切の事情を考慮して子の利益を害すると認める場合は、この限りでない。
終局決定は、当事者に告知することによってその効力を生ずる。
ただし、子の返還を命ずる終局決定は、確定しなければその効力を生じない。
終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。
終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。
終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
終局決定に誤記 その他これに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより 又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。
第一項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
終局決定に対し適法な即時抗告があったときは、前二項の即時抗告は、することができない。
民事訴訟法第二百四十七条、第二百五十六条第一項 及び第二百五十八条(第二項後段を除く。)の規定は、終局決定について準用する。
この場合において、
同法第二百五十六条第一項中
「言渡し後」とあるのは、
「終局決定が告知を受ける者に最初に告知された日から」と
読み替えるものとする。
家庭裁判所は、終局決定の前提となる法律関係の争い その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。
中間決定は、裁判書を作成してしなければならない。
終局決定以外の裁判は、これを受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
終局決定以外の裁判については、これを受ける者(数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。
第九十二条から第九十六条まで(第九十三条第一項 及び第二項 並びに第九十四条第一項を除く。)の規定は、前項の裁判について準用する。
この場合において、
第九十四条第二項第二号中
「理由」とあるのは、
「理由の要旨」と
読み替えるものとする。
終局決定以外の裁判は、判事補が単独ですることができる。
⤏ 第七目 裁判によらない子の返還申立事件の終了
子の返還の申立ては、終局決定が確定するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
ただし、申立ての取下げは、終局決定がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
前項ただし書の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。
ただし、申立ての取下げが子の返還申立事件の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。
前項本文の規定による通知を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、申立ての取下げに同意したものとみなす。
同項ただし書の規定による場合において、申立ての取下げがあった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、申立ての取下げについて準用する。
この場合において、
同法第二百六十一条第三項ただし書中
「口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、
「子の返還申立事件の手続の期日」と
読み替えるものとする。
子の返還申立事件における和解については、民事訴訟法第八十九条、第二百六十四条 及び第二百六十五条の規定を準用する。
この場合において、
同法第二百六十四条 及び第二百六十五条第三項中
「口頭弁論等」とあるのは、
「子の返還申立事件の手続」と
読み替えるものとする。
次の各号に掲げる事項についての和解を調書に記載したときは、その記載は、当該各号に定める裁判と同一の効力を有する。
子の返還
確定した子の返還を命ずる終局決定
子の監護に関する事項、夫婦間の協力扶助に関する事項 及び婚姻費用の分担に関する事項
確定した家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第三十九条の規定による審判
その他の事項
確定判決
⤏ 第三款 不服申立て
⤏ 第一目 終局決定に対する即時抗告
手続費用の負担の裁判に対しては、独立して即時抗告をすることができない。
終局決定に対する即時抗告は、二週間の不変期間内にしなければならない。
ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
子(手続に参加した子を除く。)による即時抗告の期間は、当事者が終局決定の告知を受けた日(二以上あるときは、当該日のうち最も遅い日)から進行する。
即時抗告は、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。
抗告状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
即時抗告が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、原裁判所は、これを却下しなければならない。
前項の規定による終局決定に対しては、即時抗告をすることができる。
前項の即時抗告は、一週間の不変期間内にしなければならない。
ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
第七十条第四項 及び第五項の規定は、抗告状が第二項の規定に違反する場合 及び民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い即時抗告の提起の手数料を納付しない場合について準用する。
終局決定に対する即時抗告があった場合には、抗告裁判所は、即時抗告が不適法であるとき 又は即時抗告に理由がないことが明らかなときを除き、原審における当事者 及び手続に参加した子(抗告人を除く。)に対し、抗告状の写しを送付しなければならない。
裁判長は、前項の規定による抗告状の写しの送付の費用の予納を相当の期間を定めて抗告人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、抗告状を却下しなければならない。
抗告裁判所は、即時抗告が不適法であるとき 又は即時抗告に理由がないことが明らかなときを除き、原審における当事者(抗告人を除く。)の陳述を聴かなければならない。
抗告裁判所は、即時抗告を理由があると認める場合には、自ら裁判をしなければならない。
ただし、次条第三項において準用する民事訴訟法第三百七条 又は第三百八条第一項の規定により事件を第一審裁判所に差し戻すときは、この限りでない。
終局決定に対する即時抗告 及びその抗告審に関する手続については、特別の定めがある場合を除き、前款の規定(第七十条第六項、第七十二条第二項 及び第五項、第九十三条第三項 及び第四項、第九十五条第三項から第五項まで 並びに第九十八条第五項を除く。)を準用する。
抗告裁判所は、第百四条第一項の規定による抗告状の写しの送付をすることを要しないときは、前項において準用する第八十九条の規定による審理の終結の手続を経ることなく、即時抗告を却下し、又は棄却することができる。
民事訴訟法第二百八十三条、第二百八十四条、第二百九十二条、第二百九十八条第一項、第二百九十九条、第三百二条、第三百三条 及び第三百五条から第三百九条までの規定は、終局決定に対する即時抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
この場合において、
同法第二百九十二条第二項中
「第二百六十一条第三項、第二百六十二条第一項 及び第二百六十三条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第九十九条第四項」と、
同法第二百九十九条第二項中
「第六条第一項各号」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第三十二条第一項各号」と、
同法第三百三条第五項中
「第百八十九条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百五十条」と
読み替えるものとする。
⤏ 第二目 終局決定に対する特別抗告
前項の抗告(以下「特別抗告」という。)が係属する抗告裁判所は、抗告状 又は抗告理由書に記載された特別抗告の理由についてのみ調査をする。
特別抗告は、執行停止の効力を有しない。
ただし、前条第二項の抗告裁判所 又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特別抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止 その他必要な処分を命ずることができる。
前項ただし書の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
民事訴訟法第七十六条、第七十七条、第七十九条 及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
第百二条第二項 及び第三項、第百三条(第四項 及び第五項を除く。)、第百四条、第百五条 並びに第百七条の規定は、特別抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
民事訴訟法第三百十四条第二項、第三百十五条、第三百十六条第一項(第二号に係る部分に限る。)、第三百二十一条第一項、第三百二十二条、第三百二十五条第一項前段、第二項、第三項後段 及び第四項、第三百二十六条 並びに第三百三十六条第二項の規定は、特別抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
この場合において、
同法第三百十四条第二項中
「前条において準用する第二百八十八条 及び第二百八十九条第二項」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十条第一項において準用する同法第百三条第六項」と、
同法第三百二十二条中
「前二条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百八条第二項の規定 及び同法第百十条第二項において準用する第三百二十一条第一項」と、
同法第三百二十五条第一項前段 及び第二項中
「第三百十二条第一項 又は第二項」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百八条第一項」と、
同条第三項後段中
「この場合」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、
同条第四項中
「前項」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所」と
読み替えるものとする。
⤏ 第三目 終局決定に対する許可抗告
高等裁判所の終局決定(次項の申立てについての決定を除く。)に対しては、第百八条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
前項の高等裁判所は、同項の終局決定について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院 又は上告裁判所 若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合 その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、抗告を許可しなければならない。
前項の申立てにおいては、第百八条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告(以下この条 及び次条第一項において「許可抗告」という。)があったものとみなす。
許可抗告が係属する抗告裁判所は、第二項の規定による許可の申立書 又は同項の申立てに係る理由書に記載された許可抗告の理由についてのみ調査をする。
第百二条第二項 及び第三項、第百三条(第四項 及び第五項を除く。)、第百四条、第百五条、第百七条 並びに第百九条の規定は、許可抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
この場合において、
第百二条第二項 及び第三項、第百三条第一項、第二項第二号 及び第三項、第百四条第一項 並びに第百五条中
「即時抗告」とあり、
第百三条第六項中
「即時抗告の提起」とあり、
並びに第百九条第一項本文中
「特別抗告」とあるのは
「第百十一条第二項の申立て」と、
第百三条第一項、第二項 及び第六項、第百四条 並びに第百七条第二項中
「抗告状」とあるのは
「第百十一条第二項の規定による許可の申立書」と、
同条中
「即時抗告」とあり、
及び第百九条第一項ただし書中
「特別抗告」とあるのは
「第百十一条第四項に規定する許可抗告」と
読み替えるものとする。
民事訴訟法第三百十五条 及び第三百三十六条第二項の規定は前条第二項の申立てについて、同法第三百十八条第三項の規定は前条第二項の規定による許可をする場合について、同法第三百十八条第四項後段、第三百二十一条第一項、第三百二十二条、第三百二十五条第一項前段、第二項、第三項後段 及び第四項 並びに第三百二十六条の規定は前条第二項の規定による許可があった場合について、それぞれ準用する。
この場合において、
同法第三百十八条第四項後段中
「第三百二十条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十一条第五項」と、
同法第三百二十二条中
「前二条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十一条第五項の規定 及び同法第百十二条第二項において準用する第三百二十一条第一項」と、
同法第三百二十五条第一項前段 及び第二項中
「第三百十二条第一項 又は第二項」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十一条第二項」と、
同条第三項後段中
「この場合」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、
同条第四項中
「前項」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所」と
読み替えるものとする。
⤏ 第四目 終局決定以外の裁判に対する不服申立て
受命裁判官 又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、子の返還申立事件が係属している裁判所に異議の申立てをすることができる。
ただし、その裁判が家庭裁判所の裁判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る。
終局決定以外の裁判に対する即時抗告は、一週間の不変期間内にしなければならない。
ただし、その期間前に提起した即時抗告の効力を妨げない。
前項の即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、執行停止の効力を有しない。
ただし、抗告裁判所 又は原裁判所は、申立てにより、担保を立てさせて、又は立てさせないで、即時抗告について裁判があるまで、原裁判の執行の停止 その他必要な処分を命ずることができる。
第百九条第二項 及び第三項の規定は、前項ただし書の規定により担保を立てる場合における供託 及び担保について準用する。
原裁判をした裁判所、裁判官 又は裁判長は、即時抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。
前三目の規定(第百一条第一項 及び第二項、第百二条第一項 並びに同条第三項、第百四条 及び第百五条(これらの規定を第百十二条第一項において準用する場合を含む。)並びに第百十条の規定を除く。)は、裁判所、裁判官 又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する不服申立てについて準用する。
この場合において、
第百八条第一項中
「高等裁判所の終局決定」とあるのは
「家庭裁判所の終局決定以外の裁判で不服を申し立てることができないもの 及び高等裁判所の終局決定以外の裁判」と、
第百十一条第一項中
「できる」とあるのは
「できる。ただし、その決定が家庭裁判所の決定であるとした場合に即時抗告をすることができるものであるときに限る」と
読み替えるものとする。
第百二条第二項 及び第三項、第百三条 並びに第百七条の規定は、裁判所、裁判官 又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する特別抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
この場合において、
第百三条第六項中
「及び第五項」とあるのは、
「から第六項まで」と
読み替えるものとする。
民事訴訟法第三百十四条第二項、第三百十五条、第三百十六条(第一項第一号を除く。)、第三百二十一条第一項、第三百二十二条、第三百二十五条第一項前段、第二項、第三項後段 及び第四項、第三百二十六条 並びに第三百三十六条第二項の規定は、裁判所、裁判官 又は裁判長がした終局決定以外の裁判に対する特別抗告 及びその抗告審に関する手続について準用する。
この場合において、
同法第三百十四条第二項中
「前条において準用する第二百八十八条 及び第二百八十九条第二項」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十六条第二項において読み替えて準用する同法第百三条第六項」と、
同法第三百十六条第二項中
「対しては」とあるのは
「対しては、一週間の不変期間内に」と、
同法第三百二十二条中
「前二条」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十六条第一項において準用する同法第百八条第二項の規定 及び同法第百十六条第三項において準用する第三百二十一条第一項」と、
同法第三百二十五条第一項前段 及び第二項中
「第三百十二条第一項 又は第二項」とあるのは
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百十六条第一項において読み替えて準用する同法第百八条第一項」と、
同条第三項後段中
「この場合」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所が裁判をする場合」と、
同条第四項中
「前項」とあるのは
「差戻し 又は移送を受けた裁判所」と
読み替えるものとする。
⤏ 第四款 終局決定の変更
子の返還を命ずる終局決定をした裁判所(その決定に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定(第百七条第二項の規定による決定を除く。以下この項において同じ。)をしたときは、当該抗告裁判所)は、子の返還を命ずる終局決定が確定した後に、事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至ったときは、当事者の申立てにより、その決定(当該抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定をした場合にあっては、当該終局決定)を変更することができる。
ただし、子が常居所地国に返還された後は、この限りでない。
前項の規定による終局決定の変更の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
裁判所は、第一項の規定により終局決定を変更するときは、当事者(同項の申立てをした者を除く。)の陳述を聴かなければならない。
第一項の申立てを却下する終局決定に対しては、当該申立てをした者は、即時抗告をすることができる。
第一項の規定により終局決定を変更する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
前各項に規定するもののほか、第一項の規定による終局決定の変更の手続には、その性質に反しない限り、各審級における手続に関する規定を準用する。
裁判所は、前条第一項の申立てがあった場合において、同項の規定による変更の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点につき疎明があったときは、申立てにより、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又は担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。
前項の規定による申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
第百九条第二項 及び第三項の規定は、第一項の規定により担保を立てる場合における供託 及び担保について準用する。
⤏ 第五款 再審
確定した終局決定 その他の裁判(事件を完結するものに限る。第五項において同じ。)に対しては、再審の申立てをすることができる。
民事訴訟法第四編の規定(同法第三百四十一条 及び第三百四十九条の規定を除く。)は、第一項の再審の申立て 及びこれに関する手続について準用する。
この場合において、
同法第三百四十八条第一項中
「不服申立ての限度で、本案の審理 及び裁判をする」とあるのは、
「本案の審理 及び裁判をする」と
読み替えるものとする。
前項において準用する民事訴訟法第三百四十六条第一項の再審開始の決定に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。
第三項において準用する民事訴訟法第三百四十八条第二項の規定により終局決定 その他の裁判に対する再審の申立てを棄却する決定に対しては、当該終局決定 その他の裁判に対し即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。
裁判所は、前条第一項の再審の申立てがあった場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ、執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があったときは、申立てにより、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又は担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。
第百九条第二項 及び第三項の規定は、第一項の規定により担保を立てる場合における供託 及び担保について準用する。
第四節 義務の履行状況の調査及び履行の勧告
子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所(抗告裁判所が子の返還を命ずる終局決定をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所。以下同じ。)は、権利者の申出があるときは、子の返還の義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。
子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所は、前項の規定による調査 及び勧告を他の家庭裁判所に嘱託することができる。
子の返還を命ずる終局決定をした家庭裁判所 並びに前項の規定により調査 及び勧告の嘱託を受けた家庭裁判所(次項 及び第五項においてこれらの家庭裁判所を「調査 及び勧告をする家庭裁判所」という。)は、家庭裁判所調査官に第一項の規定による調査 及び勧告をさせることができる。
調査 及び勧告をする家庭裁判所は、第一項の規定による調査 及び勧告に必要な調査を外務大臣に嘱託するほか、官庁、公署 その他適当と認める者に嘱託し、又は学校、保育所 その他適当と認める者に対し子の生活の状況 その他の事項に関して必要な報告を求めることができる。
調査 及び勧告をする家庭裁判所は、第一項の規定による調査 及び勧告の事件の関係人から当該事件の記録の閲覧、謄写 若しくは複製、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は当該事件に関する事項の証明書の交付の請求があった場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。
第一項の規定による調査 及び勧告の手続には、その性質に反しない限り、前節第一款の規定を準用する。
前各項の規定は、和解によって定められた義務の履行について準用する。
第五節 出国禁止命令
家庭裁判所は、前項の規定による申立てに係る事件の相手方が子が名義人となっている旅券を所持すると認めるときは、申立てにより、同項の規定による裁判において、当該旅券の外務大臣への提出を命じなければならない。
子の返還申立事件が高等裁判所に係属する場合には、その高等裁判所が、前二項の規定による裁判(以下「出国禁止命令」という。)をする。
出国禁止命令の申立ては、その趣旨 及び出国禁止命令を求める事由を明らかにしてしなければならない。
出国禁止命令を求める事由については、出国禁止命令の申立てに係る事件(以下「出国禁止命令事件」という。)の申立人が資料を提出しなければならない。
前条第二項の規定による裁判の申立ては、出国禁止命令があるまで、取り下げることができる。
民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、出国禁止命令の申立ての取下げについて準用する。
この場合において、
同法第二百六十一条第三項ただし書中
「口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律第百二十三条第二項に規定する出国禁止命令事件の手続の期日」と
読み替えるものとする。
出国禁止命令は、出国禁止命令事件の相手方の陳述を聴かなければ、することができない。
ただし、その陳述を聴く手続を経ることにより出国禁止命令の目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。
裁判所は、第百三十三条において準用する第六十二条第三項の規定にかかわらず、出国禁止命令事件について、出国禁止命令事件の当事者から同条第一項 又は第二項の規定による許可の申立てがあった場合には、出国禁止命令事件の相手方に対し、出国禁止命令事件が係属したことを通知し、又は出国禁止命令を告知するまでは、相当と認めるときに限り、これを許可することができる。
出国禁止命令の申立てについての裁判は、出国禁止命令事件の当事者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
前条の規定により即時抗告が提起された場合において、原裁判の取消しの原因となることが明らかな事情 及び原裁判の執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることについて疎明があったときは、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせて、若しくは担保を立てることを条件として、又は担保を立てさせないで原裁判の執行の停止を命ずることができる。
出国禁止命令事件の記録が家庭裁判所に存する間は、家庭裁判所も、この処分を命ずることができる。
第百二十三条第二項の規定は前項の申立てについて、第百九条第二項 及び第三項の規定は前項の規定により担保を立てる場合における供託 及び担保について、それぞれ準用する。
第百二十二条第一項の規定による裁判が確定した後に、当該裁判を求める事由の消滅 その他の事情の変更があるときは、子の返還申立事件が係属する裁判所は、当該裁判を受けた者の申立てにより、当該裁判の取消しの裁判をすることができる。
裁判所が、第百二十二条第一項の規定による裁判を取り消す場合において、同条第二項の規定による裁判がされているときは、裁判所は、当該裁判をも取り消さなければならない。
第百二十三条 及び前三条の規定は、第一項の申立て 及び当該申立てについての裁判について準用する。
裁判所書記官は、出国禁止命令事件 及び前条第一項の規定による申立てに係る事件(第百三十三条において「出国禁止命令取消事件」という。)の手続の期日について、調書を作成しなければならない。
ただし、裁判長においてその必要がないと認めるときは、この限りでない。
外務大臣は、第百二十二条第二項の規定による裁判を受けた者から当該裁判に係る旅券の提出を受けたときは、当該旅券を保管しなければならない。
外務大臣は、出国禁止命令が効力を失ったときは、前項の旅券の提出を行った者の求めにより、当該旅券を返還しなければならない。
第百二十二条第二項の規定による裁判を受けた者が当該裁判に従わないときは、裁判所は、二十万円以下の過料に処する。
出国禁止命令事件 及び出国禁止命令取消事件の手続については、特別の定めがある場合を除き、第三節第一款から第三款まで 及び第五款(第七十二条、第八十四条、第八十五条、第八十七条、第八十九条、第九十条、第九十九条 及び第百条を除く。)の規定を準用する。
この場合において、
第九十四条第二項第二号中
「理由」とあるのは、
「理由の要旨」と
読み替えるものとする。