日本国憲法に定める最高裁判所 及び下級裁判所については、この法律の定めるところによる。
裁判所法
➤ 第一編 総則
下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所 及び簡易裁判所とする。
下級裁判所の設立、廃止 及び管轄区域は、別に法律でこれを定める。
裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。
この法律の規定は、刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。
上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。
最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。
下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補 及び簡易裁判所判事とする。
最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。
➤ 第二編 最高裁判所
最高裁判所は、これを東京都に置く。
最高裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
訴訟法において特に定める抗告
最高裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
最高裁判所は、大法廷 又は小法廷で審理 及び裁判をする。
大法廷は、全員の裁判官の、小法廷は、最高裁判所の定める員数の裁判官の合議体とする。
但し、小法廷の裁判官の員数は、三人以上でなければならない。
各合議体の裁判官のうち一人を裁判長とする。
各合議体では、最高裁判所の定める員数の裁判官が出席すれば、審理 及び裁判をすることができる。
事件を大法廷 又は小法廷のいずれで取り扱うかについては、最高裁判所の定めるところによる。
但し、左の場合においては、小法廷では裁判をすることができない。
当事者の主張に基いて、法律、命令、規則 又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき。(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則 又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く。)
前号の場合を除いて、法律、命令、規則 又は処分が憲法に適合しないと認めるとき。
憲法 その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき。
裁判書には、各裁判官の意見を表示しなければならない。
最高裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、最高裁判所長官が、これを総括する。
裁判官会議は、全員の裁判官でこれを組織し、最高裁判所長官が、その議長となる。
最高裁判所の庶務を掌らせるため、最高裁判所に事務総局を置く。
裁判官の研究 及び修養 並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に司法研修所を置く。
裁判所書記官、家庭裁判所調査官 その他の裁判官以外の裁判所の職員の研究 及び修養に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に裁判所職員総合研修所を置く。
最高裁判所に国立国会図書館の支部図書館として、最高裁判所図書館を置く。
➤ 第三編 下級裁判所
第一章 高等裁判所
各高等裁判所は、高等裁判所長官 及び相応な員数の判事でこれを構成する。
高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
地方裁判所の第一審判決、家庭裁判所の判決 及び簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴
第七条第二号の抗告を除いて、地方裁判所 及び家庭裁判所の決定 及び命令 並びに簡易裁判所の刑事に関する決定 及び命令に対する抗告
刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決 及び簡易裁判所の判決に対する上告
刑法第七十七条乃至第七十九条の罪に係る訴訟の第一審
高等裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
高等裁判所は、裁判官の合議体でその事件を取り扱う。
但し、法廷ですべき審理 及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。
但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。
高等裁判所は、裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その管轄区域内の地方裁判所 又は家庭裁判所の判事にその高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
前項の規定により当該高等裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、最高裁判所は、他の高等裁判所 又はその管轄区域内の地方裁判所 若しくは家庭裁判所の判事に当該高等裁判所の判事の職務を行わせることができる。
各高等裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、各高等裁判所長官が、これを総括する。
各高等裁判所の裁判官会議は、その全員の裁判官でこれを組織し、各高等裁判所長官が、その議長となる。
各高等裁判所の庶務を掌らせるため、各高等裁判所に事務局を置く。
最高裁判所は、高等裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その高等裁判所の管轄区域内に、高等裁判所の支部を設けることができる。
最高裁判所は、高等裁判所の支部に勤務する裁判官を定める。
第二章 地方裁判所
各地方裁判所は、相応な員数の判事 及び判事補でこれを構成する。
地方裁判所は、次の事項について裁判権を有する。
第三十三条第一項第一号の請求以外の請求に係る訴訟(第三十一条の三第一項第二号の人事訴訟を除く。)及び第三十三条第一項第一号の請求に係る訴訟のうち不動産に関する訴訟の第一審
第十六条第四号の罪 及び罰金以下の刑に当たる罪以外の罪に係る訴訟の第一審
第十六条第一号の控訴を除いて、簡易裁判所の判決に対する控訴
第七条第二号 及び第十六条第二号の抗告を除いて、簡易裁判所の決定 及び命令に対する抗告
地方裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限 及び他の法律において裁判所の権限に属するものと定められた事項の中で地方裁判所以外の裁判所の権限に属させていない事項についての権限を有する。
地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。
ただし、法廷ですべき審理 及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従う。
合議体で審理 及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
死刑 又は無期 若しくは短期一年以上の懲役 若しくは禁錮に当たる罪(刑法第二百三十六条、第二百三十八条 又は第二百三十九条の罪 及び その未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条ノ二第一項 若しくは第二項 又は第一条ノ三第一項の罪 並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第二条 又は第三条の罪を除く。)に係る事件
簡易裁判所の判決に対する控訴事件 並びに簡易裁判所の決定 及び命令に対する抗告事件
その他他の法律において合議体で審理 及び裁判をすべきものと定められた事件
前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。
判事補は、他の法律に特別の定のある場合を除いて、一人で裁判をすることができない。
判事補は、同時に二人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。
地方裁判所において裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その所在地を管轄する高等裁判所は、その管轄区域内の他の地方裁判所、家庭裁判所 又はその高等裁判所の裁判官に当該地方裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
前項の規定により当該地方裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、最高裁判所は、その地方裁判所の所在地を管轄する高等裁判所以外の高等裁判所の管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所 又はその高等裁判所の裁判官に当該地方裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
最高裁判所は、各地方裁判所の判事のうち一人に各地方裁判所長を命ずる。
各地方裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、各地方裁判所長が、これを総括する。
各地方裁判所の裁判官会議は、その全員の判事でこれを組織し、各地方裁判所長が、その議長となる。
各地方裁判所の庶務を掌らせるため、各地方裁判所に事務局を置く。
最高裁判所は、地方裁判所の事務の一部を取り扱わせるため、その地方裁判所の管轄区域内に、地方裁判所の支部 又は出張所を設けることができる。
最高裁判所は、地方裁判所の支部に勤務する裁判官を定める。
第三章 家庭裁判所
各家庭裁判所は、相応な員数の判事 及び判事補でこれを構成する。
家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)で定める家庭に関する事件の審判 及び調停
人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)で定める人事訴訟の第一審の裁判
少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)で定める少年の保護事件の審判
家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
家庭裁判所は、審判 又は裁判を行うときは、次項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱う。
ただし、審判を終局させる決定 並びに法廷ですべき審理 及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従う。
合議体で審判 又は審理 及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
他の法律において合議体で審判 又は審理 及び裁判をすべきものと定められた事件
前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。
第二十七条乃至第三十一条の規定は、家庭裁判所にこれを準用する。
第四章 簡易裁判所
各簡易裁判所に相応な員数の簡易裁判所判事を置く。
簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
訴訟の目的の価額が百四十万円を超えない請求(行政事件訴訟に係る請求を除く。)
罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪 又は刑法第百八十六条、第二百五十二条 若しくは第二百五十六条の罪に係る訴訟
簡易裁判所は、禁錮以上の刑を科することができない。
ただし、刑法第百三十条の罪 若しくはその未遂罪、同法第百八十六条の罪、同法第二百三十五条の罪 若しくはその未遂罪、同法第二百五十二条、第二百五十四条 若しくは第二百五十六条の罪、古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第三十一条から第三十三条までの罪 若しくは質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第三十条から第三十二条までの罪に係る事件 又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五十四条第一項の規定によりこれらの罪の刑をもつて処断すべき事件においては、三年以下の懲役を科することができる。
簡易裁判所は、前項の制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは、訴訟法の定めるところにより事件を地方裁判所に移さなければならない。
簡易裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
簡易裁判所は、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
簡易裁判所において裁判事務の取扱上 さし迫つた必要があるときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所の裁判官 又はその地方裁判所の判事に当該簡易裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
前項の規定により当該簡易裁判所のさし迫つた必要をみたすことができない特別の事情があるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する高等裁判所は、同項に定める裁判官以外のその管轄区域内の簡易裁判所の裁判官 又は地方裁判所の判事に当該簡易裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。
各簡易裁判所の司法行政事務は、簡易裁判所の裁判官が、一人のときは、その裁判官が、二人以上のときは、最高裁判所の指名する一人の裁判官がこれを掌理する。
簡易裁判所において特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄区域内の他の簡易裁判所に当該簡易裁判所の事務の全部 又は一部を取り扱わせることができる。
➤ 第四編 裁判所の職員及び司法修習生
第一章 裁判官
最高裁判所長官は、内閣の指名に基いて、天皇がこれを任命する。
最高裁判所判事は、内閣でこれを任命する。
最高裁判所判事の任免は、天皇がこれを認証する。
最高裁判所長官 及び最高裁判所判事の任命は、国民の審査に関する法律の定めるところにより国民の審査に付される。
高等裁判所長官、判事、判事補 及び簡易裁判所判事は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。
高等裁判所長官の任免は、天皇がこれを認証する。
第一項の裁判官は、その官に任命された日から十年を経過したときは、その任期を終えるものとし、再任されることができる。
最高裁判所の裁判官は、識見の高い、法律の素養のある年齢四十年以上の者の中からこれを任命し、そのうち少くとも十人は、十年以上第一号 及び第二号に掲げる職の一 若しくは二に在つた者 又は左の各号に掲げる職の一 若しくは二以上に在つてその年数を通算して二十年以上になる者でなければならない。
別に法律で定める大学の法律学の教授 又は准教授
五年以上前項第一号 及び第二号に掲げる職の一 若しくは二に在つた者 又は十年以上同項第一号から第六号までに掲げる職の一若しくは二以上に在つた者が判事補、裁判所調査官、最高裁判所事務総長、裁判所事務官、司法研修所教官、裁判所職員総合研修所教官、法務省の事務次官、法務事務官 又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、同項の規定の適用については、これを同項第三号から第六号までに掲げる職の在職とみなす。
前二項の規定の適用については、第一項第三号乃至第五号 及び前項に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
三年以上第一項第六号の大学の法律学の教授 又は准教授の職に在つた者が簡易裁判所判事、検察官 又は弁護士の職に就いた場合においては、その簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。
高等裁判所長官 及び判事は、次の各号に掲げる職の一 又は二以上に在つてその年数を通算して十年以上になる者の中からこれを任命する。
裁判所調査官、司法研修所教官 又は裁判所職員総合研修所教官
前条第一項第六号の大学の法律学の教授 又は准教授
前項の規定の適用については、三年以上同項各号に掲げる職の一 又は二以上に在つた者が裁判所事務官、法務事務官 又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、これを同項各号に掲げる職の在職とみなす。
前二項の規定の適用については、第一項第二号乃至第五号 及び前項に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
三年以上前条第一項第六号の大学の法律学の教授 又は准教授の職に在つた者が簡易裁判所判事、検察官 又は弁護士の職に就いた場合においては、その簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。
司法修習生の修習を終えないで簡易裁判所判事 又は検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数についても、同様とする。
判事補は、司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。
簡易裁判所判事は、高等裁判所長官 若しくは判事の職に在つた者 又は次の各号に掲げる職の一 若しくは二以上に在つてその年数を通算して三年以上になる者の中からこれを任命する。
裁判所調査官、裁判所事務官、司法研修所教官、裁判所職員総合研修所教官、法務事務官 又は法務教官
第四十一条第一項第六号の大学の法律学の教授 又は准教授
前項の規定の適用については、同項第二号乃至第四号に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
司法修習生の修習を終えないで検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。
多年 司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、前条第一項に掲げる者に該当しないときでも、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て、簡易裁判所判事に任命されることができる。
簡易裁判所判事選考委員会に関する規程は、最高裁判所がこれを定める。
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを裁判官に任命することができない。
禁錮以上の刑に処せられた者
弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
下級裁判所の裁判官の職は、最高裁判所がこれを補する。
裁判官は、公の弾劾 又は国民の審査に関する法律による場合 及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては、その意思に反して、免官、転官、転所、職務の停止 又は報酬の減額をされることはない。
裁判官は、職務上の義務に違反し、若しくは職務を怠り、又は品位を辱める行状があつたときは、別に法律で定めるところにより裁判によつて懲戒される。
最高裁判所の裁判官は、年齢七十年、高等裁判所、地方裁判所 又は家庭裁判所の裁判官は、年齢六十五年、簡易裁判所の裁判官は、年齢七十年に達した時に退官する。
裁判官の受ける報酬については、別に法律でこれを定める。
裁判官は、在任中、左の行為をすることができない。
国会 若しくは地方公共団体の議会の議員となり、又は積極的に政治運動をすること。
最高裁判所の許可のある場合を除いて、報酬のある他の職務に従事すること。
商業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。
第二章 裁判官以外の裁判所の職員
最高裁判所に最高裁判所事務総長一人を置く。
最高裁判所事務総長は、最高裁判所長官の監督を受けて、最高裁判所の事務総局の事務を掌理し、事務総局の職員を指揮監督する。
最高裁判所に最高裁判所長官秘書官一人 及び最高裁判所判事秘書官十四人を置く。
最高裁判所長官秘書官は、最高裁判所長官の、最高裁判所判事秘書官は、最高裁判所判事の命を受けて、機密に関する事務を掌る。
司法研修所教官は、上司の指揮を受けて、司法研修所における裁判官の研究 及び修養 並びに司法修習生の修習の指導をつかさどる。
最高裁判所に司法研修所長を置き、司法研修所教官の中から、最高裁判所が、これを補する。
司法研修所長は、最高裁判所長官の監督を受けて、司法研修所の事務を掌理し、司法研修所の職員を指揮監督する。
最高裁判所に裁判所職員総合研修所教官を置く。
裁判所職員総合研修所教官は、上司の指揮を受けて、裁判所職員総合研修所における裁判所書記官、家庭裁判所調査官 その他の裁判官以外の裁判所の職員の研究 及び修養の指導をつかさどる。
最高裁判所に裁判所職員総合研修所長を置き、裁判所職員総合研修所教官の中から、最高裁判所が、これを補する。
裁判所職員総合研修所長は、最高裁判所長官の監督を受けて、裁判所職員総合研修所の事務を掌理し、裁判所職員総合研修所の職員を指揮監督する。
最高裁判所に最高裁判所図書館長一人を置き、裁判所の職員の中からこれを命ずる。
最高裁判所図書館長は、最高裁判所長官の監督を受けて最高裁判所図書館の事務を掌理し、最高裁判所図書館の職員を指揮監督する。
前二項の規定は、国立国会図書館法の規定の適用を妨げない。
各高等裁判所に高等裁判所長官秘書官各一人を置く。
高等裁判所長官秘書官は、高等裁判所長官の命を受けて、機密に関する事務をつかさどる。
最高裁判所、各高等裁判所 及び各地方裁判所に裁判所調査官を置く。
裁判所調査官は、裁判官の命を受けて、事件(地方裁判所においては、知的財産 又は租税に関する事件に限る。)の審理 及び裁判に関して必要な調査 その他他の法律において定める事務をつかさどる。
裁判所事務官は、上司の命を受けて、裁判所の事務を掌る。
各高等裁判所、各地方裁判所 及び各家庭裁判所に事務局長を置き、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。
各高等裁判所の事務局長は、各高等裁判所長官の、各地方裁判所の事務局長は、各地方裁判所長の、各家庭裁判所の事務局長は、各家庭裁判所長の監督を受けて、事務局の事務を掌理し、事務局の職員を指揮監督する。
裁判所書記官は、裁判所の事件に関する記録 その他の書類の作成 及び保管 その他他の法律において定める事務を掌る。
裁判所書記官は、前項の事務を掌る外、裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令 及び判例の調査 その他必要な事項の調査を補助する。
裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。
裁判所書記官は、口述の書取 その他書類の作成 又は変更に関して裁判官の命令を受けた場合において、その作成 又は変更を正当でないと認めるときは、自己の意見を書き添えることができる。
裁判所速記官は、裁判所の事件に関する速記 及びこれに関する事務を掌る。
裁判所速記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。
裁判所技官は、上司の命を受けて、技術を掌る。
各家庭裁判所 及び各高等裁判所に家庭裁判所調査官を置く。
家庭裁判所調査官は、各家庭裁判所においては、第三十一条の三第一項第一号の審判 及び調停、同項第二号の裁判(人事訴訟法第三十二条第一項の附帯処分についての裁判 及び同条第三項の親権者の指定についての裁判(以下 この項において「附帯処分等の裁判」という。)に限る。)並びに第三十一条の三第一項第三号の審判に必要な調査 その他他の法律において定める事務を掌り、各高等裁判所においては、同項第一号の審判に係る抗告審の審理 及び附帯処分等の裁判に係る控訴審の審理に必要な調査 その他他の法律において定める事務を掌る。
最高裁判所は、家庭裁判所調査官の中から、首席家庭裁判所調査官を命じ、調査事務の監督、関係行政機関 その他の機関との連絡調整等の事務を掌らせることができる。
家庭裁判所調査官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に従う。
各家庭裁判所に家庭裁判所調査官補を置く。
家庭裁判所調査官補は、上司の命を受けて、家庭裁判所調査官の事務を補助する。
執行官に任命されるのに必要な資格に関する事項は、最高裁判所がこれを定める。
執行官は、他の法律の定めるところにより裁判の執行、裁判所の発する文書の送達 その他の事務を行う。
執行官は、手数料を受けるものとし、その手数料が一定の額に達しないときは、国庫から補助金を受ける。
廷吏は、法廷において裁判官の命ずる事務 その他最高裁判所の定める事務を取り扱う。
各裁判所は、執行官を用いることができないときは、その裁判所の所在地で書類を送達するために、廷吏を用いることができる。
裁判官以外の裁判所の職員の任免は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所 又は各家庭裁判所がこれを行う。
裁判所調査官、裁判所事務官(事務局長たるものを除く。)、裁判所書記官、裁判所速記官、家庭裁判所調査官、家庭裁判所調査官補、執行官 及び裁判所技官の勤務する裁判所は、最高裁判所の定めるところにより最高裁判所、各高等裁判所、各地方裁判所 又は各家庭裁判所がこれを定める。
裁判官以外の裁判所の職員に関する事項については、この法律に定めるものの外、別に法律でこれを定める。
第三章 司法修習生
司法修習生は、司法試験に合格した者(司法試験法(昭和二十四年法律第百四十号)第四条第二項の規定により司法試験を受け、これに合格した者にあつては、その合格の発表の日の属する年の四月一日以降に法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識 及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程を修了したものに限る。)の中から、最高裁判所がこれを命ずる。
前項の試験に関する事項は、別に法律でこれを定める。
司法修習生は、少なくとも一年間修習をした後 試験に合格したときは、司法修習生の修習を終える。
司法修習生は、その修習期間中、最高裁判所の定めるところにより、その修習に専念しなければならない。
前項に定めるもののほか、第一項の修習 及び試験に関する事項は、最高裁判所がこれを定める。
司法修習生には、その修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、修習給付金を支給する。
修習給付金の種類は、基本給付金、住居給付金 及び移転給付金とする。
基本給付金の額は、司法修習生がその修習期間中の生活を維持するために必要な費用であつて、その修習に専念しなければならないこと その他の司法修習生の置かれている状況を勘案して最高裁判所が定める額とする。
住居給付金は、司法修習生が自ら居住するため住宅(貸間を含む。以下この項において同じ。)を借り受け、家賃(使用料を含む。以下この項において同じ。)を支払つている場合(配偶者が当該住宅を所有する場合 その他の最高裁判所が定める場合を除く。)に支給することとし、その額は、家賃として通常必要な費用の範囲内において最高裁判所が定める額とする。
移転給付金は、司法修習生がその修習に伴い住所 又は居所を移転することが必要と認められる場合にその移転について支給することとし、その額は、路程に応じて最高裁判所が定める額とする。
前各項に定めるもののほか、修習給付金の支給に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
最高裁判所は、司法修習生の修習のため通常必要な期間として最高裁判所が定める期間、司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であつて、修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう。以下この条において同じ。)を貸与するものとする。
修習専念資金の額 及び返還の期限は、最高裁判所の定めるところによる。
最高裁判所は、修習専念資金の貸与を受けた者が災害、傷病 その他やむを得ない理由により修習専念資金を返還することが困難となつたとき、又は修習専念資金の貸与を受けた者について修習専念資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができる。
この場合においては、国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年法律第百十四号)第二十六条の規定は、適用しない。
最高裁判所は、修習専念資金の貸与を受けた者が死亡 又は精神 若しくは身体の障害により修習専念資金を返還することができなくなつたときは、その修習専念資金の全部 又は一部の返還を免除することができる。
前各項に定めるもののほか、修習専念資金の貸与 及び返還に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
最高裁判所は、司法修習生に成績不良、心身の故障 その他のその修習を継続することが困難である事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免することができる。
最高裁判所は、司法修習生に品位を辱める行状 その他の司法修習生たるに適しない非行に当たる事由として最高裁判所の定める事由があると認めるときは、最高裁判所の定めるところにより、その司法修習生を罷免し、その修習の停止を命じ、又は戒告することができる。
➤ 第五編 裁判事務の取扱
第一章 法廷
法廷は、裁判所 又は支部でこれを開く。
最高裁判所は、必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、他の場所で法廷を開き、又はその指定する他の場所で下級裁判所に法廷を開かせることができる。
裁判所は、日本国憲法第八十二条第二項の規定により対審を公開しないで行うには、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。
判決を言い渡すときは、再び公衆を入廷させなければならない。
法廷における秩序の維持は、裁判長 又は開廷をした一人の裁判官がこれを行う。
裁判長 又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をする者に対し、退廷を命じ、その他法廷における秩序を維持するのに必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。
裁判長 又は開廷をした一人の裁判官は、法廷における秩序を維持するため必要があると認めるときは、警視総監 又は道府県警察本部長に警察官の派出を要求することができる。
法廷における秩序を維持するため特に必要があると認めるときは、開廷前においてもその要求をすることができる。
前項の要求により派出された警察官は、法廷における秩序の維持につき、裁判長 又は一人の裁判官の指揮を受ける。
裁判所が他の法律の定めるところにより法廷外の場所で職務を行う場合において、裁判長 又は一人の裁判官は、裁判所の職務の執行を妨げる者に対し、退去を命じ、その他必要な事項を命じ、又は処置を執ることができる。
前条の規定は、前項の場合にこれを準用する。
前二項に規定する裁判長の権限は、裁判官が他の法律の定めるところにより法廷外の場所で職務を行う場合において、その裁判官もこれを有する。
第七十一条 又は前条の規定による命令に違反して裁判所 又は裁判官の職務の執行を妨げた者は、これを一年以下の懲役 若しくは禁錮 又は千円以下の罰金に処する。
第二章 裁判所の用語
第三章 裁判の評議
合議体でする裁判の評議は、これを公行しない。
但し、司法修習生の傍聴を許すことができる。
評議は、裁判長が、これを開き、且つこれを整理する。
その評議の経過 並びに各裁判官の意見 及び その多少の数については、この法律に特別の定がない限り、秘密を守らなければならない。
裁判官は、評議において、その意見を述べなければならない。
裁判は、最高裁判所の裁判について最高裁判所が特別の定をした場合を除いて、過半数の意見による。
過半数の意見によつて裁判をする場合において、左の事項について意見が三説以上に分れ、その説が各々過半数にならないときは、裁判は、左の意見による。
数額については、過半数になるまで最も多額の意見の数を順次少額の意見の数に加え、その中で最も少額の意見
刑事については、過半数になるまで被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見
合議体の審理が長時日にわたることの予見される場合においては、補充の裁判官が審理に立ち会い、その審理中に合議体の裁判官が審理に関与することができなくなつた場合において、あらかじめ定める順序に従い、これに代つて、その合議体に加わり審理 及び裁判をすることができる。
但し、補充の裁判官の員数は、合議体の裁判官の員数を越えることができない。
第四章 裁判所の共助
裁判所は、裁判事務について、互に必要な補助をする。
➤ 第六編 司法行政
司法行政の監督権は、左の各号の定めるところによりこれを行う。
最高裁判所は、最高裁判所の職員 並びに下級裁判所 及び その職員を監督する。
各高等裁判所は、その高等裁判所の職員 並びに管轄区域内の下級裁判所 及び その職員を監督する。
各地方裁判所は、その地方裁判所の職員 並びに管轄区域内の簡易裁判所 及び その職員を監督する。
各家庭裁判所は、その家庭裁判所の職員を監督する。
第三十七条に規定する簡易裁判所の裁判官は、その簡易裁判所の裁判官以外の職員を監督する。
前条の監督権は、裁判官の裁判権に影響を及ぼし、又はこれを制限することはない。
裁判所の事務の取扱方法に対して申し立てられた不服は、第八十条の監督権によりこれを処分する。
➤ 第七編 裁判所の経費
裁判所の経費は、独立して、国の予算にこれを計上しなければならない。
前項の経費中には、予備金を設けることを要する。