何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
民法
第二章 契約
第一節 総則
⤏ 第一款 契約の成立
契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成 その他の方式を具備することを要しない。
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
対話者に対してした第一項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
ただし、申込者が対話の終了後も その申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。
申込者の意思表示 又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。
懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。
ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
前項の広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。
懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができる。
ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
前の広告と同一の方法による広告の撤回は、これを知らない者に対しても、その効力を有する。
広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。
ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。
数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。
ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
⤏ 第二款 契約の効力
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
⤏ 第三款 契約上の地位の移転
契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
⤏ 第四款 契約の解除
契約 又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
前項の意思表示は、撤回することができない。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約 及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
債務の全部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の一部の履行が不能である場合 又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
契約の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
債務の一部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
解除権を有する者が故意 若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工 若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。
ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
⤏ 第五款 定型約款
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部 又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様 及びその実情 並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前 又は定型取引合意の後 相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。
ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。
ただし、一時的な通信障害が発生した場合 その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無 及びその内容 その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨 及び変更後の定型約款の内容 並びにその効力発生時期をインターネットの利用 その他の適切な方法により周知しなければならない。
第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。
第二節 贈与
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
贈与者は、贈与の目的である物 又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
定期の給付を目的とする贈与は、贈与者 又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
第三節 売買
⤏ 第一款 総則
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。
ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。
売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。
ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
⤏ 第二款 売買の効力
売主は、買主に対し、登記、登録 その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
引き渡された目的物が種類、品質 又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し 又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
履行の追完が不能であるとき。
売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
契約の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求 並びに第五百四十一条 及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
売主が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失 又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。
民事執行法 その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は、第五百四十一条 及び第五百四十二条の規定 並びに第五百六十三条(第五百六十五条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部 又は一部の返還を請求することができる。
前二項の場合において、債務者が物 若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
前三項の規定は、競売の目的物の種類 又は品質に関する不適合については、適用しない。
債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権 又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
売主は、第五百六十二条第一項本文 又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実 及び自ら第三者のために設定し 又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。
売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。
ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
売買の目的について権利を主張する者があること その他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部 若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部 又は一部の支払を拒むことができる。
ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。
この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権 又は質権の登記がある場合について準用する。
前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
⤏ 第三款 買戻し
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。
この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
買戻しの期間は、十年を超えることができない。
特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。
売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対抗することができる。
前項の登記がされた後に第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中 一年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。
ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。
売主の債権者が第四百二十三条の規定により売主に代わって買戻しをしようとするときは、買主は、裁判所において選任した鑑定人の評価に従い、不動産の現在の価額から売主が返還すべき金額を控除した残額に達するまで売主の債務を弁済し、なお残余があるときはこれを売主に返還して、買戻権を消滅させることができる。
売主は、第五百八十条に規定する期間内に代金 及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない。
買主 又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第百九十六条の規定に従い、その償還をしなければならない。
ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
不動産の共有者の一人が買戻しの特約を付してその持分を売却した後に、その不動産の分割 又は競売があったときは、売主は、買主が受け、若しくは受けるべき部分 又は代金について、買戻しをすることができる。
ただし、売主に通知をしないでした分割 及び競売は、売主に対抗することができない。
前条の場合において、買主が不動産の競売における買受人となったときは、売主は、競売の代金 及び第五百八十三条に規定する費用を支払って買戻しをすることができる。
この場合において、売主は、その不動産の全部の所有権を取得する。
他の共有者が分割を請求したことにより買主が競売における買受人となったときは、売主は、その持分のみについて買戻しをすることはできない。
第四節 交換
交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。
第五節 消費貸借
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭 その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭 その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭 その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭 その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
金銭 その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭 その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
第五百五十一条の規定は、前条第一項の特約のない消費貸借について準用する。
前条第一項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
借主は、いつでも返還をすることができる。
当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
借主が貸主から受け取った物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは、その時における物の価額を償還しなければならない。
ただし、第四百二条第二項に規定する場合は、この限りでない。
第六節 使用貸借
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用 及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
借主は、契約 又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用 及び収益をしなければならない。
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用 又は収益をさせることができない。
借主が前二項の規定に違反して使用 又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
当事者使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用 及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用 及び収益を終えることによって終了する。
使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用 及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
当事者が使用貸借の期間 並びに使用 及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。
ただし、借用物から分離することができない物 又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
契約の本旨に反する使用 又は収益によって生じた損害の賠償 及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第七節 賃貸借
⤏ 第一款 総則
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用 及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと 及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
樹木の栽植 又は伐採を目的とする山林の賃貸借
十年
前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借
五年
建物の賃貸借
三年
動産の賃貸借
六箇月
前条に定める期間は、更新することができる。
ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
賃貸借の存続期間は、更新することができる。
ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
⤏ 第二款 賃貸借の効力
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者 その他の第三者に対抗することができる。
前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条 又は第三十一条 その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人 及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨 及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。
この場合において、譲渡人と譲受人 又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人 又はその承継人に移転する。
第一項 又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
第一項 又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人 又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務 及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人 又はその承継人が承継する。
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
この場合においては、前条第三項 及び第四項の規定を準用する。
不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
その不動産の占有を第三者が妨害しているとき
その第三者に対する妨害の停止の請求
その不動産を第三者が占有しているとき
その第三者に対する返還の請求
賃貸人は、賃貸物の使用 及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
急迫の事情があるとき。
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。
ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
耕作 又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。
前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。
賃借物の一部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用 及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
賃借物の一部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用 又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。
ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
賃料は、動産、建物 及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。
ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なく その旨を賃貸人に通知しなければならない。
ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。
⤏ 第三款 賃貸借の終了
賃借物の全部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
土地の賃貸借
一年
建物の賃貸借
三箇月
動産 及び貸席の賃貸借
一日
収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方 又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
賃貸借の期間が満了した後 賃借人が賃借物の使用 又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。
この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用 及び収益によって生じた賃借物の損耗 並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項 及び第二項 並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。
⤏ 第四款 敷金
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務 その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。
この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
第八節 雇用
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。
雇用が履行の中途で終了したとき。
使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。
雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。
ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
ただし、身元保証金については、この限りでない。
第六百二十条の規定は、雇用について準用する。
使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者 又は破産管財人は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
第九節 請負
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。
この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
請負が仕事の完成前に解除されたとき。
請負人が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質 又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
ただし、請負人がその材料 又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人 又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。
ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。
前項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬 及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。
第一項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。
この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。
第十節 委任
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なく その経過 及び結果を報告しなければならない。
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭 その他の物を委任者に引き渡さなければならない。
その収取した果実についても、同様とする。
受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
受任者は、委任者に引き渡すべき金額 又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。
この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。
ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
委任が履行の中途で終了したとき。
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用 及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。
この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。
ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
第六百二十条の規定は、委任について準用する。
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
委任者 又は受任者の死亡
委任者 又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
受任者が後見開始の審判を受けたこと。
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者 又はその相続人 若しくは法定代理人は、委任者 又はその相続人 若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
第十一節 寄託
寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
ただし、書面による寄託については、この限りでない。
受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え 若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なく その事実を寄託者に通知しなければならない。
ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。
ただし、受寄者が前項の通知をした場合 又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。
受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
寄託者は、寄託物の性質 又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。
ただし、寄託者が過失なく その性質 若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。
当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでも その返還をすることができる。
返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。
ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
寄託物の一部滅失 又は損傷によって生じた損害の賠償 及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第六百四十六条から第六百四十八条まで、第六百四十九条 並びに第六百五十条第一項 及び第二項の規定は、寄託について準用する。
複数の者が寄託した物の種類 及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。
第五百九十条 及び第五百九十二条の規定は、前項に規定する場合について準用する。
第五百九十一条第二項 及び第三項の規定は、預金 又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。
第十二節 組合
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
出資は、労務をその目的とすることができる。
第五百三十三条 及び第五百三十六条の規定は、組合契約については、適用しない。
組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。
組合員の一人について意思表示の無効 又は取消しの原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない。
各組合員の出資 その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
金銭を出資の目的とした場合において、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。
組合の業務の決定 及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人 又は数人の組合員 又は第三者に委任することができる。
前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。
この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。
前項の規定にかかわらず、組合の業務については、総組合員の同意によって決定し、又は総組合員が執行することを妨げない。
組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員 又は各業務執行者が単独で行うことができる。
ただし、その完了前に他の組合員 又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。
各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。
前項の規定にかかわらず、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。
この場合において、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる。
前二項の規定にかかわらず、各組合員 又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる。
第六百四十四条から第六百五十条までの規定は、組合の業務を決定し、又は執行する組合員について準用する。
組合契約の定めるところにより一人 又は数人の組合員に業務の決定 及び執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。
各組合員は、組合の業務の決定 及び執行をする権利を有しないときであっても、その業務 及び組合財産の状況を検査することができる。
当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
利益 又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益 及び損失に共通であるものと推定する。
組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる。
組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合 又は等しい割合でその権利を行使することができる。
ただし、組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、その割合による。
組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合 及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない。
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない。
組合員は、その全員の同意によって、又は組合契約の定めるところにより、新たに組合員を加入させることができる。
前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない。
組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。
ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。
組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。
前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
組合員の除名は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってすることができる。
ただし、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもってその組合員に対抗することができない。
脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
脱退した組合員は、前項に規定する組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償権を有する。
脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならない。
脱退した組合員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
脱退の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
組合は、次に掲げる事由によって解散する。
組合の目的である事業の成功 又はその成功の不能
組合契約で定めた存続期間の満了
組合契約で定めた解散の事由の発生
やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができる。
第六百二十条の規定は、組合契約について準用する。
組合が解散したときは、清算は、総組合員が共同して、又はその選任した清算人がこれをする。
清算人の選任は、組合員の過半数で決する。
第六百七十条第三項から第五項まで 並びに第六百七十条の二第二項 及び第三項の規定は、清算人について準用する。
第六百七十二条の規定は、組合契約の定めるところにより組合員の中から清算人を選任した場合について準用する。
債権の取立て 及び債務の弁済
清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する。
第十三節 終身定期金
終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方 又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭 その他の物を相手方 又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。
終身定期金は、日割りで計算する。
終身定期金債務者が終身定期金の元本を受領した場合において、その終身定期金の給付を怠り、又はその他の義務を履行しないときは、相手方は、元本の返還を請求することができる。
この場合において、相手方は、既に受け取った終身定期金の中からその元本の利息を控除した残額を終身定期金債務者に返還しなければならない。
前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
終身定期金債務者の責めに帰すべき事由によって第六百八十九条に規定する死亡が生じたときは、裁判所は、終身定期金債権者 又はその相続人の請求により、終身定期金債権が相当の期間存続することを宣告することができる。
前項の規定は、第六百九十一条の権利の行使を妨げない。
この節の規定は、終身定期金の遺贈について準用する。
第十四節 和解
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来 その権利を有していなかった旨の確証 又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。