訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
民事訴訟法
第二編 第一審の訴訟手続
第一章 訴え
訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確定するためにも提起することができる。
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。
数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
訴状は、被告に送達しなければならない。
前条の規定は、訴状の送達をすることができない場合(訴状の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。
訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。
裁判所は、民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて原告に命じた場合において、その予納がないときは、被告に異議がない場合に限り、決定で、訴えを却下することができる。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。
原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求 又は請求の原因を変更することができる。
ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
請求の変更は、書面でしなければならない。
前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
裁判所は、請求 又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより 又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。
第三十条第三項の規定による原告となるべき者の選定があった場合には、その者は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者のために請求の追加をすることができる。
第三十条第三項の規定による被告となるべき者の選定があった場合には、原告は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者に係る請求の追加をすることができる。
前条第一項ただし書 及び第二項から第四項までの規定は、前二項の請求の追加について準用する。
裁判が訴訟の進行中に争いとなっている法律関係の成立 又は不成立に係るときは、当事者は、請求を拡張して、その法律関係の確認の判決を求めることができる。
ただし、その確認の請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するときは、この限りでない。
前項の訴訟が係属する裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、前項の確認の請求が同条第一項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項ただし書の規定は、適用しない。
日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により第一項の確認の請求について管轄権を有しないときは、当事者は、同項の確認の判決を求めることができない。
第百四十三条第二項 及び第三項の規定は、第一項の規定による請求の拡張について準用する。
被告は、本訴の目的である請求 又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。
ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。
反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。
本訴の係属する裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、反訴の目的である請求が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項第一号の規定は、適用しない。
日本の裁判所が反訴の目的である請求について管轄権を有しない場合には、被告は、本訴の目的である請求 又は防御の方法と密接に関連する請求を目的とする場合に限り、第一項の規定による反訴を提起することができる。
ただし、日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により反訴の目的である請求について管轄権を有しないときは、この限りでない。
反訴については、訴えに関する規定による。
訴えが提起されたとき、又は第百四十三条第二項(第百四十四条第三項 及び第百四十五条第四項において準用する場合を含む。)の書面が裁判所に提出されたときは、その時に時効の完成猶予 又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求があったものとする。
第二章 計画審理
裁判所 及び当事者は、適正かつ迅速な審理の実現のため、訴訟手続の計画的な進行を図らなければならない。
裁判所は、審理すべき事項が多数であり 又は錯そうしているなど事件が複雑であること その他の事情によりその適正かつ迅速な審理を行うため必要があると認められるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて審理の計画を定めなければならない。
前項の審理の計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
争点 及び証拠の整理を行う期間
証人 及び当事者本人の尋問を行う期間
口頭弁論の終結 及び判決の言渡しの予定時期
第一項の審理の計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、特定の事項についての攻撃 又は防御の方法を提出すべき期間 その他の訴訟手続の計画的な進行上 必要な事項を定めることができる。
裁判所は、審理の現状 及び当事者の訴訟追行の状況 その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて第一項の審理の計画を変更することができる。
第三章 口頭弁論及びその準備
第一節 口頭弁論
裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。
裁判長は、口頭弁論の期日 又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上 及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
当事者は、口頭弁論の期日 又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
裁判長 又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃 又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項 又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。
当事者が、口頭弁論の指揮に関する裁判長の命令 又は前条第一項 若しくは第二項の規定による裁判長 若しくは陪席裁判官の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
当事者本人 又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
訴訟書類 又は訴訟において引用した文書 その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
当事者 又は第三者の提出した文書 その他の物件を裁判所に留め置くこと。
検証をし、又は鑑定を命ずること。
前項に規定する検証、鑑定 及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。
裁判所は、口頭弁論の制限、分離 若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
裁判所は、終結した口頭弁論の再開を命ずることができる。
口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、又は耳が聞こえない者 若しくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる。
ただし、耳が聞こえない者 又は口がきけない者には、文字で問い、又は陳述をさせることができる。
鑑定人に関する規定は、通訳人について準用する。
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、代理人 又は補佐人の陳述を禁じ、口頭弁論の続行のため新たな期日を定めることができる。
前項の規定により陳述を禁じた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、弁護士の付添いを命ずることができる。
攻撃 又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。
第百四十七条の三第一項の審理の計画に従った訴訟手続の進行上必要があると認めるときは、裁判長は、当事者の意見を聴いて、特定の事項についての攻撃 又は防御の方法を提出すべき期間を定めることができる。
当事者が故意 又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃 又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、却下の決定をすることができる。
攻撃 又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。
第百四十七条の三第三項 又は第百五十六条の二(第百七十条第五項において準用する場合を含む。)の規定により特定の事項についての攻撃 又は防御の方法を提出すべき期間が定められている場合において、当事者がその期間の経過後に提出した攻撃 又は防御の方法については、これにより審理の計画に従った訴訟手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあると認めたときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、却下の決定をすることができる。
ただし、その当事者がその期間内に当該攻撃 又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。
原告 又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状 又は答弁書 その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。
ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。
ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
裁判所書記官は、口頭弁論について、期日ごとに調書を作成しなければならない。
調書の記載について当事者 その他の関係人が異議を述べたときは、調書にその旨を記載しなければならない。
口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、調書によってのみ証明することができる。
ただし、調書が滅失したときは、この限りでない。
第二節 準備書面等
口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
相手方の請求 及び攻撃 又は防御の方法に対する陳述
相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない。
裁判長は、答弁書 若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出 又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。
当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張 又は立証を準備するために必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。
ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
相手方が回答するために不相当な費用 又は時間を要する照会
第百九十六条 又は第百九十七条の規定により証言を拒絶することができる事項と同様の事項についての照会
第三節 争点及び証拠の整理手続
⤏ 第一款 準備的口頭弁論
裁判所は、争点 及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。
裁判所は、準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
裁判長は、相当と認めるときは、準備的口頭弁論を終了するに当たり、当事者に準備的口頭弁論における争点 及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができる。
当事者が期日に出頭せず、又は第百六十二条の規定により定められた期間内に準備書面の提出 若しくは証拠の申出をしないときは、裁判所は、準備的口頭弁論を終了することができる。
準備的口頭弁論の終了後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
⤏ 第二款 弁論準備手続
裁判所は、争点 及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。
裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判 その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判 及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。
前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条 及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。
弁論準備手続を受命裁判官が行う場合には、前二条の規定による裁判所 及び裁判長の職務(前条第二項に規定する裁判を除く。)は、その裁判官が行う。
ただし、同条第五項において準用する第百五十条の規定による異議についての裁判 及び同項において準用する第百五十七条の二の規定による却下についての裁判は、受訴裁判所がする。
弁論準備手続を行う受命裁判官は、第百八十六条の規定による調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)を提出してする書証の申出 及び文書(第二百二十九条第二項 及び第二百三十一条に規定する物件を含む。)の送付の嘱託についての裁判をすることができる。
裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。
ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。
当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
⤏ 第三款 書面による準備手続
裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点 及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
書面による準備手続は、裁判長が行う。
ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
裁判長 又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点 及び証拠の整理に関する事項 その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。
この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条 及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述 又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
第四章 証拠
第一節 総則
裁判所において当事者が自白した事実 及び顕著な事実は、証明することを要しない。
証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。
証拠の申出は、期日前においてもすることができる。
裁判所は、当事者が申し出た証拠で必要でないと認めるものは、取り調べることを要しない。
証拠調べについて不定期間の障害があるときは、裁判所は、証拠調べをしないことができる。
証人 及び当事者本人の尋問は、できる限り、争点 及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならない。
証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる。
外国においてすべき証拠調べは、その国の管轄官庁 又はその国に駐在する日本の大使、公使 若しくは領事に嘱託してしなければならない。
外国においてした証拠調べは、その国の法律に違反する場合であっても、この法律に違反しないときは、その効力を有する。
裁判所は、相当と認めるときは、裁判所外において証拠調べをすることができる。
この場合においては、合議体の構成員に命じ、又は地方裁判所 若しくは簡易裁判所に嘱託して証拠調べをさせることができる。
前項に規定する嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所 又は簡易裁判所において証拠調べをすることを相当と認めるときは、更に証拠調べの嘱託をすることができる。
裁判所は、必要な調査を官庁 若しくは公署、外国の官庁 若しくは公署 又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
裁判所は、決定で完結すべき事件について、参考人 又は当事者本人を審尋することができる。
ただし、参考人については、当事者が申し出た者に限る。
前項の規定による審尋は、相手方がある事件については、当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においてしなければならない。
疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。
この章の規定による過料の裁判は、検察官の命令で執行する。
この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。
ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第七編第二章(第五百十一条 及び第五百十三条第六項から第八項までを除く。)の規定は、過料の裁判の執行について準用する。
この場合において、
同条第一項中
「者 若しくは裁判の執行の対象となるもの」とあるのは
「者」と、
「裁判の執行の対象となるもの 若しくは裁判」とあるのは
「裁判」と
読み替えるものとする。
過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下 この項において「原裁判」という。)に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。
この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。
第二節 証人尋問
裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。
公務員 又は公務員であった者を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は、当該監督官庁(衆議院 若しくは参議院の議員 又はその職にあった者についてはその院、内閣総理大臣 その他の国務大臣 又はその職にあった者については内閣)の承認を得なければならない。
前項の承認は、公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができない。
証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、これによって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ、十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
証人が正当な理由なく出頭しないときは、十万円以下の罰金 又は拘留に処する。
前項の罪を犯した者には、情状により、罰金 及び拘留を併科することができる。
裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命ずることができる。
刑事訴訟法中 勾引に関する規定は、前項の勾引について準用する。
裁判所は、次に掲げる場合に限り、受命裁判官 又は受託裁判官に裁判所外で証人の尋問をさせることができる。
証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき、又は正当な理由により出頭することができないとき。
証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用 又は時間を要するとき。
現場において証人を尋問することが事実を発見するために必要であるとき。
証言が証人 又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は、証言を拒むことができる。
証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも、同様とする。
配偶者、四親等内の血族 若しくは三親等内の姻族の関係にあり、又はあったこと。
後見人と被後見人の関係にあること。
次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
第百九十一条第一項の場合
医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷 若しくは祭祀の職にある者 又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
技術 又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。
証言拒絶の理由は、疎明しなければならない。
第百九十七条第一項第一号の場合を除き、証言拒絶の当否については、受訴裁判所が、当事者を審尋して、決定で、裁判をする。
前項の裁判に対しては、当事者 及び証人は、即時抗告をすることができる。
第百九十二条 及び第百九十三条の規定は、証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく証言を拒む場合について準用する。
証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない。
十六歳未満の者 又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない。
第百九十六条の規定に該当する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には、宣誓をさせないことができる。
証人は、自己 又は自己と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは、宣誓を拒むことができる。
第百九十八条 及び第百九十九条の規定は証人が宣誓を拒む場合について、第百九十二条 及び第百九十三条の規定は宣誓拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に証人が正当な理由なく宣誓を拒む場合について準用する。
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
証人は、書類に基づいて陳述することができない。
ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない。
裁判長は、証人の年齢 又は心身の状態 その他の事情を考慮し、証人が尋問を受ける場合に著しく不安 又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安 又は緊張を緩和するのに適当であり、かつ、裁判長 若しくは当事者の尋問 若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないと認める者を、その証人の陳述中、証人に付き添わせることができる。
前項の規定により証人に付き添うこととされた者は、その証人の陳述中、裁判長 若しくは当事者の尋問 若しくは証人の陳述を妨げ、又はその陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならない。
当事者が、第一項の規定による裁判長の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
裁判長は、事案の性質、証人の年齢 又は心身の状態、証人と当事者本人 又はその法定代理人との関係(証人がこれらの者が行った犯罪により害を被った者であることを含む。次条第二号において同じ。)その他の事情により、証人が当事者本人 又はその法定代理人の面前(同条に規定する方法による場合を含む。)において陳述するときは圧迫を受け 精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その当事者本人 又は法定代理人と その証人との間で、一方から 又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
裁判長は、事案の性質、証人が犯罪により害を被った者であること、証人の年齢、心身の状態 又は名誉に対する影響 その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、傍聴人と その証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置をとることができる。
前条第三項の規定は、前二項の規定による裁判長の処置について準用する。
裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
事案の性質、証人の年齢 又は心身の状態、証人と当事者本人 又はその法定代理人との関係 その他の事情により、証人が裁判長 及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。
裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
受命裁判官 又は受託裁判官が証人尋問をする場合には、裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
ただし、第二百二条第三項の規定による異議についての裁判は、受訴裁判所がする。
第三節 当事者尋問
裁判所は、申立てにより 又は職権で、当事者本人を尋問することができる。
この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
証人 及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。
ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓 若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の場合において、虚偽の陳述をした当事者が訴訟の係属中その陳述が虚偽であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
第百九十五条、第二百一条第二項、第二百二条から第二百四条まで 及び第二百六条の規定は、当事者本人の尋問について準用する。
この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。
ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
第四節 鑑定
鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
第百九十六条 又は第二百一条第四項の規定により証言 又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者 及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。
鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官 又は受託裁判官が指定する。
鑑定人について誠実に鑑定をすることを妨げるべき事情があるときは、当事者は、その鑑定人が鑑定事項について陳述をする前に、これを忌避することができる。
鑑定人が陳述をした場合であっても、その後に、忌避の原因が生じ、又は当事者がその原因があることを知ったときは、同様とする。
忌避の申立ては、受訴裁判所、受命裁判官 又は受託裁判官にしなければならない。
忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない。
忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判長は、鑑定人に、書面 又は口頭で、意見を述べさせることができる。
裁判所は、鑑定人に意見を述べさせた場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、鑑定人に更に意見を述べさせることができる。
裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合には、鑑定人が意見の陳述をした後に、鑑定人に対し質問をすることができる。
前項の質問は、裁判長、その鑑定の申出をした当事者、他の当事者の順序でする。
裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
当事者が前項の規定による変更について異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
裁判所は、鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合において、鑑定人が遠隔の地に居住しているとき その他相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、意見を述べさせることができる。
受命裁判官 又は受託裁判官が鑑定人に意見を述べさせる場合には、裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
ただし、第二百十五条の二第四項の規定による異議についての裁判は、受訴裁判所がする。
第百九十一条の規定は公務員 又は公務員であった者に鑑定人として職務上の秘密について意見を述べさせる場合について、第百九十七条から第百九十九条までの規定は鑑定人が鑑定を拒む場合について、第二百一条第一項の規定は鑑定人に宣誓をさせる場合について、第百九十二条 及び第百九十三条の規定は鑑定人が正当な理由なく出頭しない場合、鑑定人が宣誓を拒む場合 及び鑑定拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に鑑定人が正当な理由なく鑑定を拒む場合について準用する。
特別の学識経験により知り得た事実に関する尋問については、証人尋問に関する規定による。
裁判所は、必要があると認めるときは、官庁 若しくは公署、外国の官庁 若しくは公署 又は相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することができる。
この場合においては、宣誓に関する規定を除き、この節の規定を準用する。
前項の場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、官庁、公署 又は法人の指定した者に鑑定書の説明をさせることができる。
第五節 書証
書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。
次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
文書の所持者 又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
第百九十七条第一項第二号に規定する事実 又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国 又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
刑事事件に係る訴訟に関する書類 若しくは少年の保護事件の記録 又はこれらの事件において押収されている文書
文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
前条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立ては、書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合でなければ、することができない。
文書提出命令の申立てをする場合において、前条第一項第一号 又は第二号に掲げる事項を明らかにすることが著しく困難であるときは、その申立ての時においては、これらの事項に代えて、文書の所持者がその申立てに係る文書を識別することができる事項を明らかにすれば足りる。
この場合においては、裁判所に対し、文書の所持者に当該文書についての同項第一号 又は第二号に掲げる事項を明らかにすることを求めるよう申し出なければならない。
前項の規定による申出があったときは、裁判所は、文書提出命令の申立てに理由がないことが明らかな場合を除き、文書の所持者に対し、同項後段の事項を明らかにすることを求めることができる。
裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。
この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分 又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。
裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第二百二十条第四号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁(衆議院 又は参議院の議員の職務上の秘密に関する文書についてはその院、内閣総理大臣 その他の国務大臣の職務上の秘密に関する文書については内閣。以下この条において同じ。)の意見を聴かなければならない。
この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない。
前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。
国の安全が害されるおそれ、他国 若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ 又は他国 若しくは国際機関との交渉上 不利益を被るおそれ
犯罪の予防、鎮圧 又は捜査、公訴の維持、刑の執行 その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ
第三項前段の場合において、当該監督官庁は、当該文書の所持者以外の第三者の技術 又は職業の秘密に関する事項に係る記載がされている文書について意見を述べようとするときは、第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べようとするときを除き、あらかじめ、当該第三者の意見を聴くものとする。
裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。
この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること 及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
書証の申出は、第二百十九条の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。
ただし、当事者が法令により文書の正本 又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない。
裁判所は、必要があると認めるときは、提出 又は送付に係る文書を留め置くことができる。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
文書は、その方式 及び趣旨により公務員が職務上 作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁 又は公署に照会をすることができる。
私文書は、本人 又はその代理人の署名 又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
第二項 及び第三項の規定は、外国の官庁 又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
文書の成立の真否は、筆跡 又は印影の対照によっても、証明することができる。
第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条第一項 及び第二項、第二百二十六条 並びに第二百二十七条の規定は、対照の用に供すべき筆跡 又は印影を備える文書 その他の物件の提出 又は送付について準用する。
対照をするのに適当な相手方の筆跡がないときは、裁判所は、対照の用に供すべき文字の筆記を相手方に命ずることができる。
相手方が正当な理由なく前項の規定による決定に従わないときは、裁判所は、文書の成立の真否に関する挙証者の主張を真実と認めることができる。
書体を変えて筆記したときも、同様とする。
第三者が正当な理由なく第二項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
当事者 又はその代理人が故意 又は重大な過失により真実に反して文書の成立の真正を争ったときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第一項の場合において、文書の成立の真正を争った当事者 又は代理人が訴訟の係属中その文書の成立が真正であることを認めたときは、裁判所は、事情により、同項の決定を取り消すことができる。
この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープ その他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。
第六節 検証
第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条、第二百二十六条 及び第二百二十七条の規定は、検証の目的の提示 又は送付について準用する。
第三者が正当な理由なく前項において準用する第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないときは、裁判所は、決定で、二十万円以下の過料に処する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
裁判所 又は受命裁判官 若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる。
第七節 証拠保全
裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
訴えの提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。
ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続 若しくは書面による準備手続に付された後 口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない。
訴えの提起前における証拠保全の申立ては、尋問を受けるべき者 若しくは文書を所持する者の居所 又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所にしなければならない。
急迫の事情がある場合には、訴えの提起後であっても、前項の地方裁判所 又は簡易裁判所に証拠保全の申立てをすることができる。
証拠保全の申立ては、相手方を指定することができない場合においても、することができる。
この場合においては、裁判所は、相手方となるべき者のために特別代理人を選任することができる。
裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟の係属中、職権で、証拠保全の決定をすることができる。
証拠保全の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
第二百三十五条第一項ただし書の場合には、裁判所は、受命裁判官に証拠調べをさせることができる。
証拠調べの期日には、申立人 及び相手方を呼び出さなければならない。
ただし、急速を要する場合は、この限りでない。
証拠保全に関する費用は、訴訟費用の一部とする。
証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
第五章 判決
裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる。
前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中 その一が裁判をするのに熟した場合 及び本訴 又は反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
裁判所は、当事者の双方 又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状 及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。
ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。
裁判所は、独立した攻撃 又は防御の方法 その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間判決をすることができる。
請求の原因 及び数額について争いがある場合におけるその原因についても、同様とする。
裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨 及び 証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上 その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨 及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。
裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
単独の裁判官が代わった場合 又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
判決は、言渡しによってその効力を生ずる。
判決の言渡しは、口頭弁論の終結の日から二月以内にしなければならない。
ただし、事件が複雑であるときその他特別の事情があるときは、この限りでない。
判決の言渡しは、当事者が在廷しない場合においても、することができる。
判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。
判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
事実の記載においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
次に掲げる場合において、原告の請求を認容するときは、判決の言渡しは、第二百五十二条の規定にかかわらず、判決書の原本に基づかないですることができる。
被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合
被告が公示送達による呼出しを受けたにもかかわらず 口頭弁論の期日に出頭しない場合(被告の提出した準備書面が口頭弁論において陳述されたものとみなされた場合を除く。)
前項の規定により判決の言渡しをしたときは、裁判所は、判決書の作成に代えて、裁判所書記官に、当事者 及び法定代理人、主文、請求 並びに理由の要旨を、判決の言渡しをした口頭弁論期日の調書に記載させなければならない。
判決書 又は前条第二項の調書は、当事者に送達しなければならない。
前項に規定する送達は、判決書の正本 又は前条第二項の調書の謄本によってする。
裁判所は、判決に法令の違反があることを発見したときは、その言渡し後一週間以内に限り、変更の判決をすることができる。
ただし、判決が確定したとき、又は判決を変更するため事件につき更に弁論をする必要があるときは、この限りでない。
変更の判決は、口頭弁論を経ないでする。
前項の判決の言渡期日の呼出しにおいては、公示送達による場合を除き、送達をすべき場所にあてて呼出状を発した時に、送達があったものとみなす。
判決に計算違い、誤記 その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。
ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なお その裁判所に係属する。
訴訟費用の負担の裁判を脱漏したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟費用の負担について、決定で、裁判をする。
この場合においては、第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。
前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
第二項の規定による訴訟費用の負担の裁判は、本案判決に対し適法な控訴があったときは、その効力を失う。
この場合においては、控訴裁判所は、訴訟の総費用について、その負担の裁判をする。
財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
手形 又は小切手による金銭の支払の請求 及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
裁判所は、申立てにより 又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。
仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。
前項の規定による宣言についても、同様とする。
仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき、又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、補充の決定をする。
第三項の申立てについて裁判をしなかったときも、同様とする。
第七十六条、第七十七条、第七十九条 及び第八十条の規定は、第一項から第三項までの担保について準用する。
仮執行の宣言は、その宣言 又は本案判決を変更する判決の言渡しにより、変更の限度においてその効力を失う。
本案判決を変更する場合には、裁判所は、被告の申立てにより、その判決において、仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還 及び仮執行により 又はこれを免れるために被告が受けた損害の賠償を原告に命じなければならない。
仮執行の宣言のみを変更したときは、後に本案判決を変更する判決について、前項の規定を適用する。
第六章 裁判によらない訴訟の完結
訴えは、判決が確定するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
訴えの取下げは、書面でしなければならない。
ただし、口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下 この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。
第二項本文の場合において、訴えの取下げが書面でされたときはその書面を、訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされたとき(相手方がその期日に出頭したときを除く。)はその期日の調書の謄本を相手方に送達しなければならない。
訴えの取下げの書面の送達を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、訴えの取下げに同意したものとみなす。
訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から、相手方がその期日に出頭しなかったときは前項の謄本の送達があった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。
当事者双方が、口頭弁論 若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論 若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷 若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。
当事者双方が、連続して二回、口頭弁論 若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論 若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷 若しくは退席をしたときも、同様とする。
当事者が遠隔の地に居住していること その他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所 又は受命裁判官 若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
裁判所 又は受命裁判官 若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
前項の申立ては、書面でしなければならない。
この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知 その他相当と認める方法による告知によってする。
当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。
この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。
第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。
請求の放棄 又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。
請求の放棄 又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所 又は受命裁判官 若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
和解 又は請求の放棄 若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。
第七章 大規模訴訟等に関する特則
裁判所は、大規模訴訟(当事者が著しく多数で、かつ、尋問すべき証人 又は当事者本人が著しく多数である訴訟をいう。)に係る事件について、当事者に異議がないときは、受命裁判官に裁判所内で証人 又は当事者本人の尋問をさせることができる。
地方裁判所においては、前条に規定する事件について、五人の裁判官の合議体で審理 及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。
前項の場合には、判事補は、同時に三人以上合議体に加わり、又は裁判長となることができない。
第六条第一項各号に定める裁判所においては、特許権等に関する訴えに係る事件について、五人の裁判官の合議体で審理 及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。
ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る事件については、この限りでない。
前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
第八章 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則
簡易裁判所においては、簡易な手続により迅速に紛争を解決するものとする。
訴えは、口頭で提起することができる。
訴えの提起においては、請求の原因に代えて、紛争の要点を明らかにすれば足りる。
当事者双方は、任意に裁判所に出頭し、訴訟について口頭弁論をすることができる。
この場合においては、訴えの提起は、口頭の陳述によってする。
被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴 及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。
この場合においては、第二十二条の規定を準用する。
前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
民事上の争いについては、当事者は、請求の趣旨 及び原因 並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
前項の和解が調わない場合において、和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは、裁判所は、直ちに訴訟の弁論を命ずる。
この場合においては、和解の申立てをした者は、その申立てをした時に、訴えを提起したものとみなし、和解の費用は、訴訟費用の一部とする。
申立人 又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは、裁判所は、和解が調わないものとみなすことができる。
第一項の和解については、第二百六十四条 及び第二百六十五条の規定は、適用しない。
金銭の支払の請求を目的とする訴えについては、裁判所は、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、被告の資力 その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いて、第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをして、当該請求に係る金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
第一項の決定に対しては、当事者は、その決定の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、その決定をした裁判所に異議を申し立てることができる。
前項の期間内に異議の申立てがあったときは、第一項の決定は、その効力を失う。
第三項の期間内に異議の申立てがないときは、第一項の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
口頭弁論は、書面で準備することを要しない。
相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項は、前項の規定にかかわらず、書面で準備し、又は口頭弁論前直接に相手方に通知しなければならない。
前項に規定する事項は、相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載し、又は同項の規定による通知をしたものでなければ、主張することができない。
第百五十八条の規定は、原告 又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしない場合について準用する。
裁判所は、相当と認めるときは、証人 若しくは当事者本人の尋問 又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。
裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。
司法委員の員数は、各事件について一人以上とする。
司法委員は、毎年あらかじめ 地方裁判所の選任した者の中から、事件ごとに裁判所が指定する。
前項の規定により選任される者の資格、員数 その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
司法委員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当 及び宿泊料を支給する。
判決書に事実 及び理由を記載するには、請求の趣旨 及び原因の要旨、その原因の有無 並びに請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。