民法
第四編 親族
第一章 総則
六親等内の血族
三親等内の姻族
親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
傍系親族の親等を定めるには、その一人 又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。
養子と養親 及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
姻族関係は、離婚によって終了する。
夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
養子 及びその配偶者 並びに養子の直系卑属 及びその配偶者と養親 及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
直系血族 及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
第二章 婚姻
第一節 婚姻の成立
⤏ 第一款 婚姻の要件
婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
直系血族 又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。
ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
直系姻族の間では、婚姻をすることができない。
第七百二十八条 又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
養子 若しくはその配偶者 又は養子の直系卑属 若しくはその配偶者と養親 又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
前項の届出は、当事者双方 及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条、第七百三十二条、第七百三十四条から第七百三十六条まで 及び前条第二項の規定 その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使 又は領事にその届出をすることができる。
この場合においては、前二条の規定を準用する。
⤏ 第二款 婚姻の無効及び取消し
婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
人違い その他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
当事者が婚姻の届出をしないとき。
ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
婚姻は、次条、第七百四十五条 及び第七百四十七条の規定によらなければ、取り消すことができない。
第七百三十一条、第七百三十二条 及び第七百三十四条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族 又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
第七百三十二条の規定に違反した婚姻については、前婚の配偶者も、その取消しを請求することができる。
第七百三十一条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。
不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。
ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
詐欺 又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。
この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。
第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書 並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項 及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。
第二節 婚姻の効力
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫 又は妻の氏を称する。
夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
第七百六十九条の規定は、前項 及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
第三節 夫婦財産制
⤏ 第一款 総則
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人 及び第三者に対抗することができない。
夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。
共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。
前条の規定 又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人 及び第三者に対抗することができない。
⤏ 第二款 法定財産制
夫婦は、その資産、収入 その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。
ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
夫婦の一方が婚姻前から有する財産 及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
第四節 離婚
⤏ 第一款 協議上の離婚
夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
第七百三十八条、第七百三十九条 及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。
離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定 及び第八百十九条第一項の規定 その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父 又は母と子との面会 及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担 その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。
この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
婚姻によって氏を改めた夫 又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
前項の規定により婚姻前の氏に復した夫 又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額 その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか 並びに分与の額 及び方法を定める。
婚姻によって氏を改めた夫 又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者 その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
⤏ 第二款 裁判上の離婚
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
配偶者に不貞な行為があったとき。
配偶者から悪意で遺棄されたとき。
配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
第七百六十六条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。
第三章 親子
第一節 実子
妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。
女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。
前項の場合において、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過した後 又は婚姻の解消 若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
第一項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。
前三項の規定により父が定められた子について、第七百七十四条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、
同項中
「直近の婚姻」とあるのは、
「直近の婚姻(第七百七十四条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」と
する。
第七百三十二条の規定に違反して婚姻をした女が出産した場合において、前条の規定により その子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
第七百七十二条の規定により子の父が定められる場合において、父 又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。
前項の規定による子の否認権は、親権を行う母、親権を行う養親 又は未成年後見人が、子のために行使することができる。
第一項に規定する場合において、母は、子が嫡出であることを否認することができる。
ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
第七百七十二条第三項の規定により子の父が定められる場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外のもの(以下「前夫」という。)は、子が嫡出であることを否認することができる。
ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
前項の規定による否認権を行使し、第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに子の父と定められた者は、第一項の規定にかかわらず、子が自らの嫡出であることを否認することができない。
次の各号に掲げる否認権は、それぞれ当該各号に定める者に対する嫡出否認の訴えによって行う。
父の否認権
子 又は親権を行う母
子の否認権
父
母の否認権
父
前夫の否認権
父 及び子 又は親権を行う母
前項第一号 又は第四号に掲げる否認権を親権を行う母に対し行使しようとする場合において、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
父 又は母は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、それぞれその否認権を失う。
次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、それぞれ当該各号に定める時から三年以内に提起しなければならない。
父の否認権
父が子の出生を知った時
子の否認権
その出生の時
母の否認権
子の出生の時
前夫の否認権
前夫が子の出生を知った時
第七百七十二条第三項の規定により父が定められた子について第七百七十四条の規定により嫡出であることが否認されたときは、次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、前条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める時から一年以内に提起しなければならない。
第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに子の父と定められた者の否認権
新たに子の父と定められた者が当該子に係る嫡出否認の裁判が確定したことを知った時
子の否認権
子が前号の裁判が確定したことを知った時
母の否認権
母が第一号の裁判が確定したことを知った時
前夫の否認権
前夫が第一号の裁判が確定したことを知った時
第七百七十七条(第二号に係る部分に限る。)又は前条(第二号に係る部分に限る。)の期間の満了前六箇月以内の間に親権を行う母、親権を行う養親 及び未成年後見人がないときは、子は、母 若しくは養親の親権停止の期間が満了し、親権喪失 若しくは親権停止の審判の取消しの審判が確定し、若しくは親権が回復された時、新たに養子縁組が成立した時 又は未成年後見人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、嫡出否認の訴えを提起することができる。
子は、その父と継続して同居した期間(当該期間が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が三年を下回るときは、第七百七十七条(第二号に係る部分に限る。)及び前条(第二号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、二十一歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起することができる。
ただし、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りでない。
第七百七十四条第二項の規定は、前項の場合には、適用しない。
第七百七十七条(第四号に係る部分に限る。)及び前条(第四号に係る部分に限る。)に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、子が成年に達した後は、提起することができない。
第七百七十四条の規定により嫡出であることが否認された場合であっても、子は、父であった者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。
相続の開始後、第七百七十四条の規定により否認権が行使され、第七百七十二条第四項の規定により読み替えられた同条第三項の規定により新たに被相続人がその父と定められた者が相続人として遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割 その他の処分をしていたときは、当該相続人の遺産分割の請求は、価額のみによる支払の請求により行うものとする。
嫡出でない子は、その父 又は母がこれを認知することができる。
認知をするには、父 又は母が未成年者 又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
認知は、遺言によっても、することができる。
成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。
父は、胎内に在る子でも、認知することができる。
この場合においては、母の承諾を得なければならない。
前項の子が出生した場合において、第七百七十二条の規定によりその子の父が定められるときは、同項の規定による認知は、その効力を生じない。
父 又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、認知することができる。
この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。
認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
認知をした父 又は母は、その認知を取り消すことができない。
次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(第七百八十三条第一項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時)から七年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。
ただし、第三号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
子 又はその法定代理人子 又はその法定代理人が認知を知った時
子 又はその法定代理人子 又はその法定代理人が認知を知った時
子は、その子を認知した者と認知後に継続して同居した期間(当該期間が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が三年を下回るときは、前項(第一号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、二十一歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができる。
ただし、子による認知の無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときは、この限りでない。
前項の規定は、同項に規定する子の法定代理人が第一項の認知の無効の訴えを提起する場合には、適用しない。
第一項 及び第二項の規定により認知が無効とされた場合であっても、子は、認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。
子、その直系卑属 又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。
ただし、父 又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
第七百六十六条の規定は、父が認知する場合について準用する。
父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する。
婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得する。
前二項の規定は、子が既に死亡していた場合について準用する。
嫡出である子は、父母の氏を称する。
ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。
嫡出でない子は、母の氏を称する。
子が父 又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父 又は母の氏を称することができる。
父 又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
第二節 養子
⤏ 第一款 縁組の要件
二十歳に達した者は、養子をすることができる。
尊属 又は年長者は、これを養子とすることができない。
後見人が被後見人(未成年被後見人 及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
後見人の任務が終了した後、まだ その管理の計算が終わらない間も、同様とする。
配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。
ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合 又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。
ただし、配偶者とともに縁組をする場合 又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
ただし、自己 又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
第七百三十八条 及び第七百三十九条の規定は、縁組について準用する。
縁組の届出は、その縁組が第七百九十二条から前条までの規定 その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使 又は領事にその届出をすることができる。
この場合においては、第七百九十九条において準用する第七百三十九条の規定 及び前条の規定を準用する。
⤏ 第二款 縁組の無効及び取消し
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
人違い その他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
当事者が縁組の届出をしないとき。
ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
縁組は、次条から第八百八条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
第七百九十二条の規定に違反した縁組は、養親 又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、養親が、二十歳に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
第七百九十三条の規定に違反した縁組は、各当事者 又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
第七百九十四条の規定に違反した縁組は、養子 又はその実方の親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、管理の計算が終わった後、養子が追認をし、又は六箇月を経過したときは、この限りでない。
前項ただし書の追認は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した後にしなければ、その効力を生じない。
養子が、成年に達せず、又は行為能力を回復しない間に、管理の計算が終わった場合には、第一項ただし書の期間は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した時から起算する。
第七百九十六条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、その者が、縁組を知った後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
詐欺 又は強迫によって第七百九十六条の同意をした者は、その縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
第七百九十七条第二項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
前条第二項の規定は、詐欺 又は強迫によって第七百九十七条第二項の同意をした者について準用する。
第七百九十八条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族 又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
ただし、養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
第七百四十七条 及び第七百四十八条の規定は、縁組について準用する。
この場合において、
第七百四十七条第二項中
「三箇月」とあるのは、
「六箇月」と
読み替えるものとする。
第七百六十九条 及び第八百十六条の規定は、縁組の取消しについて準用する。
⤏ 第三款 縁組の効力
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
養子は、養親の氏を称する。
ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
⤏ 第四款 離縁
縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父 若しくは母 又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族 その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。
ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
第七百三十八条、第七百三十九条 及び第七百四十七条の規定は、協議上の離縁について準用する。
この場合において、
同条第二項中
「三箇月」とあるのは、
「六箇月」と
読み替えるものとする。
離縁の届出は、その離縁が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定 並びに第八百十一条 及び第八百十一条の二の規定 その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離縁は、そのためにその効力を妨げられない。
縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
他の一方から悪意で遺棄されたとき。
他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
第七百七十条第二項の規定は、前項第一号 及び第二号に掲げる場合について準用する。
養子が十五歳に達しない間は、第八百十一条の規定により養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴えを提起することができる。
養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。
ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
第七百六十九条の規定は、離縁について準用する。
⤏ 第五款 特別養子
家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
前項に規定する請求をするには、第七百九十四条 又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。
養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。
ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
二十五歳に達しない者は、養親となることができない。
ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。
第八百十七条の二に規定する請求の時に十五歳に達している者は、養子となることができない。
特別養子縁組が成立するまでに十八歳に達した者についても、同様とする。
前項前段の規定は、養子となる者が十五歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合において、十五歳に達するまでに第八百十七条の二に規定する請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、適用しない。
養子となる者が十五歳に達している場合においては、特別養子縁組の成立には、その者の同意がなければならない。
特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。
ただし、父母がその意思を表示することができない場合 又は父母による虐待、悪意の遺棄 その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難 又は不適当であること その他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。
ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
養子と実方の父母 及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。
ただし、第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方 及びその血族との親族関係については、この限りでない。
次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母 又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
養親による虐待、悪意の遺棄 その他養子の利益を著しく害する事由があること。
離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
養子と実父母 及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
第四章 親権
第一節 総則
成年に達しない子は、父母の親権に服する。
子が養子であるときは、養親の親権に服する。
親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。
ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。
ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
第一項、第三項 又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父 又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
第二節 親権の効力
親権を行う者は、子の利益のために子の監護 及び教育をする権利を有し、義務を負う。
親権を行う者は、前条の規定による監護 及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢 及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰 その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。
ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし 又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。
親権を行う父 又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
親権を行う者は、自己のためにするのと同一の注意をもって、その管理権を行わなければならない。
子が成年に達したときは、親権を行った者は、遅滞なく その管理の計算をしなければならない。
ただし、その子の養育 及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなす。
前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。
無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父 又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父 又は母の管理に属しないものとする。
前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族 又は検察官の請求によって、その管理者を選任する。
第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様とする。
第二十七条から第二十九条までの規定は、前二項の場合について準用する。
第六百五十四条 及び第六百五十五条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合 及び前条の場合について準用する。
親権を行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から五年間これを行使しないときは、時効によって消滅する。
子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から起算する。
親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う。
第三節 親権の喪失
父 又は母による虐待 又は悪意の遺棄があるとき その他父 又は母による親権の行使が著しく困難 又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人 又は検察官の請求により、その父 又は母について、親権喪失の審判をすることができる。
ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。
父 又は母による親権の行使が困難 又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人 又は検察官の請求により、その父 又は母について、親権停止の審判をすることができる。
家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態 及び生活の状況 その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
父 又は母による管理権の行使が困難 又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人 又は検察官の請求により、その父 又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。
第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項 又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人 又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止 又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。
親権を行う父 又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権 又は管理権を辞することができる。
前項の事由が消滅したときは、父 又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権 又は管理権を回復することができる。
第五章 後見
第一節 後見の開始
後見は、次に掲げる場合に開始する。
未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
第二節 後見の機関
⤏ 第一款 後見人
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。
ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人 又はその親族 その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。
未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者 若しくは未成年後見人の請求により 又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態 並びに生活 及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業 及び経歴 並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類 及び内容 並びにその法人 及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見 その他一切の事情を考慮しなければならない。
父 若しくは母が親権 若しくは管理権を辞し、又は父 若しくは母について親権喪失、親権停止 若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父 又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人 若しくはその親族 その他の利害関係人の請求により 又は職権で、成年後見人を選任する。
成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者 若しくは成年後見人の請求により 又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態 並びに生活 及び財産の状況、成年後見人となる者の職業 及び経歴 並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類 及び内容 並びにその法人 及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見 その他一切の事情を考慮しなければならない。
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
後見人に不正な行為、著しい不行跡 その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人 若しくはその親族 若しくは検察官の請求により 又は職権で、これを解任することができる。
次に掲げる者は、後見人となることができない。
家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人 又は補助人
被後見人に対して訴訟をし、又はした者 並びにその配偶者 及び直系血族
⤏ 第二款 後見監督人
未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族 若しくは後見人の請求により 又は職権で、後見監督人を選任することができる。
後見人の配偶者、直系血族 及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
後見監督人の職務は、次のとおりとする。
後見人が欠けた場合に、遅滞なく その選任を家庭裁判所に請求すること。
急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
後見人 又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百六十一条第二項 及び第八百六十二条の規定は後見監督人について、第八百四十条第三項 及び第八百五十七条の二の規定は未成年後見監督人について、第八百四十三条第四項、第八百五十九条の二 及び第八百五十九条の三の規定は成年後見監督人について準用する。
第三節 後見の事務
後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。
ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。
財産の調査 及びその目録の作成は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければ、その効力を生じない。
後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。
ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
後見人が、被後見人に対し、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に着手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。
後見人が、被後見人に対し債権を有することを知ってこれを申し出ないときは、その債権を失う。
前三条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合について準用する。
未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。
ただし、親権を行う者が定めた教育の方法 及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する。
未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、その一部の者について、財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。
未成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、財産に関する権限について、各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
家庭裁判所は、職権で、前二項の規定による定めを取り消すことができる。
未成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護 及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態 及び生活の状況に配慮しなければならない。
後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
第八百二十四条ただし書の規定は、前項の場合について準用する。
成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して 又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物 又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除 又は抵当権の設定 その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。
ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物 又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人 若しくは成年後見監督人の請求により 又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。
ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。
後見人は、その就職の初めにおいて、被後見人の生活、教育 又は療養看護 及び財産の管理のために毎年支出すべき金額を予定しなければならない。
後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。
家庭裁判所は、後見人 及び被後見人の資力 その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
後見監督人 又は家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し後見の事務の報告 若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務 若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。
家庭裁判所は、後見監督人、被後見人 若しくはその親族 その他の利害関係人の請求により 又は職権で、被後見人の財産の管理 その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。
後見人が、被後見人に代わって営業 若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
後見人が、前条の規定に違反してし 又は同意を与えた行為は、被後見人 又は後見人が取り消すことができる。
この場合においては、第二十条の規定を準用する。
前項の規定は、第百二十一条から第百二十六条までの規定の適用を妨げない。
後見人が被後見人の財産 又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。
この場合においては、第二十条の規定を準用する。
前項の規定は、第百二十一条から第百二十六条までの規定の適用を妨げない。
未成年後見人は、未成年被後見人に代わって親権を行う。
第八百五十三条から第八百五十七条まで及び第八百六十一条から前条までの規定は、前項の場合について準用する。
親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。
第六百四十四条 及び第八百三十条の規定は、後見について準用する。
第四節 後見の終了
後見人の任務が終了したときは、後見人 又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。
ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。
後見の計算は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければならない。
未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人 又はその相続人との間でした契約は、その者が取り消すことができる。
その者が未成年後見人 又はその相続人に対してした単独行為も、同様とする。
第二十条 及び第百二十一条から第百二十六条までの規定は、前項の場合について準用する。
後見人が被後見人に返還すべき金額 及び被後見人が後見人に返還すべき金額には、後見の計算が終了した時から、利息を付さなければならない。
後見人は、自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費の時から、これに利息を付さなければならない。
この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。
ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
その死体の火葬 又は埋葬に関する契約の締結 その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)
第六百五十四条 及び第六百五十五条の規定は、後見について準用する。
第八百三十二条の規定は、後見人 又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権の消滅時効について準用する。
前項の消滅時効は、第八百七十二条の規定により法律行為を取り消した場合には、その取消しの時から起算する。
第六章 保佐及び補助
第一節 保佐
保佐は、保佐開始の審判によって開始する。
家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、保佐人について準用する。
保佐人 又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族 若しくは保佐人の請求により 又は職権で、保佐監督人を選任することができる。
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項 及び第八百六十二条の規定は、保佐監督人について準用する。
この場合において、
第八百五十一条第四号中
「被後見人を代表する」とあるのは、
「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と
読み替えるものとする。
家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者 又は保佐人 若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部 又は一部を取り消すことができる。
保佐人は、保佐の事務を行うに当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態 及び生活の状況に配慮しなければならない。
第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条 及び第八百六十三条の規定は保佐の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は保佐人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条 及び第八百七十三条の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は保佐人 又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。
第二節 補助
補助は、補助開始の審判によって開始する。
家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
第八百四十三条第二項から第四項まで 及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、補助人について準用する。
補助人 又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族 若しくは補助人の請求により 又は職権で、補助監督人を選任することができる。
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項 及び第八百六十二条の規定は、補助監督人について準用する。
この場合において、
第八百五十一条第四号中
「被後見人を代表する」とあるのは、
「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と
読み替えるものとする。
家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者 又は補助人 若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
第八百七十六条の四第二項 及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。
第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条、第八百六十三条 及び第八百七十六条の五第一項の規定は補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条 及び第八百七十三条の規定は補助人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は補助人 又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。
第七章 扶養
直系血族 及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。
扶養の程度 又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力 その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
扶養をすべき者 若しくは扶養を受けるべき者の順序 又は扶養の程度 若しくは方法について協議 又は審判があった後 事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議 又は審判の変更 又は取消しをすることができる。
扶養を受ける権利は、処分することができない。