債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
民法
第三編 債権
第一章 総則
第一節 債権の目的
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約 その他の債権の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質 又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後 その物を債権の目的物とする。
債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。
ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
法定利率は、年三パーセントとする。
前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。
利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。
前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。
第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者 又は債務者に対する意思表示によってする。
前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
第二節 債権の効力
⤏ 第一款 債務不履行の責任等
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時 又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
債務の履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制 その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。
ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき 又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
債務の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
債務の不履行 又はこれによる損害の発生 若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任 及びその額を定める。
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。
ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
賠償額の予定は、履行の請求 又は解除権の行使を妨げない。
違約金は、賠償額の予定と推定する。
前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物 又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物 又は権利について当然に債権者に代位する。
債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利 又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転 又はその利益の償還を請求することができる。
⤏ 第二款 債権者代位権
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。
ただし、債務者の一身に専属する権利 及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。
ただし、保存行為は、この限りでない。
債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払 又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払 又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。
この場合において、相手方が債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。
債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立て その他の処分をすることを妨げられない。
この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
登記 又は登録をしなければ権利の得喪 及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続 又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。
この場合においては、前三条の規定を準用する。
⤏ 第三款 詐害行為取消権
⤏ 第一目 詐害行為取消権の要件
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。
ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
その行為が、不動産の金銭への換価 その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与 その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭 その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
債務者がした既存の債務についての担保の供与 又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。
債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。
その転得者が受益者から転得した者である場合
その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
その転得者が他の転得者から転得した者である場合
その転得者 及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
⤏ 第二目 詐害行為取消権の行使の方法等
債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。
受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。
転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。
詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。
受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え
受益者
転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え
その詐害行為取消請求の相手方である転得者
債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。
債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。
債権者は、第四百二十四条の六第一項前段 又は第二項前段の規定により受益者 又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払 又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払 又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。
この場合において、受益者 又は転得者は、債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払 又は引渡しをすることを要しない。
債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により受益者 又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。
⤏ 第三目 詐害行為取消権の行使の効果
詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者 及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。
債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。
債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。
債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。
債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。
ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付 又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権 又はその価額の償還請求権
前条に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
⤏ 第四目 詐害行為取消権の期間の制限
詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。
行為の時から十年を経過したときも、同様とする。
第三節 多数当事者の債権及び債務
⤏ 第一款 総則
数人の債権者 又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者 又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
⤏ 第二款 不可分債権及び不可分債務
次款(連帯債権)の規定(第四百三十三条 及び第四百三十五条の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
不可分債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。
この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。
⤏ 第三款 連帯債権
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部 又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
連帯債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない。
債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。
連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。
第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為 又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。
ただし、他の連帯債権者の一人 及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該 他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。
⤏ 第四款 連帯債務
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部 又は一部の履行を請求することができる。
連帯債務者の一人について法律行為の無効 又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
第四百三十八条、第四百三十九条第一項 及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
ただし、債権者 及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
前項の規定による求償は、弁済 その他免責があった日以後の法定利息 及び避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。
他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。
この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済 その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。
連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。
前項に規定する場合において、求償者 及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、等しい割合で分割して負担する。
前二項の規定にかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。
連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。
⤏ 第五款 保証債務
⤏ 第一目 総則
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
保証人は、その保証債務についてのみ、違約金 又は損害賠償の額を約定することができる。
保証人の負担が債務の目的 又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
主たる債務の目的 又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。
行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合 又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。
債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。
ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
第四百五十二条 又は第四百五十三条の規定により保証人の請求 又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告 又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告 又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
主たる債務者に対する履行の請求 その他の事由による時効の完成猶予 及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権 又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条 及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無 並びにこれらの残額 及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。
この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息 及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。
第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。
保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
債務が弁済期にあるとき。
ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。
前条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。
第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。
主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。
この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。
この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
連帯債務者 又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。
第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため 又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額 又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
⤏ 第二目 貸金等根保証契約
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのもの 及びその保証債務について約定された違約金 又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し 又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。
個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。
ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。
第四百四十六条第二項 及び第三項の規定は、個人貸金等根保証契約における元本確定期日の定め 及びその変更(その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。
次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。
保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
主たる債務者 又は保証人が死亡したとき。
前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。
ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行 又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行 又は担保権の実行を申し立てたとき。
主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
保証人が法人である根保証契約において、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。
保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め 若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項 若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。
主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。
前二項の規定は、求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には、適用しない。
⤏ 第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
保証人になろうとする者が、次のイ 又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ 又はロに定める事項を公証人に口授すること。
保証契約(ロに掲げるものを除く。)
主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
根保証契約
主たる債務の債権者 及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無 及びその内容 並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日 又は第四百六十五条の四第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由 その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本 及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償 その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。
保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。
ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が口がきけない者である場合には、公証人の前で、同条第二項第一号イ 又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ 又はロに定める事項を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない。
この場合における同項第二号の規定の適用については、
同号中
「口述」とあるのは、
「通訳人の通訳による申述 又は自書」と
する。
前条第一項の保証契約 又は根保証契約の保証人になろうとする者が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第二項第二号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
第四百六十五条の六第一項 及び第二項 並びに前条の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。
主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。
前項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。
主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役 又はこれらに準ずる者
主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者
主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者
主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社 及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ 又はハに掲げる者に準ずる者
主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者 又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証 又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
財産 及び収支の状況
主たる債務以外に負担している債務の有無 並びにその額 及び履行状況
主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨 及びその内容
主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み 又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず 又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り 又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。
第四節 債権の譲渡
債権は、譲り渡すことができる。
ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人 その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済 その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができる。
前項の規定により供託をした債務者は、遅滞なく、譲渡人 及び譲受人に供託の通知をしなければならない。
第一項の規定により供託をした金銭は、譲受人に限り、還付を請求することができる。
前条第一項に規定する場合において、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(同項の債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者 その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができる。
この場合においては、同条第二項 及び第三項の規定を準用する。
第四百六十六条第三項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
前項の規定にかかわらず、譲受人 その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済 その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。
預金口座 又は貯金口座に係る預金 又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第四百六十六条第二項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人 その他の第三者に対抗することができる。
前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。
前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人 その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第四百六十六条第三項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者 その他の第三者に対抗することができない。
前項の通知 又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については、
同項中
「対抗要件具備時」とあるのは、
「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、
第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については、
同項中
「対抗要件具備時」とあるのは、
「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」と
する。
債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。
ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、
これらの規定中
「対抗要件具備時」とあるのは、
「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、
第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、
これらの規定中
「対抗要件具備時」とあるのは、
「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」と
する。
第五節 債務の引受け
⤏ 第一款 併存的債務引受
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。
この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。
引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
債務者が債権者に対して取消権 又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
⤏ 第二款 免責的債務引受
免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
債務者が債権者に対して取消権 又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。
ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ 又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
第六節 債権の消滅
⤏ 第一款 弁済
⤏ 第一目 総則
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。
債務の弁済は、第三者もすることができる。
弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。
ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
前条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。
この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
債権者の預金 又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金 又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。
受領権者(債権者 及び法令の規定 又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
差押えを受けた債権の第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約 その他の債権の発生原因 及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
法令 又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。
ただし、債権者が住所の移転 その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。
ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。
債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないとき(次条第一項に規定する場合を除く。)は、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
弁済をする者 及び弁済を受領する者がいずれも第一項 又は第二項の規定による指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
全ての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
債務者が一個 又は数個の債務について元本のほか利息 及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息 及び元本に充当しなければならない。
前条の規定は、前項の場合において、費用、利息 又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。
前二条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する。
一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前三条の規定を準用する。
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。
ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
⤏ 第二目 弁済の目的物の供託
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。
この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
債権者が弁済を受領することができないとき。
弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。
ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定 及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。
この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
前項の規定は、供託によって質権 又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
その物が供託に適しないとき。
その物について滅失、損傷 その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
その物の保存について過分の費用を要するとき。
前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。
弁済の目的物 又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。
債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。
⤏ 第三目 弁済による代位
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する
第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。
前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力 及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該 他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
第一項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人 及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。
ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号 及び第二号の規定を適用し、
物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号 及び前号の規定を適用する。
債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。
前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。
前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金 その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。
第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。
この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額 及びその利息を償還しなければならない。
代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書 及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意 又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失 又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。
その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者 及びその特定承継人についても、同様とする。
前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。
⤏ 第二款 相殺
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。
この場合において、その意思表示には、条件 又は期限を付することができない。
前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。
この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
人の生命 又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
債権者が債務者に対して有する一個 又は数個の債権と、債権者が債務者に対して負担する一個 又は数個の債務について、債権者が相殺の意思表示をした場合において、当事者が別段の合意をしなかったときは、債権者の有する債権とその負担する債務は、相殺に適するようになった時期の順序に従って、その対当額について相殺によって消滅する。
前項の場合において、相殺をする債権者の有する債権がその負担する債務の全部を消滅させるのに足りないときであって、当事者が別段の合意をしなかったときは、次に掲げるところによる。
債権者が数個の債務を負担するとき(次号に規定する場合を除く。)は、第四百八十八条第四項第二号から第四号までの規定を準用する。
債権者が負担する一個 又は数個の債務について元本のほか利息 及び費用を支払うべきときは、第四百八十九条の規定を準用する。
この場合において、
同条第二項中
「前条」とあるのは、
「前条第四項第二号から第四号まで」と
読み替えるものとする。
第一項の場合において、相殺をする債権者の負担する債務がその有する債権の全部を消滅させるのに足りないときは、前項の規定を準用する。
債権者が債務者に対して有する債権に、一個の債権の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺については、前条の規定を準用する。
債権者が債務者に対して負担する債務に、一個の債務の弁済として数個の給付をすべきものがある場合における相殺についても、同様とする。
⤏ 第三款 更改
当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
従前の給付の内容について重要な変更をするもの
従前の債務者が第三者と交替するもの
従前の債権者が第三者と交替するもの
債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。
この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。
債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者 及び債務者の契約によってすることができる。
債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権 又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。
ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
前項の質権 又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。
⤏ 第四款 免除
債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
⤏ 第五款 混同
債権 及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。
ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
第七節 有価証券
⤏ 第一款 指図証券
指図証券の譲渡は、その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、その効力を生じない。
指図証券の譲渡については、その指図証券の性質に応じ、手形法(昭和七年法律第二十号)中 裏書の方式に関する規定を準用する。
指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。
ただし、その所持人が悪意 又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
指図証券の債務者は、その証券に記載した事項 及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。
第五百二十条の二から前条までの規定は、指図証券を目的とする質権の設定について準用する。
指図証券の弁済は、債務者の現在の住所においてしなければならない。
指図証券の債務者は、その債務の履行について期限の定めがあるときであっても、その期限が到来した後に所持人がその証券を提示してその履行の請求をした時から遅滞の責任を負う。
指図証券の債務者は、その証券の所持人 並びにその署名 及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。
ただし、債務者に悪意 又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。
指図証券は、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第百条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。
金銭 その他の物 又は有価証券の給付を目的とする指図証券の所持人がその指図証券を喪失した場合において、非訟事件手続法第百十四条に規定する公示催告の申立てをしたときは、その債務者に、その債務の目的物を供託させ、又は相当の担保を供してその指図証券の趣旨に従い履行をさせることができる。
⤏ 第二款 記名式所持人払証券
記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう。以下同じ。)の譲渡は、その証券を交付しなければ、その効力を生じない。
記名式所持人払証券の所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
何らかの事由により記名式所持人払証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。
ただし、その所持人が悪意 又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
記名式所持人払証券の債務者は、その証券に記載した事項 及びその証券の性質から当然に生ずる結果を除き、その証券の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。
第五百二十条の十三から前条までの規定は、記名式所持人払証券を目的とする質権の設定について準用する。
第五百二十条の八から第五百二十条の十二までの規定は、記名式所持人払証券について準用する。
⤏ 第三款 その他の記名証券
債権者を指名する記載がされている証券であって指図証券 及び記名式所持人払証券以外のものは、債権の譲渡 又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い、かつ、その効力をもってのみ、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。
第五百二十条の十一 及び第五百二十条の十二の規定は、前項の証券について準用する。
⤏ 第四款 無記名証券
第二款(記名式所持人払証券)の規定は、無記名証券について準用する。
第二章 契約
第一節 総則
⤏ 第一款 契約の成立
何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成 その他の方式を具備することを要しない。
承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
対話者に対してした第一項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
ただし、申込者が対話の終了後も その申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。
申込者の意思表示 又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。
懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。
ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
前項の広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。
懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができる。
ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
前の広告と同一の方法による広告の撤回は、これを知らない者に対しても、その効力を有する。
広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。
ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。
数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。
ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
⤏ 第二款 契約の効力
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。
ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。
この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
⤏ 第三款 契約上の地位の移転
契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
⤏ 第四款 契約の解除
契約 又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
前項の意思表示は、撤回することができない。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約 及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
債務の全部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の一部の履行が不能である場合 又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
契約の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
債務の一部の履行が不能であるとき。
債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
解除権を有する者が故意 若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工 若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。
ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
⤏ 第五款 定型約款
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部 又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様 及びその実情 並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前 又は定型取引合意の後 相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。
ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。
ただし、一時的な通信障害が発生した場合 その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無 及びその内容 その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨 及び変更後の定型約款の内容 並びにその効力発生時期をインターネットの利用 その他の適切な方法により周知しなければならない。
第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。
第二節 贈与
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
贈与者は、贈与の目的である物 又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
定期の給付を目的とする贈与は、贈与者 又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
第三節 売買
⤏ 第一款 総則
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。
この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。
ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。
売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。
ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
⤏ 第二款 売買の効力
売主は、買主に対し、登記、登録 その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
引き渡された目的物が種類、品質 又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し 又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
履行の追完が不能であるとき。
売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
契約の性質 又は当事者の意思表示により、特定の日時 又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求 並びに第五百四十一条 及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
売主が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失 又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。
売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。
民事執行法 その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は、第五百四十一条 及び第五百四十二条の規定 並びに第五百六十三条(第五百六十五条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部 又は一部の返還を請求することができる。
前二項の場合において、債務者が物 若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
前三項の規定は、競売の目的物の種類 又は品質に関する不適合については、適用しない。
債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権 又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
売主は、第五百六十二条第一項本文 又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実 及び自ら第三者のために設定し 又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。
売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。
ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
売買の目的について権利を主張する者があること その他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部 若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部 又は一部の支払を拒むことができる。
ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。
この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権 又は質権の登記がある場合について準用する。
前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
⤏ 第三款 買戻し
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第五百八十三条第一項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。
この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
買戻しの期間は、十年を超えることができない。
特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。
売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対抗することができる。
前項の登記がされた後に第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中 一年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。
ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。
売主の債権者が第四百二十三条の規定により売主に代わって買戻しをしようとするときは、買主は、裁判所において選任した鑑定人の評価に従い、不動産の現在の価額から売主が返還すべき金額を控除した残額に達するまで売主の債務を弁済し、なお残余があるときはこれを売主に返還して、買戻権を消滅させることができる。
売主は、第五百八十条に規定する期間内に代金 及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない。
買主 又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第百九十六条の規定に従い、その償還をしなければならない。
ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
不動産の共有者の一人が買戻しの特約を付してその持分を売却した後に、その不動産の分割 又は競売があったときは、売主は、買主が受け、若しくは受けるべき部分 又は代金について、買戻しをすることができる。
ただし、売主に通知をしないでした分割 及び競売は、売主に対抗することができない。
前条の場合において、買主が不動産の競売における買受人となったときは、売主は、競売の代金 及び第五百八十三条に規定する費用を支払って買戻しをすることができる。
この場合において、売主は、その不動産の全部の所有権を取得する。
他の共有者が分割を請求したことにより買主が競売における買受人となったときは、売主は、その持分のみについて買戻しをすることはできない。
第四節 交換
交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。
第五節 消費貸借
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭 その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭 その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭 その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭 その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
金銭 その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭 その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
第五百五十一条の規定は、前条第一項の特約のない消費貸借について準用する。
前条第一項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
借主は、いつでも返還をすることができる。
当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
借主が貸主から受け取った物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは、その時における物の価額を償還しなければならない。
ただし、第四百二条第二項に規定する場合は、この限りでない。
第六節 使用貸借
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用 及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
借主は、契約 又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用 及び収益をしなければならない。
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用 又は収益をさせることができない。
借主が前二項の規定に違反して使用 又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
当事者使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用 及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用 及び収益を終えることによって終了する。
使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用 及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
当事者が使用貸借の期間 並びに使用 及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。
ただし、借用物から分離することができない物 又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
契約の本旨に反する使用 又は収益によって生じた損害の賠償 及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第七節 賃貸借
⤏ 第一款 総則
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用 及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと 及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
樹木の栽植 又は伐採を目的とする山林の賃貸借
十年
前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借
五年
建物の賃貸借
三年
動産の賃貸借
六箇月
前条に定める期間は、更新することができる。
ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。
契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
賃貸借の存続期間は、更新することができる。
ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
⤏ 第二款 賃貸借の効力
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者 その他の第三者に対抗することができる。
前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条 又は第三十一条 その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人 及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨 及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。
この場合において、譲渡人と譲受人 又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人 又はその承継人に移転する。
第一項 又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
第一項 又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人 又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務 及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人 又はその承継人が承継する。
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。
この場合においては、前条第三項 及び第四項の規定を準用する。
不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
その不動産の占有を第三者が妨害しているとき
その第三者に対する妨害の停止の請求
その不動産を第三者が占有しているとき
その第三者に対する返還の請求
賃貸人は、賃貸物の使用 及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
急迫の事情があるとき。
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。
ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
耕作 又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。
前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。
賃借物の一部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用 及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
賃借物の一部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用 又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。
ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
賃料は、動産、建物 及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。
ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なく その旨を賃貸人に通知しなければならない。
ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。
⤏ 第三款 賃貸借の終了
賃借物の全部が滅失 その他の事由により使用 及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
土地の賃貸借
一年
建物の賃貸借
三箇月
動産 及び貸席の賃貸借
一日
収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方 又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
賃貸借の期間が満了した後 賃借人が賃借物の使用 又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。
この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用 及び収益によって生じた賃借物の損耗 並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項 及び第二項 並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。
⤏ 第四款 敷金
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務 その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。
この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
第八節 雇用
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。
雇用が履行の中途で終了したとき。
使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。
雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。
ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。
ただし、身元保証金については、この限りでない。
第六百二十条の規定は、雇用について準用する。
使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者 又は破産管財人は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
第九節 請負
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。
この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
請負が仕事の完成前に解除されたとき。
請負人が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類 又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質 又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
ただし、請負人がその材料 又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求 及び契約の解除をすることができない。
前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人 又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。
ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。
前項に規定する場合において、請負人は、既にした仕事の報酬 及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。
第一項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。
この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。
第十節 委任
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なく その経過 及び結果を報告しなければならない。
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭 その他の物を委任者に引き渡さなければならない。
その収取した果実についても、同様とする。
受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
受任者は、委任者に引き渡すべき金額 又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。
この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。
ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
委任が履行の中途で終了したとき。
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用 及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。
この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。
ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
第六百二十条の規定は、委任について準用する。
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
委任者 又は受任者の死亡
委任者 又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
受任者が後見開始の審判を受けたこと。
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者 又はその相続人 若しくは法定代理人は、委任者 又はその相続人 若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
第十一節 寄託
寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
ただし、書面による寄託については、この限りでない。
受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え 若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なく その事実を寄託者に通知しなければならない。
ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。
ただし、受寄者が前項の通知をした場合 又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。
受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
寄託者は、寄託物の性質 又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。
ただし、寄託者が過失なく その性質 若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。
当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでも その返還をすることができる。
返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。
ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
寄託物の一部滅失 又は損傷によって生じた損害の賠償 及び受寄者が支出した費用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第六百四十六条から第六百四十八条まで、第六百四十九条 並びに第六百五十条第一項 及び第二項の規定は、寄託について準用する。
複数の者が寄託した物の種類 及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質 及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。
第五百九十条 及び第五百九十二条の規定は、前項に規定する場合について準用する。
第五百九十一条第二項 及び第三項の規定は、預金 又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。
第十二節 組合
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
出資は、労務をその目的とすることができる。
第五百三十三条 及び第五百三十六条の規定は、組合契約については、適用しない。
組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。
組合員の一人について意思表示の無効 又は取消しの原因があっても、他の組合員の間においては、組合契約は、その効力を妨げられない。
各組合員の出資 その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
金銭を出資の目的とした場合において、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。
組合の業務の決定 及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人 又は数人の組合員 又は第三者に委任することができる。
前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。
この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。
前項の規定にかかわらず、組合の業務については、総組合員の同意によって決定し、又は総組合員が執行することを妨げない。
組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員 又は各業務執行者が単独で行うことができる。
ただし、その完了前に他の組合員 又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。
各組合員は、組合の業務を執行する場合において、組合員の過半数の同意を得たときは、他の組合員を代理することができる。
前項の規定にかかわらず、業務執行者があるときは、業務執行者のみが組合員を代理することができる。
この場合において、業務執行者が数人あるときは、各業務執行者は、業務執行者の過半数の同意を得たときに限り、組合員を代理することができる。
前二項の規定にかかわらず、各組合員 又は各業務執行者は、組合の常務を行うときは、単独で組合員を代理することができる。
第六百四十四条から第六百五十条までの規定は、組合の業務を決定し、又は執行する組合員について準用する。
組合契約の定めるところにより一人 又は数人の組合員に業務の決定 及び執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。
各組合員は、組合の業務の決定 及び執行をする権利を有しないときであっても、その業務 及び組合財産の状況を検査することができる。
当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
利益 又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益 及び損失に共通であるものと推定する。
組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる。
組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合 又は等しい割合でその権利を行使することができる。
ただし、組合の債権者がその債権の発生の時に各組合員の損失分担の割合を知っていたときは、その割合による。
組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合 及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない。
組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない。
組合員は、その全員の同意によって、又は組合契約の定めるところにより、新たに組合員を加入させることができる。
前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない。
組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。
ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。
組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。
前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
組合員の除名は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってすることができる。
ただし、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもってその組合員に対抗することができない。
脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
脱退した組合員は、前項に規定する組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償権を有する。
脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならない。
脱退した組合員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
脱退の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
組合は、次に掲げる事由によって解散する。
組合の目的である事業の成功 又はその成功の不能
組合契約で定めた存続期間の満了
組合契約で定めた解散の事由の発生
やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができる。
第六百二十条の規定は、組合契約について準用する。
組合が解散したときは、清算は、総組合員が共同して、又はその選任した清算人がこれをする。
清算人の選任は、組合員の過半数で決する。
第六百七十条第三項から第五項まで 並びに第六百七十条の二第二項 及び第三項の規定は、清算人について準用する。
第六百七十二条の規定は、組合契約の定めるところにより組合員の中から清算人を選任した場合について準用する。
債権の取立て 及び債務の弁済
清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する。
第十三節 終身定期金
終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方 又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭 その他の物を相手方 又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。
終身定期金は、日割りで計算する。
終身定期金債務者が終身定期金の元本を受領した場合において、その終身定期金の給付を怠り、又はその他の義務を履行しないときは、相手方は、元本の返還を請求することができる。
この場合において、相手方は、既に受け取った終身定期金の中からその元本の利息を控除した残額を終身定期金債務者に返還しなければならない。
前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
終身定期金債務者の責めに帰すべき事由によって第六百八十九条に規定する死亡が生じたときは、裁判所は、終身定期金債権者 又はその相続人の請求により、終身定期金債権が相当の期間存続することを宣告することができる。
前項の規定は、第六百九十一条の権利の行使を妨げない。
この節の規定は、終身定期金の遺贈について準用する。
第十四節 和解
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来 その権利を有していなかった旨の確証 又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
第三章 事務管理
義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
管理者は、本人の身体、名誉 又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意 又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。
ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
管理者は、本人 又はその相続人 若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。
ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。
第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。
管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。
第四章 不当利得
法律上の原因なく他人の財産 又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。
この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ 若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。
ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
第五章 不法行為
故意 又は過失によって他人の権利 又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
他人の身体、自由 若しくは名誉を侵害した場合 又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者 及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。
ただし、故意 又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任 及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
前二項の規定は、使用者 又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。
ただし、注文 又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
土地の工作物の設置 又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
前項の規定は、竹木の栽植 又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者 又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、動物の種類 及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
行為者を教唆した者 及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
他人の不法行為に対し、自己 又は第三者の権利 又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。
ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
第四百十七条 及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
被害者 又はその法定代理人が損害 及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
不法行為の時から二十年間行使しないとき。
人の生命 又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、
同号中
「三年間」とあるのは、
「五年間」と
する。