この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
刑法
制定に関する表明
➤ 第一編 総則
第一章 通則
日本国外にある日本船舶 又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪 及びその未遂罪
第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所 又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造 及び不正使用等、公印偽造 及び不正使用等、公記号偽造 及び不正使用等)の罪 並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項 及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪 並びにこれらの罪の未遂罪
第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪 及び同条第二項の罪の未遂罪
第百七十六条、第百七十七条 及び第百七十九条から第百八十一条まで(不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ 及び監護者性交等、未遂罪、不同意わいせつ等致死傷)並びに第百八十四条(重婚)の罪
第百九十八条(贈賄)の罪
第百九十九条(殺人)の罪 及びその未遂罪
第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎 及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪 及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪
第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取 及び誘拐、営利目的等略取 及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取 及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
第二百三十条(名誉毀損)の罪
第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏こん酔強盗、強盗致死傷)、第二百四十一条第一項 及び第三項(強盗・不同意性交等及び同致死)並びに第二百四十三条(未遂罪)の罪
第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
第二百五十三条(業務上横領)の罪
第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪
この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
第百七十六条、第百七十七条 及び第百七十九条から第百八十一条まで(不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ 及び監護者性交等、未遂罪、不同意わいせつ等致死傷)の罪
第百九十九条(殺人)の罪 及びその未遂罪
第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取 及び誘拐、営利目的等略取 及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取 及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
第二百三十六条(強盗)、第二百三十八条から第二百四十条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷)並びに第二百四十一条第一項 及び第三項(強盗・不同意性交等 及び同致死)の罪 並びにこれらの罪(同条第一項の罪を除く。)の未遂罪
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
第百一条(看守者等による逃走援助)の罪 及びその未遂罪
第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪
第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄 及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄 及び事後収賄、あっせん収賄)の罪 並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪
第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。
外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。
ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部 又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
この法律において「公務員」とは、国 又は地方公共団体の職員 その他法令により公務に従事する議員、委員 その他の職員をいう。
この法律において「公務所」とは、官公庁 その他公務員が職務を行う所をいう。
この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。
ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
第二章 刑
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留 及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
主刑の軽重は、前条に規定する順序による。
ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
同種の刑は、長期の長いもの 又は多額の多いものを重い刑とし、長期 又は多額が同じであるときは、短期の長いもの 又は寡額の多いものを重い刑とする。
二個以上の死刑 又は長期 若しくは多額 及び短期 若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める。
死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。
死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。
懲役は、無期 及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
禁錮は、無期 及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮を減軽して有期の懲役 又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
有期の懲役 又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。
罰金は、一万円以上とする。
ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。
科料は、千円以上一万円未満とする。
罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
科料を完納することができない者は、一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。
罰金を併科した場合 又は罰金と科料とを併科した場合における留置の期間は、三年を超えることができない。
科料を併科した場合における留置の期間は、六十日を超えることができない。
罰金 又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金 又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。
罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。
罰金 又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除して得た日数(その日数に一日未満の端数を生じるときは、これを一日とする。)とする。
次に掲げる物は、没収することができる。
犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物 又は犯罪行為の報酬として得た物
前号に掲げる物の対価として得た物
没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。
ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。
前条第一項第三号 又は第四号に掲げる物の全部 又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
拘留 又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。
ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。
未決勾留の日数は、その全部 又は一部を本刑に算入することができる。
第三章 期間計算
月 又は年によって期間を定めたときは、暦に従って計算する。
刑期は、裁判が確定した日から起算する。
拘禁されていない日数は、裁判が確定した後であっても、刑期に算入しない。
受刑の初日は、時間にかかわらず、一日として計算する。
時効期間の初日についても、同様とする。
刑期が終了した場合における釈放は、その終了の日の翌日に行う。
第四章 刑の執行猶予
次に掲げる者が三年以下の懲役 若しくは禁錮 又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日 又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役 又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。
ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書 及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。
ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。
次に掲げる場合においては、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。
前二条の規定により禁錮以上の刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
次に掲げる者が三年以下の懲役 又は禁錮の言渡しを受けた場合において、犯情の軽重 及び犯人の境遇 その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときは、一年以上五年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができる。
前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日 又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
前項の規定によりその一部の執行を猶予された刑については、そのうち執行が猶予されなかった部分の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日 又はその執行を受けることがなくなった日から、その猶予の期間を起算する。
前項の規定にかかわらず、その刑のうち執行が猶予されなかった部分の期間の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった時において他に執行すべき懲役 又は禁錮があるときは、第一項の規定による猶予の期間は、その執行すべき懲役 若しくは禁錮の執行を終わった日 又はその執行を受けることがなくなった日から起算する。
前条第一項の場合においては、猶予の期間中保護観察に付することができる。
前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、第二十七条の五第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。
ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十七条の二第一項第三号に掲げる者であるときは、この限りでない。
猶予の言渡し後に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられたとき。
猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられたとき。
猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき。
次に掲げる場合においては、刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
猶予の言渡し後に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
第二十七条の三第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
前二条の規定により刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても、その猶予の言渡しを取り消さなければならない。
刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、その懲役 又は禁錮を執行が猶予されなかった部分の期間を刑期とする懲役 又は禁錮に減軽する。
この場合においては、当該部分の期間の執行を終わった日 又はその執行を受けることがなくなった日において、刑の執行を受け終わったものとする。
第五章 仮釈放
懲役 又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。
仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。
仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。
仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その刑について仮釈放の処分を受けた場合において、当該仮釈放中に当該執行猶予の言渡しを取り消されたときは、その処分は、効力を失う。
仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。
拘留に処せられた者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分によって仮に出場を許すことができる。
罰金 又は科料を完納することができないため留置された者も、前項と同様とする。
第六章 刑の時効及び刑の消滅
刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。
時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
無期の懲役 又は禁錮については三十年
十年以上の有期の懲役 又は禁錮については二十年
三年以上十年未満の懲役 又は禁錮については十年
三年未満の懲役 又は禁錮については五年
罰金については三年
拘留、科料 及び没収については一年
時効は、法令により執行を猶予し、又は停止した期間内は、進行しない。
拘禁刑、罰金、拘留 及び科料の時効は、刑の言渡しを受けた者が国外にいる場合には、その国外にいる期間は、進行しない。
懲役、禁錮 及び拘留の時効は、刑の言渡しを受けた者をその執行のために拘束することによって中断する。
罰金、科料 及び没収の時効は、執行行為をすることによって中断する。
禁錮以上の刑の執行を終わり 又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。
罰金以下の刑の執行を終わり 又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
第七章 犯罪の不成立及び刑の減免
法令 又は正当な業務による行為は、罰しない。
急迫不正の侵害に対して、自己 又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
自己 又は他人の生命、身体、自由 又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。
ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
心神喪失者の行為は、罰しない。
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
第八章 未遂罪
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
第九章 併合罪
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。
ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。
ただし、没収は、この限りでない。
併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役 又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。
ただし、罰金、科料 及び没収は、この限りでない。
併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役 又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。
ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
罰金と他の刑とは、併科する。
ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。
併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
併合罪のうちの重い罪について没収を科さない場合であっても、他の罪について没収の事由があるときは、これを付加することができる。
二個以上の没収は、併科する。
併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。
併合罪について二個以上の裁判があったときは、その刑を併せて執行する。
ただし、死刑を執行すべきときは、没収を除き、他の刑を執行せず、無期の懲役 又は禁錮を執行すべきときは、罰金、科料 及び没収を除き、他の刑を執行しない。
前項の場合における有期の懲役 又は禁錮の執行は、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを超えることができない。
併合罪について処断された者がその一部の罪につき大赦を受けたときは、他の罪について改めて刑を定める。
拘留 又は科料と他の刑とは、併科する。
ただし、第四十六条の場合は、この限りでない。
二個以上の拘留 又は科料は、併科する。
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段 若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
第四十九条第二項の規定は、前項の場合にも、適用する。
第十章 累犯
懲役に処せられた者がその執行を終わった日 又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者がその執行の免除を得た日 又は減刑により懲役に減軽されてその執行を終わった日 若しくはその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときも、前項と同様とする。
併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなす。
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
三犯以上の者についても、再犯の例による。
第十一章 共犯
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
正犯を幇助した者は、従犯とする。
従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
拘留 又は科料のみに処すべき罪の教唆者 及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。
犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。
身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
第十二章 酌量減軽
犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。
法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。
第十三章 加重減軽の方法
法律上刑を減軽すべき一個 又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
死刑を減軽するときは、無期の懲役 若しくは禁錮 又は十年以上の懲役 若しくは禁錮とする。
無期の懲役 又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役 又は禁錮とする。
有期の懲役 又は禁錮を減軽するときは、その長期 及び短期の二分の一を減ずる。
罰金を減軽するときは、その多額 及び寡額の二分の一を減ずる。
拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。
法律上刑を減軽すべき場合において、各本条に二個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽する。
懲役、禁錮 又は拘留を減軽することにより一日に満たない端数が生じたときは、これを切り捨てる。
酌量減軽をするときも、第六十八条 及び前条の例による。
同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
➤ 第二編 罪
第二章 内乱に関する罪
国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
首謀者は、死刑 又は無期禁錮に処する。
謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期 又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。
付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。
内乱の予備 又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。
兵器、資金 若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。
前二条の罪を犯した者であっても、暴動に至る前に自首したときは、その刑を免除する。
第三章 外患に関する罪
外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑 又は無期 若しくは二年以上の懲役に処する。
第八十一条 及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
第八十一条 又は第八十二条の罪の予備 又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第四章 国交に関する罪
外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗 その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない。
外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備 又は陰謀をした者は、三月以上五年以下の禁錮に処する。
ただし、自首した者は、その刑を免除する。
外国が交戦している際に、局外中立に関する命令に違反した者は、三年以下の禁錮 又は五十万円以下の罰金に処する。
第五章 公務の執行を妨害する罪
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行 又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役 若しくは禁錮 又は五十万円以下の罰金に処する。
公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行 又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
公務員が施した封印 若しくは差押えの表示を損壊し、又はその他の方法によりその封印 若しくは差押えの表示に係る命令 若しくは処分を無効にした者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
情を知って、第三号に規定する譲渡 又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。
強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
金銭執行を受けるべき財産について、無償 その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為
偽計 又は威力を用いて、立入り、占有者の確認 その他の強制執行の行為を妨害した者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
強制執行の申立てをさせず 又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者 又はその代理人に対して暴行 又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
偽計 又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
偽計 又は威力を用いて、公の競売 又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、三年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
公正な価格を害し 又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
第六章 逃走の罪
法令により拘禁された者が逃走したときは、三年以下の懲役に処する。
前条に規定する者が拘禁場 若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行 若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
法令により拘禁された者を奪取した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
前項の目的で、暴行 又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
法令により拘禁された者を看守し 又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
この章の罪の未遂は、罰する。
第七章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者 又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造 若しくは変造の証拠を使用した者は、三年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
前二条の罪については、犯人 又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
自己 若しくは他人の刑事事件の捜査 若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者 又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
第八章 騒乱の罪
多衆で集合して暴行 又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
首謀者は、一年以上十年以下の懲役 又は禁錮に処する。
他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の懲役 又は禁錮に処する。
付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。
暴行 又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の懲役 又は禁錮に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。
第九章 放火及び失火の罪
放火して、現に人が住居に使用し 又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船 又は鉱坑を焼損した者は、死刑 又は無期 若しくは五年以上の懲役に処する。
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船 又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。
ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
第百九条第二項 又は前条第二項の罪を犯し、よって第百八条 又は第百九条第一項に規定する物に延焼させたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
前条第二項の罪を犯し、よって同条第一項に規定する物に延焼させたときは、三年以下の懲役に処する。
第百八条 及び第百九条第一項の罪の未遂は、罰する。
第百八条 又は第百九条第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
ただし、情状により、その刑を免除することができる。
火災の際に、消火用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、消火を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第百九条第一項 及び第百十条第一項に規定する物が自己の所有に係るものであっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合において、これを焼損したときは、他人の物を焼損した者の例による。
失火により、第百八条に規定する物 又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を焼損した者は、五十万円以下の罰金に処する。
失火により、第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの 又は第百十条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
火薬、ボイラー その他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物 又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。
第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの 又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。
前項の行為が過失によるときは、失火の例による。
第百十六条 又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮 又は百五十万円以下の罰金に処する。
ガス、電気 又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人の生命、身体 又は財産に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
ガス、電気 又は蒸気を漏出させ、流出させ、又は遮断し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第十章 出水及び水利に関する罪
出水させて、現に人が住居に使用し 又は現に人がいる建造物、汽車、電車 又は鉱坑を浸害した者は、死刑 又は無期 若しくは三年以上の懲役に処する。
出水させて、前条に規定する物以外の物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
浸害した物が自己の所有に係るときは、その物が差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、配偶者居住権が設定され、又は保険に付したものである場合に限り、前項の例による。
水害の際に、水防用の物を隠匿し、若しくは損壊し、又はその他の方法により、水防を妨害した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
過失により出水させて、第百十九条に規定する物を浸害した者 又は第百二十条に規定する物を浸害し、よって公共の危険を生じさせた者は、二十万円以下の罰金に処する。
堤防を決壊させ、水門を破壊し、その他水利の妨害となるべき行為 又は出水させるべき行為をした者は、二年以下の懲役 若しくは禁錮 又は二十万円以下の罰金に処する。
第十一章 往来を妨害する罪
陸路、水路 又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
鉄道 若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車 又は電車の往来の危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
灯台 若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
現に人がいる汽車 又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期 又は三年以上の懲役に処する。
現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。
前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑 又は無期懲役に処する。
第百二十五条の罪を犯し、よって汽車 若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。
第百二十四条第一項、第百二十五条 並びに第百二十六条第一項 及び第二項の罪の未遂は、罰する。
過失により、汽車、電車 若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車 若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。
その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮 又は五十万円以下の罰金に処する。
第十二章 住居を侵す罪
正当な理由がないのに、人の住居 若しくは人の看守する邸宅、建造物 若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
第百三十条の罪の未遂は、罰する。
第十三章 秘密を侵す罪
正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人 又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
宗教、祈祷 若しくは祭祀の職にある者 又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第十四章 あへん煙に関する罪
あへん煙を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
あへん煙を吸食する器具を輸入し、製造し、販売し、又は販売の目的で所持した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
税関職員が、あへん煙 又はあへん煙を吸食するための器具を輸入し、又はこれらの輸入を許したときは、一年以上十年以下の懲役に処する。
あへん煙を吸食した者は、三年以下の懲役に処する。
あへん煙の吸食のため建物 又は室を提供して利益を図った者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
あへん煙 又はあへん煙を吸食するための器具を所持した者は、一年以下の懲役に処する。
この章の罪の未遂は、罰する。
第十五章 飲料水に関する罪
人の飲料に供する浄水を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
水道により公衆に供給する飲料の浄水 又はその水源を汚染し、よって使用することができないようにした者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
人の飲料に供する浄水に毒物 その他人の健康を害すべき物を混入した者は、三年以下の懲役に処する。
前三条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
水道により公衆に供給する飲料の浄水 又はその水源に毒物 その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期懲役に処する。
よって人を死亡させた者は、死刑 又は無期 若しくは五年以上の懲役に処する。
公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊し、又は閉塞した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第十六章 通貨偽造の罪
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣 又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期 又は三年以上の懲役に処する。
偽造 又は変造の貨幣、紙幣 又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣 又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
偽造 又は変造の外国の貨幣、紙幣 又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、偽造 又は変造の貨幣、紙幣 又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。
前三条の罪の未遂は、罰する。
貨幣、紙幣 又は銀行券を収得した後に、それが偽造 又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金 又は科料に処する。
ただし、二千円以下にすることはできない。
貨幣、紙幣 又は銀行券の偽造 又は変造の用に供する目的で、器械 又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第十七章 文書偽造の罪
行使の目的で、御璽、国璽 若しくは御名を使用して詔書 その他の文書を偽造し、又は偽造した御璽、国璽 若しくは御名を使用して詔書 その他の文書を偽造した者は、無期 又は三年以上の懲役に処する。
御璽 若しくは国璽を押し 又は御名を署した詔書 その他の文書を変造した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、公務所 若しくは公務員の印章 若しくは署名を使用して公務所 若しくは公務員の作成すべき文書 若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所 若しくは公務員の印章 若しくは署名を使用して公務所 若しくは公務員の作成すべき文書 若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
公務所 又は公務員が押印し 又は署名した文書 又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
前二項に規定するもののほか、公務所 若しくは公務員の作成すべき文書 若しくは図画を偽造し、又は公務所 若しくは公務員が作成した文書 若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書 若しくは図画を作成し、又は文書 若しくは図画を変造したときは、印章 又は署名の有無により区別して、前二条の例による。
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿 その他の権利 若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利 若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札 又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役 又は二十万円以下の罰金に処する。
前二項の罪の未遂は、罰する。
第百五十四条から前条までの文書 若しくは図画を行使し、又は前条第一項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書 若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書 若しくは図画を作成し、又は不実の記載 若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
行使の目的で、他人の印章 若しくは署名を使用して権利、義務 若しくは事実証明に関する文書 若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章 若しくは署名を使用して権利、義務 若しくは事実証明に関する文書 若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
他人が押印し 又は署名した権利、義務 又は事実証明に関する文書 又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
前二項に規定するもののほか、権利、義務 又は事実証明に関する文書 又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金に処する。
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書 又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、三年以下の禁錮 又は三十万円以下の罰金に処する。
前二条の文書 又は図画を行使した者は、その文書 若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務 又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
前項の罪が公務所 又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、十年以下の懲役 又は百万円以下の罰金に処する。
不正に作られた権利、義務 又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第十八章 有価証券偽造の罪
行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券 その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者も、前項と同様とする。
偽造 若しくは変造の有価証券 又は虚偽の記入がある有価証券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第十八章の二 支払用カード電磁的記録に関する罪
人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカード その他の代金 又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、十年以下の懲役 又は百万円以下の罰金に処する。
預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。
不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、同項と同様とする。
不正に作られた第一項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入した者も、同項と同様とする。
前条第一項の目的で、同条第三項のカードを所持した者は、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
第百六十三条の二第一項の犯罪行為の用に供する目的で、同項の電磁的記録の情報を取得した者は、三年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
情を知って、その情報を提供した者も、同様とする。
不正に取得された第百六十三条の二第一項の電磁的記録の情報を、前項の目的で保管した者も、同項と同様とする。
第一項の目的で、器械 又は原料を準備した者も、同項と同様とする。
第百六十三条の二 及び前条第一項の罪の未遂は、罰する。
第十九章 印章偽造の罪
行使の目的で、御璽、国璽 又は御名を偽造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
御璽、国璽 若しくは御名を不正に使用し、又は偽造した御璽、国璽 若しくは御名を使用した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、公務所 又は公務員の印章 又は署名を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
公務所 若しくは公務員の印章 若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した公務所 若しくは公務員の印章 若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、公務所の記号を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。
公務所の記号を不正に使用し、又は偽造した公務所の記号を使用した者も、前項と同様とする。
行使の目的で、他人の印章 又は署名を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。
他人の印章 若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章 若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。
第百六十四条第二項、第百六十五条第二項、第百六十六条第二項 及び前条第二項の罪の未遂は、罰する。
第十九章の二 不正指令電磁的記録に関する罪
正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録 その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録 その他の記録
正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
前項の罪の未遂は、罰する。
正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録 その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
第二十章 偽証の罪
法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
前条の罪を犯した者が、その証言をした事件について、その裁判が確定する前 又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
法律により宣誓した鑑定人、通訳人 又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳 又は翻訳をしたときは、前二条の例による。
第二十一章 虚偽告訴の罪
人に刑事 又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発 その他の申告をした者は、三月以上十年以下の懲役に処する。
前条の罪を犯した者が、その申告をした事件について、その裁判が確定する前 又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十二章 わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役 若しくは三十万円以下の罰金 又は拘留 若しくは科料に処する。
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体 その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役 若しくは二百五十万円以下の罰金 若しくは科料に処し、又は懲役 及び罰金を併科する。
電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録 その他の記録を頒布した者も、同様とする。
有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
次に掲げる行為 又は事由 その他これらに類する行為 又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し 若しくは全うすることが困難な状態にさせ 又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
同意しない意思を形成し、表明し 又は全うするいとまがないこと。
予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること 又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信 若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
前条第一項各号に掲げる行為 又は事由 その他これらに類する行為 又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し 若しくは全うすることが困難な状態にさせ 又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交 又は膣 若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条 及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信 若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条第一項の例による。
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。
第百七十六条、第百七十七条 及び前条の罪の未遂は、罰する。
第百七十六条 若しくは第百七十九条第一項の罪 又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期 又は三年以上の懲役に処する。
第百七十七条 若しくは第百七十九条第二項の罪 又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期 又は六年以上の懲役に処する。
わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑 又は五十万円以下の罰金に処する。
威迫し、偽計を用い 又は誘惑して面会を要求すること。
前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑 又は百万円以下の罰金に処する。
十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑 又は五十万円以下の罰金に処する。
前号に掲げるもののほか、膣 又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し 又は挿入される姿態、性的な部位(性器 若しくは肛門 若しくはこれらの周辺部、臀でん部 又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り 又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態 その他の姿態をとってその映像を送信すること。
営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。
その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
第二十三章 賭博及び富くじに関する罪
賭博をした者は、五十万円以下の罰金 又は科料に処する。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
富くじを発売した者は、二年以下の懲役 又は百五十万円以下の罰金に処する。
富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役 又は百万円以下の罰金に処する。
前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金 又は科料に処する。
第二十四章 礼拝所及び墳墓に関する罪
神祠、仏堂、墓所 その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をした者は、六月以下の懲役 若しくは禁錮 又は十万円以下の罰金に処する。
説教、礼拝 又は葬式を妨害した者は、一年以下の懲役 若しくは禁錮 又は十万円以下の罰金に処する。
墳墓を発掘した者は、二年以下の懲役に処する。
死体、遺骨、遺髪 又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
第百八十九条の罪を犯して、死体、遺骨、遺髪 又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
検視を経ないで変死者を葬った者は、十万円以下の罰金 又は科料に処する。
第二十五章 汚職の罪
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役 又は禁錮に処する。
裁判、検察 若しくは警察の職務を行う者 又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役 又は禁錮に処する。
裁判、検察 若しくは警察の職務を行う者 又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者 その他の者に対して暴行 又は陵辱 若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役 又は禁錮に処する。
法令により拘禁された者を看守し 又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行 又は陵辱 若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。
公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
公務員が、その職務上不正な行為をしたこと 又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求 若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求 若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと 又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること 又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求 若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
犯人 又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。
その全部 又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み 若しくは約束をした者は、三年以下の懲役 又は二百五十万円以下の罰金に処する。
第二十六章 殺人の罪
人を殺した者は、死刑 又は無期 若しくは五年以上の懲役に処する。
第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
ただし、情状により、その刑を免除することができる。
人を教唆し 若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け 若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役 又は禁錮に処する。
第百九十九条 及び前条の罪の未遂は、罰する。
第二十七章 傷害の罪
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金 若しくは科料に処する。
二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役 若しくは三十万円以下の罰金 又は拘留 若しくは科料に処する。
二人以上の者が他人の生命、身体 又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
前項の場合において、凶器を準備して 又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の懲役に処する。
第二十八章 過失傷害の罪
過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金 又は科料に処する。
前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役 若しくは禁錮 又は百万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
第二十九章 堕胎の罪
妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。
女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。
よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
医師、助産師、薬剤師 又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。
女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第三十章 遺棄の罪
老年、幼年、身体障害 又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。
老年者、幼年者、身体障害者 又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第三十一章 逮捕及び監禁の罪
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
第三十二章 脅迫の罪
生命、身体、自由、名誉 又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉 又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
生命、身体、自由、名誉 若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉 又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
前二項の罪の未遂は、罰する。
第三十三章 略取、誘拐及び人身売買の罪
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
営利、わいせつ、結婚 又は生命 若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
近親者 その他略取され 又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、無期 又は三年以上の懲役に処する。
人を略取し 又は誘拐した者が近親者 その他略取され 又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、前項と同様とする。
所在国外に移送する目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、二年以上の有期懲役に処する。
人を買い受けた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
未成年者を買い受けた者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
営利、わいせつ、結婚 又は生命 若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
人を売り渡した者も、前項と同様とする。
所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、二年以上の有期懲役に処する。
略取され、誘拐され、又は売買された者を所在国外に移送した者は、二年以上の有期懲役に処する。
第二百二十四条、第二百二十五条 又は前三条の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
第二百二十五条の二第一項の罪を犯した者を幇助する目的で、略取され又は誘拐された者を引き渡し、収受し、輸送し、蔵匿し、又は隠避させた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
営利、わいせつ 又は生命 若しくは身体に対する加害の目的で、略取され、誘拐され、又は売買された者を引き渡し、収受し、輸送し、又は蔵匿した者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
第二百二十五条の二第一項の目的で、略取され 又は誘拐された者を収受した者は、二年以上の有期懲役に処する。
略取され 又は誘拐された者を収受した者が近親者 その他略取され 又は誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させ、又はこれを要求する行為をしたときも、同様とする。
第二百二十四条、第二百二十五条、第二百二十五条の二第一項、第二百二十六条から第二百二十六条の三まで並びに前条第一項から第三項まで 及び第四項前段の罪の未遂は、罰する。
第二百二十五条の二 又は第二百二十七条第二項 若しくは第四項の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
第二百二十五条の二第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
第二百二十四条の罪 及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪 並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
第三十四章 名誉に対する罪
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役 若しくは禁錮 又は五十万円以下の罰金に処する。
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
前条第一項の行為が公務員 又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役 若しくは禁錮 若しくは三十万円以下の罰金 又は拘留 若しくは科料に処する。
この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
告訴をすることができる者が天皇、皇后、太皇太后、皇太后 又は皇嗣であるときは内閣総理大臣が、外国の君主 又は大統領であるときはその国の代表者がそれぞれ代わって告訴を行う。
第三十五章 信用及び業務に対する罪
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
人の業務に使用する電子計算機 若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報 若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役 又は百万円以下の罰金に処する。
前項の罪の未遂は、罰する。
第三十六章 窃盗及び強盗の罪
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
他人の不動産を侵奪した者は、十年以下の懲役に処する。
暴行 又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行 又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。
強盗が、人を負傷させたときは無期 又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑 又は無期懲役に処する。
強盗の罪 若しくはその未遂罪を犯した者が第百七十七条の罪 若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は同条の罪 若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪 若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期 又は七年以上の懲役に処する。
前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑 又は無期懲役に処する。
自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪については、他人の財物とみなす。
第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで 及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。
配偶者、直系血族 又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪 又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
第三十七章 詐欺及び恐喝の罪
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報 若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪 若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪 若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
他人のためにその事務を処理する者が、自己 若しくは第三者の利益を図り 又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
未成年者の知慮浅薄 又は人の心神耗弱に乗じて、その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
この章の罪の未遂は、罰する。
第二百四十二条、第二百四十四条 及び第二百四十五条の規定は、この章の罪について準用する。
第三十八章 横領の罪
自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
遺失物、漂流物 その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役 又は十万円以下の罰金 若しくは科料に処する。
第二百四十四条の規定は、この章の罪について準用する。
第三十九章 盗品等に関する罪
盗品 その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、三年以下の懲役に処する。
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、十年以下の懲役 及び五十万円以下の罰金に処する。
配偶者との間 又は直系血族、同居の親族 若しくはこれらの者の配偶者との間で前条の罪を犯した者は、その刑を免除する。
前項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
第四十章 毀棄及び隠匿の罪
公務所の用に供する文書 又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
権利 又は義務に関する他人の文書 又は電磁的記録を毀棄した者は、五年以下の懲役に処する。
他人の建造物 又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金 若しくは科料に処する。
自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。
境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者は、五年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
他人の信書を隠匿した者は、六月以下の懲役 若しくは禁錮 又は十万円以下の罰金 若しくは科料に処する。
第二百五十九条、第二百六十一条 及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。