民法

明治二十九年法律第八十九号
分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年五月二十四日 ( 2024年 5月24日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第三十三号による改正
最終編集日 : 2024年 08月16日 11時27分

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  • 第一編 総則

    • 第一章 通則

    • 第二章 人

      • 第一節 権利能力
      • 第二節 意思能力
      • 第三節 行為能力
      • 第四節 住所
      • 第五節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告
      • 第六節 同時死亡の推定
    • 第三章 法人

    • 第四章 物

    • 第五章 法律行為

      • 第一節 総則
      • 第二節 意思表示
      • 第三節 代理
      • 第四節 無効及び取消し
      • 第五節 条件及び期限
    • 第六章 期間の計算

    • 第七章 時効

      • 第一節 総則
      • 第二節 取得時効
      • 第三節 消滅時効
  • 第二編 物権

    • 第一章 総則

    • 第二章 占有権

      • 第一節 占有権の取得
      • 第二節 占有権の効力
      • 第三節 占有権の消滅
      • 第四節 準占有
    • 第三章 所有権

      • 第一節 所有権の限界
        • 第一款 所有権の内容及び範囲
        • 第二款 相隣関係
      • 第二節 所有権の取得
      • 第三節 共有
      • 第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令
      • 第五節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命
    • 第四章 地上権

    • 第五章 永小作権

    • 第六章 地役権

    • 第七章 留置権

    • 第八章 先取特権

      • 第一節 総則
      • 第二節 先取特権の種類
        • 第一款 一般の先取特権
        • 第二款 動産の先取特権
        • 第三款 不動産の先取特権
      • 第三節 先取特権の順位
      • 第四節 先取特権の効力
    • 第九章 質権

      • 第一節 総則
      • 第二節 動産質
      • 第三節 不動産質
      • 第四節 権利質
    • 第十章 抵当権

      • 第一節 総則
      • 第二節 抵当権の効力
      • 第三節 抵当権の消滅
      • 第四節 根抵当
  • 第三編 債権

    • 第一章 総則

      • 第一節 債権の目的
      • 第二節 債権の効力
        • 第一款 債務不履行の責任等
        • 第二款 債権者代位権
        • 第三款 詐害行為取消権
          • 第一目 詐害行為取消権の要件
          • 第二目 詐害行為取消権の行使の方法等
          • 第三目 詐害行為取消権の行使の効果
          • 第四目 詐害行為取消権の期間の制限
      • 第三節 多数当事者の債権及び債務
        • 第一款 総則
        • 第二款 不可分債権及び不可分債務
        • 第三款 連帯債権
        • 第四款 連帯債務
        • 第五款 保証債務
          • 第一目 総則
          • 第二目 貸金等根保証契約
          • 第三目 事業に係る債務についての保証契約の特則
      • 第四節 債権の譲渡
      • 第五節 債務の引受け
        • 第一款 併存的債務引受
        • 第二款 免責的債務引受
      • 第六節 債権の消滅
        • 第一款 弁済
          • 第一目 総則
          • 第二目 弁済の目的物の供託
          • 第三目 弁済による代位
        • 第二款 相殺
        • 第三款 更改
        • 第四款 免除
        • 第五款 混同
      • 第七節 有価証券
        • 第一款 指図証券
        • 第二款 記名式所持人払証券
        • 第三款 その他の記名証券
        • 第四款 無記名証券
    • 第二章 契約

      • 第一節 総則
        • 第一款 契約の成立
        • 第二款 契約の効力
        • 第三款 契約上の地位の移転
        • 第四款 契約の解除
        • 第五款 定型約款
      • 第二節 贈与
      • 第三節 売買
        • 第一款 総則
        • 第二款 売買の効力
        • 第三款 買戻し
      • 第四節 交換
      • 第五節 消費貸借
      • 第六節 使用貸借
      • 第七節 賃貸借
        • 第一款 総則
        • 第二款 賃貸借の効力
        • 第三款 賃貸借の終了
        • 第四款 敷金
      • 第八節 雇用
      • 第九節 請負
      • 第十節 委任
      • 第十一節 寄託
      • 第十二節 組合
      • 第十三節 終身定期金
      • 第十四節 和解
    • 第三章 事務管理

    • 第四章 不当利得

    • 第五章 不法行為

  • 第四編 親族

    • 第一章 総則

    • 第二章 婚姻

      • 第一節 婚姻の成立
        • 第一款 婚姻の要件
        • 第二款 婚姻の無効及び取消し
      • 第二節 婚姻の効力
      • 第三節 夫婦財産制
        • 第一款 総則
        • 第二款 法定財産制
      • 第四節 離婚
        • 第一款 協議上の離婚
        • 第二款 裁判上の離婚
    • 第三章 親子

      • 第一節 実子
      • 第二節 養子
        • 第一款 縁組の要件
        • 第二款 縁組の無効及び取消し
        • 第三款 縁組の効力
        • 第四款 離縁
        • 第五款 特別養子
    • 第四章 親権

      • 第一節 総則
      • 第二節 親権の効力
      • 第三節 親権の喪失
    • 第五章 後見

      • 第一節 後見の開始
      • 第二節 後見の機関
        • 第一款 後見人
        • 第二款 後見監督人
      • 第三節 後見の事務
      • 第四節 後見の終了
    • 第六章 保佐及び補助

      • 第一節 保佐
      • 第二節 補助
    • 第七章 扶養

  • 第五編 相続

    • 第一章 総則

    • 第二章 相続人

    • 第三章 相続の効力

      • 第一節 総則
      • 第二節 相続分
      • 第三節 遺産の分割
    • 第四章 相続の承認及び放棄

      • 第一節 総則
      • 第二節 相続の承認
        • 第一款 単純承認
        • 第二款 限定承認
      • 第三節 相続の放棄
    • 第五章 財産分離

    • 第六章 相続人の不存在

    • 第七章 遺言

      • 第一節 総則
      • 第二節 遺言の方式
        • 第一款 普通の方式
        • 第二款 特別の方式
      • 第三節 遺言の効力
      • 第四節 遺言の執行
      • 第五節 遺言の撤回及び取消し
    • 第八章 配偶者の居住の権利

      • 第一節 配偶者居住権
      • 第二節 配偶者短期居住権
    • 第九章 遺留分

    • 第十章 特別の寄与

制定に関する表明

民法第一編第二編第三編別冊ノ通定ム
此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

明治二十三年法律第二十八号民法財産編財産取得編債権担保編証拠編ハ此法律発布ノ日ヨリ廃止ス

(別冊)

第一編 総則

第一章 通則

1項

私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2項

権利の行使 及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3項

権利の濫用は、これを許さない。

1項

この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

第二章 人

第一節 権利能力

1項
私権の享有は、出生に始まる。
2項

外国人は、法令 又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

第二節 意思能力

1項

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

第三節 行為能力

1項

年齢十八歳をもって、成年とする。

1項

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。


ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2項

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3項

第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。


目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

1項

一種 又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

2項

前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。

1項

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人 又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

1項

後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。

1項

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。


ただし、日用品の購入 その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

1項

第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人 及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人 及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

1項

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人 又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。


ただし第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

1項

保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

1項

被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。


ただし第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

一 号
元本を領収し、又は利用すること。
二 号
借財 又は保証をすること。
三 号

不動産 その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

四 号
訴訟行為をすること。
五 号

贈与、和解 又は仲裁合意(仲裁法平成十五年法律第百三十八号第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

六 号

相続の承認 若しくは放棄 又は遺産の分割をすること。

七 号

贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

八 号

新築、改築、増築 又は大修繕をすること。

九 号

第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

十 号

前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人 及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

2項

家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者 又は保佐人 若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。


ただし第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

3項

保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

4項

保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意 又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

1項

第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人 又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

2項

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部 又は一部を取り消すことができる。

1項

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人 又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。


ただし第七条 又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

2項

本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3項

補助開始の審判は、第十七条第一項の審判 又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。

1項

補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。

1項

家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者 又は補助人 若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。


ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。

2項

本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3項

補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

4項

補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意 又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

1項

第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人 又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。

2項

家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部 又は一部を取り消すことができる。

3項

前条第一項の審判 及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。

1項

後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人 又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始 又は補助開始の審判を取り消さなければならない。

2項

前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人 若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人 若しくは被保佐人であるときについて準用する。

1項

制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。


この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2項

制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人 又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

3項

特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

4項

制限行為能力者の相手方は、被保佐人 又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人 又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。


この場合において、その被保佐人 又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

1項

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない

第四節 住所

1項

各人の生活の本拠をその者の住所とする。

1項

住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。

2項

日本に住所を有しない者は、その者が日本人 又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。


ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

1項

ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

第五節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告

1項

従来の住所 又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人 又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。


本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

2項

前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人 又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

1項

不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人 又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

1項

前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。


この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。

2項

不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人 又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。

3項

前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

1項

管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。


不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

1項

家庭裁判所は、管理人に財産の管理 及び返還について相当の担保を立てさせることができる。

2項

家庭裁判所は、管理人と不在者との関係 その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。

1項

不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。

2項

戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者 その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後 又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

1項

前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

1項

失踪者が生存すること 又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人 又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。


この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

2項

失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。


ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

第六節 同時死亡の推定

1項

数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

第三章 法人

1項

法人は、この法律 その他の法律の規定によらなければ、成立しない。

2項

学術、技芸、慈善、祭祀、宗教 その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人 その他の法人の設立、組織、運営 及び管理については、この法律 その他の法律の定めるところによる。

1項

法人は、法令の規定に従い、定款 その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

1項

外国法人は、国、国の行政区画 及び外国会社を除き、その成立を認許しない。


ただし、法律 又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。

2項

前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。


ただし、外国人が享有することのできない権利 及び法律 又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。

1項

法人 及び外国法人は、この法律 その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。

1項

外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 号
外国法人の設立の準拠法
二 号
目的
三 号
名称
四 号
事務所の所在場所
五 号

存続期間を定めたときは、その定め

六 号
代表者の氏名 及び住所
2項

前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。


この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

3項

代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令 又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。


この場合においては、前項後段の規定を準用する。

4項

前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

5項

外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

6項

外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

7項

同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

8項

外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。

第四章 物

1項

この法律において「」とは、有体物をいう。

1項

土地 及びその定着物は、不動産とする。

2項

不動産以外の物は、すべて動産とする。

1項

物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。

2項
従物は、主物の処分に従う。
1項

物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。

2項

物の使用の対価として受けるべき金銭 その他の物を法定果実とする。

1項

天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。

2項

法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。

第五章 法律行為

第一節 総則

1項

公の秩序 又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

1項

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

1項

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第二節 意思表示

1項

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。


ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2項

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

1項

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2項

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

1項

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的 及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 号

意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 号

表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2項

前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3項

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない

一 号

相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 号

相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4項

第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

1項

詐欺 又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2項

相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項

前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

1項

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2項

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3項

意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

1項

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

2項

前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。


ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場 又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

3項

公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日 又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。


ただし、表意者が相手方を知らないこと 又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

4項

公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。

5項

裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

1項

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき 又は未成年者 若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。


ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。

一 号

相手方の法定代理人

二 号

意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

第三節 代理

1項

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2項

前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

1項

代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。


ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

1項

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫 又はある事情を知っていたこと 若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2項

相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと 又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

3項

特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。


本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

1項

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない


ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

1項

権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一 号
保存行為
二 号

代理の目的である物 又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用 又は改良を目的とする行為

1項

委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない

1項

法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。


この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任 及び監督についての責任のみを負う。

1項

復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

2項

復代理人は、本人 及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

1項

代理人が自己 又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

1項

同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。


ただし、債務の履行 及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2項

前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。


ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

1項

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。


ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2項

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

1項

前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

1項

代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。

一 号
本人の死亡
二 号

代理人の死亡 又は代理人が破産手続開始の決定 若しくは後見開始の審判を受けたこと。

2項

委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

1項

他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。


ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

2項

他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

1項

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2項

追認 又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。


ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

1項

前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。


この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

1項

代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。


ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

1項

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。


ただし、第三者の権利を害することはできない。

1項

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行 又は損害賠償の責任を負う。

2項

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない

一 号

他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。

二 号

他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。


ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。

三 号

他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

1項

単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。


代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

第四節 無効及び取消し

1項

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。


ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

1項

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人 若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2項

錯誤、詐欺 又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者 又はその代理人 若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

1項

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

1項

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2項

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3項

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。


行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

1項

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない

1項

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し 又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。

1項

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

2項

次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

一 号

法定代理人 又は制限行為能力者の保佐人 若しくは補助人が追認をするとき。

二 号

制限行為能力者(成年被後見人を除く)が法定代理人、保佐人 又は補助人の同意を得て追認をするとき。

1項

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。


ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

一 号
全部 又は一部の履行
二 号
履行の請求
三 号
更改
四 号
担保の供与
五 号

取り消すことができる行為によって取得した権利の全部 又は一部の譲渡

六 号
強制執行
1項

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。


行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

第五節 条件及び期限

1項

停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

2項

解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

3項

当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

1項

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

1項

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

1項

条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

2項

条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

1項

条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

2項

条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。

3項

前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと 又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条 及び第百二十九条の規定を準用する。

1項

不法な条件を付した法律行為は、無効とする。


不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

1項

不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。

2項

不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

1項

停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

1項

法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は期限が到来するまで、これを請求することができない

2項

法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

1項

期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。

2項

期限の利益は、放棄することができる。


ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

1項

次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない

一 号

債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

二 号

債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

三 号

債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

第六章 期間の計算

1項

期間の計算方法は、法令 若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合 又は法律行為に別段の定めがある場合を除きこの章の規定に従う。

1項

時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

1項

日、週、月 又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。


ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

1項

前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

1項

期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日 その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

1項

週、月 又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。

2項

週、月 又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月 又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。


ただし、月 又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

第七章 時効

第一節 総則

1項

時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

1項

時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者 その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

1項

時効の利益は、あらかじめ放棄することができない

1項

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決 又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 号

裁判上の請求

二 号

支払督促

三 号

民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解 又は民事調停法昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法平成二十三年法律第五十二号)による調停

四 号

破産手続参加、再生手続参加 又は更生手続参加

2項

前項の場合において、確定判決 又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

1項

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ 又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 号

強制執行

二 号

担保権の実行

三 号

民事執行法昭和五十四年法律第四号第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売

四 号

民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続 又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続

2項

前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。


ただし、申立ての取下げ 又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

1項

次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

一 号

仮差押え

二 号

仮処分

1項

催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

2項

催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

1項

権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。

一 号

その合意があった時から一年を経過した時

二 号

その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る)を定めたときは、その期間を経過した時

三 号

当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時

2項

前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。


ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年超えることができない

3項

催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。


同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。

4項

第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

5項

前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。

1項

時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

2項

前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと 又は権限があることを要しない。

1項

第百四十七条 又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予 又は更新は、完成猶予 又は更新の事由が生じた当事者 及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

2項

第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者 及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

3項

前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者 及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

1項

第百四十八条第一項各号 又は第百四十九条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第百四十八条 又は第百四十九条の規定による時効の完成猶予 又は更新の効力を生じない。

1項

時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者 又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者 若しくは成年被後見人が行為能力者となった時 又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者 又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

2項

未成年者 又は成年被後見人がその財産を管理する父、母 又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者 若しくは成年被後見人が行為能力者となった時 又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

1項

夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

1項

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時 又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

1項

時効の期間の満了の時に当たり、天災 その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号 又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

第二節 取得時効

1項

二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2項

十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

1項

所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年 又は十年を経過した後、その権利を取得する。

1項

第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。

1項

前条の規定は、第百六十三条の場合について準用する。

第三節 消滅時効

1項

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 号

債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 号

権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

2項

債権 又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3項

前二項の規定は、始期付権利 又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。


ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

1項

人の生命 又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、

同号
十年間」とあるのは、
二十年間」と

する。

1項

定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 号

債権者が定期金の債権から生ずる金銭 その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。

二 号

前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。

2項

定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

1項

確定判決 又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

2項

前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない

第二編 物権

第一章 総則

1項

物権は、この法律 その他の法律に定めるもののほか創設することができない

1項

物権の設定 及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

1項

不動産に関する物権の得喪 及び変更は、不動産登記法平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

1項

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

1項

同一物について所有権 及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。


ただし、その物 又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

2項

所有権以外の物権 及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。


この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

3項

前二項の規定は、占有権については、適用しない

第二章 占有権

第一節 占有権の取得

1項

占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

1項

占有権は、代理人によって取得することができる。

1項

占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

2項

譲受人 又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

1項

代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

1項

代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

1項

権原の性質上 占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

1項

占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。

2項

前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間 継続したものと推定する。

1項

占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。

2項

前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。

第二節 占有権の効力

1項

占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。

1項

善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。

2項

善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

1項

悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。

2項

前項の規定は、暴行 若しくは強迫 又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

1項

占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失 又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。


ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

1項

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

1項

前条の場合において、占有物が盗品 又は遺失物であるときは、被害者 又は遺失者は、盗難 又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

1項

占有者が、盗品 又は遺失物を、競売 若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者 又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない

1項

家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。

1項

占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額 その他の必要費を回復者から償還させることができる。


ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

2項

占有者が占有物の改良のために支出した金額 その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額 又は増価額を償還させることができる。


ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

1項

占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。


他人のために占有をする者も、同様とする。

1項

占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止 及び損害の賠償を請求することができる。

1項

占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防 又は損害賠償の担保を請求することができる。

1項

占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還 及び損害の賠償を請求することができる。

2項

占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。


ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

1項

占有保持の訴えは、妨害の存する間 又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。


ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。

2項

占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。


この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。

3項

占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。

1項

占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。

2項

占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない

第三節 占有権の消滅

1項

占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。


ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。

1項

代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。

一 号

本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。

二 号

代理人が本人に対して以後 自己 又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。

三 号
代理人が占有物の所持を失ったこと。
2項

占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。

第四節 準占有

1項

この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。

第三章 所有権

第一節 所有権の限界

第一款 所有権の内容及び範囲

1項

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益 及び処分をする権利を有する。

1項

土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

第二款 相隣関係

1項

土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。


ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない

一 号
境界 又はその付近における障壁、建物 その他の工作物の築造、収去 又は修繕
二 号
境界標の調査 又は境界に関する測量
三 号

第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

2項

前項の場合には、使用の日時、場所 及び方法は、隣地の所有者 及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3項

第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所 及び方法を隣地の所有者 及び隣地使用者に通知しなければならない。


ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

4項

第一項の場合において、隣地の所有者 又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

1項

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

2項

池沼、河川、水路 若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

1項

前条の場合には、通行の場所 及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

2項

前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

1項

第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。


ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き一年ごとにその償金を支払うことができる。

1項

分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。


この場合においては、償金を支払うことを要しない。

2項

前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

1項

土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス 又は水道水の供給 その他これらに類する継続的給付(以下この項 及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

2項

前項の場合には、設備の設置 又は使用の場所 及び方法は、他の土地 又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3項

第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所 及び方法を他の土地等の所有者 及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

4項

第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該 他の土地 又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。


この場合においては、第二百九条第一項ただし書 及び第二項から第四項までの規定を準用する。

5項

第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く)に対して償金を支払わなければならない。


ただし一年ごとにその償金を支払うことができる。

6項

第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

7項

第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕 及び維持に要する費用を負担しなければならない。

1項

分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。


この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない

2項

前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

1項

土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。

1項

水流が天災 その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。

1項

他の土地に貯水、排水 又は引水のために設けられた工作物の破壊 又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕 若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。

1項

前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根 その他の工作物を設けてはならない。

1項

溝、堀 その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路 又は幅員を変更してはならない。

2項

両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路 及び幅員を変更することができる。


ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。

3項

前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用 若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流 又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。


この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所 及び方法を選ばなければならない。

1項

土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地 又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。

2項

前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置 及び保存の費用を分担しなければならない。

1項

水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。


ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

2項

対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。

3項

前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

1項

土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。

1項

境界標の設置 及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。


ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。

1項

二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。

2項

当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀 又は竹垣 その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。

1項

前条の囲障の設置 及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。

1項

相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。


ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。

1項

前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝 及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

1項

一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない

2項

高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。


ただし、防火障壁については、この限りでない。

1項

相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。


ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。

2項

前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。

1項

前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

1項
土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2項

前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

3項

第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

一 号

竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

二 号
竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 号
急迫の事情があるとき。
4項
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
1項

建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。

2項

前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。


ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

1項

境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓 又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。

2項

前項の距離は、窓 又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

1項

前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

井戸、用水だめ、下水だめ 又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵 又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。

2項

導水管を埋め、又は溝 若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。


ただし一メートルを超えることを要しない。

1項

境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊 又は水 若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。

第二節 所有権の取得

1項

所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

2項

所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

1項

遺失物は、遺失物法平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。

1項

埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。


ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者 及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

1項

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。


ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

1項

所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。


分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。

1項

付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。

1項

前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。

1項

他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。


ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。

2項

前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

1項

第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。

2項

前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物 又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後 その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後 その持分について存する。

1項

第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条 及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。

第三節 共有

1項

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

2項

共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。

3項

共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

1項

各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

1項

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状 又は効用の著しい変更を伴わないものを除く次項において同じ。)を加えることができない。

2項

共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

1項

共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任 及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

2項

裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該 他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

一 号
共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 号

共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

3項

前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

4項

共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権 その他の使用 及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

一 号

樹木の栽植 又は伐採を目的とする山林の賃借権等

十年

二 号

前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等

五年

三 号

建物の賃借権等

三年

四 号

動産の賃借権等

六箇月

5項

各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

1項

共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。


ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状 又は効用の著しい変更を伴わないものを除く次項において同じ。)を加えることができない。

2項

共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

3項
共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
4項

前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。


ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない

1項

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

2項

共有者が一年以内前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

1項

共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。

1項

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

1項

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。


ただし五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

2項

前項ただし書の契約は、更新することができる。


ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。

1項

前条の規定は、第二百二十九条に規定する共有物については、適用しない

1項
共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2項
裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 号
共有物の現物を分割する方法
二 号
共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部 又は一部を取得させる方法
3項

前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

4項
裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行 その他の給付を命ずることができる。
1項

共有物の全部 又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部 又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物 又はその持分について前条の規定による分割をすることができない

2項

共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。


ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

3項

相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

1項

共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。

2項

債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。

1項

共有物について権利を有する者 及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。

2項

前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない

1項

各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

1項

分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。

2項

共有者の全員 又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。

3項

前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。


協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。

4項

証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。

1項

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。


この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

2項

前項の請求があった持分に係る不動産について第二百五十八条第一項の規定による請求 又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項裁判をすることができない

3項

所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項裁判をすることができない

4項

第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。

5項

前各項の規定は、不動産の使用 又は収益をする権利(所有権を除く)が数人の共有に属する場合について準用する。

1項

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

2項

所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項裁判をすることができない

3項

第一項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。

4項

前三項の規定は、不動産の使用 又は収益をする権利(所有権を除く)が数人の共有に属する場合について準用する。

1項

共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。

1項

この節第二百六十二条の二 及び第二百六十二条の三除く)の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。


ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。

第四節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

1項

裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地 又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

2項

所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者 又は共有持分を有する者が所有するものに限る)に及ぶ。

3項

所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地 又は共有持分 及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分 その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4項

裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

1項

前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地 又は共有持分 及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産 並びにその管理、処分 その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理 及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

2項

所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。


ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 号
保存行為
二 号
所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用 又は改良を目的とする行為
1項
所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告 又は被告とする。
1項

所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2項

数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

1項
所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたこと その他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。
2項
所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
1項
所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払 及び報酬を受けることができる。
2項

所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用 及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

1項

裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物 又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

2項

所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者 又は共有持分を有する者が所有するものに限る)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権 その他の使用 及び収益を目的とする権利(所有権を除く)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者 又は共有持分を有する者が有するものに限る)に及ぶ。

3項
所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物 又は共有持分 並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産 及び建物の敷地に関する権利の管理、処分 その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4項

裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

5項

第二百六十四条の三から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令 及び所有者不明建物管理人について準用する。

第五節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命

1項

裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利 又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

2項

管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者 又はその共有持分を有する者が所有するものに限る)に及ぶ。

3項
裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。
1項

管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地 及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産 並びにその管理、処分 その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理 及び処分をする権限を有する。

2項

管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。


ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

一 号
保存行為
二 号
管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用 又は改良を目的とする行為
3項

管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

1項

管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2項

管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

1項
管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたこと その他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。
2項
管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
1項
管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払 及び報酬を受けることができる。
2項
管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用 及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。
1項

裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利 又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第三項に規定する管理不全建物管理人をいう。第四項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

2項

管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者 又はその共有持分を有する者が所有するものに限る)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権 その他の使用 及び収益を目的とする権利(所有権を除く)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者 又はその共有持分を有する者が有するものに限る)に及ぶ。

3項

裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

4項

第二百六十四条の十から前条までの規定は、管理不全建物管理命令 及び管理不全建物管理人について準用する。

第四章 地上権

1項

地上権者は、他人の土地において工作物 又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。

1項

第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。

2項

地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

1項

前章第一節第二款相隣関係)の規定は、地上権者間 又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。


ただし第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。

1項

設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。


ただし、地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない。

2項

地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物 又は竹木の種類 及び状況 その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。

1項

地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物 及び竹木を収去することができる。


ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない

2項

前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

地下 又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。


この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。

2項

前項の地上権は、第三者がその土地の使用 又は収益をする権利を有する場合においても、その権利 又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。


この場合において、土地の使用 又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない

第五章 永小作権

1項

永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作 又は牧畜をする権利を有する。

1項

永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない

1項

永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作 若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。


ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。

1項

永小作人の義務については、この章の規定 及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。

1項

永小作人は、不可抗力により収益について失を受けたときであっても、小作料の免除 又は減額を請求することができない

1項

永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。

1項

永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。

1項

第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

1項

永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。


設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。

2項

永小作権の設定は、更新することができる。


ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

3項

設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き三十年とする。

1項

第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。

第六章 地役権

1項

地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。


ただし第三章第一節所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る)に違反しないものでなければならない。

1項

地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。


ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

2項

地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。

1項

土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために 又はその土地について存する地役権を消滅させることができない

2項

土地の分割 又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために 又はその各部について存する。


ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。

1項

地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

1項

土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。

2項

共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。

3項

地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する。

1項

用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地 及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。


ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

2項

同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。

1項

設定行為 又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。

1項

承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。

1項

承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。

2項

前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置 及び保存の費用を分担しなければならない。

1項

承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。

1項

前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。

1項

第百六十六条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。

1項

要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予 又は更新があるときは、その完成猶予 又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。

1項

地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。

1項

共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。

第七章 留置権

1項

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。


ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない

1項

留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

1項

留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。

2項

前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。

1項

留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

2項

留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。


ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

3項

留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

1項

留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。

2項

留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額 又は増価額を償還させることができる。


ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

1項

留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。

1項

債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。

1項

留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。


ただし第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。

第八章 先取特権

第一節 総則

1項

先取特権者は、この法律 その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

1項

先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失 又は損傷によって債務者が受けるべき金銭 その他の物に対しても、行使することができる。


ただし、先取特権者は、その払渡し 又は引渡しの前に差押えをしなければならない。

2項

債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

1項

第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。

第二節 先取特権の種類

第一款 一般の先取特権

1項

次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。

一 号
共益の費用
二 号
雇用関係
三 号
葬式の費用
四 号
日用品の供給
1項

共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算 又は配当に関する費用について存在する。

2項

前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。

1項

雇用関係の先取特権は、給料 その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。

1項

葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。

2項

前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。

1項

日用品の供給の先取特権は、債務者 又はその扶養すべき同居の親族 及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料 及び電気の供給について存在する。

第二款 動産の先取特権

1項

次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。

一 号
不動産の賃貸借
二 号
旅館の宿泊
三 号
旅客 又は荷物の運輸
四 号
動産の保存
五 号
動産の売買
六 号

種苗 又は肥料(蚕種 又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給

七 号
農業の労務
八 号
工業の労務
1項

不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料 その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。

1項

土地の賃貸人の先取特権は、その土地 又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産 及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。

2項

建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。

1項

賃借権の譲渡 又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人 又は転借人の動産にも及ぶ。


譲渡人 又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。

1項

賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期 及び次期の賃料 その他の債務 並びに前期 及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。

1項

賃貸人は、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。

1項

旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料 及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。

1項

運輸の先取特権は、旅客 又は荷物の運送賃 及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。

1項

第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。

1項

動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用 又は動産に関する権利の保存、承認 若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。

1項

動産の売買の先取特権は、動産の代価 及びその利息に関し、その動産について存在する。

1項

種苗 又は肥料の供給の先取特権は、種苗 又は肥料の代価 及びその利息に関し、その種苗 又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種 又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。

1項

農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。

1項

工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。

第三款 不動産の先取特権

1項

次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。

一 号
不動産の保存
二 号
不動産の工事
三 号
不動産の売買
1項

不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用 又は不動産に関する権利の保存、承認 若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。

1項

不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工 又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。

2項

前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

1項

不動産の売買の先取特権は、不動産の代価 及びその利息に関し、その不動産について存在する。

第三節 先取特権の順位

1項

一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。

2項

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。


ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。

1項

同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。


この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。

一 号

不動産の賃貸、旅館の宿泊 及び運輸の先取特権

二 号
動産の保存の先取特権
三 号

動産の売買、種苗 又は肥料の供給、農業の労務 及び工業の労務の先取特権

2項

前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位 又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない


第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。

3項

果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗 又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。

1項

同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。

2項

同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。

1項

同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

第四節 先取特権の効力

1項

先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない

1項

先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。

1項

一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない

2項

一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。

3項

一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない

4項

前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない

1項

一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。


ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。

1項

不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後 直ちに登記をしなければならない。

1項

不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。


この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。

2項

工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。

1項

前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。

1項

不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価 又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。

1項

先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。

第九章 質権

第一節 総則

1項

質権者は、その債権の担保として債務者 又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

1項

質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。

1項

質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。

1項

質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない

1項

質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用 及び債務の不履行 又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。


ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

1項

質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。


ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない

1項

質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。


この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。

1項

質権設定者は、設定行為 又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない

1項

第二百九十六条から第三百条まで 及び第三百四条の規定は、質権について準用する。

1項

他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。

第二節 動産質

1項

動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない

1項

動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。

1項

動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。


この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。

1項

同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。

第三節 不動産質

1項

不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用 及び収益をすることができる。

1項

不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。

1項

不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない

1項

前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。

1項

不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。


設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。

2項

不動産質権の設定は、更新することができる。


ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。

1項

不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章抵当権)の規定を準用する。

第四節 権利質

1項

質権は、財産権をその目的とすることができる。

2項

前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節総則動産質 及び不動産質)の規定を準用する。

1項

債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者にその質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者 その他の第三者に対抗することができない

1項

質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。

2項

債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。

3項

前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。


この場合において、質権は、その供託金について存在する。

4項

債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。

第十章 抵当権

第一節 総則

1項

抵当権者は、債務者 又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2項

地上権 及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。


この場合においては、この章の規定を準用する。

1項

抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。


ただし、設定行為に別段の定めがある場合 及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

1項

抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

1項

第二百九十六条第三百四条 及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。

第二節 抵当権の効力

1項

同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

1項

抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。


ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。

2項

前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。

1項

抵当権者は、利息 その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。


ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。

2項

前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。


ただし、利息 その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。

1項

抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権 若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。

2項

前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。

1項

前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者 及びこれらの者の承継人に対抗することができない

2項

主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない

1項

抵当不動産について所有権 又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

1項

抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

1項

主たる債務者、保証人 及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

1項

抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

1項

抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

1項

抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。

一 号

取得の原因 及び年月日、譲渡人 及び取得者の氏名 及び住所 並びに抵当不動産の性質、所在 及び代価 その他取得者の負担を記載した書面

二 号

抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る

三 号

債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価 又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し 又は供託すべき旨を記載した書面

1項

次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価 又は金額を承諾したものとみなす。

一 号

その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。

二 号

その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。

三 号

第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。

四 号

第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条において準用する同法第六十三条第三項 若しくは第六十八条の三第三項の規定 又は同法第百八十三条第一項第五号の謄本が提出された場合における同条第二項の規定による決定を除く)が確定したとき。

1項

第三百八十三条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第一号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者 及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。

1項

登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価 又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価 又は金額を払い渡し 又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

1項

登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。

2項

抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者 その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

1項

土地 及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地 又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。


この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

1項

抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。


ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

2項

前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない

1項

抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。

1項

抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費 又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。

1項

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。

2項

債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。


この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

1項

前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。

1項

抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。

2項

前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない


この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

1項

抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用 又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

一 号

競売手続の開始前から使用 又は収益をする者

二 号

強制管理 又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用 又は収益をする者

2項

前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない

第三節 抵当権の消滅

1項

抵当権は、債務者 及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

1項

債務者 又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

1項

地上権 又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者 又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない

第四節 根抵当

1項

抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

2項

前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの その他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。

3項

特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権 又は手形上 若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

1項

根抵当権者は、確定した元本 並びに利息 その他の定期金 及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

2項

債務者との取引によらないで取得する手形上 若しくは小切手上の請求権 又は電子記録債権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。


ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。

一 号
債務者の支払の停止
二 号

債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始 又は特別清算開始の申立て

三 号

抵当不動産に対する競売の申立て 又は滞納処分による差押え

1項

元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。


債務者の変更についても、同様とする。

2項

前項の変更をするには、後順位の抵当権者 その他の第三者の承諾を得ることを要しない。

3項

第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

1項

根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。

1項

根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。

2項

第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。

3項

第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。

4項

第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。

1項

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない


元本の確定前に債務者のために 又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。

2項

元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない

3項

元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、第四百七十二条の四第一項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない

4項

元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、第五百十八条第一項の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない


元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とする。

1項

元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。

2項

元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。

3項

第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。

4項

第一項 及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。

1項

元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人 又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。

2項

元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人 又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。

3項

前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。


ただし前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。

4項

前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。

5項

第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。


合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。

1項

元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社 及び分割により設立された会社 又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部 又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。

2項

元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社 及び分割により設立された会社 又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部 又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。

3項

前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。

1項

元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない


ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。

2項

第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない

1項

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。

2項

根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。


この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。

3項

前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

1項

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

1項

根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。


ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。

2項

根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。

1項

抵当権の順位の譲渡 又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡 又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡 又は放棄の利益を受ける。

1項

第三百九十二条 及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

1項

前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者 若しくは極度額の変更 又はその譲渡 若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。

2項

前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。

1項

数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。

1項

根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。


この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。

2項

根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。


この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。

3項

前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない

1項

次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。

一 号

根抵当権者が抵当不動産について競売 若しくは担保不動産収益執行 又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。


ただし、競売手続 若しくは担保不動産収益執行手続の開始 又は差押えがあったときに限る。

二 号

根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。

三 号

根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始 又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。

四 号

債務者 又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。

2項

前項第三号の競売手続の開始 若しくは差押え 又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。


ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権 又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

1項

元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息 その他の定期金 及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。

2項

第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。

1項

元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者 又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権 若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し 又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。


この場合において、その払渡し 又は供託は、弁済の効力を有する。

2項

第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。

3項

第三百八十条 及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。

第三編 債権

第一章 総則

第一節 債権の目的

1項

債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

1項

債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約 その他の債権の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

1項

債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質 又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。

2項

前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後 その物を債権の目的物とする。

1項

債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。


ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。

2項

債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。

3項

前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。

1項

外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。

1項

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2項

法定利率は、年三パーセントとする。

3項

前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4項

各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

5項

前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

1項

利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

1項

債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。

1項

前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。

2項

前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない

1項

債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。

1項

第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者 又は債務者に対する意思表示によってする。

2項

前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。

1項

債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。

1項

選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。


ただし、第三者の権利を害することはできない。

第二節 債権の効力

第一款 債務不履行の責任等

1項

債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2項

債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時 又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3項

債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

1項

債務の履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない

2項

契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

1項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。

2項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。

1項

債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

2項

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

1項

債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法 その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制 その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。


ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

1項

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき 又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。


ただし、その債務の不履行が契約 その他の債務の発生原因 及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2項

前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 号

債務の履行が不能であるとき。

二 号

債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 号

債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

1項

債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2項

特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

1項

損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

1項

将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

2項

将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

1項

債務の不履行 又はこれによる損害の発生 若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任 及びその額を定める。

1項

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。


ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

2項

前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

3項

第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない

1項

当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2項

賠償額の予定は、履行の請求 又は解除権の行使を妨げない。

3項

違約金は、賠償額の予定と推定する。

1項

前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。

1項

債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物 又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物 又は権利について当然に債権者に代位する。

1項

債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利 又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転 又はその利益の償還を請求することができる。

第二款 債権者代位権

1項

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。


ただし、債務者の一身に専属する権利 及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

2項

債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない


ただし、保存行為は、この限りでない。

3項

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない

1項

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。

1項

債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払 又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払 又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。


この場合において、相手方が債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。

1項

債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。

1項

債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立て その他の処分をすることを妨げられない。


この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

1項

債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

1項

登記 又は登録をしなければ権利の得喪 及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続 又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。


この場合においては、前三条の規定を準用する。

第三款 詐害行為取消権

第一目 詐害行為取消権の要件

1項

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。


ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

2項

前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。

3項

債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。

4項

債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

1項

債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、不動産の金銭への換価 その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与 その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。

二 号

債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭 その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。

三 号

受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

1項

債務者がした既存の債務についての担保の供与 又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 号

その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

2項

前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。

二 号

その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

1項

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

1項

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。

一 号

その転得者が受益者から転得した者である場合

その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

二 号

その転得者が他の転得者から転得した者である場合

その転得者 及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

第二目 詐害行為取消権の行使の方法等

1項

債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。


受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

2項

債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。


転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる。

1項

詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする。

一 号

受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え

受益者

二 号

転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え

その詐害行為取消請求の相手方である転得者

2項

債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

1項

債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる。

2項

債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

1項

債権者は、第四百二十四条の六第一項前段 又は第二項前段の規定により受益者 又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払 又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払 又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる。


この場合において、受益者 又は転得者は、債権者に対してその支払 又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払 又は引渡しをすることを要しない。

2項

債権者が第四百二十四条の六第一項後段 又は第二項後段の規定により受益者 又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする。

第三目 詐害行為取消権の行使の効果

1項

詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者 及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

1項

債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。


債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

1項

債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

1項

債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。


ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付 又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。

一 号

第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合

その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権 又はその価額の償還請求権

二 号

前条に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く

その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

第四目 詐害行為取消権の期間の制限

1項

詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない


行為の時から十年を経過したときも、同様とする。

第三節 多数当事者の債権及び債務

第一款 総則

1項

数人の債権者 又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者 又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

第二款 不可分債権及び不可分債務

1項

次款連帯債権)の規定(第四百三十三条 及び第四百三十五条の規定を除く)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。

1項

不可分債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。


この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない

1項

第四款連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。

1項

不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。

第三款 連帯債権

1項

債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部 又は一部の履行を請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に更改 又は免除があったときは、その連帯債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益に係る部分については、他の連帯債権者は、履行を請求することができない

1項

債務者が連帯債権者の一人に対して債権を有する場合において、その債務者が相殺を援用したときは、その相殺は、他の連帯債権者に対しても、その効力を生ずる。

1項

連帯債権者の一人と債務者との間に混同があったときは、債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為 又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。


ただし、他の連帯債権者の一人 及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該 他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

第四款 連帯債務

1項

債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定 又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部 又は一部の履行を請求することができる。

1項

連帯債務者の一人について法律行為の無効 又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

1項

連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

2項

前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

1項

連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

1項

第四百三十八条第四百三十九条第一項 及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。


ただし、債権者 及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

1項

連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

2項

前項の規定による求償は、弁済 その他免責があった日以後の法定利息 及び避けることができなかった費用 その他の損害の賠償を包含する。

1項

他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。


この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

2項

弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済 その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

1項

連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。

2項

前項に規定する場合において、求償者 及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者 及び他の資力のある者の間で、等しい割合で分割して負担する。

3項

前二項の規定にかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない

1項

連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。